コロコロコロ……  
「あら、綺麗なガラス玉……」  
玉の転がってきた方を見ると、喫煙所のソファに座りうな垂れている男の姿が目に入った。  
このところ大人しく、悪く言えば覇気がない様子のロイ・マスタング大佐である。  
(大佐だわ、これ何の玉なんだろう)  
シェスカは目を凝らして足下の玉を覗いてみる。  
透明のガラスの玉の中には薄紫色のまだらが見えていて、何なのか判らないがとにかく不思議で綺麗だった。  
「この話題で元気づけてあげなくっちゃ」  
屈んでそっとガラス玉を摘まもうとした時、背後から声が掛かる。  
「シェスカ君、そのまま」  
「えっ!」  
首だけ回して後ろを振り向くと、いつの間にやらロイが回り込んでいた。  
 
「このままって…ど、どうしたんですか急に…」  
頬を真っ赤に染めながら、シェスカは言われたとおりの体制を保っている。  
「そのままゆっくり下着を脱いでくれ、頼む」  
「えっっ?!ここ廊下ですよ、人が来たらどうするんですか…」  
ロイの黒い瞳は、逸る心を映してきらきらと輝いている。  
「立ちそうなんだっ!」  
大きく呼吸を荒立てて必死の形相だ。  
「た、立ちそうってアレの事ですか?」  
そんな事をいきなり言われても困るというものだ。今この格好をしている事だけでも  
充分恥かしいのに、下着を脱げとは。  
今にも誰かが通りかかりそうに思え、シェスカは堪らず立ち上がった。  
「大佐、ここじゃなくて他の所でなら協力しますけど…」  
「ああ…だめだ」  
ロイの顔から、見る見るうちに生気が消えて行く。  
「もういい。すまなかったね」  
「た、大佐 」  
肩を落として歩いて行く姿に、シェスカはいたたまれない気持ちになった。  
(元気づけてあげたかったのに、私って……)  
 
「シェスカ先輩っ、テヘヘ」  
「あーっ、見てたの」  
持ち場の後輩が柱影からひょっこり現れた。  
「マスタング大佐はインポですごーく悩んでるみたいですよぉ」  
…それで最近の落ち込み様かと、やっと理解した。  
「そりゃあ悲劇ですよね、何やったってだめなんですから」  
「そうなの…なんで知ってるんですか」  
彼女はスカートの端を掴んでモジモジしながら言う。  
「だあって、私がやってもダメだったんだもん」  
「ま…」  
思わずメガネがずり落ちた。  
誰彼構わず声を掛けていたのかと思うと、何だか複雑な気持ちになって来る。  
(ふぅ、危なかった)  
とりあえず言われるがままにしなくて良かったと思う事にした。  
 
 
そんなある日………。  
 
「ロス少尉がここに来られるなんて、珍しいですね」  
「ええ、そうでしょ。実は人に頼まれて来たのよ」  
「そうなんですか。ここサインお願いします…」  
ロス少尉から手渡された書物を見て、シェスカの手が止まる。  
――『雨の日の過ごしかた』『失って初めてわかる健康のありがたさ』……。  
サインをしている少尉の顔に目を移し、恐る恐る訊いてみる。  
「…どなたに頼まれたんですか」  
「マスタング大佐よ。部屋まで持ってきてほしいって頼まれたの、この忙しい時に」  
シェスカは胸騒ぎを覚えた。どうやら次は、ロス少尉が標的となったらしい。  
彼女はロイの状況を知らないのだろうか……非常に気になる。  
「じゃあちょっと行ってくるわね」  
「は、はい」  
.まさか止められる筈がなく、またそんな権利も自分には無いので、シェスカは少尉が部屋を出て行くのをじっと見ていた。  
「…べ、別にいいじゃない」  
誰に向かって言うでもなく、ポツリと呟くのだった。  
 
