まだ子供から脱しきれず、時折ひどく幼い表情を見せるリザに、首筋にうっすらと残る歯型の痕は不似合いだと思った。  
昨日、彼女を抱いている時に理性が吹っ飛び、動物のように噛み付いてしまった私が言うことではないか、と苦笑する。  
リザに関して苦い思いをすることはたくさんある。  
まず、彼女のその幼い表情が快楽に歪み、眉を寄せて耐える姿はとてつもなく私を煽り、そして同時に背徳感が襲うのだ。  
嫌がる未成年を無理やり組み敷いて抱いている――そんな感覚を何度も覚える。  
リザが幼く見えるせいなのか、小さい頃から知っているために女性として彼女を扱えないためなのか、理由はさっぱり分からない。  
強すぎる刺激を受けてリザが涙交じりに「やめて」と懇願する時、同意を得て抱いているはずなのに、無理強いしている気分になるのだ。  
しかし、それに興奮している自分がいることも確かだ。  
幼女趣味はまったくなく、これはリザにだけ反応するのだろうが、小さな体が快楽へと導く私の手を拒否できないことに支配欲が満たされるのだ。  
そして、もうひとつ。  
何も知らない純粋なリザに、私だけを教え込む楽しさに目覚めてしまったことに少々後悔している。  
素直なリザは何の疑問も抱かずに私にされるがまま快楽に溺れていく。  
あどけない表情から一転して艶のあるものに変わる時、子供であるリザを自分が大人にしたという喜びが胸を満たすのだ。  
つまり、子供と大人という境目の曖昧な年頃は実に魅力的で、リザには悪いが私は罪悪感すら心地よく、すっかり「調教者」気分なのだ。  
今までたくさんの女性を抱いてきたが、リザほど己の欲を満たしてくれるひとは存在せず、これからも現れないだろう。  
「……や、あっ、いあぁ…っ!」  
常になく高い声を上げて、リザが私の指によって達した。  
背をのけ反らせた後、鍛えられ引き締まった美しい身体がシーツの上にどさりと落ちた。  
豊かな胸を苦しげに上下させ、まだ余韻が残るのかぴくぴくと身体が震えている。  
柔らかな二つの膨らみは先ほどの執拗な愛撫により、唾液にまみれていた。  
先端の赤い尖りもまだ固く立ったままだ。  
その可愛らしい尖りを、リザから溢れた液によって濡れた手で触れると、彼女は辛そうに目を閉じた。  
「…は、ぁ…」  
桃色の唇から漏れる吐息が堪らなく色っぽい。  
「…やめ…っ、ん…!」  
その声をもっと聞きたくて胸の飾りを指先で摘み転がすと、リザは必死に頭を振った。  
短く切り揃えられた金髪はじっとりと汗に濡れている。  
「…は、ぁ…」  
力を込めた通りに形を変える胸の柔らかさに酔いしれながら揉みしだく。  
その手の動きを穏やかなものにしていくと、だんだんとリザが声のみで反応を返すようになった。  
汗にまみれた身体をぐったりと横たえ、シーツに横顔を埋めている。  
このまま愛撫を止めてしまえばリザはおそらく眠ってしまうだろうと予想できるほど、彼女は疲れ果てていた。  
感度の良いリザは、一度達するだけでもかなりの体力を消耗するらしく、体に力が入らなくなるのだ。  
しかし、当然このまま眠らせるわけがない。  
リザ、と名前を耳元で囁き、ピアスごと耳たぶを口に含めた。  
眉がきゅっと寄せられた艶のある表情を楽しみながら、声を抑えるために口元に添えられていたリザの右手を取った。  
汗ばんだ手を握り、マッサージするかのように揉むと、くすぐったいのかリザの頬がわずかに緩む。  
 
しかし次の瞬間、リザの顔が一気に強張った。  
「…っ!?」  
「…何か分かる?」  
リザの右手と戯れたあと、腕を引きそれをゆっくりと私の下半身へと導いた。  
そして、白い指を熱を持った塊に絡ませる。  
「…え…っ?」  
