ロイの猛りが暴力的なまでに何度も何度も身体を貫き、感覚が麻痺してしまったように腰がだるい。  
しかし、膣はロイに喜んで絡みつき、快楽という刺激だけは貪欲にもひとつも零さず受け取ろうとする。  
また来る――。  
太ももからぞわりと鳥肌が広がる。  
呼吸の乱れだけでも苦しいというのに、息が早まってますます辛い。  
「…やっ、いあっ、んん…ッ!」  
もうすぐ来るであろう絶頂から逃げ出したくて、だけど逃げることなどできず、ロイの首に回している腕の力を強めた。  
こうしてロイに縋れば、絶頂と共に真っ白な世界へ突然放り込まれる前の怖さを、少しだけごまかせることができるのだ。  
爪を立てもいいとロイは言うけれど、守るべき人、そして愛する人を自身の爪などで傷付けることなどしたくない。  
だから、いつもこうして赤子のように離すまいとロイに抱き着き、彼の身体の熱や存在を私の肌に焼き付けるのだ。  
私の切羽詰まった仕草や、ぎゅうっときつく締まる膣の動きで、ロイも私が限界なのを悟ったのだろう。  
ロイは腰の動きをいっそう激しいものにしつつ、首に縋る私に応じるように、背中に腕を回してくれた。  
ロイの気遣い、そして耳元をくすぐる彼の吐息に安心した。  
「ひぅ…っ!…うっ、ああっ!」  
膣のざらつきを先端でえぐられ、背筋がぞくぞくと痺れる。  
ロイが私の中に入ってくる前、あんなに大きく太いものが入るわけがないと、いつも信じられない気持ちになる。  
それが今では、あれが私の中を窮屈ながらも存分に掻きまぜていると思うと、身体の中心がますますひくついた。  
「…やっ、あっ、ああぁッ!」  
ロイの熱いものが打ち付けられる度に首をのけ反らせ、高く掠れた悲鳴を上げる。  
緩やかな刺激の波に乗って迎える絶頂ならば、眠るように穏やかに快楽を受け入れることができて好きだ。  
しかし、快楽だけを求めただひたすら激しく攻められて迎える絶頂は、経験不足のせいか苦手だった。  
あまりに強すぎる快感が身体中を駆け抜けることもまだ慣れず、自分の意識や肉体が急にどこかへ吹き飛ばされるような恐怖があるのだ。  
「はっ…いやっ…!いやぁ…っ!」  
「…リザ…!」  
私の名を呼ぶロイの息が荒い。  
それだけでまた背中がぞくりと震えた。  
わずかに眉を寄せたロイの顔が瞳に映り、彼が自分の身体で感じていることが嬉しく、少しだけ恐怖が薄れた。  
「…リ、ザ…っ!」  
「んああぁッ!」  
ドンと強く突き上げられ、ロイのものが私の中の最奥を突く。  
コンドーム越しにロイが精を放つのを感じ、子宮がぶるりと震えて、はしたなくも彼のそれを喜んだ。  
視界が真っ白に染まっていく。  
ぐっしょりと濡れたぬかるんだ秘所から、また熱い液体が溢れ出るのを他人事のように感じていた。  
腰から下から溶けてなくなってしまいそうなほど熱くて甘い快楽に鳴いていたのは、最初だけだ。  
何度目か分からない絶頂に導かれた今、腰から下が自分の身体ではないように重い。  
軽い愛撫ですら強い刺激に変わるほど身体は敏感になり、もう限界を訴えていた。  
このまま眠ってしまいたい。  
軽く飛んだ意識が現実に戻りつつある中、私は汗を吸い取った冷たいシーツに沈み込み目を閉じた。  
「…リザ、大丈夫か…?」  
しかし、ロイが勢いを失ったものを私の中から抜き出す刺激で、再び目を開けることとなる。  
「…あぁっ…!」  
膣内から熱いものが出て行ったという些細な動きでさえ、腰に響き身体がぶるりと震えた。  
コンドームを処理し終えたロイにふと目をやると、彼の黒い瞳は私のぐちゃぐちゃに乱れた身体の中心をじっと見つめていた。  
 
