「リザ」
その声が、私が長い間グラスの中で揺れる紅い液体をぼんやりと眺めていたことを気付かせた。
大佐は私の手からワインの入ったグラスをすっと抜き取り、テーブルに置いた。
「中尉、酔ったのか?」
大佐の黒い目が心配そうに細められ、私を見つめる。
たったそれだけのわずかな大佐の仕草に、また躯が熱を持ったような気がした。
背筋にぞくりと小さな痺れが走る。
どうしようもなくほてる躯を朝から持て余しており、アルコールによってさらにその熱は高まった。
しかし、今、意識が少し霞むような気分を覚えるのはアルコールのせいだけではないだろう。
多少酔っていることは否定できないが、肌が赤く染まる程度であり、明日になってこの時を忘れるほどには飲んでいない。
「中尉、眠いのか?ベッドへ行こうか?」
大佐は先程から、まるで保護者のような心配の滲んだ質問ばかりしてくる。
しかし私は一度も大佐の問い掛けに返事を返さず、ただ彼の動く唇を遠慮なく見つめていた。
普段の私ならばきちんとすぐに質問に答えるし、決して無遠慮なことはしない。
今、この時期だから、私は少しおかしいのだ。
「そんなに飲んでいないとは思うが…熱いな」
ふと大佐の腕が私の方へ伸びてきて、彼と私の二人を乗せたソファーが軽く軋んだ。
胸元まで伸びた金髪がさらりと動く。
まるで髪が隠すかのように覆っていた熱い頬に大佐の手が触れ、それだけで躯の芯がぞくぞくと震えるようだった。
頭の中は靄がかかったように混濁としていて、睡魔に襲われているようなぼんやりとした状態だが、大佐の温もりだけは敏感に感じ取る。
月のものが近いこの時期は、急激に眠気が高まる。
そのために、私の体のことを熟知している大佐は、私を気遣ってもう寝ようかと提案してきたのだ。
しかし、この時期は眠気が高まると同時に、性欲も恥ずかしいほどに高まってしまう。
私の頬に優しく触れている大佐の手の平に、そっと自分の手を重ねた。
「…大佐…」
「どうした?」
確かにアルコールも手伝って眠いのだけれど、躯は睡眠よりも大佐が欲しいと訴えている。
大佐に今晩部屋に来ないかと誘われ、自宅に招かれた時から、はしたなくも私は彼から行為を仕掛けてきてくれないかと期待していた。
どうしようもなく疼く躯を鎮めてほしい時、どのような言葉で大佐を求めてよいのか分からない。
私は気の利いた言葉を言えないつまらない人間だ。
「血も涙もない冷徹な女だ」なんて、私を憎く思う人になじられることがある。
しかしプライベートの私は、私よりも人生経験の少ない少女達ですら簡単にやってのけることができず、それで悩んでばかりの未熟な小さい人間なのだ。
「…大佐」
大佐の片手を強く握って指と指を絡め、言葉にできないのならば行動で示そうと決意する。
名残惜しいが大佐の手から指を離して、彼の方へわずかに身を乗り出す。
大佐の肩に遠慮がちに両手を置き、小さく深呼吸をした。
「…中尉…?」
不思議そうに私を見る大佐の姿を目の当たりにして、とてつもなく恥ずかしさが込み上げてくるが、必死にそれを無視して軽く口付けた。
すぐに離してしまった唇をもう一度強く押し付けて、唇を重ねたまま大佐をソファーに押し倒した。
ぼすんと音を立てて、二人でソファーに横になる。
唖然としている大佐の口の中へ入り込もうと、必死に彼の唇を軽く噛んだり舐めたりする。
私から行為を要求するという極めて珍しい状況を大佐はようやく理解したのか、唇を開いて舌を絡めてきてくれた。
私の下手な口付けから、いつもの大佐がリードをする激しい交わりへと一変する。
