シン国皇帝リン・ヤオは先日十九歳の誕生日を迎えた。
そしてその日を機に、リンの正妻及びシン国の女帝選びが始まった。
「私がリン様の正妻になるべきよ。」
「年増は下がりなさいよ!一番若くて美しいのはこの私だわ。」
「誰が年増ですって?!糞ガキは引っ込んでなさいよ!」
「クスクス。さすが成金上がりは育ちの悪さが目立ちますこと。汚い罵り合いはよそでやっていただけません?」
「「何ですって?!」」
連日、各地からうら若き乙女達が宮廷へとやって来ていた。
待合室で我こそはと火花を散らす美女達は、今や般若のような形相へと変わり果てている。
リンの正妻になれば、富やら名声やら欲しいものが何でも手に入る。
女達は死に物狂いでリンの心を射止めようと必死だ。
「ランファン、腹減った…。」
「もう少し我慢を。次で本日のお見合いはお終いです。」
最後の娘とのお見合いを終わらせ、リンはフラフラと自室へと戻った。
ここのところ休みなく仕事をしているため、さすがのリンも体力の限界のようだ。
腹を空かしたリンのため、お茶と軽食を用意し、ランファンはリンの待つ部屋へと足を運ぶ。
「失礼します。リン様、お茶の準備をしてまいりました。」
「おー、うまそうな肉饅頭♪」
先程までの険しい表情は嘘のようにフニャッと柔らかな笑顔へと変わる。
ハフハフと美味しそうに肉饅頭を頬張るリンに、ランファンは仮面の奥で微笑んだ。
「うまいぞ。ランファンも食べなさい。」
「いえ、私は…」
「一人で食べるより二人で食べた方がうまい。ほら。」
ランファンは仮面を外すと、恥ずかしそうに差し出された肉饅頭を頬張った。
「うまいだろ?」
「…はい。」
旅から帰って、三年の月日が経った。
リンは十八の若さでシン国皇帝となった。
ランファンよりも有能な人材など沢山いるだろうに、リンは今でもランファンを護衛として側に置いた。
リンはランファンに絶大なる信頼を置いていた。
そしてランファンもリンを心から慕い、生涯かけてお守りすると心に決めていた。
二人には特別な絆があった。
「はあ、明日も見合いか。なあ、ランファン。こんなこと、いつまで続けるんだろうな?」
「それは…リン様が気に入った女性を見つけるまでです。」
本当は、ランファンはリンのお見合いをよく思ってはいない。
だがリンは皇帝で、後継者を作らねばならない。
必死にランファンは感情を押し殺した。
このもやもやした気持ちが恋心ではないことをランファンは願った。
護衛が皇帝に恋だの、そんなことあってはならないのだ。
「みんな同じような顔をした女ばっかりだ。貴族の娘は自己顕示欲が強くて好かない。」
リンは嘆息をしながら窓の外を眺めた。
その横顔はとても切なそうで、ランファンの胸が締め付けられる。
ランファンは常にリンの幸せを願っている。
ヤオ家の繁栄こそがリンの幸せだと思っている。
美しくて地位ある女性と結ばれることがリンの幸せだと思っている。
いや、そう言い聞かせていた。
「…リン様、好きな人がおられるのですか?」
ふいに口から出た言葉に、ランファンは驚いた。
(私はなんてことを聞いているんだ!)
顔を真っ赤にしながら口を塞ぐも、時すでに遅し。
リンはきょとんとした表情でランファンを見やる。
しばらくするといつもの優しい表情で笑いだした。
「ハハッ。そんなこと考えたことも無かった。」
「しっ、失礼なこと聞いてしまいすみません…」
ランファンは恥ずかしさで俯いていると、突然腕を引っ張られた。
見上げれば悪戯な笑みを浮かべる主君の顔。
そして温かいぬくもりがランファンの身体を包み込む。
今のランファンの状況は、リンに抱き締められている形になる。
ランファンはいまだ状況が掴めていない。
「俺は、ランファンが好きだよ。」
「!!!!」
耳元で囁かれた言葉にランファンの頬がボッと真っ赤に染まる。
そんな反応がおかしいのか、リンはクスクス笑いながらランファンの肩に顔を埋めた。
こんなこといけないと頭の中で分かっていても、ランファンの身体は徐々に熱を帯びた。
ちゅっと首筋に口付けられてランファンはビクンッと震えた。
「ランファンは…俺のこと好き?」
耳元で囁かれる優しくも甘い声。
「すっ、すすす好きだなんて滅相もございません!」
「…じゃっ、嫌い?」
「そっ、そんなことはっ!尊敬してますっ!」
「答えになってない。好きか嫌いかで答えなさい。」
「……っ!」
「ラーンファン?」
ここまで尋問されたら答えないわけにはいかない。
リンの瞳は真剣そのもの、ごまかしはきかない。
意を決してランファンは口を開いた。
「す、好きです…」
消え入るような小さな声で、ついに本音を零した。
反応の無いリン…ランファンは恐る恐る顔を上げた。
途端、口唇に柔らかい感触。
(せせせ接吻?!)
