どっちが先にしたいと言いだすかは分からない。  
夜更けにラジオを聞きながらのんびりしている彼の隣に座る。  
手には適当な雑誌。宝石やバックのカタログを読んでいると「欲しいのか?」なんて言われてしまうから、いつも夜は雑誌。  
たまに、1日はもう終わってるのに新聞を持ってきてしまうこともある。  
夫婦になってかなり経つし、私も彼も積極的なはずなのに、まだ夜には慣れない。  
部屋はソファーの後ろにベッドがあって、ベッドの横に窓がある。  
ほんの少しの期待を胸に、彼の眼帯の見えるほうに座った。  
ここからが、よく分からない。大体はへたくそな愛情表現に困らせられる。  
昔からそうだった。ビンタ張ったときも、あまりの失礼さに憤慨した。  
長年一緒にいてようやく分かったのは、へたくそではなく女性の気持ちに鈍感なのだということ。  
一番困ったのは、友達と昼下がりに電話していたとき、いきなり後ろから抱きつかれて硬く勃ちあがったものをお尻に押しつけられたとき。  
電話は中断され、明るい部屋で私はされるがまま……  
ああいけない、思い出したら枕に顔を埋めて叫びたくなる。  
離婚しようかと思った。  
ラジオから時報が鳴り響く。  
チャンネルを変えようと立ったとき、すっと手を取られた。  
視線を合わそうとする前にキスをされ、背中に大きな手が回った。  
おずおずと彼の背中に両手を回し、抱き締めあう。  
「また痩せたかね?」  
私の腰を撫でて言う。そんなに痩せていないはず…と思い、彼のお腹に手を当てた。  
「あなたの筋肉が増え続けてるからじゃないかしら。私、ぎゅってされたら死んじゃうわ。」  
案外本気で思っている。  
抱き締められすぎて死んでしまうなんて、洒落にならないだろう。  
抱き抱えられ、歩く振動を目を閉じ感じていたらベッドに落とされた。  
起き上がって、かがんでいる彼を抱き締めてまた寝る。  
あとはもう触りっこ。  
寝た体勢のほうが、触りやすい。  
 
何か尻に執着でもあるのかというくらい、この人は尻が好きだ。  
男性は尻よりも胸のほうが好きなイメージがあるから、何となく解せない。  
服の上から尻をまさぐられる。  
太ももの裏側から尻にかけて何度も撫でられ、中で下着がずれる独特の痒さを感じた。  
撫でられているうちにネグリジェの裾がめくられ、ふくらはぎがシーツに直に触れるのが分かった。  
足を腰にまわして、股と股をくっつけた。下着越しに何か硬いものがあたる。  
背中を浮かせて、布越しの硬いものを股で擦り付け確かめた。  
感じたのか余裕がなくなったのか、いきなりキスをされ舌が入り混み、寝室にくるまえコーヒーを飲んでいたことが分かった。  
気分が盛り上がってきた私は、口を開いた。  
「あなた?」  
すこし息を荒げた彼に小さく囁いた。  
顔をあげて、なんだね?と言わんばかりに私を見つめる彼を諭した。  
「お尻はもうお終い。」  
この一言が、スイッチになることは十分承知の上。  
いとも簡単に私は四つんばいにされ、ショーツが降ろされた。  
「断る。」  
産毛を撫でるように尻をするすると撫で、変な触り方にぶるっと鳥肌が立つ。  
最初は彼の趣味だったけど、好奇心が動いてしまい今では私も彼の趣味にはまりこんでしまった。  
いつくるか、とひやひやしながら拳を握りしめた。  
とたんに、パァンと尻が叩かれた。  
喉から短い悲鳴が出る。  
手が次々に軽々しく、強く尻を叩いた。  
「い、い…」  
数回ほど叩かれたあと、尻が熱を持ち鈍く痛みだした。  
けっこう強い力で叩かれてるのか、それとも私の体が痛みを感じやすい体なのかは曖昧だ。  
「何回叩かれたか、覚えていてくれ。」  
はいとかうんとか返事をする前に、手が振り下ろされた。  
叩かれ弾く音と、叩かれるたびに剥がれるような痛みが腰から下を襲う。  
押さえようとしても、見えない背後からくる衝撃に喉が耐えられずに悲鳴が漏れる。  
悲鳴は小さく、聞くだけなら喘ぎにも聞こえるだろう。  
「さて、何回だ?」  
手を止めて、私に問いただした。  
顔だけ振り返って、息を飲んで答えた。  
「8回…?」  
「違うぞ。」  
バチィン!とさっきとは比べものにならない派手な音と痛みが全身を駆け抜けた。  
頭も指先も痺れ、短い悲鳴が上がってしまった。  
あまりの痛みに膝が折れ、這いつくばってしまい足元までずり落ちていたショーツが床に落ちたのを感じた。  
「おお、そうだ。あまり大きな声を出すと、セリムが起きてしまうぞ。」  
私ははっとして、ドアのほうを見て耳を澄ませた。  
物音はしない。  
「あなた、悪い冗談はよして。」  
 
