汽車は夕陽に向かって走っている。揺れる車内の個室で、二人は並んで座っていた。  
 男は女性の肩を抱き、彼女は相手に凭れ掛かり頬を赤く染めている。  
夕陽に照らされているせいもあるだろう。ただ、男の腕は彼女の上着の中に消えている。  
 時折、女は切なげに伏せた睫毛を震わせ、熱っぽい溜息をはいた。  
「中佐…、」  
「ロイ、だろう?」  
「嫌です中佐、こんな所で…。あっ…、」  
 彼女が名前で呼ぼうとしないので、ロイは仕置きのつもりで乳房を揉みしだく手に力を込めたり、  
突起を抓んだりした。下着の上からでも充分、彼女は感じてしまうらしい。  
「やめて…ください…。」  
 女は涙をうっすらと浮かべて懇願する。軍服を着ている、仕事中にはどんなに好きな人が相手でも、セックスしたくないのが彼女の本心なのだ。そしてロイはそれをよくわかっていて無理強いする。  
「いいじゃないか、リザ。今は軍服を着ていようが私的時間だよ。」  
「でも…、」  
「わかったら君からキスをしてくれ。」  
 リザはおずおずとロイの首に手をまわし、控えめな色の口紅を塗った唇を、  
ゆっくりと彼のそれに近づけた。待ち構えていたロイはすぐさま舌を、  
相手の口の中に歯列を割って潜り込ませる。少し乱暴に口中をまさぐると、  
リザの腕に力がこもった。ロイは彼女の背中と腰を抱いて、暫くキスを続ける。  
男の胸に当たる乳房が、汽車の揺れに合わせて震えた。  
 
 どれ位そうしていたのだろう。何かのきっかけで互いの唇が離れ、  
ロイはそのまま首筋へと舌を這わせる。タートルネックの服を着ているので上部しか露わにならない。じれったいと思いながら、ロイは彼女の服を脱がせにかかった。  
 軍服は体型が隠れる。上着を脱がせると、リザの豊満な胸が目に飛び込んでくる。  
何度も、一糸纏わぬ姿さえ見ているのだが、見るたびに欲望を掻き立てられる。  
思わず喉をゴクリと鳴らした。  
 タートルネックのシャツを脱がせると、双乳を手で包むように触りながら、鎖骨に朱を落とす。  
「ロイ…。」  
 ようやくリザは彼の名を口にして、慈しむように頭を撫でる。  
乳房に舌が這う感触に身悶えながら、愛しい者の髪を指に絡めた。  
 やがてブラジャーも剥ぎ取られ、リザの白い上半身は窓から射す赤い光に彩られた。  
「リザ…、」  
 立たされて、もう一度口付けをされた。ふたりの体はぴったりと密着している。  
リザは下腹部に硬いものを感じ、苦笑してしまった。  
「座って、ロイ。やってあげるわ。」  
 リザはロイを座らせると、ズボンのファスナーを下ろし、下着の上から優しく撫でた。  
そして反り返り怒張している肉茎を、布から開放する。先端は透明な分泌液で濡れており、  
リザはそれを舌で舐め取った。  
 小さくなく、かと言って挿入の時に苦しむ程大きすぎなく、  
自分の性器に誂えたかのように丁度よい大きさに思えるのは、  
 
それだけ何度も繰り返し交わってきたせいだろうか。このような行為を嫌がる女性もいるだろう。  
しかしリザは口で奉仕するこの行為を、愛情表現の一つとして、時々でも行うように心がけていた。  
 優しく時折緩急をつけて、男性自身に吸い付きながら、細い指は根元をしごく。  
ロイの口から快楽の呻きが細切れに漏れ、リザはその声に悦びを感じた。  
 限界が近くなった時、ロイは制止の合図を出した。それを受けてリザは奉仕をやめ、  
ロイのポケットから避妊具を取り出す。最初はうまく扱えなかったコンドームも、  
回を重ねる毎にスムーズに装着できるようになった。今ではもう簡単に着けてあげられる。  
 リザが手を動かしている間、ロイは彼女の背中を掠めるように愛撫した。  
その後彼女を立たせ、ズボンに手をかける。腹部にキスをしながら、ゆっくりと脱がせていく。  
ブラジャーと同じ純白の下着が、太陽の光によって橙色に染められている。  
「君はしゃぶりながら感じていたのかね。いやらしい女だな。」  
 下着の上から秘所に触れると、しっとりと濡れていた。ロイは焦らすために軽くしか触れない。  
羞恥でいっぱいになったリザの顔が、嗜虐心をくすぐった。  
 下着をおろし、茂みの中へ指を触れる。溢れんばかりの蜜液をその指に絡めとった。  
入り口付近で抜き差しを繰り返す。  
「んっ……あ、ああっ…、」  
徐々に深みへ潜らせ、彼女の反応を楽しむ。指の本数を増やし、  
男根を思わせる速度で粘膜を刺激する。肉襞は愛液とともに指に絡み、吸い付いた。  
「ダメ…ロイ、もう立って…られない……あ…、あん…、」  
 気づくとリザの足は少し震えている。今にも崩折れてしまいそうだ。  
 