今にも眠ってしまいそうだったリザが、ぱっと目を大きく開いた。  
自分の手が何に触れているのかをちらりと目を動かすだけで確認すると、たちまち頬を赤らめた。  
「…や、いや…っ」  
今までリザに自身を触らせたことは一度もなく、また、彼女も恥ずかしいのかまともにこれを見ようとしてこなかった。  
急に私のものを握っているという状況に驚いたのか、握力が強まった。  
「あまり乱暴に扱われると困るな」  
「…あ…ごめんなさい…」  
リザは羞恥から今にも消えそうな声を出した。  
今すぐ私のものから手を離したいに違いないが、そうはさせない。  
「…手を動かしてみてくれないか」  
「へっ!?」  
「リザも触られると気持ちいいように、男も同じなんだよ」  
だから触ってと、リザの指に添えた自分の手をゆっくりと動かした。  
リザは恥ずかしさで言葉が出ないのか口をパクパクとさせており、それでも拒否せず、私にされるがままだった。  
「動かしてごらん」  
リザから手を離し、一人でやってみるように促すと、彼女は不安そうな表情を浮かべた。  
「あ…え…」  
リザは戸惑いながら、なるべく私の方を見ないようにして、恐る恐る手を動かし始めた。  
「…うん、そう…。もっと全体的に」  
私の言葉通り、リザは私のものを上から下までしっかりと触った。  
その動きを何度も繰り返す。  
「触る」と言っても、私に触れるか触れないかの大きさの手のわっかを前後に優しく動かすだけだ。  
初めてだということを考慮してもリザは下手くそで、たいして気持ち良くもない。  
しかし、白い指が私のものに妖艶に絡み、私の言葉通りに素直に動いている事実は、充分な興奮材料になった。  
「…あ…」  
私のものが手の中でびくんと動いたことに驚いたのか、愛撫する手を止め、リザが私の方を見た。  
しかし、すぐに恥ずかしそうにぱっと顔を逸らしてしまった。  
……なんだ今の可愛い反応は。  
リザの初々しい仕草だけで体が急激に熱を持ち始める。  
今日は触らせるだけにして、口に含ませるのは今度ににしよう。  
一気に楽しんでしまうより、ゆっくりと事を進めて味わった方が私の理性のためにもなる。  
単調な動きだけを繰り返していたリザだが、先端が濡れていることに気がついたらしく、そっと親指でそこに触れた。  
そこをくるくると円を描くように優しく撫でる。  
突然の刺激に慌てて声を抑えた私を見て、リザが不思議そうに首を傾げた。  
「…マスタングさん、気持ちいい…ですか…?」  
「…ああ。いいよ」  
私の返事を聞くと、良かったというようにリザが嬉しそうに微笑んだ。  
私が気持ち良いと発言してから、リザの手の動きがはっきりと変わった。  
指に力を込め始めて、やっと「扱く」と呼べるものになったのだ。  
最初は触ることを拒否しており、本当は今だってできるならば愛撫を止めたいのかもしれないのに、どこまでリザは私に従順なのだろう。  
愛おしさがこみあげ、たまらずリザに口付ける。  
赤黒いものがリザの白い手に包まれているのを楽しみながら、私も彼女の身体を愛し始めた。  
「もっと強く…そう、そうだ…」  
「…は、い…」  
胸を甘く噛みながら告げると、リザは言葉通り素直に従う。  
ふと、リザの腰がわずかにもじもじと動いていることに気が付いた。  
そっとリザの内股へ視線をやると、一度達したそこは再び熱く潤んでいた。  
 
欲しい、とリザの身体が私を求めているのだ。  
リザは自分が腰を揺らしていることに気が付いていないだろうが、身体は正直で貪欲だ。  
ちょうど私も、温かい指もいいが、そろそろ熱いリザの中へ入り込みたいと思っていたところだ。  
「リザ、もういいよ。ありがとう」  
