「嫌です。絶対に嫌です。変態ですかあなたは」  
リザは断固として拒否の姿勢を示す。  
退勤後、一旦家に帰って私服に着替え、ハヤテ号にエサを与えてからロイと待ち合わせる。  
そしてレストランで食事をし、そのままロイの家に泊まりに来て今に至る。  
ここまでは、最近マンネリ化しつつあるといえなくもない、いつも通りのデートだった。  
そこでマンネリ化防止にと、デートの最後にロイが提案したのは、拘束プレイという変態的なセックス。  
到底リザには受け入れられない。  
「錬金術師は、常に新しい可能性を追い求める生き物だ。そこに可能性があれば、試してみたいと思うのが当然だろう」  
「ではあなたお一人で勝手にどうぞ。私は錬金術師ではありませんから」  
「錬金術師でなくても、人間誰しもたまには新しいことにチャレンジしてみたいと思うものではないかね」  
「私は思いません」  
「つれないな。ではこうしよう。等価交換だ」  
「等価交換?」  
「そう、錬金術の基本は等価交換だ。私は君を縛って拘束プレイという斬新なセックスを楽しむ。そしてその対価として君に、やみつきになるような最高のセックスを経験させてあげる」  
「・・・・。おっしゃっている意味がよく分からないのですが」  
「君はただ縛られて横になっていてくれさえすればいい。  
そうすればあとは私が、君を天国に連れて行ってあげる。  
痛くしない。激しくしすぎない。その他、君が嫌がるようなことや意地悪なことは一切しない。  
優しくするし、君の希望は何でも聞いてあげる。どうだ、対価として不足があるかね?」  
三十路一歩手前にしてこんなことを嬉々として提案するこの男に、リザは正直、頭が痛い。呆れて溜息をつく。  
「もう、勝手になさってください」  
これ以上この男と議論を続けても、それこそ何の対価も得られないまま、無駄に疲れるだけのように思えた。  
等価交換に納得したというより、リザはただ諦めた。  
 
ロイに促されて、リザは両手をそろえて前に出す。  
するとロイはハンカチを取り出して、リザの手首に巻き始めた。  
それを見て、リザは眉をひそめる。  
「それではすぐに外れてしまうのでは?」  
もっとしっかり縛ってください、などとは口が裂けても言いたくない。  
かといって中途半端な縛り方で拘束が途中で外れれば、勝手に外した、約束違反だ、などと難癖付けられて面倒なことになるかもしれない。  
しかしリザの心配をよそに、ロイは自分の首からネクタイを外しながら楽しげに笑う。  
「大丈夫だよ。上からこれで縛るからね。ハンカチは痕が残るのを防ぐためのただのクッション代わりさ」  
まったく周到なことだと、リザは呆れる。  
 
縛った後では脱げないからということで、リザはすでにショーツ一枚の姿だ。  
対するロイは上着を脱いでネクタイを外しただけの着衣のまま、手首を縛られたリザを見下ろしている。  
恥ずかしい。やっぱりこんな約束しなければ良かったかもしれないと、リザの中に早くも後悔が生まれ始める。  
「案ずるな。優しくすると言っただろう?」  
ロイが耳元で囁き、そして優しく抱きしめられる。顎に手を掛けられ、唇を奪われる。  
ロイの舌がリザの唇をなぞり、口内を丁寧に愛撫し、舌を絡める。うっとりするような優しいキスだった。  
やがて唇を解放すると、次にロイの舌は耳に向かった。  
耳を舐められると、その音はダイレクトに脳に伝わって、リザの思考力を低下させていく。  
ロイはリザをシーツの上に押し倒し、ネクタイの余っていた部分をベッドのポールに結びつけた。  
リザの両手は頭上に上げた状態で固定される。  
そしてロイは無防備に晒されたリザの胸に手を伸ばし、豊かなふくらみの柔らかな感触を手のひらで楽しむ。  
同時に脇から二の腕にかけての部分を舌で舐め上げてやると、くすぐったいのか、リザはイヤイヤをするように身を捩った。  
しかし万歳の格好で拘束されている彼女の脇はがら空きだ。  
ロイはそこにうっすらと浮かんでいる汗を丁寧に舐め取り、その匂いと味を楽しんだ。  
ロイは右手で、リザの左の乳房を優しく揉み続ける。  
そして右の胸元には紅い花を散らしながら、だんだんとその頂に近づいていく。  
しかし中心の尖りにはまだ触れず、その周りだけを執拗に舐める。  
それをしばらく続け、中心に触れて欲しいというリザの欲求を十分に高めておいてから、いきなりぱくりと口に含んだ。  
そして舌でなぶり、上下の唇で挟み、チュパチュパと音をたてて吸う。  
同時に反対の乳首も、親指と人差し指で挟んでコリコリと刺激してやる。  
リザはもはや、ロイから与えられる愛撫になす術もなく翻弄されていた。  
胸だけでこんなに気持ち良くなれるなんて、リザは今まで知らなかった。  
太もも好きのロイは普段、前戯の際にも胸よりも下半身への愛撫に時間をかける傾向がある。  
だからリザは、こんなふうに胸だけを長時間愛されるという経験は乏しかった。  
両手を拘束されて口を押さえることもできず、よがり声を漏らしてしまう。  
恥ずかしい。でも気持ちいい。もうおかしくなってしまいそうだった。  
そしてリザは初めて、胸だけでイクという経験をした。  
「どうだ、気持ちよかっただろう?」  
「あ、はい。すごく、良かったです」  
すでに思考が侵されているのか、普段なら恥ずかしがって言わないことをあっさりと口にした。  
それを聞いてロイはにんまりと口角を上げる。  
「そうか。だが本当に気持ちいいのはこれからだ」  
 