「…マ、マスタングさん…?」  
ただでさえ熱い頬にさあっと朱が走る。  
ロイは、金の繁みまで淫らに濡れた私の秘所から目を逸らさぬまま太ももを軽く広げ、汗ばんだ脚に舌を這わせ始めた。  
「あ、ん…っ」  
達したばかりで思うように動かぬ身体では、身をよじるほどの抵抗しかできない。  
ロイの舌と指は太ももから膝へと移る。  
時折脚を甘噛みしながら、ロイはいつも美しいと褒めてくれる私の脚をひたすら愛で続けた。  
ロイの手の平が脚に軽く触れるだけだというのに、ずくんと、また身体の中のどこかが熱く疼く。  
脚を触られているだけだというのにはしたなくも再び秘所がとろりと濡れ始めた現実から逃げるように、私は目を固くつぶった。  
「…ふ…ぅん…っ」  
ロイは足の甲まで丁寧に舐め上げ、彼の手の中にある脚は愛撫による刺激にだらりと力を失っていた。  
「…は…」  
脚をシーツにそっと置かれたかと思うと、今度は急に身体をひっくり返された。  
「あ、や…っ!」  
ロイは躊躇うことなく背中に刻まれた秘伝と火傷の痕にしゃぶりついた。  
背中に触られることは感じすぎてしまい苦手であり、身体が敏感になっている今ならなおさらだ。  
しかし、首筋や背骨に容赦ないロイの舌の愛撫が降り注ぐ。  
シーツをぎゅっと握り締め、拷問に近いロイの行為に耐える。  
乳首や秘部など特別に敏感な部分を弄られているわけではないのに、とうとう秘所から溢れ出した生暖かいものが太ももに伝うのを感じて、自分の淫乱さに泣きたくなった。  
シーツに押し付けた胸が異常なまでにドクドクと音を立てている。  
尻を手の平で捏るように撫で始めたロイは、予告なしに、すっと繁みへと手を滑らせた。  
驚く暇も考える暇も与えられず、それは突然やってきた。  
「ふああッ!!」  
頭のてっぺんからつま先まで、言葉にはしがたい電流のような刺激が駆け抜ける。  
執拗な愛撫によりとっくに皮の向けた敏感な芽を指先で潰され、私は唐突な絶頂を迎えた。  
ぷしゃりとロイの手に水のような液体が掛かる。  
シーツにめり込むように頭を押し付け、呼吸を整えながら達したあとの余韻を何とか流す。  
殴られた時のように一気に頭が白くなっていく。  
身体をびくびくと震わせながら、たいした愛撫もされていないくせに呆気なく達した現実に打ちのめされ、目尻に涙が浮かんだ。  
――今、何時なのだろう。  
意識がわずかに浮上し、時計を見ようと頭を動かした途端、ロイに身体を引っ張られた。  
のぼせた時のように身体が熱く、頬からは火が出ているようだ。  
マスタングさん、と、そう名を呼びたかったが上手く声が出なかった。  
ぐったりとして力の入らない身体を、ロイは自らの膝の上に抱き上げた。  
いつの間にか再びコンドームを装着したロイの熱い塊の先がぐちゃりと音を立てて秘所に宛てられ、曇り空のようにぼんやりとしていた思考が急に晴れた。  
「…い、いや…」  
目を見開いて震えながら、私はすぐさま否定をした。  
「…マ、マスタングさん、もう、無理です…っ」  
ロイの肩に乗せた両手で彼を何とか押し返し、精一杯首を振る。  
腰がだるくて時折痛みを感じるほどなのに、また身体の中を彼に征服されたら壊れてしまいそうだ。  
「…おねがい…っ」  
気付けば、みっともなくぽろぽろと涙を流していた。  
「…お願いします…もう、駄目なの…ッ」  
頬を滑り落ちた涙は顎を伝い、胸の上を濡らす。  
その胸にはロイが先ほど残した赤い痕が散らされていた。  
もう充分でしょう?  
そう瞳で強く訴えたが、ロイは私が涙を流す様をさして興味がないように眺めており、私は背筋を凍らせた。  
私を見つめるロイの瞳には肉欲しかなく、獣のような彼が急に恐ろしくなったのだ。  
 
