「豆粒〜受け取れ〜!」
スパナの変わりに飛んできたのは、四角い紙袋。
それを頭に受けてあの世に行きそうになったのは、俺。
なんだっこの固い物体は!?
開けてみれば、明らかに弁当箱で型を取った分厚くて固そうなチョコレートに
ご丁寧にもホワイトチョコペンで『義理』と書いてある。
文句を言おうとウィンリィの姿を探せば、アルに笑顔でチョコを渡していた。
それは俺のとは違って綺麗にラッピングされた、フワフワのチョコレートケーキ。
歴然とした差別に腹が立つじゃねーか。
一口囓ってみるとやはり固くて、いつまでも口の中に残ってしまう。これを利用してやろう。
ウィンリィの近くに行き、周りに誰もいないことを確認すると貰ったチョコをもう一口囓った。
今度はさっきよりも大きめに。
そしてそのままウィンリィの後頭部に手を回して固定し、口付ける。
驚いて抵抗するが、離してなんてやらない。
「…んー、う〜」
チョコを相手の口に舌で押し込み、少しずつ溶かして飲ませ、また自分の口に戻す。それを何度も繰り返した。
「あんた何すんのよ」
「誰かさんが固〜いチョコくれるからなかなか溶けてくれないよな。まっ味の方は格別だけど!」
下を向いてブルブルと震えるウィンリィは、かなりご立腹のようだ。
でもアルと俺を差別するからいけないんだぜ。
「この豆粒どチビ〜、チョコは一人で食べなさいよー」
真っ赤な顔をして走り去ってしまった。
へへん、ざまぁ見ろ。意地悪く笑っていた俺だけど、手の中のチョコの細工に気付いた。
固いのは表面をコーティングしている部分だけ、中身は柔らかいチョコケーキ。
しかも表面は取り外せるようだ。
中のケーキにはピンクのチョコペンで『好き』と一言。
なんだよ、アイツも可愛いところあるじゃねーか。
こんな差別ならいいかもしれない。そんなことを考える現金な俺だった。
(おしまい)