ロイはリザの下半身に手を伸ばし、ショーツの上から割れ目をなぞり始めた。  
リザはビクリと身を震わせ、足を閉じようとするがすでに遅い。  
ロイの足が間に入ってそれを阻止している。  
指先が軽く触れる程度の刺激を与えながら、割れ目に沿って指を往復させる。  
単調な弱い刺激だが、繰り返しているうちにリザの感度は高まってくる。  
その頃合いを見計らって、刺激するポイントを一点に絞る。  
女性の身体の中で最も敏感な部分。  
その小さな尖りを、ロイはショーツの上からでも的確に見つけ出し、指の腹で軽く押さえる。  
そして撫でて刺激してやると、ソレは硬く勃起し始め、やがてそのコリコリとした感触がロイの指先にはっきり感じられるようになってくる。  
ロイはその感触を楽しみながら、指の腹で撫で回したり、トントンと軽く叩いたり、二本の指で挟んだり、さまざまな方法で愛撫を加えた。  
弱い部分を集中的に、しかも絶え間なく責められて、リザはあっという間に登り詰めてしまう。  
ビクビクと震える足はロイに押さえつけられ、切羽詰った悲鳴のような声を上げながら、リザは達した。  
 
まだ入れてもいないどころか、直接触れられてすらいないのに、下着を着けたまま、布越しの愛撫だけで達してしまった。  
それはリザにとって、少なからずショックであった。  
しかし敏感すぎる突起に与えられる間接的な愛撫は、むしろ激しすぎない心地良い刺激となってリザを苛み、身体が宙に浮くような不思議な感覚と逃れようのない絶対的な快楽をリザに与えた。  
そしてそれはリザの身体を溶かし、思考を麻痺させ、あっという間に絶頂に導いた。  
あまりにも呆気なく達してしまった驚きと恥ずかしさに、リザはしばし呆然となる。  
その間にロイが勝手に、すでにぐっしょり濡れたショーツを脱がしにかかるが、頭が働かず身体も動かせないリザはされるがままだ。  
「大丈夫か、リザ?少し休むか?」  
「あ、いえ。大丈夫です。少しぼーっとしていただけで」  
ロイに声をかけられて、リザはようやく我に返る。  
「それならいいんだが。ところで、何かしてほしいことはあるかね?希望があれば何でも聞いてあげる約束だっただろう」  
「そうですね・・・。とりあえず、あなたも脱いで欲しいです。それから、キスしてください」  
「ああ、これは失敬。私だけこの格好というのは、いささか無粋だったな」  
ロイはシャツとスラックス、下着も勢い良く脱ぎ捨てた。  
そしてリザの唇に熱いキスを落とし、同時に縛られている彼女の手首に触れる。  
「これ、痛くない?」  
「痛くはないですが、少し鬱血してる感じがします。でもそれより、あなたに触れられないことのほうが辛いです」  
「なかなか嬉しいことを言ってくれるじゃないか。でもこれは外さないよ。そういう約束だろ?」  
ロイはリザを縛っているネクタイを指先でなぞりながら、ニヤニヤと笑っている。  
「分かってますよ」  
リザは拗ねたようにそっぽを向く。  
しかしすぐに顎を掴まれてロイの方を向かされ、再び唇を奪われる。  
 
