熱帯夜の茹でるような暑さで、「冷静沈着なリザ・ホークアイ中尉」の頭の中まで熱に溶けてしまったのか、リザは非常に珍しくぼんやりとしていた。  
自宅でさえ服装に乱れのないリザなのだが、いま着ているキャミソールの片方が肩からずれ落ちている。  
この猛暑の中で当然ながらリザは下着を身につけておらず、雪のように白い肩はもちろん、まろやかな胸が丸見えである。  
あと少しで白い素肌だけではなくツンと尖った桃色の部分までも見えてしまいそうだ。  
金髪を頭の上で適当にゴムで括ったリザの、汗に濡れた後れ毛がうなじに張り付いているのが色っぽい。  
ソファーに背を預けたまままったく体を動かず、リザは虚ろな瞳でカーテンの揺れない窓を眺めていた。  
そんなリザを見兼ねて私がアイスキャンディーを手渡すと、彼女は今まで人形のように生気がないのが嘘だったように、ぱあっと目を輝かせてそれを受け取った。  
ありがとうございますと、とろけるような笑顔で言い放ち、リザは大切そうにそれを食べ始めた。  
「…ん…」  
ようやく半分を食べ終わった溶けかけのアイスキャンディーを、リザはまだゆっくりと食べている。  
ミルク味のアイスキャンディーをやるんじゃなかったと後悔しながら、私はリザが目を細めてアイスを頬張る様子を横目で見ていた。  
冷たさを長く味わうために時間を掛けて食べているせいで、溶けたアイスが棒からリザの手に伝い、べとべとになっている。  
白濁とした液体がリザの手をねっとりと汚す光景は何かいけないものを連想させてしまう。  
「…あ…っ」  
のろのろと食べているために、とうとう溶けたアイスの塊がぽたりと落ちた。  
キャミソールの中の、リザの胸の谷間の間に。  
白い線を描いて、豊かな胸の隙間を通り抜けてアイスはキャミソールの中へと消えていった。  
リザはゆっくりと味わいながら食べることを断念し、急いでアイスキャンディーを口に詰め込んだ。  
小さな唇にアイスキャンディーが無理やり詰め込まれる姿も、無視できずについつい凝視してしまう。  
その間にも白く甘い液がリザの唇や手、そして胸元をとろりと汚す。  
リザはアイスキャンディーを一気に口の中に納め、棒を抜き出しながら口内の温かさで溶けたアイスをごくりと時間を掛けて飲み込む。  
リザの桃色の唇はミルク色の液体が滴り、べとべととしていて実に美味しそうだった。  
細い顎を伝い胸元に落ちた溶けたアイスキャンディーの白濁とした液を舌で綺麗にしてやりたい。  
そして、幸運にも胸の中に入りこんだアイスの塊のように、私もあの間に挟まりたい。  
「…大佐、ごめんなさい…。だらしなくて…」  
棒をゴミ箱に捨て、白く汚れた手を舌でちろちろと舐めながら謝るリザの肩を、私はがっしりと掴んだ。  
「…大佐?」  
「…リザ、食べていい?」  
リザの了承を得る前に、私は甘い匂いと液体を纏う彼女をソファーへ押し倒した。  
 
 
 
終わり  
 

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