・やっとできた変態キンブリー  
 
 
寒い廊下を歩いていた。  
荷物は、キンブリーさんの部下の人が預かってくれた。  
先にエド達に合わせてくれるらしい。  
機械鎧の交換のために来たけど、来る途中で見た雪景色はリゼンブールじゃ見れないから、来れて嬉しい。  
「あのう、エド達は?」  
私は前を歩くキンブリーさんに尋ねると、足を止めて私に歩幅を合わせてくれた。  
「もうすぐですよ。」  
柔らかい笑顔のキンブリーさんが、ドアを指差した。  
あのドアの向こうにエドとアルがいるのかな?  
「先に寄りたいのですが、よろしいでしょうか?」  
ドアの前に立ったキンブリーさんがドアノブに手をかけた。  
「あ、はい!」  
マフラーの位置をずらして、髪の毛を直した。  
開いたドアの向こうにキンブリーさんが足を踏み入れて、それから私も踏み入れる。  
きっと、キンブリーさんも寒かったからコーヒーでも飲むんだ。  
近くの丸い椅子に座って、落ち着いた気持ちでマフラーをちゃんと巻き直した。  
身だしなみはきちんとしなきゃ!  
ふと、キンブリーさんが私の横に来た。  
「ウインリィさん。」  
「はい。」  
キンブリーさんは私に柔らかい笑顔を見せて、隣の椅子に座った。  
「長旅、ご苦労様です。」  
「いえいえ、大丈夫です。キンブリーさんもここまで送ってくださって、ありがとうございます。」  
紳士的なこの人に、精一杯失礼ないように言葉を選んだ。  
優しそう…というよりは、静か?おとなしい?違う。  
もっと違う感じの人だ。  
この違う感じが、紳士的っていうのかな。  
キンブリーさんが、私を見る。  
「あなたの金髪は、お母さん譲りですね。」  
私の、髪の毛を見て言った。  
「?…はい。」  
「写真で拝見して以来の方ですが、ウインリィさんはお母さん似ですね。」  
嬉しいけど、なんだか恥ずかしい。  
ありがとうございます、と言ったけど、ありがとうって言うべきことじゃないよね、これ。  
「エドワードさんとは、どういった関係で?」  
「幼なじみです。」  
「ほう、そうですか。」  
「弟のアルフォンスとも、仲がいいですよ。」  
「そうですか…エドワードさんも貴女のような可愛らしい幼なじみを持てて、幸せでしょう。」  
「やだ、そんな…」  
「以前からお変わりない。」  
「え、お会いしたことありましたっけ?」  
「いえ、写真で拝見して以来という意味ですよ。可愛らしいまま、という。」  
「ええ?ありがとうございます。」  
 
いつまで話すんだろう。  
部屋を見渡したら、大きなテーブルがあるだけの質素な部屋だった。  
なんのための部屋?  
本のひとつくらい、あってもいいのに。  
「私はウインリィさんのような方は好みですよ。」  
「ああ、ありがとうございます…」  
「そうだ、コートを脱がれてはどうです?お掛けしますから。」  
「あ、はい」  
「…ストッキングですか?ハイソックスですか?」  
「へっ?」  
コートを渡したのに、キンブリーさんは私の手を握ってる。  
つまり、足とスカートの中のことを聴かれてる。  
寒いから、風邪を引くなとでも言いたいみたいだ。  
「ストッキングですよ。寒いのでガードルも履いてます。」  
足元はブーツだし、足から風邪を引く事態にはならないはず。  
それはそうとして、いい加減に手を離してほしい…と思ったときだった。  
キンブリーさんは、私にすっと近寄った。  
背の差が分かる。  
「ピアス…たくさんありますね。」  
私の耳を見たキンブリーさんが、すこし小さい声で言った。  
この至近距離なら、小さい声も聞こえてしまう。  
「はい、けっこう開けました。」  
「あの可愛らしい娘さんが、ピアスまでするなんて。」  
何故か、私はバランスを崩して後ろに倒れた。  
それはすぐにキンブリーさんに押されたからだと分かった。  
倒れる前に引き上げられて、テーブルの上に押し付けられた。  
そこでやっと私は、痛みと共に危険を最大限に察知した。  
足の間に、キンブリーさんの腰がある。  
叫べない。声が出ないかわりに胃あたりが苦しさでぐちゃぐちゃになってる。  
「ストッキングの中に下着を入れるのですね。」  
ワンピースの裾をぴらっとめくって言われ、それから押さえられている股をじっくりと見られた。  
 
