どうしても、欲しいと言われた。  
 
Monopoly love(独占愛)  
 
部屋に入ろうとしたら、ドンと背中を押された。  
あまりの力にバランスを保てず、フローリングの床に  
膝を強く打ち付けてしまった。  
「なんっ、何なの!?」  
微かに擦り剥いてしまった膝を撫でながら、原因を探ろうとドアを見上げ、  
ウィンリィはぎょっとした。  
眉間に皺を寄せたエドワードが、ドアを背にウィンリィを見下ろしている。  
表情はとても怒っているように見える。夕食時はそんな事はなかったはずなのに。  
「エド?どうしたの?」  
何かを感じて、ウィンリィは問う。  
「ねえ、エド?」  
応えないエドワードにもう一度問い掛けても、  
返って来るのは沈黙と、鋭い眼光だった。  
ウィンリィの心に焦りが生じた。  
ただ事ではない事は確かなのに、頭が反応しない。  
がちり、と鍵のかかる音がした。  
ウィンリィの部屋の、扉が閉まる音だ。  
「エド?」  
なんで鍵を??と問い掛ける前に、エドワードの左足が一歩、ウィンリィに近づいた。  
二歩、三歩と歩いてくるエドワードを後ずさりする事も出来ないウィンリィは  
じっと見守るしかない。  
エドワードがウィンリィの前に膝を折る。  
視線は一度も外されなくて、逸らす事も出来ない。  
とん、と肩を押された。  
 
強く押されたわけでもないのに、いとも簡単にウィンリィの体が  
フローリングの床の上に沈む。  
「………あっ!」  
悲鳴を、上げる余裕すらなかった。  
のしかかって来たエドワードの体がウィンリィの動きを封じ、  
突き飛ばそうとした両腕は機械鎧の右手に拘束されて、床に縫いとめられる。  
これから何が起こるか、なんて、容易く想像がつく。  
「いっ??」  
や、と口にする前にエドワードの唇で塞がれる。すぐに割り入れられた舌が  
ウィンリィの舌に絡まり、濃厚な水音を立てて吸い上げる。  
逃げようと顔を背けても追いかけられて顎を固定され、また貪られる。  
「……ふあっ……」  
上げた甘い声は、ウィンリィの声ではないように聞こえた。  
 
いやだ。やめて。こわい。たすけて。  
 
思い浮かぶ言葉が総て、喘ぎ声に変えられる。  
注ぎ込まれるエドワードの唾液を飲み込みきれず、  
口の端から零れ落ちる水をエドワードの指がもう一度ウィンリィの口内に戻した。  
「いや。ねえエド、こんな事やめよう。こんな事あたしいやだよ」  
解放された唇で途切れ途切れ訴えかける。  
酸欠になるまで続けられたキスのせいで呂律が上手く回らない。  
 
「やめないよ」  
 
エドワードに似合うと褒められたワンピースを引き裂かれた。  
ウィンリィの誕生日に珍しく帰ってきたエドワードが、  
一緒に街に出かけて買ってくれたワンピース。  
今はもう、ただの布切れとなった。  
チューブトップに包まれた乳房を掴まれ、強い力で揉み上げられる。  
痛みに生理的な涙が溢れて、堪え切ることが出来ずにぽろぽろと溢れ出す。  
「…っエド。ねえやめて。こんなのおかしいよ。あたし達、幼馴染なのに」  
その関係のはずだ。少なくともエドワードにとっては。  
ウィンリィを幼馴染以上に見てなかった。  
だからウィンリィも隠し通した。  
痛む心を抑えて、必死にこの恋を隠した。  
なのに、エドワードが自らその関係をぶち壊そうとしている。  
「……じゃねえよ」  
押し殺されたエドの声が耳に響く。左の耳たぶを舌で弄られ、体が震える。  
「幼馴染なんかじゃ、ねえよ」  
トップを剥がされ、捲り上げられたスカートからエドワードの手が進入し、  
無理矢理足を開かされる。  
閉じようとしても無理矢理割り入れられるエドワードの体。  
服越しに伝わってくる上昇したエドワードの体温。  
 