ちゃんと閉まりきっていない扉の向こうから、男と女の会話が洩れている。  
「頼んでおいた物はちゃんと持ってきてくれたかね」  
「ええ、どうぞ」  
ソファに腰を下ろしているロイの目の先に二冊の書物を差し出すと、ロイの手はそれをすり抜けマリアの手を取った。  
「それから…、どんなのを着けて来た」  
「見たいですか?だめですよ、その前にちゃんとして下さらないと…」  
そう言ってマリアはロイの前に膝をつくと、その前髪をかきあげながらゆっくりと唇を吸い上げる。ロイは目を開けたままマリアの好きなようにさせていたが、彼女の舌がぐっと入り込んで来ると自らも舌を強く押しあてて絡めてやった。  
「んん…」  
軍服の上からマリアの尻を鷲掴みに揉んでいると、さわさわと股間を摩る手が触れて来た。  
中指と薬指で挟むように何度も撫でられる。  
「…感じ…ますか…?」  
問いかけに答えず、ロイはマリアのスカートに手を忍ばせ、太腿を撫でながら言う。  
「ちゃんとスカートにして来たんだな」  
「どうです?」  
クイッと腰をひねらせるマリアに、ロイは口の端を釣り上げて不敵に笑った。  
「ほう、これは凄いな。もういつでも出来るってわけか」  
「あっっ」  
マリアの身体をくるっと反転させ、スカートを腰の上まで捲り上げる。剥き出しになった白尻を両手で広げると、薄い下着の両端から赤くなった肉片が顔を覗かせた。  
 
「今日は、中で出したって平気ですよ、大佐…」  
「ここに出来たら―」  
何の躊躇もなく下着を膝まで下げてやると、すっかり見えてしまった二つの肉片に挟まれた部分に、熱いぬめりが溢れてきていた。  
「最高だろうな」  
ガバァ〜……  
無理に押し広げられた自分の割れ目をじっと見つめられ、マリアは小刻みに震えだした。  
「私…感じてきちゃいました……」  
 
カタタタッ  
(ロス少尉…すごい大胆な人…)  
扉の隙間から一つの瞳が覗いている。  
どうしても気になって、つけて来てしまったシェスカだった。  
(でも、これ位で立つなら本当のインポじゃないわ)  
そう思いながらも、ごくりと唾を飲み込み二人のありさまから目を離せないでいる。  
(あっ、すごい…、玉しゃぶりやってる!)  
 
ソファに横になったロイの上に覆い被さり、マリアは膨らみかけているロイのものをリズミカルに扱きながら根元の辺りを舐めまわしていた。  
「ロス少尉、何だか熱くなってきた…」  
一心に舌を動かし続けるマリアの尻を間近で見つめながら、ロイは頬を赤らめていた。  
「私が欲しくなりました?」  
 
(あっ……立ってる!!)  
シェスカは思わず扉に貼りついた。  
 
「少尉、立ったぞ……出来る!」  
ビクビクっと脈打ちながら、ロイのそれははちきれそうなほどに膨らんで反り返っていた。  
「すごい…立派です!おへそまで着きそうじゃないですか…」  
上半身をくねらせて、マリアが振り返った。  
逞しくなったロイのそれをうっとり見つめながら頬を紅潮させる。  
「今日だけは、あなたのものです…」  
軽く自分の手で扱いて悦に浸ったかと思うと、そのまま後ろから一気に貫く。  
ズボォッ!!  
「感謝するぞ、少尉っっ、俺の人生とりもどしたっっ!」  
ズボズボッ、ズボオォッッ……  
久しぶりに味わう感覚にロイは我を忘れ、夢中で腰をぶつけた。  
「た、大佐っ…思い切り動きたい…です…っ上になってもっいいですかっ」  
「もちろんだ…俺も下から思いっきり突き上げてやる」  
体勢を変え、座り直した自分の上にマリアを乗せ、今度は下から激しく突き上げる。  
「あ…ああっ…あっあ…」  
肉壁に擦れるたび気の遠くなるほどの快感が襲って来て、ロイは苦しそうに顔を歪める。  
「くっ…すご…ぃなっ…」  
「ああっ、いい…、気持ちいいっ…!!」  
 
(は、激し過ぎるわ…)  
もしかしたら、ロイの相手は自分だったかもしれないと思うと、シェスカは今さらながらにこの間の事を思い出しひど酷く後悔した。  
これ以上見ているのが苦しくなり、そっと扉を閉めて足早にその場から走り去って行った。  
 
「あっもう…イッてもいいです…かっ…イッてもっ!」  
「俺も……もう出そうだ」  
「中にっ出してっっ……あ、ああっ!!」  
ドピュピュッ、ピュッ…!!!  
思いっきり肉壁の奥深くに熱い欲望をぶちまけて、ロイは力尽きた。  
引き抜かれた部分から、ねっとりとした白い筋が流れ出ている。  
もうろうとした意識の中で、マリアは至上の幸福を感じていた。今この時だけは、この男は自分のものだったのだから。  
横で大きく肩で呼吸をしているロイの手に、自分の手を重ねる。  
「大佐……、もう一度しましょう…」  
「ああ、少し待ってくれ」  
 
大きな胸の上に頭を乗せ、マリアはしばらく愛しい人の心音に耳を傾けていた―。  
 

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