その日、何度も手紙を交わしている文通相手から届いた内容は、
私がまったく知らないある物について記してあった。
部下が集まっている部屋へ移動し、物知りのヴァトー=ファルマン准尉を探す。
「准尉、悪いが『こけし』という物を知っているか?」
「はい。[子芥子・こけし]郷土人形の一つ。木地を轆轤で挽いた円筒状の胴に丸い頭をつけ、
簡単な彩色をして女児の姿を表すといったものですが」(広辞苑)
「それではよくわからんな…『こけし』が、私と似ているという情報が耳に入った。
確かめたいのだが…」
私の台詞にケイン=フェリー曹長が堪えていた笑いをぶはっと漏らす。
「何かね?」
鋭い眼光で睨み付ければ、メガネの男は怖ず怖ずと「これがこけしです」
とポケットから鍵に付けたキーホルダーを差し出した。
真ん丸の顔、切れ長といえば聞こえは良いが細い目、寸胴な体格のそれは、
はっきりいうと不細工に見える。
これに似ているというのか、ウィンリィ=ロックベル…
「ふむ、大佐の特徴と合っているかもしれませんな」
「むはははー、似てる!腹痛〜」
「ヒー、ヒー(笑いすぎて呼吸困難)」
「良かったですね。昔の美人顔と言われていますよ」
「大佐、笑ったりしてすみません!」
この日、私は『無能』の次にショックを受ける言葉『こけし』を覚えた。
小話 終わり