庭園に面している大窓が小さく二つ鳴った。  
こくんと息を呑んで、メイは寝台から立ち上がる。  
緊張しすぎて、普通に息をするだけで胸が痛い。  
音がしないようにそっと開けると、月光にアルフォンスの金色の髪が淡く輝いていた。  
「入って、いい?」  
「…はい」  
そのまま二人で並んで寝台に腰掛けて、続ける会話が見つからないままメイはうつむいた。  
「錬丹術を教えて欲しい」とシンにやってきた彼に再会してから、  
一緒に書物を読み術を使い練習して議論しているうちにいつのまにか想いは通じ合っていて。  
誰もいない書庫の奥や庭園の木陰、時にはどっちかの部屋の中で気持ちが高まるままに唇なら何度も重ねたけれど。  
そこから先は…まだ、で、  
「明日、僕の誕生日なんだ」  
「おめでとうございます! 贈り物、何がいいですか」  
「…メイがいいな」  
…なんていう昼間のやりとりを思い返すと今更ながら恥ずかしくてたまらなくて、  
思わず手足をじたばたしたくなるのをこらえるためにひざの上でぎゅっと両手を握りしめる。  
緊張して、言葉が出てこないのはアルフォンスも同じだった。  
初めて見る白い夜着姿のせいか、いつもお団子に結っている黒髪をほどいて長く垂らしているせいか  
うつむいている横顔がはっとするほど大人びて見える。  
沈黙にいたたまれなくなり、腕を伸ばしてメイの肩を抱いた。  
体をひねって顔を寄せ、口づける。  
一度離れた彼の唇がすぐにまた重なってくる。今までにないほど深く…舌が、入ってくる。  
そういう口づけがあることは知識として知っているけど、  
それがこんなに熱く存在感のあるものだとは思っていなくて、  
メイはすがるようにアルフォンスの腕をつかんだ。  
上あごの内側を舌先でなぞられるとくすぐったいような感じがして、背筋がぞくぞくする。  
多分嫌がられてはいないかな、このまま先に進んでも大丈夫そうかな、と判断して  
アルフォンスは一旦唇を離した。  
予備知識を総動員して、ぎゅっと抱きしめながらしっとりした髪をかきあげて耳の後ろにキスしてみる。  
 
メイの体が小さく震えた。  
「そこ、くすぐったいからだめです」  
胸に顔を埋めたまま、くすくすと笑っている。  
やっぱり本で読むみたいにはうまくいかないもんだよね、と苦笑して次の手順に進むことにした。  
メイの服の合わせを器用に開き中に右手を潜り込ませる。  
「きゃっ」  
メイが小さく悲鳴をあげて首をすくめた。  
「手、冷たいです」  
「ずっと触ってたら同じ温度になるから大丈夫」  
強張っている背中を左手でよしよしと撫でながら腹部に当てた右手のひらをゆっくり上に滑らせる。  
触れた、胸のふくらみをそっと掬い上げるようにつかんで、指を動かす。  
メイは熱くなるほおを隠すようにアルフォンスの胸に顔を埋めた。  
戯れに自分の手でさわってみたこともあるけど、その時とはまったく違う固い手のひらと強く動く指の感触。  
左胸から耳の奥に直接心臓が脈打つ音が高く響いてきて息が苦しい…  
「痛っ」  
もみしだかれる場所から不意に走った痛みにメイの肩がびくんと動いた。  
「ご、ごめん」  
手のひらいっぱいに感じるやわらかさについ夢中になって力をいれすぎたことに反省しながら  
アルフォンスは一度慎重に指を動かす。  
「このくらい…なら大丈夫?」  
後頭部がこくんとうなずく動きをしたのを確認して、もうしばらくその幸せな感触を楽しむことにする。  
しばらくして、彼の手がすっと服の中から出て行った。  
ほっと息をつくメイの体をゆっくり押して寝台に倒して、襟元に手をかけて広げる。  
ひやりとした空気が肌に触れて。  
「やだっ」  
メイは我に返り、アルフォンスの手から襟元を取り返した。ぎゅっと両手で押さえる。  
やっちゃった、と思うもののもう遅い。  
彼に困ったような表情をされると、こっちも困る…  
思い返せば、アルフォンスの周りにいたアメストリスの女性陣はみんな素晴らしいスタイルの持ち主ばかりだった。  
特に胸。  
離れていた数年間で自分だってちゃんと成長したけど、どう自分びいきに考えてもあれほどの大きさじゃないし。  
それに。  
「…見なきゃだめ、ですか?」  
素肌を見せたくない理由はもうひとつある。  
祈るような思いでおそるおそる聞き返したメイに、アルフォンスはきっぱりと答えた。  
「見たいな」  
 
