またまた潜入調査前のペコーたんの災難話です。
「くれぐれも気を付けてくれよ。君はたまに無理をするから」
「はい」
リザの返事に保証はないが、力強くはっきりと返された答えにひとまずほっとする。
今は私の自宅でひっそりと潜入調査の打ち合わせを行っていた。
テーブルを挟んだ向こう側には、マーゴット・オレンジ・ペコーになるために私が用意したスーツを着たリザが姿勢良く座っている。
真面目に何度も資料に目を通すリザを、私はそっと盗み見た。
しばらく会えなくなるのだから愛らしい恋人の姿を目に焼き付けるくらい許されるだろう。
白く長い脚を綺麗に斜めに揃えてソファーに座り、凛々しくスーツを着こなすリザは本当に秘書のようだった。
つま先からリザの身体を丁寧に眺めていた目が、自然と胸で止まる。
堅苦しい軍服の上からでも豊かさが分かるリザの胸は、上等な生地で作らせたスーツを纏うとなおさら大きさが強調される。
柔らかな布を押し返すかのように存在を主張する胸の辺りが妙になまめかしい。
しかし、当たり障りのない普通の、どちらかといえば地味なスーツを選んだのだが、美しい女性が袖を通せばたちまち上品なものへと変わるから不思議だ。
「…何か?」
リザの怪訝そうな声で、はっと我に返った。
顔を上げると、変態と罵られるという予想に反し、不安げな表情を浮かべたリザと目が合う。
「…あの、大佐…。やはり…変、ですか?」
手にしていた資料をテーブルに戻し、リザは自信なさそうに、しかし真面目に私に問い掛けてきた。
どこか心許ない様子で私を見つめるリザの鳶色の瞳には、真剣と心配が入り交じっている。
「いいや、変じゃないよ」
「でも…ずっと見ていたじゃないですか。私に遠慮なく、変なら変とはっきりおっしゃってください」
豊満な胸に見惚れていただけだから平気さ――とは、死んでも言えない。
以前から、リザはスーツを着た自身の姿を鏡で眺めては眉をひそめていた。
似合うと褒めれば腑に落ちない様子で俯き、変じゃないと告げれば自信がなさそうに礼を言う。
スーツを着用した自分の姿を見慣れないために違和感を覚えるのだろう。
それにリザは普段はスカートではなく厚いズボンを着て仕事をしているのだ。
潜入調査という危険で重大な任務に挑むからこそ、真面目なリザは小さな違和感でも残したまま出掛けるのは嫌に違いない。
「リザ」
リザは必要以上に服装を意識しすぎている気もするが、リザを安心させて見送りたい。
「眼鏡を掛けて、そこに立ってごらん」
「はい」
リビングの真ん中に立つことを促すと、変装に欠けていた眼鏡を身につけてリザが従う。
まるで何かの試験を受けるかのようにリザはぴんと背を伸ばし、些か緊張した表情を浮かべて私の視線を浴びていた。
マーゴット・オレンジ・ペコーになったリザを、今度は堂々と遠慮なくつま先から眺め始めた。
見れば見るほど、秘書となった美しいリザをほかの人間のところへ送り出すのが嫌になる。
本当なら可愛い副官をずっと私の側に控えさせ、貴重な秘書の姿だって私以外の誰にも見せたくないのだ。
不満を胸に抱きながら、しかしそれを顔には出さず、リザの長い脚を舐めるように見つめる。
ストッキングを纏った脚は鍛えられているために逞しく引き締まっているが、同時に女性らしいしなやかな脚線美も合わせ持っている。
セックスの間にあのすべらかな脚に絡み付かれると背筋がぞくぞくと痺れ、堪らない気持ちになる。
形の良い膝の上には残念ながらスカートがあり、太ももを目にすることはできないが、綺麗なふくらはぎの続きはどのような線を描いているのだろうと想像させ、逆になまめかしい。
スカートの中にはむっちりとした肉付きの魅力的な太ももが存在し、目線を上げるときゅっと引き締まった腰がある。
括れた腰と腹を視線で辿り、シャツとジャケットが丸く盛り上がっている胸に再び釘付けになる。
リザの姿が秘書として相応しいかを確認するのではなく、私は彼女の身体のなまめかしさを味わうのに夢中になっていた。
あの胸は私がリザの中に入り、彼女の身体を揺さぶる度にふるふると淫らに揺れるのだ。
「…大佐、どうですか?」
やや緊張気味のリザの声が耳に入り、現実に引き戻される。
「…あの…」
リザは大変魅力的な身体の持ち主であるというのに、性的なことを意識させない清潔で真面目な人間だ。
隙を見せないきびきびとした態度や真面目さ、そして険しい「鷹の目」が淫らなことを連想させないのかもしれない。
秘書に変装したリザもそれは変わらない。
いつもきつく纏められている美しい金髪を下ろして女性らしさを増しても、軍人らしい威圧感を纏っている。