「オレは男で、お前は女だ」  
 
剥き出しの先端を舌で舐められ、ざらついた感触に声が上がる。  
強姦されようとしているのに、快楽の声を上げてしまうのは  
相手がエドワードだからだろうか。  
 
「ああっ、やああ…だめ…いや…」  
間をおかず両の乳房と先端を指と舌で弄られ、快楽に縛られて何も考えられない。  
与えられる快楽をただ甘受させられて、わざと声を上げるように攻め続けられる。  
するり、と太腿の内側を撫でられ、布越しに内部を触られた。  
それまでの快楽は一気に消し去り、次に襲い掛かってきたのは怯えと恐怖だった。  
「いや…。おねがい、エド。やめて。おねがい、やめて…」  
ガタガタと震えながら、涙を流して訴える。  
いつもならウィンリィが泣き出すと、エドワードはすぐに止めてくれた。  
ごめんな、とすまなそうに目を伏せて、  
ウィンリィが泣き止むまで手を握っていてくれていた。  
 
「やめない」  
 
最後通牒は、通らなかった。  
エドワードの左手が、ウィンリィの下着を乱暴に引き摺り下ろし、  
濡れた水音を立てて指を入れた。  
 
「いやああっ!」  
とうとうウィンリィが悲鳴を上げても、エドワードは戸惑うことなく  
ウィンリィの内部を犯し続けた。  
 
「……どうし、て……」  
絶望したウィンリィが本格的に泣き始めても、  
エドは決して指の動きをやめようとしてくれない。  
「エド……いやだよ…こんなの、いやだあ…」  
零れ落ちる涙は止まらず、ウィンリィの頬を絶えず伝っていく。  
その雫をエドワードの舌が優しく舐め取り、そのまま唇を塞がれる。  
抵抗する事を諦めたウィンリィは素直にエドワードのキスを受け入れた。  
「泣いても嫌われても、絶対止めねー」  
上気した赤いうなじをエドワードの唇が滑り、細い首ラインを辿っていく。  
啄ばむように愛撫され、喉を真ん中を強く吸われた。  
「……ずっと、お前が欲しかった…」  
鎖骨にキスを落とされ、そこも強く吸われた。  
「だけど隠した。お前に溺れる訳には行かなかったから」  
そこかしこに感じる僅かな痛み。跡を残されているのだと思った。  
「……でも限界だった。抑えれば抑えるほど、お前が欲しくてたまらなかったよ」  
目を合わせられ、そのまま閉じることなくキスの嵐。  
拘束されていた腕が外され、自由になる。  
それでも腕を動かす気力は見つからなかった。  
「本当は今日、帰ってくるつもりはなかったんだ。こうなる事が予想できたから」  
それでもエドワードがリゼンブールに帰ってきたのは、  
心の片隅でこうする事を望んでいたからかもしれない。  
だから、アルフォンスが帰ろう、と訴えたのを受け入れたのだ。  
 
「ウィンリィ、オレ、お前が好きだよ。だからお前を抱く。絶対止めない」  
 
(こんなの、卑怯すぎる)  
ウィンリィはそう思った。  
犯されていると言うのに、その一言を聞いただけで。  
頭の中が麻薬のように、とろりと痺れていく。真っ白になっていく…。  
なんで、抵抗する事ができないのか。  
この言葉が聞きたかった。それだけだったのかもしれない。  
 
その顔を見ていたエドワードも、心の中で呟く。  
 
(ごめんな。ウィンリィ。最低だろ? オレって。  
卑怯者だよな。こんな事をしてお前をモノにしようなんて…。  
これで、もう嫌われてもいい。幻滅したっていい。でも…  
証が欲しいんだ。せめて。オレが死ぬ前に。  
オレがいたって言う、確実な証が。  
それが痛みの記憶でもいい。新たな罪となってもいい。  
オレはもう、既に罪人だから。  
それでも、生きててほしい。死なせたくない。  
お前に先に死なれたら………)  
 
( オ レ ハ コ ワ レ テ シ マ ウ )  
 