ランファンの頭はパニックだ。
口唇が離れるとリンは満面の笑顔でランファンの熱い頬を撫でた。
「すっごく嬉しい。なぁ、ランファンを抱きたい。嫌か?」
「っっっ?!」
夢でも見ているのだろうか?ランファンは目をパチクリさせて目の前の主君の顔を見た。
いつもと変わらぬ優しい笑顔、でもどこか色っぽい眼差し。
放心状態のランファンの口唇にまた柔らかい感触。
今度は口唇の隙間からリンの熱くて柔らかい舌が侵入してきて、ランファンは思わず身体を強ばらせた。
大好きな人との熱い接吻に、ランファンの思考が麻痺していく。
くちゅくちゅと音を立てながら、リンはランファンの口内を舌で犯していった。
「はっ…。」
ようやく激しい口付けから解放され、ランファンはくたりとベッドへ横たわった。
そして、その上にのしかかるリン。
「俺に抱かれるの、嫌?」
リンの甘い声が、熱い視線が、無条件にランファンの理性を壊していく。
真っ赤になりながらフルフルと顔を横に振る。
「嫌…じゃないです。」
「素直でよろしい。」
リンはクスクス笑いながらランファンの衣服に手を伸ばす。
固くてゴツゴツした武具が外され、剥かれていくランファン。
「はっ…恥ずかしい…」
ランファンは羞恥のあまり顔を横に背けた。
そんな初々しい反応に、リンの欲情はふつふつと沸き上がるばかり。
「ランファン、可愛いよ。」
耳元でそんなこと囁かれ、ランファンの頭はショート寸前だ。
気付けばサラシ姿にされていた。
戦において胸は邪魔なもの…邪魔というほど大きくはないが、敵に女とバレるのを防ぐために常時欠かせない。
するするとサラシを解いていくと、長時間圧迫されていた小ぶりな乳房がふるんと解放された。
漆黒の武具の下に隠されていた真っ白な素肌は眩しく、ツンと尖った突起は愛らしい桃色。
「あっ…だ、だめですっ…!」
視線に耐えきれずランファンは思わずシーツで身体を隠した。
「何で隠す?」
「そ、それは…」
戦でついた傷跡、そして失った左腕…とても綺麗だなんて言い難い自身の身体。
それに比べてリンのお見合い相手達は皆、傷一つない美しい身体をしているだろう。
ランファンはぐっと自分の唇を噛み締めた。
「リン様。皇帝であろう御方が、私のようなみすぼらしい女と関係を持ってはあなたの質を下げかねます。」
黒い瞳は少し潤みを帯びていた。
リンは静かにシーツを剥ぎ取る。
きめ細やかな白い肌に無数の傷跡、それを一つ一つ指で辿っていく。
「あっ…んっ…?」
くすぐったいような気持ちいいような感覚にランファンは思わず甘い声を上げた。
「これは俺を守ってくれた証。これも、これも…」
傷跡の数は、リンを危険から守った数。
生々しい傷跡の数に、ランファンへの愛しさが込み上げてくる。
「ふあっ…!」
指先が桃色の突起に触れると、ランファンの身体にビリッと刺激が走った。
「お前はみすぼらしくなんかない。ほら、こんなにも俺を欲情させている。」
「あっ…」
もっこりと大きく膨らんだリンの下半身に、カアッとランファンの身体が熱くなる。
「お前は俺だけの臣下で、俺だけの女だ…」
「リンさ、ま…ああっ…!」
コリコリと固く尖った突起をちゅうっと吸われると、ランファンは快感に身体をくねらせた。
「もっと鳴いて…」
「ああっ…あっ…!!」
見たことのない表情、聞いたことの無い声にリンの興奮は増すばかり。
「もっともっと淫らなお前を見たい…!」
するすると下の衣服も全て剥ぎ取り、ランファンは全裸を晒すこととなった。
仮面を外しただけでも恥ずかしい彼女にとって、この状況は拷問だ。
「だ、だめですっ…!」
「だめ?こんなに濡れてるのに?」
「あああっ…!」
リンの指先がランファンのアソコに触れる。
ピチャピチャとした水音が、溢れている愛液の多さを物語る。
「リン様?!だだだだめです!そんなとこ口にしては…ひああっ!らめぇっ!」
リンはランファンの股間に顔を埋め、ペロペロと割れ目を舐めだした。
「あっ…ああっ…!」
広い室内にはランファンの喘ぎ声と淫らな水音だけが響いた。
ぷっくりと膨らんだクリトリスをリンは執拗に舌で擦る。
「あふぅっ…そこはっ…はあぁっ…!!」
「ここ、気持ちいいだろ?」
リンはランファンの様子にクスッと笑いながら、クリトリスを刺激する。
(リン様が私のアソコを舐めてる…)
視線を下にすると自分の股間に顔を埋める主君の姿。
