中尉に邪魔だから帰れと言われ、久しぶりに鮮やかなオレンジ色の夕焼けの中を歩く。  
背中を丸めて門を出る私は、自分の目を疑った。  
気になって仕方がなかった少女が、目の前に立っているのだ。  
髪を下ろした状態で顔はよく見えないが、確かにウィンリィ=ロックベルだろう。  
Tシャツにジャンパースカートで上にカーディガンを羽織っている。  
まだ残暑の名残がある時期にしては、その格好は厚着だろう。  
首にはスカーフが巻かれていて、前回会った時や送ってくれた写真での活動的な服装と  
かなり違い、どうしても違和感が残る。  
不意に顔を上げた彼女は、眼の下に大きな隈ができ、やつれた表情。  
こちらに気づき微笑んだ…ように見えたその時、彼女の体が傾いた。  
私は慌てて支え、声をかけるが返事がない。  
「ウィンリィ=ロックベル、しっかりしたまえ!」  
取り敢えず彼女を抱え上げ、自宅に運ぶことにした。  
前回会ったときに比べてかなり痩せているように見える。  
多分眠っていなくて、食事も満足に取っていない?  
彼女に一体何があったのだろうか。  
 
自宅に着くと彼女を客間へ運び、首のスカーフを取り除けば、熱烈な歯形がくっきりと表れる。  
一体誰が?小生意気な少年の顔を思い浮かべたが、暫く様子を見ることにした。  
病院に連れていくべきか迷ったが、自分の判断は合っていただろうか?  
そんなことをベット脇で考えていると彼女がうなされ始めた。  
「…い、や…こない…で…」  
誰に言っているのかわからない。だが起こすべきだろう。  
彼女の華奢な肩を揺すりながら、目覚めを促す。  
「ウィンリィ=ロックベル、起きたまえ。ウィンリィ=ロックベル」  
その声にゆっくりと目を開けた彼女は、目を見開き私に飛びついて来た。  
「父さん!こわいっこわかったよ。おとうさーん」  
冗談じゃない。私はそんな年ではない!と引き剥がそうとしたが、必死にしがみつく少女は  
年齢よりも更に幼い口調である。ここは相手に合わせてやるべきだろう。  
「どうしたんだい?話してご覧」  
出来るだけ優しげに父親らしく声をかけてみる。  
「エドがね、意地悪するの。噛み付いたの。痛かったの。でも謝ったから許してあげたよ。  
エドだから許したの。エドとアル以外なら絶対に許したりしないもん。ねぇ父さん、  
もしも他の人に同じ事されたらどうしよう。それが恐くて眠れないの。助けて…」  
我慢していた事を全て吐き出し、赤ん坊のようにひたすら泣き続ける。  
私は彼女の体温を感じながら困惑していた。  
鋼のが大切な幼なじみを好きこのんで襲ったりするのだろうか?  
信頼などしていないが信用できる少年だと思っている。  
余程のことがあったに違いない。  
 
「大丈夫だよ。私が付いているから安心して眠りなさい。  
ここには君に危害を加える者などいないから。」  
彼女をベットに寝かせて、自分は椅子を持ってきて座り、泣き疲れた子供の手を握る。  
今の自分は彼女のお父さんでいなければならない。  
「父さん、一緒に寝て?」  
少しだけ起きあがって首を小さく傾げながら懇願する顔は、鼻血を吹きそうになるほど  
可愛い。いや待て、私は今「父さん」なのだ。  
それにまだ夕方で眠くなどない。  
だが結局逆らうことなどできなくて、一緒のベットに入ることになった。  
「えへへ、父さん温かい。おやすみなさい」  
胸にすり寄ってきてグリグリと体を密着させる彼女。  
そういえばもう一週間もご無沙汰だったな。  
我慢できるだろうか…  
抱かない女とベットを共にするのは初めてだよ、ウィンリィ=ロックベル。  
 