愛撫を止めるように促すと、リザはどこか名残惜しそうに私のものから手を離した。  
リザのおかげですっかり高ぶった塊を金の茂みの奥に宛がうと、彼女はぴくりと肩を揺らして反応した。  
「…いい?」  
なるべく優しくそう尋ねると、リザは私の肩にしがみつきながら、こくりと頷く。  
リザと何度も身体を重ねてきたが、彼女は未だにこの瞬間が苦手で、時に痛みを感じるらしい。  
それ故に、ゆっくりと慎重に入っていかねばならない。  
くちゅりといやらしい水音をたてて、私は先端をリザの中へ埋め込んだ。  
ん、とリザが甘い吐息をもらしたことに安心する。  
そして、息をひそめてじっと耐えているリザの背を撫でながら、ゆっくりとすべてを押し込んだ。  
無事にリザの中へおさまることができたが、膣内は私を拒否するかのようにきつく締め付けてくる。  
リザは苦しいだろうが、この私を押し出すかのようなきつい締め付けは男にとっては堪らない。  
早く動きたい衝動を抑え、リザが落ち着くまで、額やこめかみなど顔中に軽いキスを繰り返し、じっと耐えた。  
「…あっ…」  
だいぶ経った後、リザがとけるように甘い声を上げた。  
私を見つめる瞳は潤んでおり、リザは頬を紅潮させてうっとりとしている。  
「…もう…ん…っ、大丈夫、です…」  
吐息をもらしながら私の肩に顔を埋め、リザが動いてよいと許可を出してくれた。  
それを皮切りにリザの太ももを大きく広げ、腰をゆっくりと前後に動かし始める。  
「…うあっ、は…あっ、あ…っ」  
私に縋り付きながら、リザが気持ち良さそうに喘ぐ。  
激しく突き上げて動くより、ゆったりと緩やかに抜き差しをする方がリザは気持ちが良いらしい。  
「やあ…あ、ふ…っ」  
「…気持ちいい?」  
「…あっ…いい、です…」  
蚊の鳴くような声で、しかし心地よさげにリザが答えた。  
リザの中がますます潤み始め、彼女はもう完全に私自身を受け入れてくれているようだ。  
「リザ、体を起こすぞ」  
「ふぁ…っ」  
繋がったまま、胡座をかいた上にリザの身体を乗せる。  
リザは言葉にしたことはないが、お互いを近くで感じ合えるこの体位が好きなのだ。  
「うっ、やあっ!」  
リザがぺたりと腰を落とすと、先端が中を強くえぐったのか、彼女の身体がのけ反った。  
慌てて快感に震えているリザの体を持ち上げる。  
この体位は好きらしいが、やはり強すぎる刺激は苦手らしい。  
リザの背を撫でながら、中を掻き混ぜるようにぐるりと緩やかに腰を動かし、再び彼女の好きな淡い快楽を生み出す。  
「…ひぁ…あ…」  
ゆっくりと優しく交わることが堪らなく良いのか、リザは声を抑えることを忘れて、甘い喘ぎ声を聞かせてくれる。  
私の首に腕を回して抱き着き、リザは珍しく自ら腰を動かし始めた。  
「リザ」  
「…あ…っ、何、ですか…?」  
「下を見て」  
言われるがままにリザは視線を下に向けた。  
「繋がっているのがよく見える」  
そう言いながら、ことさらゆっくり抜き差しをすると、リザの中がきゅうっと締まった。  
「…そ、そういうこと…はぅっ…言わないでください…っ」  
可愛くそっぽを向かれると、ついついまた意地悪をしたくなってしまう。  
横を向いたリザの顎を取り、無理やりこちらを向かせて唇を重ねる。  
触れるだけのキスをして唇を離し、私は腰を緩く動かしたまま、リザに課題を出した。  
「リザからキスしてくれないか?」  
「え?」  
「リザからキスしてほしいんだ」  
「あんっ!」  
茂みの奥に隠れている敏感な尖りをきゅっと摘んで、無理やりキスをせがむ。  
 
「…やっ…手、離して…っ!」  
「キスをしてくれるなら」  
「ひぅ…っ、やだっ、やめてぇ…っ!」  