明るいリビングにくちゅりと口付けをする水音だけが響いていることに、ふと気が付いて頬に朱が走る。
通常の私ならば、電気をつけたまま行為を始めようとするなんて絶対に有り得ないことだが、今は早く大佐とこの熱を共有したかった。
「…っ…はぁ…っ」
自分から仕掛けたはずの口付けなのに、大佐にされるがまま弄ばれて、すっかり息が乱れてしまった。
濡れた口元を拭わないまま、大佐の太い首に顔を埋める。
「…たいさ…」
大佐の心地良い香りが鼻を掠め、目を閉じて彼の匂いに浸る。
口付けの余韻に浸る私に、大佐は休む暇を与えずブラウスの裾から軽々と手を侵入させた。
躯はこれから与えられるであろう刺激に期待をして、背中に鳥肌が立った。
大佐の手は布の中で素早く動き、易々とブラジャーのホックを外した。
「…やっ、あ…ん!」
胸がきつい締め付けから解放されたと思う暇もないまま、大佐は乳房を手の中に収めた。
私が大佐の上に覆いかぶさっているという、彼にとって不自由な体勢など関係なく、彼はいつも通りに行為を進める。
「…ふっ、うぁ…ッ」
乳房の丸みを指でなぞられるだけで、信じられないほど気持ちが良い。
大佐の腰の両脇に置いた太ももで、何度もぎゅうぎゅうと彼を締め付けてしまう。
私も大佐に触れたくて、彼の脇の下に腕を滑り込ませ、何とかそこに肘をついた。
大佐のシャツのボタンを外そうとすると、彼も同じことを考えていたのか、躯を上げた私の胸元にすぐに手が伸びてきた。
鮮やかだと褒めたいほど、大佐は器用に素早くブラウスのボタンを外していく。
私はまだシャツのボタンを二つほどしか外せていないのに、私はもう上半身をほぼ露出してしまっている。
「…ん、う…っ」
大佐がブラジャーごとキャミソールを上にたくし上げ、乳房が零れ落ちるように外気に晒された。
「…あぁ…っ…んっ!」
とっくに硬くなっていた胸の中心を指先で弾かれ、腕が折れそうになるが耐える。
大佐は愛おしそうに赤い尖りを指で突き、つい喘ぎ声が零れる。
「…はっ…あっ、あ…」
大佐が遊ぶように乳首を捏ねくり回したのに負けず、彼のシャツのボタンを全部外そうと奮闘する。
「…ん、ん…っ」
「中尉、お尻をあげて」
「…あ…っ、…え…?」
最後のボタンを外し終える頃には、肩を大きく上下させて息をしていた。
大佐が丁寧に愛撫をした乳房の上の突起は、まるで果実のように硬く実り、すっかり赤くなっている。
「尻を上げるんだ」
「…あぁッ!」
頭がぼうっとして、大佐が言ったことをすぐに理解できなった私を叱るように、彼は乳首を軽く押し潰した。
へなへなと大佐の上に倒れ込みながら、言われた通りに尻を高く上げる。
大佐はスカートをブラウスの裾の位置まで捲くり上げると、躊躇いなくショーツを引き下ろした。
太ももや尻があっという間に晒される。
きっと秘所とショーツの間には、いやらしい液がねっとりと糸を引いているであろう。
膣の周りは自分で分かるほどぐしょぐしょに乱れていた。
「…んう…」
膝までショーツを下ろした大佐は、剥き出しになった尻を触り始めた。
触れられている部分に鳥肌が立ち、子宮がじくじくと疼く。
「…あっ、んあっ!」
大佐の指が尻から秘所へと向かい、熱いそこを掻き混ぜるかのようにぐちゅぐちゅと撫で回した。
堪らず大佐の胸板に縋り付く。
「…ふぁ…あ…」
裸の胸と胸が擦れ合い、そのいやらしい状態を見てまた秘所が潤いを増した気がした。
大佐は私の髪が首筋で小刻みに動くのがくすぐったいのか、大きく息を吐いた。
「んっ、あぁ…!」
大佐の指がするりと簡単に膣の中へ入り込み、水音を立てながら出入りをする。