 
ドサッ  
突然の物音に目を覚まし、飛び起きて焔を錬成できるように指を合わせる。  
…発火布の手袋は未装着だったが。  
ベットの下に真っ赤な顔で座り込んでいるのは、ウィンリィ=ロックベル。  
そういえば一緒に寝ていたのだが、彼女は何故私とベットを共にしているのか  
わからないのであろう。目をパチクリさせている。  
「私を抱き枕にして、よく眠れたかい?」  
時計を見ればまだ夜中、6時間ほど眠ったらしい。  
「…はい。ずっと作業部屋の固い椅子で眠っていたからよく眠れなくって  
…いや、そうじゃなくてなんで?リゼンブールにいたはずなのに」  
彼女は無意識に私の元へ来たというのだろうか?頼りにされているならば嬉しいのだが。  
床に腰を下ろしていては冷えるといけないので、ベットの上へと誘導する。  
「君は覚えていないだろうが、鋼のと君の間にあった事を聞いたよ。ここへ来た理由は、  
私にもわからないが君が安眠できたのなら、それで良いではないか。  
鋼のが君にしたことは、愚かな行為だが私も男だ、気持ちはわかる。  
好きな女が目の前にいるとどうしても押さえが効かないものなのだよ、男という生き物は。  
まぁ鋼のは、まだ若いから暴走が過ぎてしまったのだろう。一発殴って済む問題でもないだろうが  
…元の関係に戻れそうかい?」  
我ながら男に都合のいい意見だと思う。  
だが彼女が求めているのは、たぶんこんな言葉だろう。  
その証拠に金髪の少女は、安心したように微笑んでいるのだから。  
「私、大佐さんにエドのこと、今みたいに庇って欲しかったのかも…だからここに来たのかな?  
ピナコばっちゃんや女友達には、エドのことを悪く言われないかって心配で言えなかったんです。  
でも誰かに聞いて欲しかった。大佐さんはエドの味方でしょ?」  
いや、全然違う。と思ったが敢えて口には出さなかった。  
眠る前に君が鋼のを許したと言ったからだよ。彼のことを本当に大切なのだね。  
なのに鋼のは君のことを…  
 
「私なら優しく出来るのに…」  
「えっ?大佐さん?」  
今まで数多くの恋人達を別れさせて来たが、一度だって彼氏に嫉妬などしたことはなかった。  
いつだって女性の心は自分の思うがままだったのだ。  
だが今の私は、ウィンリィ=ロックベルの心を手に入れることができない。  
きっと彼女にとって私など鋼のやアルフォンス=エルリックの足下にも及ばないのだろう。  
目の前の少女は、戸惑いながら私を見つめている。  
いつもはどうやって女を口説いていたのだろう。ああ、思い出した『君を愛している』  
そのたった一言で済んだではないか。ほら言えばいいだろう。  
「君を…」  
言えない。そんな言葉は嘘だから。簡単に吐いてきたのに言えないのは  
きっと目の前の少女は特別だからだ。  
「私は…君を好きなのだよ。ウィンリィ=ロックベル」  
大きな目が更に見開かれた。嘘などすぐに見抜かれてしまいそうだ。  
今まで女に対してリップサービスは当然の行為。  
彼女たちは私に完璧を求め、私は彼女たちに応えて見せた。  
だが違う。ウィンリィ=ロックベルには、そんなことをしたくないのだ。  
「友達からでも構わない。鋼のの知り合いとしてではなく、  
私を一人の男として見て貰えないだろうか?」  
告白など初めてするような気がする。私は息をのんで返事を待った。  
 
彼女の肩が小刻みに震えだした。怖がらせてしまったのだろうか?  
いや、違う。…なぜか笑っている。  
「クスクス、私達はもう文通友達じゃないですか!それに私は大佐さん…ロイさんのこと  
大好きですよ。だって初対面の時は、仕事の出来る大人の男性って感じだったのに、  
一緒にラーメン屋へ行ったら猫舌で麺を上手に啜れなかったでしょ?その姿が可愛かったなぁ。  
だからこそギャップが印象深くて、気になって仕方なかったんです。  
貴方のことを知りたかったから文通をお願いしたんですよ?手紙の内容もユニークな人だなって」  
可愛い?ユニーク?そんなこと言われたことなどないぞ!  
…悪い気はしないが。  
君が言う『大好き』は私が欲しているものだろうか?  
 