「他にしてほしいことは?どんな風に抱かれたい?」  
リザは少し考えた後で答える。  
「特にありませんね。もう満足しました」  
「・・・。満足するのが早過ぎないか?」  
「そう言われましても、あなたはいつも私の意志など無視して強引になさるじゃありませんか。どうしたいかなんて聞かれると調子が狂います」  
「もしかして君、強引にされるほうが好みなのか?」  
「そんなことはありません!」  
「優しくされるほうがいい?」  
「当たり前です」  
「分かった。つまり君の要望をまとめると、優しく、でもちょっと強引にってことだな」  
「変なまとめ方をしないでください」  
「そう怒るな。悪いようにはしないよ。今夜は最高のセックスを経験させてやるって約束だろう?」  
ロイは不敵な笑みを浮かべて、リザの下半身のほうに移動する。  
そして彼女の足首を掴んで強引に広げると、その間に陣取った。  
すでに覆うもののないリザの秘所が、ロイの目の前に晒される。  
「いやっ。見ないでください」  
リザは足をばたつかせて抵抗するが、ほとんど効果はない。  
「大丈夫、悪いようにはしないと言っただろう。落ち着いて、身体の力を抜きなさい」  
足を開かされて恥ずかしい部分を間近で見られているという時点で、リザにとっては悪いようにされているも同然なのだが。  
しかし両手を頭上で縛られている上に、足の間に入り込まれてしまってはもう抵抗のしようもない。  
リザは諦めて暴れるのをやめ、きつく目を閉じて、視姦される羞恥に耐えた。  
 
ロイの手は下腹部を撫で、太ももを撫で、また下腹部に戻って金色の茂みに触れる。  
そして陰毛を指に絡めて遊んだ後、ロイの指はその下方に移動して、陰部の襞を左右にぐいっと押し広げた。  
中に隠れていた突起が剥き出しになる。  
ロイはそれに、ふっと息を吹きかけた。  
すでに散々弄られて過敏になっていた突起は、たったそれだけでもまるで電撃が走ったかのように感じてしまう。  
「ひゃうっ!?」  
「ははっ。敏感だな。息だけでそんなに感じるかね」  
「最低っ。優しくするって言ったくせに」  
「優しくしているつもりだが、お気に召さなかったかね。では、これはどうだ」  
ロイはリザの秘所に顔を埋めた。溢れている愛液を舐め取る。さらに舌を伸ばして内側まで舐め尽くす。  
口を付け、ジュルジュルと音をたてて吸う。リザはあえぎ声混じりに拒絶の言葉を発している。  
潔癖な彼女にとっては、クンニリングスは受け入れ難い行為なのだろう。  
しかし身体は喜んでいる。いくら舐めとっても溢れ出る愛液は尽きない。  
 
舌で秘所を嬲りながら、手を伸ばして乳房も揉んでやる。  
もはやリザは意味のある言葉を発する余裕もなく、ただ咽び泣くだけだ。  
秘所を一通り舌で蹂躙してから、口を離して今度は指を入れる。  
一気に二本入れて奥を突き、中をかき回してやると、リザは歓喜の悲鳴をあげる。  
胸や外性器ばかりを執拗に愛撫されていたせいで、リザの内部はすでに激しく疼いて挿入を待ちわびていたのだ。  
ようやく与えられたロイの長く骨ばった指を、リザの内部はきつく締め付け、さらに深く飲み込もうとするかのようにヒクヒクと蠢いている。  
しかしロイは中の状態を確認しただけですぐに指を引き抜く。  
そして急いで避妊具を装着すると、ロイ自身でリザの中を満たしてやった。  
 
