ここはイシュヴァールのとある温泉宿。  
…なんでそんなところが存在してなんで全員そこにいるのかなんてことは聞いてはいけない。  
そういう話だということで納得するように。  
 
 
着替え一式を抱えて大浴場「女湯」ののれんをくぐったウィンリィが先客を見つけて声をあげた。  
「リザさーん」  
「あら、ウィンリィさん」  
濃紺に白抜きで桜の花を散らした浴衣を着込んだリザ・ホークアイが肩越しに振り返りにっこりと笑った。  
「お先にお風呂いただいたわ」  
洗い立ての髪を結い上げ、襟の合わせを直す彼女にはしっとりとした大人の色香が漂っている。  
ふっくらと盛り上がった胸元、えんじ色の帯をきゅっと結んだウエスト、形のよいおしり。  
いいなーリザさんってばやっぱりすてきなプロポーションだなー直に見たかったなー。  
「せっかくだからご一緒したかったですー」  
「ごめんなさいね。じゃあ、みなさんごゆっくり」  
ウィンリィの後からついてきたメイ、ランファンの二人にも笑いかけて彼女は脱衣場を出て行った。  
「残念。…まあいいや、お風呂お風呂っと♪」  
荷物を入れる棚を確保し、ためらいなくタンクトップを脱いだウィンリィの豊かな胸がぷるん、と揺れる。  
「…ランファンさん、メイさん、どうかしました?」  
「い、いヤ別に」  
「何でもないでス」  
それを見てしまい思わず動きを止めた二人は、ごまかすように服を脱ぎながらそれぞれ己の胸元を確認してこっそりため息をついた。  
 
湯気を透かして見た浴場の広さに歓声が上がる。  
「わぁ、広ーい」  
「向こうに露天風呂もあるみたいですヨ」  
「じゃああとで行こうねっ」  
大浴場は3人の貸し切り状態。  
湯船につかる前にまずは髪と体を洗って。  
トリートメントした髪の水気を切って邪魔にならないように結い上げていたウィンリィが、  
鏡に写るメイの背中にふと視線を止めた。  
「あれメイさん、そこ虫さされ?」  
「?」  
「背中のここ。赤くなってる」  
と振り返りにじりよって指さした場所は、  
よくよく見れば…虫さされ独特の刺し口はなくただ鬱血しているだけで。  
…それはつまり、えーと、身に覚えがありますがもしかして。  
「ごっごめんなさい、それキスマークっ」  
わざわざ言わなくてもいいことを…  
指摘されたメイが真っ赤になってほおを両手で押さえた。あっ可愛い。  
ということは相手はもちろんアルフォンス君ですねそうですかー。  
「…お熱いなぁ」  
ちゃんとやることやってるんだー、とニヤニヤしながらひじでつんつんと脇腹をつつくウィンリィの、  
いつもはポニーテールの毛束で隠れているうなじの生え際に近いところに真新しい鬱血の痕、発見。  
「ウィンリィさんだって人のこと言えないじゃないですカ、ここっ」  
メイの逆襲を受け、鏡に映して確認したウィンリィが記憶を探って赤くなってほおを両手で押さえる。  
「エドってば、わざわざ昨日ー…」  
「アル様もでス…」  
「…そういうところが兄弟よね、あの二人」  
「似てますよネ…」  
お揃いのポーズではぁ、とため息をついて顔を見合わせて苦笑して、二人は背中の流しっこに入った。  
「ウィンリィさん、胸おっきいですよネ」  
「んー、あたしはもう少し小さい方がよかったな。いろいろ邪魔になるんだもん」  
「贅沢な悩みじゃないですかそレ」  
「メイさんくらいの方が絶対いいですってー何着ても似合うじゃない」  
きゃいきゃいと盛り上がる二人に背を向けたままそそくさとせっけんの泡を流し終わったランファンがこっそり浴槽に向かった。  
ぶくぶくぶく、と肩を越えて鼻の下まで湯に沈む。  
 