彼女の手を取って甲に口付けると微かにオイルの匂いがした。  
この手が機械鎧を生み出す…創造の手、私の破壊の焔を生み出す手と違い、  
なんてキレイなんだろう。  
「なんだか恥ずかしいですよ、ロイさん」  
照れている彼女を瞳で捕らえ続け、唇を滑らせ指一本一本に触れていき  
最後の小指を口に含んだ。  
流石に異変を感じた少女は、腕を引っ込めようとしたがそんなことはさせない。  
「もしかして…エドと同じ事するの?ど…うして…」  
瞳に涙が溜まり、不安の色が濃くなっていくのが手に取るようにわかる。  
 
「私は君に告白したのだよ。先程も言った言葉だが、好きな女に  
手を出さない男などいない。君を抱きたいと思う私は嫌いかい?」  
今までの経緯からこの娘に飾り立てた言葉など意味がない、ストレートに伝えるのみ。  
拳を口元にあてて考え込んでいた彼女は、漸く頭の中が整理されたのか  
顔を上げて子犬のように純粋な目で私をじっと見つめる。  
「嫌じゃないです。…でも名前で呼んで欲しい。だってフルネームか君としか  
呼んでくれないもの。それじゃ嫌」  
言われてみればそうだった。何となく気恥ずかしかったのだ。  
「ウ、ウィンリィ?」  
瞬きした後、嬉しそうな顔をしながらギュッと私のシャツを掴む。  
「はい。…痛くしないで下さいね」  
彼女は、恥ずかしさで真っ赤な顔を隠すようにポスンと私の胸に頭を預ける。  
もちろんだとも!と心の中で誓いながら、彼女を抱きしめる。  
ああ、私は今幸せだ。  
 
 
彼女の顎に手を添えて上を向かせ、優しく唇を塞ぐ。  
「ん……」  
目を見開き硬直した様子から、恋愛初心者であることが伺い知れる。  
一度唇を離し、背中を抱いていた腕を後頭部へ移動させしっかりと固定。  
「怖いことではないのだよ。ゆっくりと目を閉じなさい」  
言われるままにする彼女を引き寄せ、顔中に触れるキスで  
少しずつ緊張を解していく。  
赤く顔を染め、小さく身じろぎしながらも拒まない彼女は愛らしい。  
二度目の口付け。  
今度は顎に添えた親指で唇をこじ開け、舌を差し入れて口内を犯す。  
私のシャツを握っている手の力が段々と弱くなり、パタリと力が抜けた頃  
漸く顔を離した。  
意識してなどいないだろうが、虚ろな表情の彼女はなかなか淫猥である。  
「気持ち良かったかい?これからもっと良くなるぞ」  
 
痛々しい歯形が残る左首筋に指を這わせる。  
瘡蓋になったそこにそっと唇を寄せ、痛くないようにキスを落とす。  
位置を変えて今度は右首筋、こちら側は降り積もった雪原のように跡一つなく、  
真っ白な肌に自分の赤い花を咲かせていく。  
綺麗に咲いた痣に満足すると彼女のジャンパースカートの留め具を外し、  
上部を腰まで落とし、Tシャツを剥ぎ取る。我ながら手慣れたものだ。  
さて、次に進むかとブラに手を掛けようとした瞬間、私の動きは停止した。  
彼女が息をのむのがわかる。  
右胸の周りには転々と青い痣が出来ていたのだ。  
それは力強く掴まれたせいで残ってしまったもの、鋼のが付けた想いの丈。  
 
