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左手に違和感を覚え、俺はふと目が覚めた。
そちらの方に目をやると、俺の左腕を枕にしているウィンリィがいた。
・・・あぁ、そうだ。ほんの数時間前、俺たちは幼馴染としての一線を超えた。
別にどうとも思わなかった。・・・確かに気恥ずかしさはあったが、それ以上の感情は芽生えなかった。
たまたま東方司令部でロイの奴と中尉がよろしくやってるのをドア越しに聴いて、いつか俺もそうなるかと考えた。その時、真っ先にウィンリィの顔が思い浮かんだぐらいだ。相手はコイツしかいねぇと思った。
だから、ヤっちまったと言う気恥ずかしさ以外、特別に思うところは無い。
「う・・・ん」
俺が少し動いたせいか、ウィンリィのヤツも目を覚ました。・・・ったく、機械鎧の事を話してなければマジでカワいいぜ、コイツ。
ウィンリィは俺の方を見たかと思うと、茹でたエビの様に顔を真っ赤にして俯きやがった。恥ずかしいのはこっちも同じだっつーの。
「あのさ・・・本当に賢者の石っていう物探しに行くの?」
無理矢理そっちに話を持っていきやがって・・・その可愛さにグっと来たが、あんまりがっつくのもダセェんでそこは抑えた。
「あぁ、まぁな。やっぱこのカラダをどうにかしたいし、アルをいつまでもあのままにしとく訳にはいかねぇよ。」
俺はフリーになってる右腕で作った握りこぶしを見つめながら呟いた。
・・・コイツが俺の為に作ってくれたこの右腕。ソレを失うのはチと残念な気もするが。
「でもさ・・・ヤバい敵に狙われてるんでしょ?大丈夫なの・・・?」
ウィンリィは身を起こし、不安そうな顔で俺の上に乗っかった。
「まぁ・・・ヤバいのは百も承知。そう簡単に手に入れられるとは思わねぇさ。それに・・・」
右手の親指のひとさし指の間に僅かな隙間を作り、ソレをウィンリィの目の前に突きつけてやった。
「アイツらには・・・1mmも負ける気はしねぇさ。」
そう・・・これっぽっちも負ける気はない。師匠から授かった技と・・・そしてコイツがくれた右腕さえあれば。