エドワードが薄いTシャツを脱ぎ捨てた。  
小柄な割に筋肉質なその体は、何故か一回りも二回りも大きく見えた。  
整備の時に、もう見慣れているはずなのに。  
「そして…お前をメチャクチャにしてやりたい」  
内部に埋められる指の本数が増やされ、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜられる。  
あまりの快楽にウィンリィの背中が飛魚のように跳ねた。  
逆に擦られるように動かされ、内側から愛液が零れてくるのがわかる。  
「あっああっやあっ……」  
弱々しい腕がエドワードの右腕を縋るように掴んだ。  
導くようにその両手を取られ、エドワードの首の後ろに回される。  
縋るもののないウィンリィの手が、強くエドワードの体にしがみついた。  
「リィ……」  
耳元で囁かれ、その熱っぽい声に囚われる。  
指を引き抜かれる。  
代わりにもっと大きなものがあてがわれて、それが少しずつ進入してくる。  
「いやあっ…! エドっ……やめてぇ……!!  
お願いだから…やめてぇぇぇ…!」  
首を振って拒絶するも、エドは止めることなく腰を押し進めてくる。  
「……っっあああ!いた…あああっ! 痛いぃぃ…!!」  
火のように熱い塊と、今までにない痛み。  
熱よりも痛みの方が勝って、痛みから逃れようと逃げる腰を、  
エドワードの強い手で押し戻された。  
「リィ……逃げるな」  
苦渋の声で脅かされる。  
エドワードの額に流れる汗が、ウィンリィの頬に落ちてくる。  
そのまま強い力で腰を掴まれ、強引に埋め込まれた。  
つぷん、と何かが切れる音。  
 
「………っっっぅ!」  
あまりに痛くて、声も出せずに震えていると宥めるようにエドワードの唇が  
ウィンリィの額に落とされ、唇にも暖かいキスが落ちてくる。  
泣きたいくらい、優しいキス。  
「動くぞ」  
呟かれ、痛みも引かぬまま突き上げられ、走る痛みに涙が溢れた。  
「んあっ…いやあ……ああっ…」  
次第に痛みが沈下し、エドワードの腰が動くたびに、  
ウィンリィの口から喘ぎ声が漏れ出る。  
ぐっと更に足を開かされ、密着が深くなる。  
破瓜の血液と溢れる愛液の所為で滑りは先ほどよりスムーズだ。  
「あァっ…ああん…エド…エド…」  
ひたすら名を呼び続ける。壊れたスピーカーみたいだ。  
考える能力が麻痺した頭の中で、エドワードの名前しか思い出せない。  
エドワードの荒い呼吸が耳元に囁く。  
エドワードが激しく腰を動かす度に背中に当たる床の痛みすら、  
快楽に摩り替わろうとしていた。  
 
熱くて、苦しくて、早く解放されたかった。  
そうしないと、狂ってしまう。  
 
「ふあっ…あああ!…エド…エドぉぉ…」  
意識が朦朧として、失神しないように堪えるのが精一杯だった。  
「……ウィン、リィっ」  
名を呼ばれ、一番深い所に穿たれ、熱が拡がる。  
「ああああっ…!」  
激しすぎる快感の中で頭が真っ白になって。  
内部に熱いものが弾けることしかわからなくて、そのまま意識の底に沈み込んだ。  
 
 
 
意識が覚めても、まだエドワードの腕の中に包まれていた。  
そんなに長い時間気絶していたわけではないみたいで、  
お互いの汗もまだ引いていない。  
我に帰ったウィンリィが渾身の力でエドワードの身体を突き飛ばす。  
次は素直に体は離れた。  
「……なんでよ……」  
涙に濡れた目でエドワードを睨む。  
体中が痛くて、背中がひりひりする。  
エドワードを受け入れた場所から微かな血と共に彼の精液がドロリと流れ落ちる。  
「……なんで、なんでこんなことっ……」  
痛みと恐怖で涙が止まらない。  
ずっと想い続けてきたエドワードに、犯されて処女まで奪われたと言う事実。  
それなのに感じて、よがって、絶頂を迎えてしまった自分への嫌悪感…  
もう頭の中は、ぐちゃぐちゃだ。  
「………エドの…、馬鹿ぁぁっ!」  
平手で、エドワードの頬を殴る。  
それでも足りなくて、何度も、何度も。  
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら掌が痺れ出すまで、何度もエドを殴り続けた。  
殴られ続けるエドワードは、表情一つ変えない。  
唇が切れ、僅かに血が流れ出しても、拭おうともしなかった。  
やがて痺れ始めたウィンリィの細い手首を、その筋肉質な左手で掴んだ。  
最低限痛みを感じないように、加減をして。  
「謝らないからな」  
殴る手を止められて、ぐっと覗き込まれる金色の眼。  
「オレはお前にした事を後悔してない。だから謝らない」  
 