体を離し両手で丁寧にブラを外すと、これから更に成長する若さ溢れる胸が  
プルリと震えるのが目に入り、その中心には淡い桜色の実がなっている。  
スカートを脱がして下に落とした後、彼女の体をベットに寝かせて左胸に手を乗せ、  
壊れ物を扱うかのようにやわやわと揉み始め、右胸の実を舐める。  
「やっ…あぁ…」  
「嫌?痛いかい?」  
そんなわけないことは知っているが、ワザと尋ねてみる。  
「違…だって勝手に声が出ちゃうんです」  
「それは気持ち良いってことだね。我慢する必要などないよ。沢山声を聞かせて欲しい」  
徐々に揉む力を入れて刺激を与え、舐めるだけではなく吸ったり舌先でつついたりを繰り返す。  
左胸の愛撫を頂上に移した頃、唇を彼女の右手に移動させる。  
私は彼女の体のパーツでは右手が一番好きらしい。  
新たな物を創造する手、私に手紙を書いてくれる手。  
指一本一本を口に含み、次に指と指の間にも舌を這わせて唾液まみれにした。  
「ロイさん、手が好きなの?」  
「君の手が好きなのだよ」  
「…ウィンリィでしょ」  
「ああ、すまない。ウィンリィの手だから好きなんだよ」  
よし!と笑う彼女の頬にキスをして、その隙に左手を下着に侵入させた。  
「えっ狡い!…ああっ…」  
弾みで中指が突起に当たってしまい、彼女をビックリさせてしまった。  
 
急な刺激は初めてなら辛かろうと茂みを全体的に柔らかくさする。  
「あっああ、なんだかムズムズするの」  
丹念に触っていたおかげで、下着にはシミが出来ていた。  
指先で掻き回せばクチュクチュと音が聞こえる。  
水色で白いラインが入った布を脱がせて足をM型に開かせ割れ目を観察。  
ちょっと薄めだが綺麗なピンク色である。  
舐めようと口を近づけると頭をがっしり掴まれた。  
「なっ何するつもりですか?もっもしかしてそこをなっなっ」  
「舐めるつもりだが?」  
「えっそれって私もロイさんのを舐めないと駄目?」  
「いや、強要するつもりはないが…ウィンリィが気にするのなら今日は止めておこう。  
こっちならば良いのだろう?」  
指を第一関節まで入れる。  
「んん…」  
特に痛そうでもないので根本まで入れてみたが、いける。もう一本増やす。  
「…ああん」  
中で指先を動かし、良さそうな場所と角度を探すがなんだがとても気持ちよさそうだ。  
適度に濡れているので、入れても大丈夫だろうな。  
サイドボードから男の嗜みを取り出して手早く装着完了。  
試しに先の方だけ入れてみるとちょっとだけ顔を顰めるのが見えた。  
先程の角度を思い出しながら調節する。  
「あああっ」  
よっしゃここだ!と一気に貫いた。  
「……………!」  
 
暫く彼女が落ち着くのを待つ。  
「…ロイさん、想像していたより痛くない…みたい」  
肩で息をしながらもOKを出してくれたので、ゆっくりと動き出す。  
だが彼女の表情は物足りなさそうだから遠慮無しに揺さぶり出し入れした。  
「はぁ…あ…あ…気持ちいい…です」  
トロンとした目で訴える顔は本当っぽい。処女でも痛みを感じない娘もいると  
聞いたが実際に目にしたのは初めてだ。  
「ウィンリィは、淫乱な子…だな」  
更に激しく動き、額の汗が頬を伝う。もう本当は余裕などないのだが、  
大人の余裕を見せたくて何でもないように笑ってみせる。  
「やん…こんなの知らなっ…あっもう、ダメ…」  
私と彼女の限界が迫っている。  
「う…っくっ…!」  
「………………!」  
同時に限界へと達した。  
 
 
「初めてだったのにあたしったらあんな…見ないで!」  
ベットに蹲って隠れているのは、先程妖艶な姿を披露してくれた彼女。  
あのまま気を失っていたのだが、目を覚ました途端恥ずかしがって  
顔を見せてくれない。  
困ったなと辺りを見回すと開いたままになっていたサイドボードの引き出しが  
目に留まった。中にはもう使うことのないジッポ。  
それを手に取り油性マジックペンで錬成陣を書いた。  
「ウィンリィ、確か怖くて自分の部屋で眠れないと言っていたな」  
急に話が変わったことに疑問を持った彼女はひょっこり顔を出した。  
単純だな。  
「そうだけど…だって自意識過剰かもしれないけど、  
いきなり襲われたらって考えたら怖くなっちゃって」  
「そんな時はこの『焔の錬金術師特製ジッポ』だ。持っているだけで変な輩は  
絶対に近づいてこない優れ物だぞ!」  
まぁ実際はただの落書きが入ったジッポだが、お守りとはそんなものだろう。  
錬成陣が正しく書かれていても使うのが、錬金術師でなければ意味はない。  
彼女にだって気休めだとわかっているだろうが手渡す。  
「えへへへ、嬉しいです。ありがとう、ロイさん」  
私はここを離れるわけにはいかないし、ウィンリィにだって仕事がある。  
ずっと一緒にはいられないのだ。  
「また手紙を書きますね」  
「もちろん、待っているとも」  
 