親指で尖りを遠慮なく押し潰すと、リザは私の腕を掴んで止めるように懇願した。  
私が指の動きを止めると、リザは俯いたまま荒い呼吸を整える。  
顔を上げると、頬を赤くさせて私を睨んできた。  
「…もう、ずるいです…」  
「今頃気付いたのか?」  
意地悪く笑いながらリザに顔をぐいと近付け、キスをせがむ。  
「ほら、早く」  
「…キス…すればいいんですよね?」  
「ああ」  
リザは私の顔を両手で挟み、躊躇いながら顔を近付け、そっと唇を合わせた。  
合わさった唇が心なしか震えているように感じた。  
「…おしまいです」  
唇と唇を少し触れさせただけのキスを終えたあと、リザは大袈裟に私から顔を離した。  
予想はしていたが、やはり笑ってしまうほどお子様のキスだ。  
「私がいつもやっているのを頼んだんだがね」  
「いつも…?…んっ!」  
下からとん、と突き上げながらもう一度キスをすることを要求する。  
「いつもの…キス…?」  
「そう、いつもの」  
いつもの私がしかけるキスを思い出したのか、リザはまた頬を赤く染めた。  
やはりお子様だ。  
しかし、実行しなければ苦しいほど攻められることをもう充分に理解しているせいか、リザは小さくため息をつき、もう一度私の頬に触れた。  
再び唇が合わさり、柔らかさを味わうかのように何度も角度を変えて触れてくる。  
次に、下唇を甘く噛まれ、舌でくすぐるように唇の隙間を舐められた。  
「…ん…」  
いつも私がしていることを思い出しながらやっているのか、そこまでは実にスムーズだった。  
しかし、リザならすぐに根を上げて口を開いてしまうところだが、私は断固として唇を閉じたままだ。  
唇のこじ開けようとリザは必死に舌を這わせたが、なかなか開けようとしない私に焦れて、彼女は困った表情を浮かべて顔を離した。  
そして、リザの唾液で濡れた私の唇を指先でつーっとなぞった。  
「…あの、マスタングさん…」  
「ん?」  
「…く、口を開けてくれないとできません」  
「そうだね」  
話すために私が唇を開いた時、リザが指を口の中へ控え目に潜りこませた。  
「…口、開けてください」  
リザの指は遠慮がちに口内をさ迷い、舌を見つけるとそれに指を絡めた。  
「…開けて?」  
とろんと目尻を下げて、リザがそう囁いた。  
完敗だ、と思った。  
どうせリザは思い通りにいかずにすぐに私に泣き付いてくるのだろうと甘い考えを抱いていたが、実に色っぽく誘われてしまった。  
リザの言葉に導かれるままに唇を開くと、指の代わりに小さな舌が入りこんできた。  
やっと私の舌にたどり着き、意地悪な課題を見事に達成したリザは濃厚な口付けを交わしながらも、ふふっと嬉しそうに幼く笑った。  
そんな笑みを見せられると、だんだんと我慢がきかなくなってくる。  
ちろちろと私の舌を突いていたリザのそれを、強引に私の口内へ引きずり込み、卑猥な水音がするほど激しく攻め立てる。  
「…んんっ、ん、んーっ!」  
そして、今まで緩やかに動かしていた腰も、リザに遠慮なく乱暴に動かした。  
「ふぁっ、あっ、あっ」  
私が己の欲のままに強く突き上げ続けると、リザの喘ぎ声はすっかり涙交じりになっていた。  
その声がもっと聞きたいという凶暴な衝動に駆られ、唇を離す。  
次にリザをシーツの上へ押し倒すと、落ち着く暇もなく激しく自身を彼女の中へ打ち込む。  
「あぁっ!…やっ、いや…!」  
突然動きが変わったことに戸惑っているに違いないリザはシーツをきつく握って、いきすぎる刺激に耐えていた。  
 
「やぁっ…マスタングさ…、ゆっくりして…!」  
目元を涙で濡らしながら息も切れ切れに懇願するリザの表情には余裕も力もなく、幼い頃の彼女を彷彿とさせた。  