「はい、交代〜」  
ウィンリィがメイの後ろに回る。  
泡立て直したタオルを首筋から背中に滑らせて、こすって、肩胛骨の間の鬱血をつんっと指でつつく。  
「ここにキスマークってこーとーはー…」  
耳元にぼそぼそ。  
「大胆〜」  
「だっ大胆っていうか、いつもそうなんデ」  
「えええいつもその格好で!?」  
「だって、…アルフォンス様が上だと、重いんでス…」  
「ああそうよね、エドもねー終わったら思いっきり体重乗せてくるから息苦しくって。特にほら、あいつ左足機械鎧だし」  
「バランス取れなくないですカ?そレ」  
「それはそうでもないけど、冬がイヤ。金属だから冷たいんだもん、冷めちゃう」  
めったにできない分とっても楽しいぶっちゃけガールズトークに一人足りないことに気付いた二人が浴槽の方に目を向けた。  
「ランファン」  
「ランファンさん、一人で逃げるのはダメですよ」  
「そうそう、一度聞きたいと思ってたんでス」  
即席ながら素晴らしいチームワークを発揮してランファンを壁際に追いつめる。  
「リンとハ」  
「リンさんとはどうなってるんですか」  
両側から声をそろえて問いつめられて、それまでに聞かされた会話と湯の熱さにのぼせそうになっていたランファンはつい素直に  
「わっ若とはまだ何モ」  
答えてしまった。  
しまった、と思ったときはもう遅い。  
「まだ?」  
「何モ?」  
ウィンリィとメイの瞳がきらーんと光る。  
「えええリンさん何やってんのーっ」  
「ランファン、…時には自分から迫ることも大事かト」  
「そそそそんナ、若とはそんな関係でハ」  
「じゃあどういう関係?」  
墓穴掘りまくりの相手に突っ込むのは楽しい。とっっっても、楽しい。  
「好きなんでしょー」  
「好きですよネ。主と護衛とかいう関係越えテ」  
ぶくぶくぶく。  
「ね?」  
「ネ?」  
こくん。  
「やっぱりー!」  
尋問成功。ウィンリィとメイは手を取り合って歓声を上げた。  
「ねね、じゃあせっかくだから、今夜、告白しません?」  
「この機を逃してハ、もう機会はないですヨ」  
「いやだって若とエルリックの兄弟は同室」  
「空けさせまス」  
「うん、エドとアルはこっちの部屋に来ればいいし、ねー」  
「ネー」  
勝手に話がまとまっていく。ランファン絶体絶命。  
 
と、ガラリと音を立てて入り口が開いた。  
「やかましい」  
淡い金色の髪をきっちりと結い上げて、  
「全く…風呂くらい静かに入れんのか」  
どん、と前に張り出した半円球型の豊かな胸、引き締まったウエスト、豊かなヒップ。脚が長くて腰の位置も高い。  
見事なプロポーションを隠しもせずに堂々と、オリヴィエ・ミラ・アームストロングが入ってくる。  
その迫力に息を呑み、  
「オリヴィエさんすっごーい、ナイスバディー! うらやましいですー!!」  
ウィンリィが勢いよく全身から湯を滴らせながら立ち上がった。  
洗い場のオリヴィエの後ろでタオルにせっけんを泡立て背中を流す準備をしながら目をキラキラさせて問いかける。  
「うわあお肌つるつる! いつもどんなお手入れしてらっしゃるんですかー!?」  
他意のない素直な賞賛を受けるのは悪い気分ではない。  
オリヴィエは会心の笑みを浮かべて答えた。  
「アームストロング家に代々伝わる美容法だ」  
 
 
…一方、浴槽ではシン組の二人ががっくりと肩を落としていた。  
それぞれ、自分の胸に手を当てる。  
小さな手のひらでも包み込める程度のささやかなふくらみと、  
それよりはあると思うがやっぱりどちらかというと控えめなふくらみ。  
確認して、洗い場のアメストリス組をちらりと見て、同時につぶやいた。  
「アメストリス人の女なんテ、みんな敵ダ…」  
 

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