「…あ…」
今にも消えてしまいそうなか細い声が耳に届いた。
リザの身体をベッドの上にほぼ強制的に四つん這いにさせ、後ろから突き上げるという体位に変えると、彼女は不安そうに私の方へ振り返った。
司令部で見せる冷静で毅然とした態度をどこへ忘れたのか、リザは釣り上がり気味の目を下げ、今にも泣き出しそうな表情をしていた。
綺麗な形の眉も同じく力なく下がり、その姿は主人に縋る子犬のようだった。
「…しょ、少佐…」
「ロイ、だ」
「…ロ…、あぁんッ」
きっとリザは私にこの体勢を止めて欲しいと言いたかったのだろう。
しかし、それは高い喘ぎ声に変わり掻き消された。
リザの腰を強く掴み、ドンと音がしそうなほど激しく自身をねじこめ始めると、彼女の願いはそこで途切れてしまった。
「…あぅっ、う…は…っ!」
リザの両腕は早くも身を支えることを放棄し、四つん這いになっていた身体は崩れ、彼女はシーツの波に上半身を投げ出した。
リザの身体を支えるのは、くびれた腰に痕が残りそうなほど食い込ませている私の指のみだ。
この体位だと、赤黒い自身がリザの熱いぬかるみを征服し犯しているのがよく見える。
私を飲み込んでいるリザの赤く潤んだ場所は、源泉のように乾くことを知らずぐっしょりと濡れている。
白くすべらかな尻の間にひそむその淫乱な泉に、グロテスクとも言える形をした自身が埋め込まれている光景は、卑猥そのものだ。
狭い入り口を指と舌で溶かしてこじ開け自身を滑り込ませると、リザの中は私の形通りに従順に広がる。
それを今、私は目の前にしているのだ。
背中にぞくりと電気が走るように快感が駆け抜けた。
何度も抜き差しをする度に自身はリザから溢れた液にまみれ、それは彼女の白い太ももにまで伝っていた。
ふと下を見ると汗と体液の水溜まりが出来ている。
これをリザに見せたら、彼女は恥ずかしさのあまり泣き出してしまうかもしれない。
「あんっ…うっ、…やだ…!」
唇を震わせて発しているだろう言葉には羞恥が滲んでいる。
この体位だけで、すでにリザは充分すぎるほどの恥ずかしさを味わっているのだ。
私の目前に尻を高く掲げ、パンパンと肉と肉が叩き合う音をさせて繋がるなど、リザにとっては羞恥以外の何でもないだろう。
――リザが何故この体位を嫌がるのか、私は知っている。
まずは、この獣のように交わる体勢が恥ずかしいから。
次に、あまりにも刺激が強すぎるからだ。
「くぁ…っ、や、少佐ぁ…っ」
わざと水音を立てようとしなくても、熱い結合部は勝手にくちゃりといやらしい音を立てる。
私が休む間も与えず強く突き上げる度に、リザは快楽と痛みの交じった声を上げ、息も絶え絶えに喘ぐ。
彼女はシーツを強く握り締め、顔を枕に埋めながら激しい律動に耐えていた。
目を固くつぶり、その目を縁取る金の睫毛は汗と涙で濡れている。
秘伝の描かれた美しい背中も汗にまみれ、視線を上へやると首筋や短い金髪もすっかり汗ばんでいた。
「ひゃあんっ!」
リザの背中に住むサラマンダーを固くすぼめた舌でわざとゆっくり舐め上げると、彼女は突然膣をきゅっと締め上げた。
危うく声がもれそうになる。
リザの背中はすべてが性感帯なのではないかと疑うほど敏感で、特に秘伝が刻まれた部分に触れられると、それだけで彼女の身体が熱を持つのだ。
「…うあっ…やめ、て…!」
背中を愛撫されるのが苦手だと知っていながら、なおも執拗にリザの背骨を丁寧に舌でなぞる。
「…ん…、あっ、あ…っ」
リザの中からとろとろと絶え間無く熱い液体が溢れ、私や彼女の身体を汚す。
「…んう…あぁー…ッ!」
小刻みに震えていたリザの身体の震えが大きくなり、喘ぎ声も涙声に変わってきた。
リザの呼吸をするペースがだんだんと早まり、切羽詰まったものへと変わっていく。
「…しょ、さ…っ!あん…っ!」
リザの膣が物欲しげにきゅうきゅうと忙しく私を締め付け始めた。
あと何度かリザの中に潜むざらついた部分を擦れば、彼女はすぐに達してしまうだろう。