腕を動かそうにも、無理な体勢の横敷きになってて動かない。  
髪の毛が口に入って、舌がざらざらする。  
ずるっと、ガードルごとストッキングがずらされた。脱がされたというよりは、ずらされた。  
「白のショーツですか…」  
顔から首にかけて熱くなった。  
なんで下着の色を言われただけで、こんなに恥ずかしいのかな…?  
「やめてよ!触らないで!エド達に会わせてくれるんじゃ…」  
ウインリィさん、とキンブリーさんが変な笑顔を近づけた。  
とたんに、股付近でする金属の音。  
私はゾッとして、声にならない声を思い切り出した。  
足をばたつかせても、ぜんぶ押さえられてしまう。  
誰か来てくれないか、誰でもいい誰かに私は助けを求めた。  
こんなことをされるなんて、と思ってたら、変な笑顔でほっぺをほんのり赤くしたキンブリーさんが、すこしだけ体を浮かして私から股あたりを見えるようにした。  
「ウインリィさん…」  
私から見えたのは、ズボンを降ろしたキンブリーさん。  
で、また、そのズボンの中身が…  
言葉を無くしていると、キンブリーさんは顔を近づけてそれはそれは紳士的に囁いた。  
「どうでしょう、可愛らしいですか?」  
たしかエドは、トランクスを履いてた。アルは鎧だからフンドシ…みたいなものだった。  
キンブリーさんが履いてるのは、可愛いデザインの白のショーツ。  
自分のショーツと、キンブリーさんの下着が違和感なく近づきあってた。  
「女の子から見て、私はどうですか?」  
「…キンブリーさんて、お…」  
んな?と言おうとした。  
 
でも、キンブリーさんのあそこは何だか大きなテントを作っていて…  
あれは多分…そうだからキンブリーさんが女の人なわけない。  
私はなんだか急にいけない気持ちになった。  
いたずらをしてる子供を見て、それを誰にも言わず腹に隠したみたいに。  
いたずらなんてものより、殺人とかのほうが例えやすいかも。  
「ウインリィさん…」  
はあはあと荒い息が、私にかかる。  
汚ない、気持ち悪い。  
私はキンブリーさんに抱いていた、紳士的という気持ちを捨てた。  
「私、どうですか?ウインリィさんから見た、この私はどうですか?」  
見せつけるように、キンブリーさんは私の股にショーツの膨らみを押しつけては反応を楽しんだ。  
「きっ…もちわるい!変よ!嫌!離して!エド、エド!アルは!?」  
キンブリーさんの筋肉質な腰に履かれた女もの下着が急に怖く見えた。  
なんであんなものを履いてるんだろう。  
服は可愛いものじゃないのに、どうしてそこだけ…  
怯えて威嚇する私を、キンブリーさんがまた変な笑顔を見せた。  
「ああ、もっと言ってください…ウインリィさん、貴女の可愛いお顔で、もっと…」  
キンブリーさんが、ふいに私の髪の毛に鼻を埋めた。  
横の髪と縛った髪が無理やり倒されたせいで一緒になってたのだ。  
「…嫌!やめてよ、変態!変態!気持ち悪いから!やめてってば…!やめて!」  
耳元で、キンブリーさんの鼻息が聞こえる。  
「やめ…きもちわるい!変質者!嫌!」  
「ウインリィさん…私は…どうですか…?」  
「気持ち悪い!おかしい…変!やめて!やめて!」  
無意識に、拒絶の言葉を口走る私。  
 
そのときキンブリーさんが小さく、本当に小さく声を出した。  
「っ…はぁ。」  
ふと股を見ると、私のショーツやストッキングは、見たことない白いものがかかっていた。  
そして度肝を抜いたのが、キンブリーさんのショーツから飛び出したおちんちん。  
医学の本でしか見たことのない、男の人のあれが可愛いショーツから出ていた。  
「出てしまいました…」  
変な笑顔のキンブリーさんが、あれに添えていた手をどかして私の前髪を撫でた。  
「やっ…!」  
「ウインリィさんは、お母さん似のお変わりない髪の毛でいらっしゃる…」  
「い…嫌!」  
「写真の貴女にも、貴女のお母さんにも一目惚れでした…」  
「嫌、嫌…」  
「ああ、可愛らしい娘さんだ…」  
「やめて、やだ…」  
「こんな姿じゃエドワードさんに会えないでしょう。」  
キンブリーさんは、ショーツをずらして私のあそこに何か当てた。  
もちろん、何かは分かってる。  
「ああ、コート。あれで隠せば問題ないですね。汚したり漏らしたりしても大丈夫です。」  
下半身に感じたことのない違和感が走った。  
「ひっ……やあああああっ!!」  
 
「ぎゃあああああああああああ!!」  
「おい、どうした?!大丈夫か!」  
「あーっ!うあーっ!…はぁー…夢か…?」  
ダリウスが肩を落とし、呆れた顔をした。  
エドワードの叫びを聞きつけたハインケルが、ドアからこっそりと覗き、何もないと分かると去った。  
「お前まだ全快してないだろ、なんだよ、大丈夫か?」  
「うん、すまんゴリさん…」  
髪の毛をかきあげて、ぼやけた視界を定かにした。  
視界にいるのはむさ苦しいダリウスだけで、ウインリィもキンブリーもいない。  
「おとなしくしてろよ。」  
戻ったダリウスを見てまたベットに寝直したエドワードを、下半身の違和感が襲った。  
ぬるりとしたパンツの中。  
最悪だ。  
「あのヤロー…夢にまで…つかウインリィ…」  
重い体を起こして、痛む腹を押さえトイレへと向かった。  
 
 
 
終わり  
 

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