もぞもぞ。
「ん……」
もぞもぞと。妙な寝苦しさを覚えて、八重は目を覚ました。
今は何時だろう。窓から光は入ってきていない。部屋の中は真っ暗だ。ということはまだ夜か、早朝か。
(んん〜……ん?)
目の前に誰かいる。その誰かの腕が、八重の頭に乗っていた。寝苦しいのはそのせいだろう。それだけでなく、自分が腕枕をされているのにも気付いた。どうやら誰かが、自分の頭を挟むような形で添い寝しているらしい。
(んう? にわちゃん……じゃないよね)
少し暗闇に慣れじっと凝視してみるが、潦にしては髪の量が少ない。しかもよく見ればヘアピンが……。
(え!? まさか……た、多汰美さん!?)
思い出した。寝る前に、多汰美と真紀子と一緒に、多汰美の部屋でDVDを見ていたことを。しかもそのDVDというのが
(わああ、思い出したくない思い出したくない!!)
といったような代物だったのだ。見終わる前に、真紀子は眠いからと部屋に戻っていったのだが、そのとき一緒に出て行かなかったのが失敗だった。結局、八重は多汰美にほとんど抱きつきながら最後まで見てしまったのである。もし最後がハッピーエンドなら少しは救われたものの
(ううう……思い出したくないのにぃぃ)
と、そんなわけで、自室にすら戻れなくなった八重のために、多汰美が添い寝をしてくれたのだった。改めて考えなくても多汰美が八重の部屋まで付き添ってくれればそれで良かったはずなのだが、その時の八重にはそんなことを考える余裕もなかったのだろう。
そして、現在に至る。
(あ……)
もちろん、それだけならさほど問題はない。潦が泊まりに来た時は枕を並べてるし、それが多汰美になったからと言って嫌なはずがない。
問題は、八重の体にあった。
(ちょっと、トイレ行きたいかも……)
普段ならなんてことはないごく自然な生理現象。だがそうでない八重にとってはこれ以上無い危機だった。静まり返った家に、真っ暗な廊下。嫌でもあのDVDのことを意識してしまう。おそらく、一人では布団から出ることすらできないだろう。
(う〜う〜)
多汰美に付き添ってもらうしか道はない。だが、羞恥心もあるし、なにより多汰美の睡眠を妨げるのは気が引ける。
とは言え、一度意識した尿意は簡単にはおさまらない。迷ってる間にも確実に下腹部の疼きは大きくなってきている。冷や汗が頬を伝う。そろそろと手で局部を抑えた瞬間、悪寒が背筋を走った。
「ひっ」
もう駄目だ。迷っている暇はない。八重は意を決し、もう片方の手で多汰美の肩を叩いた。
「あ、あの、多汰美さん、起きてください」
「ん、ん〜」
多汰美はごねるように唸ったがすぐに、うっすらとではあるが目を開けた。
「あ、八重ちゃん……ぅぅん、どしたん?」
「あ、あのですね、ちょっと……あの、トイレまで、付いてきてもらえませんか」
「……漏らしたん?」
「まだです!」
ついいつもの調子で反論したのがいけなかった。緊張状態が一瞬解けたせいで、我慢していた一部が出てしまった。一部とはいえ、それは瞬く間にショーツの生地に広がり、パジャマにまで染みたのが手で触って確認できた。
「うあっ! あの、もう……ダメです。せめて、廊下まで……」
「……」
必死に懇願する八重を見て、多汰美は何を考えているのか黙ったままだった。
「あの、私本当に、もう……」
「ここでしちゃってええよ? 八重ちゃん」
いきなりな発言に、八重は自分の耳を疑った。
「はい?」
「気にせんけえ、漏らしても」
今度こそ理解できた八重だが、あまりの事に次のアクションが思い浮かばない。
「あ、あの、まさか寝惚けてたりとか」
「しとらんよ。ほら、ええから」
多汰美は八重をぐいと引き寄せた。ただでさえ近い距離が、おたがいの鼻がくっつくほどに縮まる。
「んっ」
