「イヤです、絶対に今日は」  
真っ赤な顔をして怒るリザは取りつく島もなく、ロイは仕方なくとりあえずの謝罪の言葉を口にする。  
「すまない」  
「すまないと思っていらっしゃるんでしたら、何故そんな香水の匂いをプンプンさせながら戻っていらっしゃるのですか?」  
「だから、女と会っていたのは仕事の一環だと何度言えば分かるんだ」  
いい加減同じやり取りを繰り返すのに飽きたロイがおざなりにそう言えば、リザは完全に呆れたようにソッポを向いた。  
「いつものことだろう」  
拗ねているだけだとベッドに彼女を押し倒したロイは、思いもかけぬ抵抗にあう。  
「ですから、今日はイヤです」  
胸を押し返され流石にムッとしたロイは、己の可愛い副官にどちらが主人かを思い出させることにした。  
「ほう、これはこれは。君は上官に刃向かうというのか」  
ロイは己の襟元を飾るネクタイを抜き取ると、自分の胸を押すリザの両手を絡めとり、そのまま後ろ手に縛りあげた。  
「何をなさるんですか!」  
「さて、どうしようかね」  
そう言ってロイはふっと微笑を浮かべると、彼女の必死の抵抗を易々と押さえ込み、その指先で彼女の耳を愛撫する。  
ふるりと身を震わせ、リザの身体が反応した。  
こんな簡単なことで反応してしまうほどにロイに躾られているくせに、両手の自由を失って尚キツい目でロイを睨みつけるリザを彼は苦笑と共に見つめる。  
この冷たい美貌を自分の愛撫で快楽に歪ませ、泣かせ、狂わせる瞬間に、ロイはたまらなく興奮する。  
しかし今日はその前に、この聞き分けのない副官に何か罰を与えてやらなくてはロイの気が済みそうもない。  
ロイは暴れる彼女の身体を抑え込みながら、何か良い案がないものかと視線をさまよわせた。  
そんな彼の視線が、サイドテーブルの上で止まる。  
ロイはニヤリと笑って目に付いた「それ」を手に取ると、ベッドにうつ伏せに転がしたリザの耳元に唇を寄せた。  
「分かった、リザ。普段は従順な君が私に逆らうとは、何か悪い病気にでもかかっているのだろう」  
「何をバカな」  
「私がきちんと治療してやる」  
リザの言葉を聞き流したロイはそう言うと、うつ伏せにした彼女の尻を高々と持ち上げスカートを捲りあげる。  
「止めて下さい! 今日は絶対にイヤだと……」  
抵抗するリザの下着を一息に引き下ろし、ロイは彼女の陰部に指を這わす。  
乾いたそれを確認して、ロイは楽しげに手に持ったものの蓋を開けると中身を指に取った。  
「したくなるようにしてあげよう、リザ」  
「や!冷たい!」  
ヒヤリとした軟膏を、ロイは彼女の可愛い快楽の芽にたっぷりと塗り付ける。  
そしてその肉体の入り口に、それから尻の中心に鎮座する小さな蕾にまで丹念にそれを塗り込めた。  
「何をなさるんですか!大佐!」  
自分がいったい何をされているのか分からず、声に不安を滲ませるリザを満足そうに眺め、ロイは彼女の下着とスカート元通りにしてやる。  
そして、リザの身体を仰向けに転がすと、ロイは彼女の目の前に今自分が使った物を差し出して、優しい声で言った。  
「治療してやると言っただろう? 君がいつも使っている薬を塗ってあげただけだよ」  
リザは目の前に出された物が何かを認識すると、低い呻き声をあげた。  
それは、彼女が常備しているメンソール系の傷薬だった。  
「すぐに効いてくるだろう。効きが悪ければ、もっと塗ってやっても良いがね」  
そう言って笑うロイを怒りに満ちた顔でリザは見つめ、何か言おうとしたが、それより早く薬は効き始めたらしい。  
 
ひくり  
リザの身体が揺れた。  
見る見る内にリザの白磁の肌が胸元から紅潮していく。  
粘膜に直接塗った薬は、あっと言う間にリザの肉体を浸食していく。  
元々は局所血管拡張作用、皮膚刺激作用を持つ薬だ。  
当然、敏感な粘膜に塗れば、ただの傷薬とは言え媚薬を塗られたとそう変わりはない。  
「ッッハァ……」  
悩ましい声を上げ、リザは身をよじる。  
メンソールのジンジンと痺れるような刺激を三カ所同時に受けては、流石にたまったものではないだろう。  
瞳がトロリと潤み、リザはいきなり押し寄せる快楽から逃れようとする  
ロイは艶めかしいリザの肉体と表情の変化を楽しみがら、彼女の耳元で意地悪く囁いた。  
「どうしたね? 中尉」  
「…やっ、アン」  
耳元に息を吹きかけられたリザは、小さな喘ぎ声をたてる。  
「したくなってきたかね?」  
「クッ……誰がッ、、、ハァハァ」  
それでも意地を張るリザが身をくねらせると、腿の間でクチュとイヤらしい音がした。  
真っ赤になるリザの首筋を視線で愛撫しながら、ロイは全く彼女の身体には触れず、再びフッとその耳に吐息を吹き込んでやる。  
「ヒャウッ!!」  
悲鳴とともに面白いほどにリザの身体が跳ねた。  
「まだ効かないのか? では、もっと薬を塗らないといかんな」  
「ヤ、大佐。やめて……」  
「どうした? 上官の好意を無にするのかね」  
「もぅ、、ハァ、無理、です、、」  
リザの瞳からは先程までの強気な光は消え、哀願するような色を帯びている。  
それを無視して、ロイは彼女を言葉で玩ぶ。  
「何が?」  
「熱い、、、熱いんです。痺れるみたいで……ンンッ」  
「どこが?」  
「……」  
「言えないと言うことは、熱いところはないと言うことかね。君、なかなか薬が効かない体質なのか」  
リザを虐めるように、ロイはそう言うと立ち上がって彼女を見下ろした。  
羞恥に頬を染めるリザは、熱を持ち彼女を苛む薬の効果に動き出す腰を止められなくなっている。  
激しく身を捩る身体の動きの所為でスカートはまくれ上がり、じっとりと濡れた下着が露になってしまった。  
それにも気付かずリザは荒い息を吐き腿をこすりあわせ、ぐちゅぐちゅと陰部から卑猥な音を立てながら、縛られた身体でどうにか逃げだそうと足掻く。  
ロイは笑って、手直にあったリザのスカーフで彼女の足首を緩く縛ると、完全に彼女が自力では逃げ出せないようにし、そのままベッドから離れた。  
「さて、では君に薬が効くまで、私はどこかで時間を潰すとしようか」  
わざとらしくそう言うとロイは、彼女に背を向ける。  
「大佐!」  
泣き出しそうなリザの声が、彼の背に当たる。  
「薬がちゃんと効いた頃に戻ってこよう。それまでリザ、ゆっくり休んでおいで」  
「ッッ、、ハァ、、、たいさ、お願いですから」  
「じゃ、私は行くよ」  
「イヤァッッ!!」  
リザの悲鳴のような声を歪んだ微笑で聞きながら、ロイはパタリと部屋の扉を閉めた。  
扉の向こうから漏れ聞こえるすすり泣きと喘ぎを耳に、ロイはお仕置きの為に何分ほど彼女を焦らしてやろうかと考え、懐から銀時計を取り出しその長針を眺めたのだった。  
 
終わり  
 

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