これほどデスクワークを愉快だと思ったのは初めてかもしれない。
面白いほど仕事がはかどり、机の上の処理すべき書類の山が減っていく。
いつも私が逃げないように見張る副官を側に控えさせなくても良いほど、軽快に万年筆が紙の上を走る。
「……くぅ…ッ」
勤勉に働くべき執務室に相応しくないなまめかしい吐息がかすかに下から聞こえた。
よく耳をすませば、くちゅりという卑猥な水音も拾うことができる。
主人が真面目に手を動かしているというのに、その足元で手を休めている飼い犬に気が付き、固い軍靴の先で軽く胸を突き、続きを促した。
犬にちょっとした悪戯を施し、視覚と聴覚を使えないようにしている。
私が胸を突いただけでも犬は私の早くしろという苛立ちと命令を上手く読み取り、犬は慌てて再び手を動かし出した。
犬はお仕置きを恐れ、一生懸命上りつめようとしている。
左手で胸をいじり、指先が不器用にきゅっと乳首を強く摘む。
そして右手にはいつも犬の尻に埋めさせている男性器を模した玩具を持ち、それを膣に抜き差ししながら腰を揺らしている。
外から日が差し込む明るい執務室で、机の中に隠れて犬は自慰をしていた。
黒いゴムの玩具が犬は大変お気に入りのようで、私が仕事をしている間にこれでしばらく遊んでいなさいと命じたのだ。
最初の頃、犬は主人が命令をしているのに嫌だと言って何とか逃げようとし、ずいぶんと私の手を煩わせた。
助けてと泣き叫ぶ犬を捕まえ、私から逃げるとどうなるかを彼女の身体がぼろぼろになるまで根気強く教え込んだ。
最近の犬はその躾の賜物なのか、命令を下すとすぐ大人しく従うようになった。
しかし、諦めたような表情で、悲しげに目を伏せて「はい」と返事をする犬は少々気に食わない。
先ほども、明るい部屋の真ん中で一枚一枚軍服を脱ぎ捨てて裸体を晒す際、犬はすっかりやつれた顔に絶望の色を浮かべていた。
あの将軍に抱かれに行った己の愚かさ、そして私がどれだけ苦しんだのか、犬はまだ理解していないのだろうか。
怒りにまかせて、靴の先で赤い乳首の先をぐりぐりとえぐる。
「…んんっ!」
目を布で覆い、耳に栓をして犬から自由を奪ったが、今回は手足を縛らず、そして口を塞いでいない。
そのため、今日は犬の鳴き声が存分に楽しめる。
犬は唇を噛み締めて必死に声を出すまいと我慢しているが、それでもたまに快感に負けて吐息や喘ぎ声がもれてしまう。
犬はいつも身体の自由を奪われることを嫌うが、今回ばかりは口を封じられなかったことを辛く思っているであろう。
「…あぅ…っ!」
私が涼しげに仕事をこなす一方で、机の下は熱気がこもり、犬の何も纏わない透き通るように白い身体はシャワーを浴びたように汗で濡れていた。
「…ふ…っ」
また声がもれたかと思えば、黒い玩具を抜き差しする手のペースが早くなっている。
乳首を弄っていたはずの左手は敏感な肉芽を摘んでおり、必死に両手を動かして上りつめようとする犬の姿は淫乱そのものだった。
「…たい、さ…っ」
小さく、だけれど快楽に飲まれたその声ははっきりと私に届いた。
目と耳を塞がれた中で自慰をしている犬のお相手は、どうやら私らしい。
犬の指が固い尖りを摘んだり中指の先で小刻みに擦ったりしているのは、私の真似だろうか。
水音を立てぬよう、しかし早く抜き差しをし、膣の肉をえぐるように黒い棒を動かしているのは、私のことを思い出しながらやっているのだろうか。
口元に自然と笑みが浮かぶ。
気をよくした私は、私とのセックスを頭に思い描いて悶えている犬の赤くしこった乳首を、先ほどとは違い靴の先で優しく刺激してやった。
犬は怯えるどころか背をのけ反らせ、嬉しそうにその刺激を受け取った。
「…ん…ッ!ん!」
玩具を抜き差しするスピードがますます速まり、犬の吐息や仕草が切羽詰まったものになってきた。
