その日の朝早く、兄さんは少し切ないような顔をしてそそくさと部屋を出た。僕がその意味を知るまで、そう長く時間はかからなかった。
兄さんはいつも自分の事は二の次。そんな兄さんにも、自分の為に使う時間が必要だ。
「兄さん、ちょっと出て来るね」
思えば、あの頃からだ。
アルがしばしば理由を付けては出掛けるようになったのは。
そんな時に俺のすることと言ったら…。
アルには悪いが、俺だって男の肉体を持つ身。人知れず一人、耽りたい事もある。
アルはきっと知っている。だからこそ、申し訳なくもあるのだが。
一時の劣情に身を委ねた後、決まって感じるのはそんな何とも言えない気持ちだった。
あの色ボケブロッシュ軍曹は、「賢者タイム」なんて呼称を使っていたが、そんなもので<賢者>を手に入れられるというなら、と一人苦笑い。
さぁ、アルを探しに行こう。