「どうしても欲しかったんだ。  
 どうしても、今、ウィンリィが欲しかった」  
 
エドワードが床に落ちたスパナをウィンリィにそっと握らせる。  
「気が済むまでオレを殴ればいい。  
スパナなりレンチなりでぶっ叩くなり、好きにすればいい。  
望むなら、コレ切り落としても構わないぜ。  
どうせオレはお前以外には欲情しないし」  
彼がまだ隆々と天を仰いでる自分のペニスを指差してサラリと言い放つ。  
エドワードの目は真剣だ。  
ウィンリィが望んだら、きっと躊躇せずそうするに違いない。  
「……そんな事、出来るわけないって、解ってるくせに」  
右腕、左脚。  
これ以上まだ失えと言わせるつもりなのか。  
エドワードが手足を失って、ウィンリィがどれほどの涙を流したのか、  
知ってるくせに。  
スパナがウィンリィの右手から滑り、フローリングの床にゴトリと落ちる。  
「…もう、いいよ。  
許してあげるから…。  
ねえ……一つだけ、教えて。本当に、あたしが欲しかったの?」  
訊いて、返事を聞く前に抱きしめられる。  
ほんの少し怖かったけど、抱擁は酷く暖かかった。  
 
「……あたしなんかで、ほんとにいいの?」  
これからもっと先、素敵な女の子に出会えるかもしれないのに、  
と呟いたら、唇を塞がれた。  
ただ唇を合わすだけの、優しいキス。  
「……お前しか、欲しくないんだよ……」  
唇が離れると、エドワードの顔がやっと微笑んだ。  
いつもの、想いを寄せていた少年のその笑顔をようやく見る事ができた。  
ウィンリィの目から、涙がポロポロと流れ落ちる。  
さっきまで流していたものとは全く別の、暖かい涙。  
「オレのエゴでもいい。誰かに『禁忌を侵した癖に』と罵られてもいい。  
もう…お前を離したくない」  
さらに強く抱きしめられ、心地よい苦しさに目を閉じた。  
「……ウィンリィが……好きだ」  
もう一度、口付けられる。  
さっきよりも長い口付けは、ほんの少し血の味がした。  
男と女の、「愛」と言う名の悪魔との血の契約。  
 
「愛してる……」  
 
キスを甘受して、背を滑る指先に身を任せた。  
 
再度再び床に押し付けられても、今度は逆らう気もしなかった。  
 
 
 
その一部始終を、アルフォンスは全て聞いていた。  
「(一時はどうなるかと思ったけど…。 取り敢えず、良かった)」  
正直、ウィンリィの叫び声が聞こえたときは飛び込もうかとも思った。  
でも…、アルフォンスはできなかった。  
兄の、ウィンリィに対する想いを知っていたから。  
兄弟喧嘩では連戦連勝でも、ハッキリ言ってこれだけは勝つ事はできない。  
でも、不思議と嫉妬は沸かなかった。  
これで、二人の心の孤独な日々は終わるだろうと言う、安心感。  
自分も、兄から一人立ちできるだろう。  
「(ボクは罵ったりなんかしない。  
もしもそんな奴がいたら、兄さんの代わりに殴ってやるさ…)」  
 
アルフォンスは、取り敢えず自分の寝室に向かう事にした。  
廊下の窓を見ると、いつの間にか雪が積もっていた。  
これでは暫くは、鉄道は閉鎖せざるを得ないだろう。  
その肌寒さを感じる事のできないアルフォンスは、そっと心に誓う。  
(兄さん。ウィンリィ。ボクは必ず、元の体に戻るからね。  
二人の足枷になりたくないから。二人を笑って祝福してやりたいから…)  
ドアの前から離れる瞬間、そっと呟いた。  
 
「兄さん。もう、ウィンリィを離しちゃ駄目だよ」  
                                        
END  
 
 

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