リザを抱く度に自分の奥深くに眠る凶暴さが目を覚まし、止まることを知らず暴走するのを感じていた。  
他の女を抱く時は遊びに近く、それでも紳士でいられたのに、リザを抱く時は彼女の快楽よりも自分の欲を満たそうと、誰よりも大切な少女を乱暴に扱ってしまう。  
まだまだセックスに関しては未熟なリザにとって、それは犯されていると言ってもいいほど辛いだろう。  
愛おしいリザの快楽だけを考え、優しく丁寧に抱けるのは最初だけで、彼女が快楽や辛さに涙を流し始める頃、もっと喘がせていじめ抜きたいという歪んだ欲が生まれる。  
生温い快楽に漬かって気持ち良さそうにしているリザを愛でるのも好きだが、彼女が止めてほしいと叫ぶ声もまた私は愛していた。  
「…マスタングさん…嫌ぁ…っ」  
「何が?」  
私は涙を流すリザに見惚れながら、うっとりと彼女に問い掛けた。  
膝の上に乗せたリザの身体が無力な子羊のように哀れに震えている。  
散々喘ぎ、イかされ、リザの身体はもう痛みを訴え始めている頃だろう。  
「あぁっ!」  
とろとろと蜜の溢れる膣内の入口に自身の先端を差し込んだだけで、リザは盛大に喘いだ。  
ゴムに包まれた先端はリザの温かい蜜でみるみるうちに濡れていく。  
「…もう嫌なの…!…だから、お願い…っ」  
顔を真っ赤にしたリザは、体裁など構わず子供のようにぼろぼろと涙を零している。  
残念ながら、このリザの泣き顔が一番私を煽るのだ。  
興奮に獣のように荒い息をはきながら、私はリザを壊れそうなほど強く抱き締めた。  
「…リザ、すごく可愛いよ…っ」  
「ひゃああっ!」  
我慢できずにリザの腰をずんと落とし、一気に彼女の中へ入り込む。  
リザは目を見開いたまま、それだけでまた達した。  
「…は…うぁ…」  
「…リザ、またイったのか?」  
「…あ…っ」  
「リザ?」  
意味のない単語を唇から零すリザは、強すぎる衝撃からまだ戻れていないらしい。  
肩に添えられたリザの白い手が小刻みに震えていた。  
その仕草すら私を煽るリザの回復を待つことなどできず、遠慮なく彼女の膣内を掻き回し始めた。  
「…あぁー…っ!」  
絶え間無く無理やり刺激をごまかそうとしているのか、リザは口元に手をやったかと思うと自らの指を噛んだ。  
リザが力なく俯くと、額や髪の毛から汗がぼたぼたと下へ落ちる。  
「うぁ…っ!…はっ…もう、やめて…ッ!」  
「そんなことできるわけないだろう?リザ」  
痛みと快楽から苦しそうに涙を流し、しゃくり上げながら、リザが懇願する。  
そんなリザに残忍に微笑み、私は繋がったまま彼女を再びベッドへ押し倒した。  
「…い、いや…!」  
リザがプライドも何もかも捨て、泣きじゃくり私に懇願するこの姿に欲情しない者などいるのだろうか。  
あの冷静なリザ・ホークアイ少尉が、我を忘れたかのように泣き叫び、幼子の如く助けを求めているのだ。  
 
「…うぁッ、は…!」  
私は赤くなった目元を濡らす涙を愛おしげに舌で舐めながら、リザの両足を肩に担ぎ上げた。  
これからくるであろう今までにない刺激に、リザがびくりと大きく肩を揺らした。  
「いや…っ、あっ、あぁっ!」  
リザの中に我が物顔で入り込み、乱暴に自身を打ち付けながら、ぱんぱんと肉と肉が激しくぶつかり合う音を奏でる。  
リザは欲にまみれた私が怖くて仕方がないのだろう。  
私がただ肉欲だけを求めてリザを抱いていると、彼女はそう勘違いしているに違いない。  
リザは私と目が合う度に、目尻に浮かぶ涙の量を増やした。  
私が怯えるリザを愛し、もっと泣かせ乱れた姿を見たいと望んでいるなど、彼女に分かるはずがない。  
「いや…っ!ぬ、抜いて…っくださいっ!」  
リザは逃げられるはずもないのに、私の肩に乗せた足をじたばたと暴れさせ、唯一自由な手で私の胸を叩いた。  
ぐったりとしているリザに叩かれても痛くも何ともないが、彼女の両手首を纏め、頭上で押さえ付ける。  
いよいよ本当にリザを犯しているようになってきた。  
「…あっ、やめ、て…!」  
リザの涙交じりの声は甲高く、興奮となって私の背筋を駆け抜ける。  
――そう、もっと怖がって泣けばいい。  
「…嫌…!いや…っ!」  
顔をくしゃくしゃに歪めて泣き、そして突き上げられる刺激に喘ぐリザは息も絶え絶えで、しかし否定の言葉を叫び続けた。  
「…は…あっ!…ふぅ…っ、怖い…!」  
「…っ、何が?」  
「…こわい…!」  
汗と涙にまみれた顔を嫌がるように振り、リザは怖いと繰り返した。  
「…も、う…許してぇ…!」  
非力なリザのなんと愛らしいことか。  
私に許しを乞うリザ、私だけのリザ――リザを支配しているのは私なのだ。  
「ああ、リザ…いいよ、すごくいい…」  
「あっ!うぁっ!ああ…ッ!」  
「…リザ、好きだリザ…」  
リザが泣きわめく度に残忍な己が暴かれ、それが何よりの快感となって腰に響く。  
「…リザ、愛してるよ…」  
「あっ、いやっ!…ま、また、きちゃう…ッ」  
リザの膣が達する前の独特の動きをし、そして私を押し出そうとするほど強く絡みついてくる。  
「やだあっ、あっ!…あっ、きちゃ…ッ!」  
ひどく魅力的な締め付けに耐え切れず、抜けそうなほど引き抜いた自身を思いきりリザの中に差し込んだ。  
「…ああー…ッ!!」  
背筋や首を弓の様にのけぞらせ、リザは枯れた声を振り絞るかのように鳴いて達した。  
「…リザ…ッ」  
リザの唇の端についた唾液ごと奪うように彼女に口付けながら、私も思いきりゴムの中に欲望を放った。  
リザは私が射精するのに合わせてびくびくと身体を震わせ、やがてふっと意識を失った。  
 
