オリヴィエという名の軍人が、なんの表情も浮かべずに己れを見る。  
「動けそうにもないか。」  
体の様子を見に来たオリヴィエが、己れの包帯を見て言った。  
治っていないわけではないが、安静にしろと言われる程度の怪我だ。  
「ふん…まだ治りきっていないとはな。」  
歩くこともできなくはないが中途半端な気力しか無い。  
肘を使って上半身を起こして、オリヴィエと視線を合わせた。  
「働け、と言いたいところだが貴様のその体だ。」  
うむ、と腕を組む。  
女性らしさが微塵もない態度だ。  
それから己れに近寄り、見定めた。  
冷たい色の瞳が、腰のあがらない己れを見る。  
「起きれそうにもないな。よし、分かった。」  
 
 
これが数分前までの会話。  
何がどうなったか、よく分かっていない。  
オリヴィエが己れの上に跨って、不思議そうに己れを見つめる。  
「うむ…」  
自ら服をずらし、乳房の谷間が思い切り曝け出される。  
まるい胸を覆う白い下着。  
想像の中にあるような胸だった。  
「おい、傷の男。」  
するすると服を脱いで、己れの上に四つんばいになったオリヴィエ。  
頬に金の髪の毛が触れて、すぐ近くで青い瞳が数回まばたきした。  
厚い唇がくちばしのようにツンと尖った。  
「勃起しないな…」  
細い手が、ペニスをまさぐる。  
服の上からだったが、その刺激に驚いてしまった。  
何せ、普段自慰もしない。  
性に疎い自分にとって、女性が跨ってくることは考えられなかった。  
「何か好きなのはあるか?」  
好きと聞かれているのが何なのかは分かるが、あまり考えたくない。  
オリヴィエが、目の前で胸を寄せる。  
「ずっと寝てる貴様だ、私の相手になれ。」  
すこしばかり楽しそうだ。  
反応しない己れに、まさかとオリヴィエが続ける。  
「不能か?それとも…」  
すぐ目と鼻の先で囁かれる官能。  
喋るたびにふるふる動く唇は、魅力的だった。  
「私のような者ではなく、うちのマイルズのようなのが好きか?」  
とんでもない!即座に頭を振った。  
己れの反応を楽しんでいるのか、オリヴィエは笑った。  
「ならいい。偽りは要らんから、正直に答えろ。」  
 
オリヴィエが両手を胸に当て、探るように訪ねる。  
「これは好きか?」  
オリヴィエの手が乳首を隠す。露になる谷間と、白くて丸い膨らみ。  
生唾を飲んで、大きな胸と唇、それから目を捕えて頷く。  
「なら、これは好きか。」  
体をずらし、オリヴィエの手が自身の太ももを撫でた。  
白い足、それがすぐそばにある。  
黙って頷く、するとオリヴィエはゆっくりと下着を脱いだ。  
床に落ちる下着。  
未だなんの反応もしない己れに、オリヴィエが額に口付けを落とす。  
「よし、気に入った。」  
オリヴィエの手が、己れの手を掴んだ。  
導いたのは、股の間の見たこともない場所。  
指先が、内側に触れる。  
柔らかい肉だった。そこから垂れる粘液。  
すぐに指先が湿った。  
好奇心か本能か、指を動かす。  
オリヴィエの手が、股の前のほうへと導き止めた。  
「わかるか?これが…貴様の大きな指なら、いくらでも弄れるだろう。」  
親指にあたる、小さくて丸い硬いもの。  
柔らかくこりっとした触感があった。  
素直に親指で撫でてみると、すぐにオリヴィエが顔をしかめはじめた。  
う、う、と呻き腰を浮かせて体を震わせる。  
どこからか、むわっと漂う匂い。  
淫臭とでも例えればいいのか、そんな匂いだ。  
「いいぞ、弄れ、潰してみろ…ゆっくりとだ。」  
指先が捕える硬いものは、大きさを増している。  
中指と人差し指で、それを挟み擦りあげた。  
ぬるぬるした粘液を指につけて撫でると、硬いものから熱が伝わる。  
「うあ、いいぞ、もっとやってみせろ。」  
どこからか滴る水。  
腰を震わせ、己れの横に手をつく。  
すぐ目前にある大きな胸にある乳首が立っていた。  
空いている手で、乳首を摘み同様に弄る。  
硬い感触は、こちらのほうが強い。  
「あ、う、いいぞ…」  
苦しそうに呻くオリヴィエが、何故か可愛らしく思える。  
「いいぞ…貴様はいい…」  
そう呟いたオリヴィエが、己れの上で体を仰け反らせた。  
叫びに似た何かが、部屋にこだまする。  
股の間から伝わる熱を手から感じていると、ペニスに刺激があった。  
オリヴィエが触っている。  
「ようやく勃起したか。」  
息絶え絶えに言う。  
するすると撫でられ、亀頭を手のひらで扱かれた。  
 