膣に大佐の指が入り込むという小さな圧迫感が気持ち良くて、危うく意識が飛びそうだ。
大佐の指は体液を掻き出すかのように激しく動き、膣から何度も液がぽたぽたと落ちて、スカートに染みを作った。
「…んんっ、あ、はあ…あ…ッ」
大佐の逞しい胸板に自分の乳房を擦り付けることが気持ち良くて、小刻みに躯を動かした。
尻を高く掲げ、ぐっしょりと濡れた秘所を弄られ、そして自ら喜んで動く私はまるで犬のようだ。
「あ、あぁ…っ!」
自分の状態を一度冷静に理解すると、急に恥ずかしさが込み上げてきて、肩ががくがくと震えた。
電気のついた明るいリビングで、何も隠すことのできないこの場で、尻を上げて盛るだなんて本当に犬のようだ。
しかも、つい先程までは大佐と二人でワインを楽しんでいたのだ。
「…あっ、いや…っ!…ふぁああッ!」
信じられないことに羞恥は快感へと変わり、膣がきゅうきゅうとうごめき出した。
その中を大佐にタイミング良く指で引っ掻かれ、私は尻を突き出したまま絶頂を迎えてしまった。
「…っ…あ…っ」
汗と膣から溢れ出た液が太ももにとろりと伝うのを、大佐の胸板に顔を押し付けながら感じていた。
とてつもなくいやらしいが、同時に気持ちいい。
「…ひぁ…っ」
大佐は先程まで膣を掻き混ぜていた指を音を立てて引き抜き、生温い体液を纏った手で尻を撫で始めた。
大佐は尻の形を確かめるようにやんわりと撫でているだけなのに、達したばかりの躯では突き刺さるような強い刺激になる。
気が付けば私は大佐のはだけたシャツを掴んでおり、そこはぐしゃぐしゃだった。
大佐はもう片方の手を私の頭へと伸ばし、乱れた髪を梳いて耳へ掛けてくれた。
大佐の手の平は耳を撫で、それから剥き出しになった熱い頬を冷やすように触れ、その心地よさに目を閉じる。
月のものが近いこの時期に妙に眠くなることや、おかしいほど「したくなる」ことなど、大佐は女性特有の体質を優しく受け入れてくれている。
この時だけは、私から行為を誘っても大佐はからかわず、意地悪な言葉も言わず、ちゃんとこうして愛してくれる。
大佐が私を押し倒す時は、恥ずかしさのあまり私は「変態」だとか「腰がまだ痛い」だとか罵倒の言葉を浴びせてしまうが、彼はとても優しい人だ。
「…たい、さ…」
その大佐の優しさに対し、口に出して礼を言えるほど私は素直な女ではない。
可愛くないと反省しつつ、言葉の代わりに再び下手な口付けをした。
「…んぁ…、あ…」
また大佐の手がゆっくりと動き出し、指先がどんどん繁みの奥へと進んでいく。
小さな尖りを指先で優しく撫でられ、びくりと尻が跳ねた。
大佐の肩に横顔を預けて甘い衝撃に耐える。
「ひゃうっ、あ、あ…っ!」
敏感な芽を控え目に突かれ、また腰を挟んでいる脚に力が入る。
「…ん…っ」
私も大佐に触りたい。
大佐にも気持ち良くなってほしい。
大佐の肩に顔を埋め直し、そこを支えにして、両手を彼のシャツから離した。
そして、体液をまぶされてびしょびしょになったスカートを押し上げているものへと手を伸ばす。
ズボンの上から大佐のものに触れると、急な出来事に彼が小さく呻いた。
「…やぁ、あ…っ…」
秘所を弄られながらも何とか手探りでベルトを外し、ズボンの前をくつろげる。
頼りになるのは手と感触だけで、まったく何も見えないので苦労したが、時間を掛けてようやく目的のものに触れることができた。
「…あ…」
「…く…っ」
すでに熱を持ち硬くなっているものを、下着の上から軽く上下に何度もなぞる。