ぞくりと背中が泡立つ。  
リザの懇願は逆効果だった。  
「はぁ…やだっ、マスタングさん…っ!はげし…っ!」  
リザの両足を肩に乗せ、律動を彼女にとっては痛みに近いほど、さらに激しくする。  
「ふっ…あ、やだぁ…っいや…!変になっちゃう…っ!」  
リザの秘部は淫らなほどぐちゃぐちゃに濡れており、わざと音を立てて突き上げると、はしたない水音が盛大に響いた。  
「…だめ、だめぇ…もうっ…」  
リザの震えた声がますます高くなり、絶頂が近いことを知らせた。  
太く赤黒いものが遠慮なく突き刺さっている可哀相な白い身体はがくがくと揺れて、それに合わせて私もそろそろ限界が近い。  
「…お、おかしくなっちゃ…!…あっ、あっ、やああっ!」  
先端がリザの奥を力強く擦った瞬間、彼女は身体を強張らせて絶頂を迎えた。  
リザの中が今までにないほどぎゅっと締まり、あまりのきつさに慌てて声を殺す。  
素早く自身を取り出すと、リザの大きく上下している胸の上に白濁とした液を放ち、私も果てた。  
リザの上に体重をかけぬように覆いかぶさり、果てたあとの余韻が抜けるのを待った。  
お互いの荒々しい吐息のみが寝室にこだましている。  
少々落ち着いた頃に目を開けリザの様子を見ると、ひどい後悔に襲われた。  
暴力的とも言える交わりと刺激を受けたリザは、苦しげな表情を浮かべて目を固く閉じていた。  
目尻には涙が浮かんでいる。  
絶頂に達するまでの快楽と、それと同時に痛みも感じていたのだろう。  
無意識のうちに子宮のある部分へ上から触れると、まだ身体が敏感なのか、リザは小さく声をもらして身をよじった。  
「…マスタングさん…」  
掠れた声が私を呼ぶ。  
リザはそっと目を開け、私の姿を確認するとそっと微笑んだ。  
しかし、胸に精液が掛けられていることに気付くと、気まずそうな表情を浮かべて目を逸らしてしまった。  
女性に精液を掛けて征服したような気分になる趣味はなかったのに、リザに限っては彼女の身体を己の液で汚すことに満足してしまう。  
――リザを子供だ何だと言っているが、一番子供なのは自分じゃないか。  
「…リザ、すまない」  
「…どうして謝るんですか?」  
「ずいぶんひどく抱いてしまって…痛かっただろう?」  
「……いいえ、平気です」  
しばらくは体を起こすことさえ苦しいはずなのに、リザは汗にまみれた顔を緩め、健気にも笑ってみせてくれた。  
胸の上の精液をシーツで拭いながら、リザの底無しの優しさには敵わないと苦笑する。  
「…リザ、何か私にしてほしいことはないか?」  
大切な女性の身体を乱暴に扱ってしまったことを簡単に償えるわけがないが、聞かずにはいられなかった。  
「…急にどうしたんですか?」  
「いいから、何か言ってみて」  
「…じゃあ…お水、持ってきてくれますか?」  
「ああ」  
早速キッチンへ向かおうとすると、くい、と腕を弱い力で引っ張られた。  
何事かと振り向くと私の手首にリザの指が遠慮がちに絡み、引き留めていた。  
「リザ?」  
「…あの、その前に…もう少しだけ隣にいてください」  
「……ああ」  
ベッドへ戻り、リザを胸に抱き寄せて横になると、彼女は嬉しそうに素肌に擦り寄ってきた。  
リザの汗ばんだ前髪を梳いてやると、彼女は照れつつもはにかみ、さらに身体を密着させた。  
この愛らしい顔を、また歪めて泣かせて、私は楽しんでしまうのか。  
――リザ、すまない。  
心の中で、情けなくも次の時の分を予め謝った。  
 
 
 
終わり  
 

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