周囲に怪しまれないよう、照明はいつものように壁の燭台と枕元の小机の上のランプだけにしている。あと月光。  
だから部屋の中は薄暗いからあまりよく見えないだろうからまだいいけれど、  
でも…恥ずかしいし見られたくはないけど、でも。  
深呼吸して覚悟を決めて、メイは握りしめていた襟元を離し手を横に下ろす。  
…彼の頼みを断れるわけがないのだ。いつだって、何だって。  
泣き出しそうな表情のメイに罪悪感を覚えつつ、アルフォンスは手を動かす。  
ごめん、そういう顔はさせたくないけど、やっぱり好きな子の裸は見たいですオトコノコとして。  
くつろげて、はだけた布地の間から現れる素肌。  
大きく上下している胸は、なだらかに、浅い谷間を作ってやわらかくふくらんでいる。  
その表面に、暗くてはっきりとは見えないけど…いくつもの、傷跡?  
古いものだ。長いものもあれば短いものもある。健康な肌より白く光っている。  
「メイ、それ」  
「びっくり、しましたよね」  
何か言いかけて言葉を失っているアルフォンスと目を合わせて、メイはなんとか笑顔を作った。  
「…アルフォンス様とお会いする前にちょっと、いろいろあって」  
胸だけではなく、背中にも、そして手足にはもっと多く刻まれていたりするその傷跡は  
「不老不死の法」を探しにアメストリスに出向く前。  
皇帝の寵を競い、自分たち以外の家はすべて蹴落とそうとする異母兄姉弟妹やその側近たちを相手に、  
チャン家の誇りと地位をかけて戦い生き抜こうと抗ううちについたものだ。  
相手を恨んではいないし、傷ついたことを恥じてはいないけれど、それを見た相手に引かれるのはやっぱり悲しいしつらい。  
「みっともないからいろいろお手入れしてますけど、なかなか…消えなくて」  
すっと視線をそらし涙声でつぶやいてそのまま身を遠ざけようとするメイの腕をアルフォンスは強くつかんだ。  
「メイ、…メイ」  
彼女がもう一度自分の目を見るまで、くりかえし呼ぶ。  
本当は、アメストリスのノックス医師のところで傷ついたメイの手当を手伝ったときに手足の傷は目撃しているのだ。  
…まさか胴体にまで傷があるとは思っていなかったからつい動揺を露わにしてしまったけど。  
「みっともなくなんてない。メイはきれいだよ」  
「本当…ですか…?」  
聞き返すメイの瞳が見る間にうるんで、涙の粒がこぼれ落ちる。  
「うん、きれいだし可愛い」  
ふくらみの頂上で色づいている小さな尖りも、  
平らな腹部の下の方、下着に覆われるぎりぎりのところにちょこんと見えている臍のくぼみも、  
まだ幼さが残る彼女の容貌にふさわしい愛らしさで。  
アルフォンスは吸い寄せられるように彼女の左肩に顔を伏せた。春を告げる白い花の甘い香りがする。  
そこからはじまりふくらみの上部まで流れている傷痕にそっと唇と舌を這わせる。乳房の頂上をついばむ。  
 