「ほら、ゆっくり、少しずつ力抜いて……」
いつの間にか、多汰美の手が八重の下腹部をまさぐっていた。
「あっ、やぁっ」
咄嗟に股間を抑えていた手に力を入れるが、多汰美の手は八重のパジャマの中に入り込み、臍の下あたりを少しずつ圧迫し始めた。
「はっ、ひっ」
八重は喘ぎながら多汰美を見てから、子供がいやいやと駄々をこねるように首を振った。暗闇でも泣いているのが分かるくらい、目からは涙が溢れている。それを見ながら、多汰美は八重とはまた違った緊張を感じていた。
八重を可愛いと思った。妹分ではなく、女の子として。そして自然と、八重の唇に自分のそれを重ねていた。
「んんぅ!?」
「んむ」
八重は咄嗟に口を閉じ、下半身を抑えていた手を多汰美の体に回した。多汰美はそれを逆手に取り、八重のお腹を押していた手をそのショーツの中に滑り込ませた。
「ひあ!」
耐え切れず開いた八重の口腔に、多汰美は迷わず自分の舌を差し入れる。八重は離れようとするが、力で多汰美に勝てるはずもない。そのまま多汰美の舌で口腔内を蹂躙され、瞳は次第に拒絶から恍惚としたようになり、とろんとした表情に変わった。
それを確認してから、多汰美は唇を離す。
「気持ちよかった、キス?」
「は、はい、なんだかすごく」
「おしっこ、もう出そう?」
「うう、いつ出ちゃってもおかしくないです」
どうしたって恥ずかしいのだろう、八重は俯きがちに呟いた。
「気持ちよかったら、我慢せんでええんよ」
「でも」
「大丈夫じゃけえ」
それだけ言うと、多汰美は再び八重に口付けした。八重は少し体を震わせたが、それ以上の抵抗はしなかった。そして同じように舌を八重の舌と絡ませる。意外にも八重が同じように舌を絡ませてきたのに少し驚いたが、多汰美はすぐに嬉しそうに八重の唾液を啜った。
「ちゅ、ん、ぴちゃ……はぁ」
一生懸命キスをしてくる八重を可愛く感じながら、多汰美は八重の秘唇をなぞった。キスで脱力しかけていた八重の体が、そこをなぞるリズムにあわせて小刻みに動く。尿意はとっくに限界を超えているはずだが、八重は耐える。
「んっ、んんぅ!」
「あ……」
その代わりに、膣から分泌された潤滑液がとろりと多汰美の指を濡らす。八重は自分のそこから愛液が出たのが恥ずかしかったのか、多汰美の身体をぎゅっと抱きしめた。その反応にいたずら心の沸いた多汰美は、パジャマから手を抜いた。
「はう……」
八重の口から安堵とも不満とも取れる声が漏れる。多汰美はそこで口付けを止め、八重の目の前に彼女自身の愛液で湿った指をつきつけた。
「ほら、わかる? 八重ちゃんがエッチじゃけえ、べたべたじゃよ」
「うぅ!? そ、そんなこと」
責め言葉は言うほうも恥ずかしいが、された方はたまったものではない。八重がその羞恥に一層多汰美を掴む力を強める。普通なら痛いぐらいだが、今の多汰美にとってはそれすらも自身を昂ぶらせるのに充分だった。
余裕があればもっとやっていたいところだが、あまり我慢させるのは八重の身体に悪い。震える八重に、謝るように軽く口付けをして腕枕をしている腕を器用に動かすと、八重の頭を優しく撫でた。瞬く間に緊張が解かれていくのが多汰美にも分かる。
「ん、まだ出んねぇ。それじゃ、もうちょっと激しくするよ?」
そう言うと多汰美は、八重の愛液に濡れた自分の指をぺろりと舐め、代わりに自分の唾液でたっぷりと濡らしてから、先ほどのやりとりでパジャマが大分はだけた八重の下半身に動かした。
「ひっ」
「ほら、緊張しちゃ駄目じゃよ」
多汰美がもういちど口付けしようと顔を近づけると、今度は八重の方から唇を重ねてきた。
「んぅ、はむ」
「んっ!? ……ん」
自ら舌を入れてくる八重に多汰美は少し驚いたものの、そのまま八重の舌の動きに任せた。多汰美より幾分稚拙な舌の動きだが、今はそれがいとおしい。