大きく乱れた大佐の呼吸が耳に届き、手に収めた塊を撫でてる動きにさらに力がこもった。
まるで転がすように下着ごと塊の上で手の平の動かす。
「…中、尉…」
「…大佐…熱い…」
下着からずるりと大佐のものを取り出すと、彼が息を飲んだ。
尻を高く上げ、支えは大佐の胸板に預けた首と、その横に置いた左腕だけだ。
この獣のような体勢のまま、利き手で彼のものを握ってみる。
大佐が私の秘所を愛撫する手は完全に止まっていた。
「…っ…」
大佐の息が乱れるのが愛おしくて仕方がない。
猛りに優しく指を絡め、先端から溢れた液を全体に塗っていくように親指を動かした。
一番先を親指でくるくると円を描くように触ると、大佐のものがぴくりと動く。
「…大佐…気持ちいい…?」
「…ああ…」
動揺が滲んだ答えだったが、嬉しくなって指で触れるだけだった動きを、扱くものに変える。
手の平と指で包んだ大佐のものはとても熱くて、腕を上下に動かす度に躯の中心がじくじくと痺れた。
早くこれが欲しい――
無意識に恥ずかしいことを思いながら、指先で脈を軽くなぞってみたりなど、私なりに一生懸命愛撫をする。
「…んっ、ふぁっ!?…あぁ…っ!たい、さっ!」
大佐のものを愛撫することに夢中になりすっかり忘れていたが、彼の手は私の一番敏感な部分に触れているのだった。
突然小さな粒をくすぐられ、甘ったるい声を盛大に出してしまう。
「…んんっ、あ!…はぁ…あ…ッ!」
言葉もなく、二人分の乱れた吐息と喘ぎ声だけが部屋に響く。
お互いの気持ち良いところを触り合うという行為があまりにも刺激的で、恥ずかしさも忘れてこれに酔っていた。
私が根本から先端までを指で作った輪で強く撫で上げれば、大佐もすっかり顔を出した芽を容赦なく押し潰す。
お互いのものを愛撫することに夢中になればなるほど、その分激しい痺れが返ってくる。
「…あ、ん…!ふ、大佐…っ!」
高く掲げていた尻がふるふると震える。
手に収めている大佐の熱いものが欲しくて堪らないからだ。
「…た…いさぁ…っ!」
この手の中にある猛りが私を貫くのだと思うとひどく淫らな気持ちになって、さらに大佐が敏感な尖りを指の間に強く挟んだため、私は軽く達してしまった。
「…あぁー…っ」
腕と脚ががくりと折れ、よろめきながら大佐の上に倒れ込む。
私を受け止めた大佐の躯が、先程の私のようにとても熱い。
「…あ…」
繁みまでびっしょりと濡れた秘所が、ちょうど大佐のものに重なった。
ぱくぱくとひくつく入口に待ち焦がれたものに触れ、達したばかりだというのに、猛りに膣を擦りつけるように腰を動かしてしまう。
一度動いてしまうと、はしたないと分かっていても止められなかった。
したくなるのも、私から誘ったのも、この特殊な時期とアルコールのせいにしていたが、実は私はとても淫乱なのかもしれない。
いつもは羞恥が邪魔をして素直になれないが、今の快楽に貪欲な姿が私の本当の姿なのだろうか。
「…あぅ…うっ、ん…っ」
「中尉…っ」
私の淫らな動きを止めるように、大佐の両腕が背中へきつく回された。
「…大、佐…?」
「…中尉…ベッドへ行こう」
「…ん…」
普段ならば恥ずかしくて俯いてしまうような誘いだが、今は必死に大佐にしがみついた。
大佐は私を軽々と抱え上げて、薄暗い寝室へ向かった。
大佐はベッドの上に優しく私を降ろすと、中途半端に纏わり付いていた服を取り払った。
そして自らも服を脱ぎ、大佐も私も生まれたままの姿で何度も舌を絡めて口付けをした。
「…中尉」
避妊具を着けた大佐が、私の額に自分の額を擦りつけた。