「我慢するんだ、リザ。まだ駄目だ。」  
「そんな…、…やっ…ぁん、」  
 指の往復運動をやめ、彼女の片足を座席の上に乗せて、顔を股間にあてがう。  
敏感な部分に舌で触れると、喘ぎ声がいっそう大きくなった。  
「お願い…赦して…。」  
 嗚咽のように途切れ途切れに哀願されて、ロイは口の位置をずらした。  
膣襞の一枚一枚に舌をこすりつけ、既に充分潤っている秘唇を更に濡らす。  
粘膜と唾液が奏でる音は、まるで小鳥のさえずりだ。  
「あっ…あ、あふ……はぁん、あっ…んぅ、」  
 ロイの肩にかけられた手に力が入る。それで体重を支えていた。  
立っているのがやっとで、椅子に膝付いた左足からも力が抜けている。  
「君は本当に感じやすいんだな。濡れているどころじゃなくて大洪水だ。」  
 愛液にまみれた顔でにやりと笑い、相手の羞恥心を焚きつける。  
もう一度指をクレバスに差し入れた。いつでもこんな言葉で嬲るような真似をしているわけではない。  
軍服を身に纏った、仕事中という事実が彼を饒舌にさせていた。  
「欲しいかい?リザ。君のここは随分と飢えているようで、指を締め付けて吸い付いてくるよ。  
君は昔からこうだったから、天然ものの名器なのかな。」  
「ロイ…、」  
「欲しいなら、ちゃんと欲しいと言いなさい。」  
 そう言ってロイは彼女を座らせ、片手はそのままに、もう一方の手は胸へと運ぶ。  
 
乳房に触れるか触れないかのすれすれを、手の全体で撫でる。指先でもそうしてみたり、  
こねるように揉み解したりした。息遣いは非常に官能的で、  
中心の突起に触れると微かに嬌声があがった。  
 手と舌を使って滑らかな肉丘を執拗に責め、余っている片手は下で最も敏感な部分を弄っている。  
力が入り過ぎないように注意深く、充血した小さな突起を濡れた指で擦るのだ。  
「ふぁ…あ…、はぅ…あぅ…あぁん、」  
 繊い喘ぎ声が、自分の喉から出ているのが信じられないくらい、  
リザは周りに対する冷静さを失っていた。既に自分が何をしているのか解っていないような、  
白い混沌の中に身を置いていた。乱れているのを認識できない程乱れているのだ。  
 長年の付き合いなだけあって、ロイは彼女の性感をよく理解している。  
しかも絶頂を迎える手前で愛撫の手を止めて焦らしてくるのだ。大変意地が悪い。  
「お願い…ロイ…、もう、無理…、」  
「何が無理なのかね?我慢がか?言ったろう、きちんとおねだりしなさい。」  
「ぃや…ぁ…、」  
 羞恥で血の巡りが変わってしまったかのように錯覚した。体中がとても熱い。  
触れられているところが特に、途方のない温度になっているような気がする。  
「きて…、ロイ。お願い、…欲しいの、ロイが…欲しいのっ、」  
 ロイはしばし考えた後、折角着けてもらった避妊具を外して、屹立した先端を花弁にあてがった。  
「いれるよ、」  
「きて…。」  
 
 半分くらいまではゆっくり、残る道程は貫くように一気に挿入する。  
リザの口から一段と大きい、悲鳴に近い嬌声が漏れた。  
 
 座席に横たわり、車体の揺れの中に身を置きながら、  
リザは硬く逞しい肉塊が体内に入ってくる衝撃に耐えていた。  
前回から少し間があったので、圧迫感や微かだが痛みを感じる。だが、それが気持ちいい。  
 出し入れを呼吸の速さで繰り返し、狭い膣道をゆるやかに押し広げる。  
何度か繰り返しているうち、徐々にほぐれて、ただでさえ吸い付きのよい肉襞が更に吸着してきた。  
膣口周辺や腹部側が特に襞が多く、動くたびに男性器が刺激され、肉棒はますます張り詰める。  
奥深くまで挿入すると子宮口に亀頭が当たり、腰を引くと窄まっている部分でカリが引っかかり、  
内部の熱に蕩けてしまいそうだった。  
「ロイ…、ロイ…、」  
 喘ぎながら、リザの口は懸命に男の名を呼ぶ。  
「なに?」  
「キスして、」  
 自然とロイの顔が綻んで、やさしく接吻する。リザの腕はロイの首に絡み、  
ふたりの体は否応なしに密着した。  
 互いに互いの舌を愛撫し、口腔を弄り、同時に繋がっている部分も揺さぶる。  
長くも短くも感じるキスが終わる頃には、ふたりとも相当昂ってきており、  
ロイの抽迭に合わせリザも腰を振った。  
 