「っ」  
小さく声を立てて跳ねる彼女の体をなだめるように、空いている方のふくらみを手で覆う。  
力を入れすぎないように注意しながら指と手のひらを動かす。  
固くなっている小さな突起を指の腹で転がすようにしてみる。  
「…ぁっ、ぅんっ」  
耳の少し上の方で押し殺した声が聞こえて、ちょっと自信がついた。  
唇に含んだ乳首を軽く吸い上げて、舌先でつついて転がす。  
指でとらえている方は押し込むようにしてみたりつまんでこすり上げてみたり。  
「ん、っぁっ、…あっ、あぁっ」  
何らかの刺激を与えるたびに小さく声を立てて体を跳ねさせる彼女は本当に可愛い。  
メイは細く目を開けて、金色の髪が自分の胸元にあるのをこっそり確認した。  
愛撫されている胸から起こる切ないような感じが体の中心線に沿って下腹部に伝わり熱く溜まっている。  
聞いたり読んだりで具体的な行為の知識はあるけど、実際の刺激と感覚には予想以上に翻弄されてしまっている。  
これから、どうなるんだろう。どう…なってしまうんだろう。  
未知の感覚への恐怖と興味と好奇心と緊張がないまぜになって、胸の内側はまだぎゅっと痛いままだ。  
…やがて体を起こしたアルフォンスが下着に指をかけた。  
引き下ろす動きにメイは少し腰を浮かせて協力する。  
でもひざを立てさせられ、押し開かれる動きにはふとももに力を込め抵抗してしまうけど、  
さっきまで優しかった彼の手は今は強引で逆らいきれない。  
信じられないくらい大きく開かされた脚の間にアルフォンスの肩が、その奥に頭が入り込んだ。  
熱い視線と吐息を感じてしまえばもう恥ずかしさのあまり動けない。  
「見ないで、ください…」  
聞いてくれないだろうことは分かっているけど、両手で顔を覆って訴える。  
そしてもちろん好奇心と欲望に駆られた彼の行為が止まるわけはなく。  
「こう、なってるんだ」  
ぷにっとしたやわらかな肉のあわいに指先で触れて、さらに奥までくつろげる。  
上の方に小さな突起が顔をのぞかせ、中の方には薄暗がりにも光る粘膜。  
見ているだけでは物足りなくなって、さらに顔を近づける。  
不意に触れてきた熱く柔らかくぬめるものの感触とその正体に狼狽したメイは反射的に手を伸ばし彼の髪をつかんだ。  
「そこ、ダメっ」  
押して引き離そうとするものの、吸いついた唇は離れてくれなくて。  
「あ…っ、や、あ…ああっ…」  
下腹部から体の芯に響く感覚に、自分のどこから出てくるんだろうと思ってしまうくらいの声がほとばしる。  
部屋の外に聞こえたら誰か来るかも、と我に返って片手を顔に戻し口を押さえるけれど、声は止まらない。  
 