腰を切なげに揺らめかせ、膣の中のある一点だけを集中して攻めるように犬は手を動かしている。
「…あぅ…っ!!」
指先で強く敏感な突起を押し潰した瞬間、秘所から水のような液体が噴き出した。
黒い棒は犬の最奥をえぐったようで、ひくつく穴に飲み込まれすっかり姿が見えなくなっている。
唇を強く噛み締めながら犬は絶頂を迎え、狭い机の下でぴんと全身を硬直させた。
そして次の瞬間に絨毯の上にどさりと倒れ込み、はあはあと荒い息を繰り返している。
絨毯の上は犬の汗や、いやらしい匂いを放っているであろう秘所から溢れた大量の蜜でぐちゃぐちゃに濡れひどい有様だった。
犬は身体を駆け抜けた甘くも強い痺れからまだ回復しておらず、辛うじて口元に手を当て、唇からもれる吐息を押さえていた。
絨毯の上に投げ出された手足は力なく、そして身体はまだぴくぴくと痙攣していた。
執務室で、そして上官が仕事をしている机の下で自慰をし、黒い塊を未だ飲み込んだまま絶頂の余韻から立ち直れていない「リザ・ホークアイ中尉」にあるまじき姿に、私は知らずと目を細めた。
ひくひくと震える体液にまみれた太ももを、こつんと軍靴で突く。
途端に犬ははっとしたように身体を強張らせた。
犬は覚束ない動きで何とか震える身体を起こし、ゆっくりと机の背に寄り掛かる。
自慰をする時は二回以上イくように教えこんでいる。
犬は未だ辛そうに肩で息をしながら、二回目の絶頂を目指して、のろのろと手を動かし始めた。
犬は先ほどのように指でぎゅうっと乳首を摘んだが、イったばかりの身体では刺激が強すぎるのか、くぅ、と声がもれた。
強すぎる刺激は快感を通り越して辛いだろうに、犬は胸を乱暴に揉んだり、指と指の間に挟んだ乳首をくるくると回したりと、必死に感じようとしている。
快楽を得るためには強くすればいいというものではないのに、最近自慰を覚えたばかりの犬はまだ分かっていないらしい。
私のお仕置きが恐ろしく、早くイってしまおうと焦っているのかもしれない。
俯いた顔から汗をぽたぽたと垂らしながら、犬は不器用に自らの豊かな胸に指を強く食い込ませ愛撫している。
白い乳房が犬の指によって乱暴に押し潰され、柔らかな肉が従順にぐにゃりと痛そうに形を変える様は彼女の心情を表しているようだった。
その様子を見下ろし、ふうとため息をついたその時、執務室の扉が叩かれた。
その途端にびくりと犬の身体が緊張し、胸を弄っていた手が止まる。
さすが優秀な軍人だ。
「入りたまえ」
「はっ」
扉を叩いた主が執務室に足を踏み入れる。
犬は耳に詮をされていても、廊下を歩く人々の存在、扉を叩く振動、部屋に誰かが入り込みそして足音が近付くのを、すべて気配で分かっている。
犬が俯いているせいで表情が分からないが、きっと最悪な事態に青ざめているに違いない。
気付かれるかもしれないという不安に速まる犬の鼓動が手に取るように分かる。
私は部屋に入室してきた下士官の相手を何事もなくこなしながら、再び靴の先で犬の太ももを軽く蹴った。
行為を続けろと無言で促された犬は、数秒絶望したように固まっていたが、諦めたように緩慢な動きで愛撫を再開した。
犬の膣内に入っていたゴムの塊を、彼女は入室者に気付かれぬようそっと動かす。
水音を立てぬようにゆっくりと恐る恐る抜き差しする動きが気に食わず、私はもっと早く動かすように犬の太ももを踏み付けた。
目を黒い布で覆われているために私の顔が見えるはずないのに、犬は縋るように涙を流しながら私を見上げた。
しかし私はまた容赦なく太ももを蹴る。
犬は涙を吸い取って重くなった布にまた新たに涙を滲ませ、頬に一筋の水が伝った。
「…ああ、その件は…」
暢気に下士官と会話をしながら、命令通りにまた激しく自分を攻め始めた犬に視線を向けて眺めた。
犬は口を手でしっかりと覆い、そして片手では膣の壁をえぐるように玩具を回すようにぐりぐりと動かしている。