熱い塊で貫かれ内部を押し広げられる感覚に、リザは悲鳴をあげる。  
手首を拘束するネクタイが結び付けられているベッドのパイプも、彼女が暴れるたびにギイギイと音を立てる。  
その扇情的な光景に、ロイはサディスティックな満足感を味わっていた。  
愛する女をベッドに縛りつけ、支配する。  
彼女は目に涙を浮かべ、唯一動かせる頭を振って金の髪を乱している。  
もっと鳴かせたい。滅茶苦茶に犯したい。そんな欲求が湧き上がってくる。  
しかし今日は優しくする約束だと、なけなしの理性をかき集めて己の欲望を必死に抑え、ロイは慎重に動き始める。  
自身の先端を彼女の中の感じる部分に押し当て、そのまま小刻みに動く。  
突くのではなく、軽く振動を与えるようにすることで、甘い痺れのような感覚が生まれる。  
自制を要求されるロイにとってはやや辛いが、リザにとっては激しすぎない心地良い刺激となっているはずだ。  
珍しく彼女のほうから足を絡めて求めてくることからも、かなり良くなっていることが窺える。  
「ううんっ、んあっ、ロイっ、ロイっ」  
「どうした、もうイキそうか」  
「ちがっ・・・。これ、とってぇ・・・」  
「ダメだよリザ。約束はちゃんと、守らなくちゃね」  
約束違反の要求をしてくる彼女に、お仕置きだといわんばかりに、弱い部分を狙って擦りつけてやった。  
同時に、乱れて彼女の顔にかかっている髪を手で払い、顔を覗きこむ。  
普段のリザは手で口を押さえたり顔を隠したりしてしまうため、こんなふうに感じまくっているリザの顔をじっくりと見られる機会は少ないのだ。  
拘束を外して顔を隠すことを許すつもりなどない。  
「でもっ・・・、ロイに触りたいっ。あなたを感じて、イキたいのっ」  
目に涙を浮かべてそんなことを言われれば、つい聞き入れてあげたくなる。  
だが簡単な約束一つ守れないようでは、この国の軍人は務まらない。  
ましてや彼女は、国軍大佐の副官という重要な地位にあるのだ。  
ここは上官として、部下をきちんとしつけてやらねばならんだろう。  
「約束は約束だ。このままイキなさい」  
腰の動きを徐々に速めてスパートをかけながら、ロイは身体の位置を低くし、ほとんど彼女の上に寝そべるようにしてリザにのしかかった。  
縛った手を解放してやるつもりはないが、ロイを感じたいというリザのリクエストに応え、できるだけ全身を密着させて抱きしめてやる。  
リザの乳房は二人の身体の間で押しつぶされ、ロイが腰を突き上げるたびに、ロイの胸に押し付けられてぐにぐにと形を変える。  
ロイはその柔らかな感触を楽しみながら、リザの顎を掴んで強引に唇を重ねる。  
するとリザは「んー、んー」と苦しそうに鼻声で呻く。  
口を塞がれて息が苦しいのか、それとものしかかられて重いのか、  
あるいはロイの猛りに中を掻き回される快楽に鳴いているのか。もはや分からない。  
そうしてロイはリザの動きも声も完全に封じ、彼女を支配する喜びに浸る。  
そしてさらに激しく突き上げれば、リザの内部はヒクヒクと痙攣するように蠢き、ロイをきつく締め付けながら果てた。  
直後、ロイも精を吐き出す。  
 
激しい絶頂に疲れたのか、リザはぐったりして動かない。  
その間にロイは使用済みの避妊具を手早く処理し、それからリザの腕の拘束を外してやった。  
「たいさぁ・・・」  
腕が自由になった途端に、リザは甘えるようにロイに抱きついた。  
そんな子どもっぽい仕草が可愛くて、ロイはリザの頭をよしよしと撫でてやる。  
「どうした、辛かったか?」  
「うーん。辛いのと、気持ちいいのと、両方です」  
「そうか、気持ちよかったか。こういうセックスも、たまにはいいものだろう?」  
「縛られるのはもう嫌です。でも・・・、○※△%×・・・」  
半分眠りかけているリザは、もはや発音も怪しい。  
軽く揺すって起こし、聞き取れなかった部分を聞き返す。  
「何?でも何だって?」  
「でも、優しくされるのは、すごく気持ち良かったです。いつもあんなふうに抱いてくれれるなら、セックスの回数を増やしてもいいと思うぐらい」  
百戦錬磨のロイにとっても、それは予想以上の嬉しい言葉だった。  
「それなら毎晩でもしてやろう」  
嬉しくて、リザを抱きしめる腕にもつい力が入る。  
しかしリザは、迷惑そうにロイの腕から逃れようとする。  
「もう、寝かせて・・・」  
そしてそのまま、小さな寝息を立て始めた。  
「おい、リザ?おーい、まだ寝ないでくれ」  
耳元で呼んだり、頬を軽く叩いたりしてみるが、すでに深く寝入ってしまっているらしく反応がない。  
しかしロイは股間のものは、まだ元気を持て余している。  
リザを満足させることにばかり気を遣っていたため、ロイ自身の欲望は処理しきれていないのだ。  
しかし疲れて眠っているリザを起こすのは可哀想だし、かといって一人で処理するのは虚しすぎる。  
仕方なく、ロイは昂ぶりをなだめて眠りに就こうと努める。  
そして明日の朝リザが目覚めたら問答無用で銜えさせてやる、と心に決めた。  
 
 

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