最終回ネタバレ注意  
 
 
 
 旅から整備のために帰ってきたエドワードは、二人きりになるなりウィンリィを抱き締めた。  
「エド……!?」  
 ウィンリィが驚くのも無理は無い。でも、もう限界だった。  
「ごめ、ウィンリィ……でも俺」  
 きゅううう…とウィンリィを抱き締める腕に力が籠もる。  
 必死で欲望を抑えようとするが、彼女を前にして収まるどころかますます溢れ出るばかりだ。  
「我慢、できねえ……」  
 壁に押しつけて、両腕で逃げ道を奪う。  
 眉根を寄せると、エドワードは苦しげに囁いた。  
「ウィンリィが、欲しい」  
 金色の瞳が真摯にウィンリィを見つめていた。ウィンリィが欲しい。彼はそういった。  
 そして、彼の瞳は彼女を欲するあまりに今にも枯れそうだ。  
 三ヶ月ぶり。機械鎧の脚は、多少汚れが目についたものの以前よりは良好。  
 しかも彼は今、ウィンリィを目の前にして、己の精神と必死に戦っている。  
 ウィンリィとて――エドワードに会いたかったのは同じだ。あの駅での抱擁と口づけのあと、何度彼を夢に見たかわからない。  
 ウィンリィは潤む瞳に涙をたたえ、そっとエドに身をゆだねる。  
「うん。わかった。エドにあたしをあげる」  
 だから大切に扱ってね。  
 ウィンリィのその言葉は、唇ごと彼の口腔内に飲まれた。  
 
 久しぶりに感じたエドワードは、なかなかおさまってくれなかった。  
 もう何度イかされたかわからない。  
「あっ、あ、もう、やっ、ん…っ」  
 無意識のうちに逃れようとするウィンリィを両足で挟み、エドワードは彼女の細腰を掴む。  
「嫌とか言って、こんなっ、濡れて…っるくせに」  
「バカ! 言わない、で……あっ」  
 体を重ねたのは数えるほどしかない。けれど、不思議なくらいお互いの気持ちよい場所はわかった。  
 一度エドワードが己を彼女から抜き取る。ぬぷりと愛液が太腿を伝い、シーツに染みを作る。  
 抜き取る瞬間の刺激に、すっかり敏感になったウィンリィが絶頂を迎える。今夜何度目になるか、もう数えてもわからない。  
 いったい今が何時なのかさえわからなかった。わかるのは、まだまだ夜は明けないということだけだ。  
 体勢を変えて、エドワードがウィンリィをうつ伏せにすると、再び侵入してきた。熱く固い彼を体の中心に感じる。  
 それが、ウィンリィの体の中を擦って打ちつけ、自らの存在を主張する。  
 触れた箇所から熱が溢れ、自分でもどうにもできないほどに愛しさで満たされる。  
 行為はいつも以上に激しいのに、彼は優しかった。優しくて、あったかくて、ウィンリィは泣きそうになる。  
 いや実際に泣いてしまっていたのだろう。エドワードの熱い舌先が、目元を拭うように触れてくる。  
 たったそれだけのことなのに、睫毛の先の想いも全て彼に掬われていったように感じ、ウィンリィの膣がきゅうと閉まる。  
「……はぁっ。力、抜け、って……っ」  
 苦しげにエドワードが呻く。彼の絶頂も近いのだろうか。  
 しかしその声音さえ、今のウィンリィには煽る要素でしかない。  
 何度目になるかわからないほどぐちゃぐちゃな思考のなか、真っ白になった彼女はくてんと体を弛緩させる。  
 その隙に、エドワードが一層奥に侵入してきた。  
「あ、あ、あ、あ、あ、」  
 胸を揉みしだかれる。腕をついて体を支える力は残ってないからシーツに必死にくぐもった声を漏らすことしかできない。  
「エド。エド、ワード」  
 顔を見せて。その願いは吐息にしかならない。けれど察したのだろうか、エドワードが体勢を入れ替える。  
 そのときに再び中心に刺激を感じ、イってしまう。  
 互いに向き合って、見つめ合う。金と青の瞳が、夜のしじまに痛いくらいに交錯した。  
「ウィン、リィ……っ」  
 エドワードの表情が苦しげだ。時折呻く様子から、彼の絶頂が近いことがわかる。  
 それはまたウィンリィとて同じだった。あんまりにもイきすぎて羞恥さえ感じない。  
 ただ、気持ちよくて、うっとりと彼だけを感じられる今に感謝する。  
 絶頂を迎える瞬間、エドワードが彼女の、ピアスホールを舐めた。  
 
 
 二人してぐったりとベッドに横たわる。カーテンを開ければ、東の空がうっすら白み始めている。  
 開け放した窓の向こうから、心地よい風が二人を撫でた。  
 エドワードが手を伸ばした先、ウィンリィを抱き寄せる。  
 まだ火照る肌から伝わる熱は、うっかりエドワードの奥を刺激しそうになるが、さすがにもうやばいだろう。  
 なので、彼女を抱き締めることで己の熱をぐっと押さえ込む。  
 はぁ……。なまめかしい吐息をエドワードの胸板に零し、ウィンリィは口を開く。  
「あんた、激しすぎ……」  
 もうムリ、と彼女の腕はゆるゆるとエドワードを捉えると、重力に逆らうことなくくたりと萎れる。  
 彼女は本当に疲れている様子だ。やりすぎたか?、と思うが、おそらくあの状況で自分を止めることなどできなかっただろうと思う。  
 しかも未だに奥で熱が燻っているだなんて。絶対に言えない。  
「し、仕方ないだろ、ヒサシブリだったんだし」  
「そうだけど。でもあんまりにもいきなりすぎよ。あたしだって色々考えてたのに」  
 色々考えていたってなんだ。何を考えていたんだ。  
 エドワードは彼女の言葉の先が気になったが、しかしウィンリィはそれ以上口を開こうとはしない。  
 だからそれ以上聞きだせず、エドワードは消化不良だ。  
 仕方ないから、その話はまた明日の夜にでもすることにして、エドワードは彼女を引き寄せる。  
「もういいから寝ろ」  
「シャワー浴びなきゃ」  
 欠伸まじりにウィンリィが呟く。  
 そうだけど、今はこの温もりをもう少しだけ手元に置いておきたいと思う。  
「明日の朝でいいだろ」  
 彼女の眠気が移ったのだろうか、エドワードも欠伸を漏らしながら呟く。  
 そうして腕はしっかりと彼女を抱え込んでいるのだから、すっかり離す気は無いらしい。  
「それもそうね」  
 おやすみ、良い夢を。  
 明けの明星に照らされる夜の残り香の中、二人はゆるゆると眠りへ誘われていった。  
 
 
(終わり)  
 

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