「おーい、マスタング。大丈夫か〜?」
ヒューズが目の下に大きなクマを作り、今にも倒れそうなロイに声をかける。
「お前はこれが大丈夫に見えるのか?
くそっ・・・何故今月はこんなに仕事が立てこんでるんだ・・・」
ロイは充血した目を必死に開かせながら、書類を書き続けている。
「おい、ほどほどにしておいた方がいいんじゃないのか?
お前の顔色、本当にヤバイって・・・」
ヒューズがそう言うと、ロイが血走った目で睨んだ。
ヒューズは慌ててロイから目をそらす。
「はは・・・まあお前は軍の女性全員をミニスカにするんだもんな(笑)
これぐらい屁でもねーよな」
ヒューズが冗談を言うが、ロイは全く反応しなかった。
書類のみを見つめて、カリカリと文章を書き続けている。
「(こりゃ退散した方が良さそうだな・・・・)」
そう思い、ヒューズが部屋を出て行こうとした瞬間。
バン!!と机を叩く音が部屋中に響いた。
「そうだ、ミニスカだよ」
ロイは立ちあがり、そう一言呟いた。
「はあ?」
ヒューズが?の表情でロイを見つめた。
「ははは・・・そうだ、そうだ・・・ミニスカなんだよ」
ロイは目を見開いて、その言葉だけを呟き続けた。
さすがにおかしいと思ったのか、ヒューズがロイに近づいて声をかける。
「お、おい・・・マスタング。・・・どうした?」
しかしロイはヒューズの方をチラリとも見ようとしない。
「ミ」
「み?」
「ミニスカなんだあぁぁぁぁっ!!」
ロイはそう言うと、部屋の片隅にあった箱を蹴飛ばした。
中からはミニスカの軍服がおよそ30着出てきた。
「げぇーっ!な、なんだこりゃあ?」
ヒューズが驚いていると、ロイはそのミニスカ軍服を持てるだけ腋に抱えた。
「お、おい・・・まさかそのミニスカを・・・」
「着せるに決まってるだろう!無理矢理にでもっ!!はははあはは・・・」
ロイはそう言うと、ドアを蹴飛ばして行ってしまった。
「や・・・やめれーっ!?」
この事態に混乱しながらも、ヒューズは大急ぎでロイの後を追うのだった・・・。
「ははは・・・ははは・・・はーはははは・・・!!」
ロイは血走った目をギラつかせながら、東方司令部の廊下を走り回った。
その後ろをヒューズが懸命に追いかける。
「うわ・・・ありゃ完全にプッツンしちまってるな。
だから少しは休めって言ったのに・・・世話の焼ける上司だぜ・・・全く」
丁度、ロイとヒューズが走っている廊下の反対側からハボックが歩いてきた。
「おーい、ハボック!大佐を止めてやってくれー。
仕事のし過ぎでプッツンしちまってるんだよーっ!」
ヒューズがぜえぜえ走りながら遠くにいるハボックに叫んだ。
「あーん?ったく・・・何してんだよ大佐は・・・よっ!!」
ハボックがロイに飛びかかる。
そのままロイとハボックは床に倒れ込み、ミニスカ軍服が床に散乱した。
「よーし!でかしたハボック!今行くからなー」
ヒューズが二人の元へ駆け寄る瞬間だった。
「・・・ハボック、貴様は・・・私の偉大な野望の邪魔をするのか」
「へ?あ、い、いや・・・大佐?」
ロイの目つきは人殺しの目つきに変わっており、
発火布をつけた右手は指を鳴らす形へと変わっていた。
「死ね」
「い、いやーッ!!」
ボン。と爆発が起こり、ヒューズが煙の中で見たものは、
黒コゲのハボックといくつかのミニスカ軍服を抱えて逃げるロイの姿だった。
「・・・あいつも色々ストレス溜めてるんだなぁ・・・」
少々ウンザリしながらも、ヒューズはロイの後を追いかけた。
「ところであいつ・・・何処へ向かってるんだ・・・?」
ヒューズは走りながら、東方司令部の見取り図を頭に思い浮かべた。
「あそこで左・・・ここで下り階段・・・んで右・・・まさか」
ロイが廊下の突き当たりまでラストダッシュをかける。
「や、やめろーっ!マスタングーッ!そんな事をしたら・・・お前はーっ!」
そしてロイは突き当たりのドアを蹴破った。
「あ・・・キャアァーッ!!」
複数の女性の悲鳴が響き渡る。
そう、ここは女性用更衣室なのだ。
「社会的地位が・・・全部・・・・・遅かったか・・・・」
ヒューズが廊下にへたれ込んだ。
「いくら大佐でも覗きなんてやり過ぎです!早く出ていって下さいっ!」
何人もの女性が叫び、手に取れる物をロイに投げつけた。
しかしロイは微動だにもしなかった。
「君達っ!これを見たまえっ!!」
ロイは持っていたミニスカを天に掲げた。
「君達はこれからこのミニスカを履いて仕事をするのだ!