「おい…先程も尋ねたが、起きれるか?」  
起きれるか、自分でも分からない。  
すこし肘で体を起こしてから、足を曲げた。  
背中を曲げても、変に苦しくはない。  
己れの様子を見たオリヴィエが、すぐに己れを起こして己れの体の下に潜りこんだ。  
おい、と腰を捕まれる。  
かろうじて体を起こし胸を掴んで、深い谷間を作った。  
片手でズボンをずらし、ペニスを出す。  
胸の谷間に、ペニスを差し込んだ。  
硬くなった一物が、柔らかな感触に包まれる。  
己れはだらしなく、無我夢中で腰を振った。  
熱っぽい表情を向けられ、たまらなくなった。  
腰を振るたび、オリヴィエの顎のすぐ下にペニスの先が飛び出す。  
胸の脇に添えていた両手の親指で、すぐ近くにあった乳首を触った。  
柔らかいのに、ここだけはこんなに硬い。  
「ああ、ぐぅ、ああっ」  
背中に、オリヴィエの足が触れる。  
股のそこを開いているのがわかった。  
オリヴィエの両手が己れの足の下を通って、下半身に添えられている。  
耳を澄ましてみると後ろからぬちりと粘着質な音が何度もした。  
「あっ、はぁ、うう…」  
はぁはぁと息を切らす唇の奥から、唇と同様の厚い舌が見える。  
オリヴィエが己れの顔を見た途端、何も言わずに口を開けた。  
赤い口蓋は、興奮を駆り立てた。  
己れはオリヴィエの口の中に精液を放った。  
舌が中途半端な白で汚れる。  
口に入らなかった精液は、首や鎖骨に数滴垂れた。  
「はぁ…」  
息を吐き出し、鋭い目で己れを見た。  
「口が汚れたではないか。」  
まったく、と繰り返すオリヴィエに今度は寝かされた。  
唇のまわりに飛んだ精液を舐め、口の中で転がしている。  
「仮にでも飲めたものじゃないな。この味は苦手かもしれん。」  
飲める味もなにも、口を開けたのはそちらではないか。  
寝かされ、包帯の下が痛む。  
「垂れてきた…舐めろ。」  
 
ゆっくりと腰を上げたオリヴィエ。先ほどとは真逆の気だるい雰囲気。  
ふと指を見れば、指先についた粘液。  
視界を遮るように、オリヴィエは顔の上に跨ってきた。  
「ほら…舐めろ、舐めてみろ。」  
彼女は欲情している。いや、発情か?  
己れは両手で腰をがっしりと掴み、先程指先で撫でていた硬い小さな膨らみを舐めた。  
粘液の味は、例えようがない。  
舌先で捕えると、掴んでいる腰が大きく震えた。  
「ううっ、あ!あ、うぅん…うう…」  
真上から聞こえる喘ぎ声。  
腰が何度も逃げようとする。掴んだまま、放すつもりはない。  
微弱に舌で刺激を送る。  
小さな膨らみに吸いつくと、オリヴィエが体を強ばらせた。  
男の唇だ。柔らかくはない。  
「あ、う…うう…」  
 
唇を押しつけたまま、舌で舐める。  
ぬめる水が溢れてくる場所まで舌を這わせ、熱さに驚く。  
次第に、オリヴィエの息のあがり方があからさまになってきた。  
断片的な喘ぎを漏らしながら、体をくねらせる。  
唇と舌で刺激を与えていると、オリヴィエから切羽詰まった声が飛び出した。  
「あ、おい、もう駄目だ…いく」  
オリヴィエが、思い切り体を曲げて痙攣させた。  
苦しそうで今にも泣き出しそうな顔に見える。  
泣きじゃくる子供のように喘ぎを漏らしたあと、へなへなと真横に倒れてきた。  
顔の汗にぺったり張り付く数本の髪がいやらしい。  
目の焦点が合わず、ぐったりして動かないオリヴィエに声をかけた。  
「おい、大丈夫か。」  
一言二言喘ぎを漏らしてから、耳の近くで呟かれた。  
「貴様…また…」  
そこまで呟いて、オリヴィエは目を閉じた。  
腹の上に圧しかかるように乗った足をどかす気も無く、手探りで毛布をひっぱりオリヴィエにかけた。  
ちょうど包帯の真上に足があり、痛い。  
移動するにも移動できず、怠惰に包まれたオリヴィエの肩を抱きしめ目を閉じた。  
不機嫌な怒鳴り声が響くまで、ゆっくりしていよう。  
 
 
 
 
 
 
おわり  
 

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