 
東方指令部  
「大佐、エドワード君とアルフォンス君が見えましたよ」  
「ああ、通してくれくれたまえ、ホークアイ中尉」  
今まで読んでいたウィンリィからの手紙を机に置き、私は客人を迎えるために席を立った。  
ガチャリとドアの取っ手を回す音が聞こえ、視線を向ければ勢いよく床をける鋼のが目に入る。  
あっという間に目前に迫り、眩い光と共にバチバチと右手の機械鎧を刃物へと錬成させ、  
それが空に半円を描いた。  
「兄さん!」  
遅れて入ってきたアルフォンス=エルリックが駆け寄ってくる。  
「なぜ避けない。大佐」  
足下には黒い紙が数本落ちている。  
私の横髪を一センチほど切った武器を元に戻しながら鋼のが睨み付ける。  
「君が本気で私を殺すつもりならば、今頃炭焼きにしていたが?」  
「けっ!よく言うぜ。反応出来なかっただけのくせに。…なぁあんた、  
俺の幼なじみのこと本気なのか?」  
悪態を付きながらもやっと本題に入ったらしい。  
軍の施設の中でするような話しでもないのだが、他に時間も取れないので  
ホークアイ中尉とアルフォンス=エルリックには席を外して貰い鋼のと二人だけになる。  
 
「ありがとう」  
深々と頭を下げる鋼のに少なからず驚きを覚える。  
「どうしたというのだ。鋼のが頭を下げるなど明日は雪か?」  
「人の感謝の気持ちくらい素直に受け取っておけよ。  
ウィンリィを元気付けたのはあんたなんだろ、大佐。この前田舎に戻ったら、  
俺に対していつも通りスパナ投げて来た。  
正直に言えば、俺はウィンリィに酷いことをしちまったからもう駄目だと思ってた。  
でもアイツが『これからも大切な幼なじみ』って言ってくれるから救われたんだ」  
「それは良かったな。で、彼女のことは諦めたのか?」  
「全然、今は大佐に負けてるかも知れないが、いずれはあんたより  
ずっと良い男になるからな。その時は吠え面かくなよ!」  
「その頃私はより良い男になっているのだがね」  
「よく言うぜ。じゃな、大佐」  
互いに掲げた手を叩き合った。鋼のは弟を待たせているドアを開ける。  
するとひょっこりとアルフォンス=エルリックが顔を出した。  
「マスタング大佐、もしウィンリィを泣かせたりしたら兄と ボ ク が黙っていませんからね。」  
弾んだ声で言われた台詞なのに何故か重たい。  
恐ろしい存在だアルフォンス=エルリック。  
 
騒がしい客が帰り、静かになった部屋の窓から遠くの空を眺める。  
ウィンリィは今頃どうしているのだろう。  
さて、彼女に手紙を書こうか。  
 
 
終わり  
 
 
 
余談  
鋼のがウィンリィを襲うきっかけは、ハボック少尉のいらない密告のせいらしい。  
ここはやはり残業地獄にご招待してやらねばな。  
「ハボック少尉、これを頼む」  
「はっへぇ〜?この紙の山っすかぁ。…はい(クスン)」  
哀愁の背中を見送りながら、そういえば鋼のに忠告したのは、  
自分の彼女が私にとられた経験からくるものだろうかと考え、ちょっとばかり反省する。  
「おい、その、お前の彼女のことは悪かったな」  
「は?いきなり何ですか。あんたが謝るなんて…頭沸きました?」  
「…ハボック少尉、一ヶ月間の便所掃除もしておけ」  
それから一ヶ月間は泣きながら残業と便所掃除に追われる少尉の姿があった。  
 
終わり  
 
 

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