お腹に手を回され、持ち上げられて正座している彼の膝の上に体を乗せられた。  
私の尻が、ちょうど彼の臍あたりに密着している。  
「見えないかね、真っ赤だ。」  
外気に晒されてるはずなのに、尻が熱くてヒリヒリする。  
触られれば、手が這う感覚と一緒に痛痒くなり、体を硬くしてしまう。  
「本当に痩せたな。」  
ネグリジェのリボンを取り、脱がせるのかと思いきや視界が真っ暗になった。  
目を開けても、うっすらとしか見えない。  
「あ、あなた?これじゃあ、あなたの顔が見えないわ…」  
また叩かれるのかと思ったら、両手を体の下に入れられた。  
リボンはきつく縛られていても、素材が素材だ。すぐ落ちるだろう。  
「見えなくていい。」  
何をされるのかと期待していると、脇腹を手でつかまれて体をがっしりと固定されたあと尻の割れ目に熱いものを押し付けられ、腰を振られた。  
下はもう濡れているのに、何故わざわざ焦らすのか。  
「あ…いや…」  
尻に与えられる刺激に、また濡れるのが分かった。  
お尻のほうに入れたいとか言われそうで怖いけど、興味があるのも確かだ。  
「あなた…」  
何より見えないのだ。  
怖いけどお尻のほうに入れられてもおかしくない。  
それがまた興奮した。  
「そこじゃなくて…」  
「どこだね?」  
「だから、その…」  
体の下にある右手をあげて、手探りで熱いものを掴み、濡れたところに先端をつけた。  
「ずいぶん積極的になったな。」  
腰が進み、私の中に待ち兼ねていたものが入った。  
指が感じる部分を触り、ついはしたない声が出てしまう。  
セリムが起きる。  
それが頭を過り、より一層緊縛感を高めた。  
這っている体勢から仰向けにされ、ネグリジェを胸元までたくしあげられた。  
目隠しで分からない、きっと胸がだらしなく見えてしまっている。  
私のそこはぐしゃぐしゃだから、今日もまたどちらかが疲れるまで続くのだろう。  
叩かれたり、目隠しされたりすることを待ってしまう私は淫乱だろうか。  
私が淫乱なら彼は変態だ。  
先ほど下手くそな愛情表現に困り、離婚しようかと思ったなどと心の内を明かしました。  
離婚なんて気持ちは毛頭ありません。  
こんな面も含めて、私は彼、彼は私しか受け入れられませんから。  
 
 
 
終わり  
 
 
 
おまけ  
 
 
「またお盛んでしたね、お義父さん!」  
「その口調でそんな話はやめろ。」  
「いいじゃないですか、楽しいですし。」  
「しかも起きてたのか。」  
「はい。お義母さんがすごい声を出してぐったりするあたりまで見てました!」  
「変態め。」  
「そんなことお義父さんに言われたくありませんよ!」  
「…うん。」  
「なに納得してるんですか。」  
「いや、うん。」  
「次は僕も混ざっていいですか?影がお手伝いします!」  
「いや、いらん!お前は寝てろ!」  
 
 
 
おわり  
 

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