入れても良いのかと問うその行動に、大佐の逞しい首に腕を回すことで「来てほしい」と答えた。
「…あん…っ」
ゴムに包まれた先端が濡れそぼった入口に押し当てられ、それだけで背が弓のようにのけ反る。
大佐は慎重に、ゆっくりと私の中に入ってきた。
だんだんと膣に隙間ができなくなる圧迫感や、大佐という男性に征服されることが気持ち良くて、簡単に絶頂へ向かってしまいそうだ。
「…あぁ…っ、きもちい…!」
大佐の黒い髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き乱して、思わず口走る。
大佐でいっぱいになった膣が熱い。
「…うん…っ、んーっ!」
腰から下がとろけそうなほど熱くて、なくなってしまいそうだ。
律動を始めた大佐の腰に、まるで逃がさないというように自然に脚が絡まった。
「…あっ、あっ、んあっ」
大佐に揺さ振られる動きに合わせて、唇から喘ぎ声がもれる。
大佐は私の顔中に唇を落としながら、だんだんと抜き差しする動きを速めていった。
私も下手なりに腰をめちゃくちゃに動かして、更なる快楽を求める。
膣の壁を大佐のものが乱暴に擦るだけで、どうして涙が出るほど気持ち良いのだろう。
「…大佐…っ、たいさ…!」
「ん…?中尉?」
「…き、気持ちいい…?」
「…ああ、いいよ」
耳たぶを舐めていた大佐に直接低い声を送りこまれ、思わず脚から力が抜けてしまう。
大佐と私が動く度に、どちらのものか分からない汗と体液が肌の上で混ざり合った。
何の隔たりもない裸で抱き合い、大佐が私の中を好きなように掻き混ぜる――
これ以外には何もいらないと思うほど気持ち良くて幸せだ。
「…はうっ、あっ!…んあぁ…っ」
「…リザ、そろそろ…っ」
「んんぅっ!あ…っ、わ、私も…ッ!」
大佐が私を突き上げる動きがより激しくなり、内股に二人の体液がびちゃびちゃと飛ぶ。
ぱんぱんと肉と肉がぶつりかり合う音が聞こえてきそうなほど激しい律動だった。
「…リ、ザ…っ!…リザ…!」
「たいさぁ…!…んあっ、あっ、ああぁー…!」
膣の奥で、ゴム越しに大佐がどくどくと熱い精を放つのを感じた。
同時に乳房に吸い付かれ、落下してしまうような感覚に陥りながら私も達した。
「…すご…い…」
躯中に走る痺れを感じ取るのには敏感なくせに、意識がぼんやりとしている。
うまく動かない腕を何とか持ち上げて、大佐の頭を胸へ引き寄せた。
大佐はされるがままに二つの膨らみに頬を埋め、息を整えている。
シャワーを浴びたあとのように私も大佐の躯も汗まみれだ。
そのまま抱き合うことに嫌悪は覚えず、むしろ心地良かった。
私の肌が大佐の熱い肌に重なり、溶け合って一つになっているようで気持ち良い。
――もう一度、いや出来る限り、何度でも境界線が分からなくなるほど溶けて一つになりたい
「…っ…リザ…」
「…あ、ごめんなさい…」
「いや、いいんだ。…次は私から誘いたかっただけだ」
ただ抱き合うだけでも快感に変わり、まだ私の中に入っている大佐を締め付けてしまった。
強い刺激を受けた大佐はそれでも穏やかに笑いながら、私の胸から顔を上げた。
そして、黒と茶の瞳から放たれる熱い視線が絡み合い、どちらともなく深く口付けた。
唇の端から唾液が零れ落ちるのにも構わず貪り合う。
ただ抱き合って熱を共有し合うこともいいが、それよりも今はまだできるだけ繋がっていたい。
言葉がなくてもお互いにそう思っていることが伝わり、また躯の中心が震えながら喜ぶ。
いつも強情さが消えたその晩、私達は何度も一つになり、激しさと幸福を感じながら私は何度も大佐に溺れた。
終わり