どうだ、嬉しいだろう?はははははは・・・・」
ロイは高らかにミニスカを掲げ、そして笑い続けた。
「ふざけないで下さいっ!大佐、早く出ていって下さい!!」
もちろん女性達の叫びは続いている。
すると突然ロイは更衣室にある軍服のズボンをかき集めだした。
「あーもう、マスタング・・・もうやめろってーっ!」
ヒューズがロイを止めようとして更衣室に飛び込む。
しかし案の定、女性達に袋叩きに遭い、
部屋の外にボロ雑巾のように蹴り飛ばされた。
「ま・・・すたんぐ・・・・や・・・め・・・ろ・・・」
だが、ヒューズの願いは届かなかった。
「こんなモノが・・・こんなモノがあるから・・・いけないのだ!」
ロイの指がパチンと鳴る。
次の瞬間、集められたズボンは全て焼き払われてしまった。
「はーっはっはっはっ・・・これで君達はミニスカを履かざるを得なくなったぞ!
さあ履け!今すぐに履くのだ!履けえぇぇぇ!!」
ロイが血眼になって叫んだ。
一部の女性には泣き出す者もいたが、どうやら全員が履く気になったようだった。
「とうとう・・・とうとう・・・・私の野望が叶った!!
はははははははははははははははははははははは・・・・・・」
「そう、それは良かったですね、大佐」
ロイの後頭部に鉄の塊がくっつく。それは銃だ。
その瞬間、ロイはふと我に返る。
「ははは・・・はっ・・・む?私は一体何を・・・ああっ!?」
ロイの目の前には泣きながらミニスカを履く女性達。
そして横にはボロ雑巾のようになったヒューズ。
そして後ろの銃を構える人物はリザであった。
「あ、これは・・・ど、どういう状況かね・・・ホークアイ中尉?」
ロイが恐る恐るリザに尋ねた。
リザが「はぁ・・・」とため息をつき答える。
「器物破損、婦女暴行、その他もろもろ・・・。
無能、無能とは言ってきたけど・・・ここまで無能とは・・・」
リザがそう言いきるとロイの両腕には縄が巻かれ、
そのまま警察に両脇を抱えられ、連れて行かれた。
「う・・嘘だ・・・私が・・・こんな・・・・。
大総統になる私が・・・こんな事で・・・う・・うあああああぁぁぁぁ・・・」
完
「ってな感じの話を書いてきたんだよ、どーだ?面白いだろ?」
エドがロイに尋ねる。
「つまらん」
ロイはそう一言呟くと、エドが話を書いた紙を燃やして灰にした。
「あー!てめーっ!燃やす事無いだろうがよー」
「ま、まあまあ兄さん。この話はいくらなんでも酷いと僕も思うよ・・・?」
怒るエドをアルがなだめる。
「ったく、こんな馬鹿な話よく思いつくよ」
ヒューズが呟く。それに同調してハボックも呟く。
「同意っすよ。俺なんか黒コゲになって終わりっすもんね・・・。
大佐もそう思いませんか?」
「あ、ああ。(・・・しかしエドワードめ、何故私があの箱にミニスカを隠している事を知っているのだ?)」
おわり