多汰美は八重の陰唇に這わせた指をそのスリットに沿って動かした。
「んっ、はあっ」
なぞるたびに八重は熱い吐息を漏らす。おそらくそっちの限界ももう近いのだろう。先ほどとは比べ物にならないくらい多汰美の指はしとどに濡れている。指一本くらいなら、浅く入れても大丈夫だろう。
(ん〜、でも、ちょっと)
自分も我慢できない。
「八重ちゃん」
多汰美は八重から口を離すと、俯きがちに言う。
「はっ、はい、な、んです?」
「あの、私の胸、触ってくれん……かな」
多汰美の突然の申し出に小さく戸惑いの声を漏らすも、八重は頷いた。
「いっ、良いですよ」
八重は少し震える手で多汰美のパジャマのボタンをはずしその胸部を露わにすると、両手でふにふにと揉んだ。きれいな形のそれは、八重の手の動きに合わせて形を変える。
「んっ、気持ちええよ、八重ちゃん」
「……」
その自分の両手には余りそうな胸を触って何を思ったか、八重はいきなり頭頂部の突起を一緒に摘んだ。それだけでなく、固くなったそれを摘むように扱いた。その度に多汰美の身体がびくびくと痙攣する。
「いっ!? ひゃ、八重ちゃ、そんなにしたら、私っ」
意外な八重の動きに我を失いそうになりつつも、多汰美はその仕返しとばかりに八重の秘所に指を挿し込んだ。
「んく!」
大きな震えとともにより多くの愛液を滴らせる八重。そのまま浅く抜き差しを繰り返すが、その多汰美にもあまり余裕はない。身体を起こし、馬乗り状態になる。八重の身体が断続的な痙攣をしたところで、なんとかクリトリスを包皮から露出させた。
「〜!」
軽くでも一番敏感なところを触られ、声にならない声をあげる八重。前後不覚になりながら、のこった気力で多汰美の乳首を摘む。それが最後だった。
「あっ、もう、だ、あっああああぁぁ……いく、イッ―」
絶頂の直前八重に口づけすると、多汰美はくてんと八重の上に覆い被さった。そして直後の痙攣と同時に、多汰美は秘所に温もりを感じた。それは瞬く間に脚までパジャマを汚し、その下の八重と布団を容赦なく濡らす。それは紛れもなく、多汰美から排泄されていた。
「っ、あはは、ほら、私も漏らしちゃったけえ、ね」
恥ずかしそうにしながらも幾分落ち着いた声で言うと、多汰美は露出させた八重の陰核を撫でた。
「んあっ! た、たみ、さん……わたし、私もう」
「ええんよ」
それだけ言って、今度は軽く摘み上げる。
「やっあっあっ、んん、んんぅ!」
最後に一番強く多汰美を抱きしめると、八重は絶頂に達した。身体をふるふると震わせ、それが止まると一気に多汰美への腕の力が抜けた。
やがてじんわりとした温もりが多汰美にも伝わり、試しに八重の秘所に手を戻すと小さくぱしゃぱしゃと跳ねる音と水圧を感じた。
しばらくして放水がおさまると、肩で息をしていた八重の呼吸も静かになる。
「……」
ちょっとやり過ぎたかな。全て終わって、多汰美は反省した。二人分の小水は確実に布団を通り越し畳まで浸透していることだろう。
「……てへ」
濡れてないほうの手で頭を掻いてみるが、可愛いしぐさをしたところで時は戻らない。
「……」
「八重ちゃん?」
なんの突っ込みもないことに寂しさを覚えたか、多汰美は自分の下にいる八重を見た。
「……すぅ」
天使の微笑で眠っていた。
「……え〜、っと」
気が付けば、窓の外は薄明るかった。
「んぅぅぅぅ〜……はっ!」
八重は唐突に目覚め、まず自分のお尻の下を確認した。
「あ、あれ?」
別に濡れてない。パジャマも、ショーツも、布団も濡れた形跡すらなかった。というか、いつの間に自分は部屋に戻ってきたのだろう。まさか全て夢、だったのだろうか?
その疑問は、洗濯物を干しに行った時に全て解けた。