その声を、震えおののく体の反応を確認しながらアルフォンスは夢中になって舌と唇を使った。  
吸い上げて、突起の先端を舌先でくすぐるとメイの声がさらに高くなって、  
自分の唾液とは明らかに違う味の液体が奥からあふれてくる。  
やがて我慢できなくなって体を起こし、もどかしく服を脱ぎ捨てる。  
痛いくらいに高まっているそれをつかみ、このあたりだろうと見当をつけてあてがうと  
先端に濡れた粘膜が独特の柔らかさを伝えてきた。  
顔を上げて、メイの腕の横に手をつく。体重を前に移動させる。  
何度か滑った先端がついに入り口をとらえて中に入り込む。体の重さを借りて一気に奥まで。  
「──っ!」  
衝撃をなんとか逃そうと、メイは首を思い切り後ろに反らせた。  
話に聞いていた初めての時の痛みはそれほどではないけど違和感がすごい。  
入ってくる、熱く固い感触に押し出されるように涙が出てくる。  
「っ」  
奥にぶつかったところで動きを止め、アルフォンスは小さくうめいた。  
熱くやわらかくとろけているのにきついそこに包まれる初めての気持ちよさに大きく息をついて、  
こみあげてくる快感をとりあえず制御していつのまにか閉じていた目を開く。  
視線を下ろしメイがぎゅっと眉を寄せているのを見て、  
そういえば女の子の方は初めての時はかなり痛いって、という予備知識が唐突によみがえる。  
「メイ、痛い?」  
「大丈夫、です」  
瞳を潤ませたまま健気にうなずいて答える彼女にまた愛しさがこみ上げる。  
体を重ねる。初めて素肌で抱きしめたメイは華奢でやわらかくて、暖かい。  
まなじりからこぼれる涙を唇で拾って、そのまま口づけた。  
喘ぎ続けていたせいか乾いてしまっている彼女の唇を舌先でなぞって、中に滑り込ませる。  
一瞬逃げた小さな舌がおずおずと応えてくる。  
体の横で敷布を握りしめているメイの指をほどいて、腕を自分の首に回させた。  
「動いても大丈夫?」  
「…はい」  
耳元で小さく答えるメイの腕にぎゅっと力がこもるのを感じながらゆっくり腰を引き、突き入れる。  
いったんはやわらかくほどけていた彼女の体に再び力が入って強張るのが分かる。  
ごめん、と思うものの動き出してしまったからもう止まらない。  
リードする立場ではあったものの、初めてなのはアルフォンスも同じなのだ。  
とても長くは持たなくて──  
幼い恋人たちの行為はそう長く続かずに終わりを迎える。  
どちらからともなく、深い口づけを交わす二人をおだやかな脱力感と充足感が包んでいた。  
 
起きあがったメイの、肩から背中を袈裟懸けに走る一番大きな傷を指と唇でたどりながら、  
痛かったよね、もっと早く出会えたらよかったのに、とアルフォンスがささやく。  
「こんなにいっぱい傷がつかないように、鎧の中に入れて守ってあげられたのに」  
肩の前に流した髪を一つに編みながらメイはこっそり微笑んだ。  
彼の優しい言葉と感触に、いつも浴室で鏡を見るたびに感じていたひりつくような心の痛みが薄れていく。  
「大総統に剣で突かれそうになったときもあったじゃないですか」  
「あれは…うん、こわかったね」  
こんなふうに穏やかに過去を語れる時がくるとは思わなかった。  
おたがいに数奇、という一言では言い足りない運命をたどってきた。  
生命の危機をギリギリのところですり抜け駆け抜けて、何かが少しでも間違えば今こうしていることはできなかった。  
…ありふれた言い方だけど、まるで奇跡だ。  
髪をまとめ終わって振り返り、メイは勢いよくアルフォンスに抱きつく。  
「アルフォンス様に会えて良かったです」  
「僕も、…メイに会えて良かった」  
胸に肩に顔を埋めて、腕の中におたがいの暖かさを感じる幸せ。  
ふと、アルフォンスが小さく声を立てた。  
「どうかしましたか?」  
「明日の朝から、リンのこと『お義兄さん』って呼ばなきゃダメかな」  
えーと。  
「アルフォンス様、すごく…言いにくいんですけど」  
今言わないときっと一生勘違いされっぱなしだろうと覚悟を決めて、メイはアルフォンスの耳元でそれを打ち明けた。  
「メイって…兄さんより、一つ、上…?」  
「はい」  
ということは自分よりは二つ上。リンよりも年上。  
いくらシンの女性が全般的にアメストリスの女性より若く見えるからって詐欺だー、と頭を抱えるアルフォンスに  
メイがおろおろと声をかける。  
「年上はお嫌いですか?」  
「そんなことないよ」  
彼女のことは全部知ったつもりでいたのにまだ驚かされることがあるなんて楽しすぎる。  
「好きだよ」  
ささやかれた直球すぎる言葉にメイが暗くても分かるくらいに赤くなって、  
照れ隠しにぽかぽかとアルフォンスの胸を拳でたたく。  
小さく声を立てて笑いながら彼は彼女を抱きしめた。  
 
 
終  
 

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