敏感な場所が見つかったのか、犬は唇を覆う手に力を込めながら静かに首をのけ反らせた。
震えている全身からは汗が滴っている。
淫乱な音を立てているかも、下士官が自分の存在に気付いているかも確かめられず、何もかも確認できず不安なまま愛撫を続ける犬はどのような気持ちなのだろう。
しかし心なしか犬の頬が興奮に蒸気している気がした。
いつばれてもおかしくなく、上官の下でこっそりと自慰をするこの緊迫した状況に、犬は無意識のうちに興奮しているのだろうか。
本当に淫乱な犬だという意味をこめてつま先で乳首の周りを器用になぞる。
犬はびくびくと背中を揺らしてそれを喜び、そして偽物の男性器で自らを突き上げる動きを強めた。
「…っ…!」
口を塞ぎ声を出すまいと我慢しようと理性を保ちつつも、犬は明らかにこの危険な状況を楽しんでいた。
先ほどよりも激しく膣内を攻めており、腰も積極的に、そして官能的に揺さ振り動かしている。
口を押さえている手でしこった突起をめちゃくちゃに弄りたいに違いない。
机の背に寄り掛かる犬の身体が小刻みに震え始めていた。
薄い木を挟んで向こうにいる下士官の前で、どうやら犬はイってしまうらしい。
犬はそれを避けたいらしいが、しかし理性とは裏腹に膣は気持ち良さそうに黒い塊を飲み込んでいる。
「それでは失礼します」
「ああ」
遠ざかる足音の気配を察知したのか、犬はとうとう我慢できずに強く膣内に棒を一気に押し込んだ。
「――――ッ!!!」
下士官が退室し、扉を閉めるのと同時に犬が限界を迎えた。
ひくつく穴から蜜がどっと溢れ出し、また絨毯をべっとりと汚す。
先ほどよりもひどく身体を痙攣させ、しかし何とか倒れ込まずに、必死に口を押さえている。
顔を真っ赤にさせて自ら呼吸を妨げる犬は、痛ましく辛そうだった。
椅子から下りて絨毯に膝をつき、机の中を覗き込む。
犬の耳を塞いでいた詮を外してやると、彼女は二人きりだと察したのか、ようやく我慢せずに呼吸を始めた。
「…はっ…、あぁ…っ」
荒く息をはく犬は力なく絨毯の上に身体を横たえた。
「今ね、人が来たんだよ」
眉をぎゅっと寄せて辛そうに乱れた呼吸を繰り返す犬の背中を撫でてやる。
下士官が来たことを告げると、犬は肩をびくりと震わせた。
「…あの…っ、わ、私なことは…っ!」
「大丈夫さ。ばれなかったよ。よく頑張ったね」
優しく労るように背中を撫でながら、軍服が汗に濡れるのも構わず犬を抱き締めてやる。
犬はばれなかったことに安心したのか、ようやく身体から力を抜いた。
私の支えなしでは再び絨毯の上に倒れていたであろう身体を腕におさめ、私は口端を吊り上げる。
「君が昼間から裸になって一人遊びをしているところを上官に見せ付けているなんて、気付かなかったよ」
「…はい…」
蔑むような物言いをしても、犬は安堵が大きいのか私の胸にぐったりとした身体を預ける。
「他人の前でイくとは君は呆れるほど淫乱だな。気付かれた方がもっと感じたか?」
「…申し訳ありませ…」
唇からだらしなくこぼれた唾液を吸い取り、犬の言葉を塞ぐ。
ひどい命令をされ、罵倒されているにも関わらず、犬は愛おしげに私に舌を絡めてきた。
「…よく頑張ったな。いい子だ」
口付けの合間に褒めてやると、犬は心地良さそうにそれに聞き入っていた。
異常な行為を強要した人間に優しくされて喜ぶなど、馬鹿な犬だ。
しかしそれが胸が締め付けられるほど愛おしい。
犬は私しか愛していないのだとこうして確認させてくれる。
「じゃあ、ご褒美をあげようか」
再び椅子に座り直し、ズボンからそそり立つものを取り出した。
犬の頭を強引に掴み、それを無理やりくわえさせる。
「…んぅ…っ」
犬は苦しそうに眉を寄せたが、しかし従順に私の猛りにぺろぺろと舌を這わせ始めた。
「上手にできたら偽物ではなく本物をいれてあげようか」
「…は、い…」
終わり