 前回から間が空いているのはロイとて同じことで、いつもより感覚が鋭敏で早く達しそうだった。  
ほんの少しだけ、避妊具を外したのを後悔した。  
「んっ…あ、あぁんっ、あっあっあっ!」  
 段々ロイの自制が効かなくなってきており、気づくと激しい勢いで腰を揺さぶってしまっている。  
濡れた秘奥をロイが出入りする淫靡な音は、肌が肌を叩く音に掻き消された。  
 限界を近くに感じたロイは、体位を後背位に変更する。リザも自分も、後背位が特に感じるのだ。  
リザは座席に手をついて、個室の入り口側に向けて臀部を突き出す形になる。  
ロイは立ち上がって、彼女の腰を掴んで剛直を最奥に叩き付けた。  
「あぁっ、あ…やぁ…ぁあ、あ、あっあっ、きゃ…っあっやぁっ、」  
 何年も体を交えてきて、最も感じるようになった場所に、ロイの熱い塊がぶち当たる。  
理性などとっくに消えて無くなっている。頭の中が真っ白で何も考えられず、  
ただ身内を抉られる快感に溺れていた。  
 感じる声を出そうと意識しなくても、自然に口が開き自然に喘ぎ声が出てしまう。  
どんなに喉を痛めても悲鳴のような声が、日常会話で使う声より何倍も高い音が、  
まるで男性をそそらせるのに必須だと言わんばかりに、本当に自然に出るのだ。  
そしてその艶やかで誘う旋律の中にいるロイは、絶頂に向かって抽迭運動を繰り返している。  
 蜜壷は刺激すればする程、ロイの分身に吸着し締め上げる。  
淫らに腰をくねらせるリザの姿は、ロイの興奮の焔に油を注いだ。  
「あっ!いやあっ、もぉ、いっ…イッちゃ…、」  
 リザの体に緊張が走る。彼女の秘部はそれまでとは比べ物にならないくらいの強さで、  
 
ロイの根元をきつく締め付けた。痙攣のような発作が起きたのが分かる。  
「いいよ、イクんだ、さあ!」  
「ぃやあああぁっ!」  
「うッ、イクっ!」  
 最高潮に達したのはロイも同じで、収縮する膣肉に搾り取られるように、  
白濁の柔らかい塊を最奥の突起に向かって吐き出した。腰をぐっと押し付け、  
射精が完全に終わるまで相手の熱を感じていた。  
 射精の時の男根が蠢く感触ももはや、快楽の絶頂にいるリザには感じ取ることができない。  
景色が、すべて絶たれてしまっている。閃光が意識を貫いた。  
 
「信じられない…。ひとが折角つけたコンドームを、わざわざ外したの?それも断りなく。」  
 情事の後の倦怠感の中で気付いてしまった、とんでもない事実。  
座席に横たわったままで、陰部からはロイが出した精液が顔を覗かせている。  
「シートが汚れちゃう…!ティッシュなかったかしら?」  
 起き上がると重力の関係で、更に内部から流れ落ちてしまう。  
ロイがちり紙を探しているが間に合わず、仕方なく溢れる白い体液を手で受け止めた。  
「最悪…。…女の敵。」  
 手についた粘液を呆然と眺めて、相手が仕事上では上司であることも構わずに、そう呟いた。  
リザにはまだ結婚する気も、子を産むつもりもない。今妊娠したら困るだけなのだ。  
 
「あんまり怒るな。今の君は月経約五日前、排卵はとっくに終わった安全日なんだ。  
神が悪戯をしない限り妊娠はしないさ。」  
「そういう問題じゃ…、」  
 目の前の男の身勝手さに腹が立つ。言いたいことは山程あるが、ありすぎて逆に言葉にならない。  
しかもロイが自分の生理周期を把握していることに、彼女は軽い眩暈を覚えた。  
「なに、万一があって責任を取れと言われたら、喜んで取るから心配するな。」  
 その言葉はリザの逆鱗に触れた。引き攣った笑みを浮かべて紡ぐ言葉は、  
少し震えているように思う。  
「将来、中佐がどなたにプロポーズするかは存じませんが、  
その時はくれぐれも場所とムードと言葉に気をつけた方が宜しいかと。」  
「はは、心得ておくよ。」  
 すっかり気を緩めて笑うロイの顔面めがけて、リザは手についた精液を投げつけた。  
 
 
 

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