リザが気を失ってからどれくらい経ったのだろうか。  
リザが自分の腕の中で意識を飛ばし彼女の身体からだらりと力が抜けた時に、はっと我に返った。  
あれから私は、リザを己の欲のためだけに乱暴に扱ってしまったことへの罪滅ぼしなどには到底及ばないが、あくせくと動き回った。  
まず、泣き腫らして真っ赤になってしまったリザの瞼に水で冷やしたタオルを乗せた。  
それからリザの身体の汗をタオルでなるべく優しく拭き、顔を汚す涙や体液も拭い取って、最後にシャツを着せた。  
そして今、私はリザの隣に寄り添うように横になり、彼女の意識が戻るのを待っているのである。  
あれほど手酷く犯してしまったため、もしかしたら朝まで目を覚まさないかもしれないと、そんな考えが頭を過ぎった。  
しかし、ちょうどその時にリザの身体がわずかに動いた。  
「…マス、タングさん…?」  
渇いた唇がぎこちなく私の名を呼ぶ。  
目を覆うタオルをそっと取ると、ぼんやりと私を見つめる鳶色の瞳と目が合った。  
「…リザ、平気か…?」  
「……そう、見えますか?」  
「…そうだよな…」  
リザの濡れた身体を拭いている時、キスマークがあちらこちらに付けられ、それから歯型まであり、自分でしておきながらひどく反省した。  
リザは私に爪の痕さえ残さなかったのに、私は彼女の白く美しい身体を傷付けて楽しんだのだ。  
「…すまない…」  
「…本当です。目を開けたら真っ暗だったので、また中佐に変なことをされるのかと思いました」  
「…本当に申し訳ない…」  
がっくりと頭をうなだれる私に、リザは痛むであろう身体をわずかに近付け、私の胸にこつんと頭を当てた。  
「…リザ?」  
「…中佐が…私のことをまったく見えていないみたいで…。まるで強姦されているようですごく怖かったです…」  
私の胸に頭を預ながらけ、リザはぽつりと心中をもらした。  
心身共に傷付いたリザを目の当たりにし、私は慌てて弁解する。  
「私がリザのことを見えていないはずがないだろう。むしろ本当に強姦しているようで、恐怖に怯える君を舐め回すように見て楽しんで犯して…」  
「……中佐。今すぐ私から離れてください」  
「じょっ、冗談だリザ!離れるな!」  
私から離れようとするリザの身体を優しく引き寄せて、乱暴に扱ってしまった身体を労るように撫でた。  
変態を目の当たりにしたように鋭い視線を寄せていたリザだったが、私が散々に扱ってしまた腰や子宮を手の平でなるべく優しく撫で始めると、彼女はとろりと目尻を下げた。  
「…あ、リザ、水飲むか?」  
「…大丈夫です」  
リザは撫でられるのが気持ち良いのか、先ほどのように再び私にぺたりと身体を預けた。  
私に身体を寄せくっつき、心地良さそうに甘い吐息をはくリザを見るのをずいぶん久しぶりに感じた。  
リザはこうしてすぐに簡単に私を許し、乱暴にされたことを忘れたかのように甘えてくるから、私はまた付け上がるんだろうな――  
リザの白く柔らかな身体を撫でながら、私は己の弱さにため息をついた。  
 
 
 
終わり  
 

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