熱い  
 
                       熱い  
 
もう俺は死ぬのだ、と思う。  
それとは逆に、もといた場所に還るのだ、とも思う。  
 
最期まであいつらに減らず口をたたきながらも思い出すのは  
今まで抱いた幾人もの女の吐息や匂い、感触。  
 
そして死んでいった部下たち。  
 
あれらは全部俺のものなのだ。  
 
しっとりと濡れた女たちの肢体も。蜜も。甘い囁きも。  
部下たちの体や、命さえも。  
全部。  
 
何故なら、俺は『強欲』だから。  
好きなように生きてきたのだから、最期まで足掻いて死んでやろう。  
あいつらを笑いながら死ぬのもまた一興だ。  
『親父殿』の言いなりにはもうならない。  
 
俺はやっと、自由になるのだ。  
 
 
 
笑いながら沈んでいった彼が、最期に何を思い描いていたか  
それを知る人は、いない。  
 

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