羞恥心と背徳感が更にランファンの興奮を高めた。
「舐めても舐めても出てくるな…」
「リンさ、まっ…ひんっ…あっ…だめっっ…!!」
「…ランファン、イきなさい。」
「ふあああっ!!」
しばらくすると、ランファンはビクビクと痙攣しイッてしまった。
朦朧とする意識の中、下半身を露にしたリンが目の前に立ちはだかる。
初めて見る男の人の陰茎にランファンはゴクリと唾を飲んだ。
(あああれが今から私の中に…)
そそり立った赤黒い陰茎をじっと見つめるランファン。
「ん?」
不安げな表情を浮かべるランファンの頭をリンは優しく撫であげた。
「そっか、ランファン初めてだよな?痛いかもしれないけど、大丈夫か?」
こんな時でも臣下を気遣うバカ親切なリンに、ランファンは益々愛しさを感じた。
いつだって仲間思いで、皇帝になっても変わらない優しさ。
ランファンは羞恥も身分も忘れて、ただ一つになりたいと思った。
「リン様…」
ランファンの上気した頬、潤んだ黒い瞳にリンの欲情が刺激される。
「ラン、ファン…?」
「一つに、なりたいです…」
「うん、俺も…」
ランファンは足を左右に開かれ、クパアと陰部を広げられた。
ソコはトロトロといやらしい蜜を垂らしながらひくついている。
赤黒いリンの陰茎は我慢汁がポタポタと滴り落ちていた。
余裕など、最初から無い。
「力、抜けよ?」
優しい声に、視線に、ランファンはそれだけで感じてしまう。
「はああっ…!リ、ンさまぁ!!」
ズプズプと固い棒が狭い膣の中に容赦無く侵入していく。
プツンと何か切れる音…どうやら処女膜が破れたようだ。
「…っ…痛くない、か?」
「…ふああっ…だいじょ、ぶですっ…好きに動いて、くださいっ…」
張り裂けるような痛みに眉をひそめるランファン。
だが、この痛みこそ一つになっている証。
苦痛よりも嬉しさが勝っていた。
ズッ…プッ…
「きつっ…!」
陰茎が奥まで入ると、キュウウッと膣が収縮して中々動かすことが出来ない。
入れただけでイッてしまいそうな己の欲望を抑えながら、リンはゆっくりと腰を動かした。
「あっ…ああっ…」
弱々しいランファンの甘い喘ぎを聞きながら、ゆっくりと上下に腰を振る。
ジュプジュプと接合部からは卑猥な音が鳴る。
与えられる初めての快楽にランファンは今にも卒倒しそうであった。
リンも同じく自身を保つのに必死であった。
陰茎をきゅうきゅう締め付けられ、いつでもイかされてしまいそうだ。
ズシュッ…ヌプッ…ズシュッ…ヌプッ…!!
「ひああっ!リンさ、まぁ!あふうっ!!」
「ランファンの中、きもちいっ…!」
リンは膣の最奥をゴリゴリと掻き混ぜながら貫いた。
またランファンの膣もきゅうきゅうと陰茎を締め付けあげる。
無意識にリンの背中に絡み付くランファンの足。
もっともっとと、ランファンはリンにせがんだ。
「あっ…ふっ…!」
「ランファ、ン…もっ、で、出るっ!」
「出して…くだ、さ、いっ!」
リンのピストン運動が加速する。
ズシュズシュと何度も奥を打ち付けられ、ランファンも限界間際だ。
「くううっ…イ、イクぞ!」
ビクビクッ…ドピュッドピュッドピュツ!!
「ふあああっ!!」
ランファンの子宮目がけて勢い良く発射された精液。
チュルンと陰茎を抜くと、白濁色の精液と破れた処女膜の鮮血が混じったピンク色の液体がどろっと流れ出た。
ついに一線を越えてしまった二人…しかし、今の二人には罪悪感よりも幸せな気持ちでいっぱいだ。
くたりと力なく横たわるランファンを優しく見守るリン。
「リンさ、ま?」
「疲れただろう?しばらく寝ていなさい。」
「だめ、です…」
「命令だ。そんなヘロヘロじゃ俺を守れないだろ?」
「それではリン様も寝てください。皇帝なるもの身体が資本ですから。」
「ハハッ…じゃあ、一緒に寝ようか?」
「…はい。」
先に眠りについたのはリンだった。
ただでさえ過密スケジュールに加え、連日のお見合いで十分な睡眠はとれていない。
すうすうと眠る主君の寝顔は皇帝であれど、まだあどけなさ残る少年だ。
「肉饅頭うまい…むにゃむにゃ…」
リンの寝言に思わずランファンは吹き出した。
「ラン、ファン…」
「?」
「ずっと、俺の傍にいてくれよ…」
「……」
頬を伝う温かい涙、それは悲しみではなく嬉し泣き。
ランファンは声を震わせながら「はい。」とだけ答えた。
リンはふっと微笑み、またすうすうと寝息をたてて深い眠りについた。
終