深夜の執務室に、職務をこなす場所としてはふさわしくない悩ましげな吐息がこだましていた。
マスタングは上等な革張りの椅子に深く腰掛け、愛犬が自分にひざまずいている姿を満足そうに眺めていた。
普段晒すことのない雪のように白い素肌をマスタングに乱暴に暴かれ、犬が身に纏うものはブラジャーとショーツだけだ。
いい恰好だなと、マスタングは羞恥と屈辱に震える犬に口角を上げる。
マスタングはあの柔肌をどう傷付けてやろうかと、ぺたりと力なく床に座る犬を上から下まで舐めるように眺めながら、凶暴な考えを抱いていた。
犬は目に黒い布を被せられている。
それから口も同じく布で覆われ、耳まで栓をされ、犬は世界から遮断され怯えている。
今、暗闇に投げ出された犬に手を差し延べることができるのも、もっと突き放すことができるのも、私しかいない。
布の下にある鳶色の瞳からは涙が溢れて止まず、頬を冷たく濡らしている。
マスタングは首に繋いだ首輪の鎖をぐいを引っ張り、急に顎を上を向かせると、犬は怯えたように面白いほど身体をびくりと震わせた。
後ろ手に手首を縛られた犬に自由はなく、マスタングが気まぐれに弄ぶと嫌でもそれに従うしかない。
マスタングから見たら華奢な犬の身体は今日はいつもにも増して小さく見え、彼は笑みを深める。
「…んんうっ…!」
マスタングは左腕を肘かけに掛けて顎を乗せ、右手では暇そうに鎖をじゃらじゃらと鳴らす。
そして彼の固い軍靴に包まれた右足は、ショーツ越しに秘所を軽く蹴っていた。
身体の自由を奪われながらも、マスタングが犬の身体を隅々まで視姦していることを敏感に感じ取っていたのか、隠された芽を突くとそこはすぐにみっともなく濡れた。
「この淫乱な犬め」
犬に聞こえるはずもないが、マスタングはどんな不本意な状況でも簡単に男を受け入れる犬を嘲笑う。
「んっ、んんー…っ!」
マスタングは怒りに任せて靴の先ではしたなく蜜を溢れさせるそこを執拗にえぐる。
「んう…ん…」
犬は涙で濡れた頬を紅潮させ、主人から与えられる快楽を否定するかのように首を振った。
しかし口を塞いでいる布からは、喘ぎ声と共にとろりと唾液がこぼれた。
下の口も乱暴に扱う度にぐちゃぐちゃと淫らな水音を立てる。
蜜で汚れた靴の先を欝陶しげに眺めたマスタングは、あとで犬に綺麗に舐めさせようと決めた。
マスタングは再び鎖を強く引っ張り、首輪に繋がれた犬を自らの猛りへと導いた。
ズボンをぎゅうぎゅうと押し上げていたものを外へ解放してやり、マスタングは犬の頬にそれを擦りつける。
「んんっ!」
身の程知らずにも主人から離れようとする犬の首輪をさらに引っ張ると、犬は苦しげに眉を歪めた。
口を覆う布から除く桃色の唇はふるふると震えており、呼吸が苦しそうだ。
マスタングは鎖を使って犬の身体を引っ張り上げ、熱い塊に顔を埋めさせることで、手の自由がなくふらつく犬を安定させる。
マスタングは犬の頬を汚すかのように自身を擦りつけながら、再び爪先で犬のショーツを力を込めてなぞる。
「んんッ、ん…っ」
喘ぎ声が涙声に変わるが、マスタングは構わずに犬を物を扱うかのように攻め続ける。
黒い布の下は、許しを乞う犬の真っ赤な瞳があるのだろう。
しかし易々と許してなどやるものかと、マスタングは犬の胸を握り潰すかのように強く揉みしだいた。
「んぅっ!」
「私という主人がありながら浮気など、たいした勇気だ」
マスタングは静かな怒りに目を細めながら、あの夜の出来事を思い出していた。
腐った上層部の人間の一人と犬がホテルから出て来たのを遠くから目撃したあの夜から、マスタングの中の何かが外れた。
――将軍に従わなければ大佐に危害を加えると告げられました。
――すべては私が望んでしたことです。あなたは何の関係もありません。
マスタングに淡々とそう述べた犬に反省の色は見えなかった。
犬がマスタング以外の男に愛されたこと、それを犬自らが躊躇いなく望んだこと、マスタングだけの愛おしい犬を汚されたこと。
マスタングはあの夜から、犬の自らに対する切ないまでの想いや苦しさに気が付かないほど、ただ嫉妬に狂った。
そして、マスタングは犬を――ホークアイを無理やりにでも服従させ、泣かせて、傷付かせ、自分に逆らうことなどできないのだと教えこむことで怒りを消す方法を選んだ。
「ん、ん…っ」
胸が痛むほど手が食い込み、秘所を靴でぐりぐりと刺激され、あまりの仕打ちにホークアイの頬が再び涙で濡れる。
もっと、もっと泣け。
そして、私しかいないと泣き叫べ――
絶頂の近いホークアイの白い肌に引っ掻き傷を残し、マスタングは恍惚と微笑む。
ひどい扱いにホークアイが悲鳴を上げる度に、マスタングは嬉しそうに目を細めていたが、同時に苦しさが滲んでいた。
マスタングはそのことに気が付かず、泣きじゃくるホークアイをいたぶる。
長くどす黒い夜はまだ始まったばかりだ。
終