しかし、ふとした瞬間に、リザはその気もないのに内に秘めている色気を振り撒く。
例えば今だ。
リザの整った顔は、白く美しいが常に無表情で、人形のようだと人間味の無さに近寄りがたい印象を受ける。
そのリザが今、眼鏡越しに不安そうに私の様子を伺っているのだ。
レンズ越しの「鷹の目」は鋭さが消え、子犬のように可愛らしい大きな瞳があるだけだ。
禁欲的なイメージを持つ眼鏡を掛けているというのに、まるで誘われているような気分になる。
リザが居心地悪そうに腕を組むと二つの乳房が服の中で揺れ、胸に掛かっている髪の毛先が同時にふわりと動いた。
その髪の動きすら、私を焦らして楽しんでいるように思える。
「何度も言うが、どこも変じゃないよ。怪しまれる心配はしなくていい」
「…本当ですか?」
「ああ。それによく似合っている」
安心するよう告げると、強張っていたリザの表情がふっと和らいだ。
リザの清楚な振る舞いは仮の姿で、実は彼女はいつも熱く潤んだ身体を持て余し、私を誘っているのではないかという錯覚を覚える。
美味しそうな身体を見せ付け、無邪気に微笑むリザは、男をたぶらかして遊ぶとんでもない悪い女に見えた。
「…ただ、秘書にしては少々色気がありすぎるかな」
「え?」
ソファーから立ち上がり、リザを胸に抱き寄せながら呟く。
心配事が消えたせいか、リザからはいつもの冷たさを感じるような雰囲気が感じられず、不思議そうに眼鏡越しに私を見上げてきた。
腕に抱いた女性は柔らかく、いつも以上になまめかしすぎる。
「こことかさ」
「うあっ!?」
急に服の上から胸を鷲掴みにされ、リザが高い悲鳴を上げた。
「…な、何するんですか…っ!?…大佐っ!?」
リザの足元に膝をつき、めくりあげたスカートの中に頭を突っ込むと、また彼女は大声を上げて驚いた。
後ろに倒れ込みそうになる身体を、手触りの良い尻に手を添えることで支える。
「ちょ…っ!…やだっ、大佐…!?」
太ももの間に上手く顔を入り込ませると、リザが私の奇行から逃れようと暴れ出した。
しかし太ももで私の頬をぎゅうぎゅうと挟み込むだけで終わり、結局私を喜ばせるだけで終わる。
「ガーターベルトと太ももの組み合わせは最高だな」
うっとりと囁いた声が暗いスカートの中でくぐもる。
雪のように白い太ももを舐めると、そんなはずはないのにひどく甘く感じた。
「それは…っ大佐がつけろって…!」
リザは私がスカートの中で動くたびにびくびくと敏感に反応する。
スカートの中はリザの甘くいやらしい香りに溢れていた。
上を向くとレースで作られたショーツがすぐそこにあり、私は迷うことなくそこに顔を埋めた。
「…いやぁ…っ!」
通常では有り得ない卑猥な体勢に、リザは白い頬を赤く染めているに違いない。
眼鏡の奥の瞳も羞恥に潤んでいると思うと、身体の中心が熱を持ち始める。
「…あんっ、や…めてください…っ!」
左手を痛いほど尻に食い込ませ、右手でしっとりと汗ばんできた太ももを執拗に撫でる。
そして舌で敏感な粒をレース越しに探し始めると、リザの身体が大きく震えた。
「…あぁっ、いや…!大佐ぁ…待って…!」
「中尉、ゲーム…いや、試験をしようか」
「…は…っ?」
「どんな状況であっても秘書、マーゴット・オレンジ・ペコーを演じられるように試験をしよう」
「…そ、んな勝手に…っ!」
「こら、秘書はそんなに力が強くないぞ」
「ふぁっ!」
私を力付くで精一杯引きはがそうとするリザの秘書らしくない行動を叱るために、尻を軽く抓る。
「ちなみに、床に足をついたら秘書失格だ。私が再教育してやる」
「…い、言っていることが…っ…めちゃくちゃです…っ!」
だんだんと形を持ってきた敏感な芽を舌でなじると、リザは私の肩を強く掴んで刺激に耐えた。
「…んぅ…っ、ん!」
白い脚が可哀相なほどぶるぶると震えている。
「…あぁっ…やっ、そんなに、しちゃ…!」
ショーツの横から指をすべり込ませ、繁みの奥を上下になぞると、そこは驚くほど熱く濡れていた。
「ふぁあッ!」
リザの蜜でとろりと濡れた指で、ぴんと突起を弾くと肩を掴む手にさらに力が込められた。
ちゅう、と突起に吸い付く音がリビングに響く。
わざと水音を立て続けながら突起に執拗に吸い付き、リザの中にゆるゆると指を入れていく。
「…たい、さっ!…あ、ひどい…っ」
膣の中で円を描くようにくるりと指を動かすと、荒い吐息と共にリザが喘ぎ声をもらす。
「ひゃ…あっ!…もう…やだぁ…!」
リザが脚を折るまで、そう時間は掛からなかった。
終わり