「…しょうさ…っも、もう…っ!」
「駄目だ」
「んぅっ!」
限界が近いことを訴えるリザの白い尻を軽く叩き、まだ達することを許してやらない。
「…そ、んな…っ…やっ!」
無理だと抗議するリザの尻を今度はきゅっと摘み上げると、彼女は小さく悲鳴を上げた。
達するなと告げられたのにも関わらず激しく突き上げられ、リザは頭を強く振りながらやり過ごそうとしていた。
いつの間にかリザは自分の指を噛んでおり、血が滲みそうなほど歯が食い込んでいた。
トンとひと尽きするだけでリザは汗ばんだ身体をびくびくと震わせ、激しく突き上げれば人形のようにぐらぐらと揺れた。
体を揺らす度にお互いの体液が飛び散る。
――あと、もう少しだろうか。
「…あ…しょう、さ…っ!少佐ぁ…!」
「…何だ?」
「このまま…じゃ…っ」
「リザ?」
「…このままじゃ嫌…!」
与えられる強すぎる刺激に喘いでいたリザの声が、急に切ない懇願へと変化した。
小さなリザの変化をこの私が見逃すはずもなく、リザを突き上げる動きを緩やかなものへ変える。
そして、リザの背中に覆いかぶさり、彼女の耳元へ唇を近付ける。
リザの頬はすっかり紅潮し、そして呼吸が乱れ苦しそうだった。
「リザ、どうした?」
「…しょ、さ…このままじゃ…んっ、嫌…」
「はっきり言いなさい」
「あんっ!」
またぺちりと尻を叩くと、リザの目尻から涙が零れ落ちた。
健気にもリザはなんとか息を整え、かさついた唇で言葉を紡ぎ始めた。
「…少佐の、顔が…」
「ああ」
「…み、見えなくて…嫌なんです…」
散々いたぶられた身体に鞭打ち、リザは必死に首を持ち上げて訴えた。
やっと捕らえた私の顔を離すまいと、鳶色の瞳が強く私を見つめる。
「…そうか」
リザがこの体位が嫌いな最後の理由、それは――私の顔が見えなくて不安だからだ。
「…つまり、こうすればリザは満足なのかな?」
一度、猛る自身をリザから抜き、彼女の身体を仰向けに変える。
そしてリザの上に覆いかぶさると、額と額を合わせながら彼女の足を大きく広げ、再び自身を埋め込んだ。
「ん…っ、あつ、い…」
もう一度リザの中へ入り込むと、彼女は驚くほどの締め付けで私を歓迎してくれた。
ますます潤み出したリザの身体を抱きしめようとする前に、彼女が私の首に腕を回し抱き寄せてきた。
「…少佐…」
「だから、ロイだ」
「…ロイ…んっ、あぁ…っ」
自身が奥まで辿りついただけで、リザは軽く達してしまったらしい。
首をのけ反らせ、縋るように強く私の頭を抱き寄せた。
穏やかな絶頂を迎えたリザは、苦しげな表情ではなく恍惚とした表情を浮かべ、豊かな胸を上下させている。
「…ロイ…」
甘い吐息に乗せて、リザが私の耳たぶに口付けながら名を呼ぶ。
それに応じるように、私は先ほどとは打って変わって緩やかに腰を動かし始めた。
「リザ、これで満足か?」
「…あ…、はい…っ」
「そんなにあの体勢が嫌なのか?」
「…ん…ロイが見えなきゃ、嫌…」
顔が見えないという不安から解放されたリザは、プライドや意地が溶けてなくなるのか、思わずにやけるほど可愛らしい。
私を離すまいとするようにリザは私の頬を両手で挟み込み、唇を重ね、下手くそながら舌を侵入させてきた。
ぎこちなく口の中を探るリザの舌を捕えて絡ませ、激しく貪り合った。
恋愛に奥手で恥ずかしがり屋のリザが私を求めるのは、セックスの時ぐらいだ。
だからわざわざリザの苦手な体位を強いて交わるのだが――他人から見れば変態、または最悪ということになるのだろうか?
「…ん、ロイ…もっと…」
無意識だろうが、リザの体液に濡れた足が私の腰に絡み付く。
「…ロイ、すき…」
「私もだ」
ぐちゅりと音をさせて私を飲み込みながら、うっとりとリザが呟く。
飲み切れずに唇から溢れた唾液を光らせ、膣をきゅっと締め上げて求め、私に素直に愛されるリザを見られるのならば「変態」という烙印を押されても構わない。
終わり