鈴を振るような笑い声が、こぢんまりした浴室に響くようになって数日になる。  
明るい金色の髪を背中に散らした若い娘と、部屋の主である年かさの娘の肌から、  
ころころと湯の粒がはじかれて転がり落ちた。  
「先に上がるわね」  
「どうぞ」  
湯上がりの乙女たちの、生まれたままの姿ほど神々しいものはない。  
「それにしてもウィンリィさん……お乳大きいのね。すてき」ウィンリィがここに来た日、  
逃亡中の彼女に着せる服をクローゼットの前で選んでいた時と同じ感想を、  
ネグリジェに袖を通しながらロゼは口にした。「私の服じゃ、胸のあたりが  
きついかもね」などと先日は笑ってみせたのだ。  
ロゼの視線に気づいて、恥ずかしそうにウィンリィが答えた。  
「ううん、ロゼさんこそ、綺麗です。とっても」  
その讃辞に嘘はなかった。彼女は相手の全身を賛嘆の目で見渡した。  
すらりと伸びた白い手足に、蜂のようにきゅっとくびれた腰。薄い生地を通して、  
ウィンリィのものほど豊かでないにせよ、こんもりと盛り上がった胸が誇らしそうに  
上を向いているのが透けて見えた。  
ありがととロゼは微笑むと、  
「うふ、ウィンリィさんすっごく可愛い」  
「わっ、ロゼさん……きゃっ」  
腕をあげて髪を絞っていたウィンリィは、背後からロゼに抱きつかれて  
バランスを崩した。  
「……あ………だめです…」  
胸の先端を白い手がそっと撫でたので、ウィンリィは息を呑む。  
「だって、ふわふわで柔らかそうだから、つい触りたくなっちゃって」  
ロゼは、眩しいような笑みを向けた。  
「……ちょっと違うわね。ふわふわっていうより、ピチピチしてる」  
少女は下着を着けていず、重たげな乳房を華奢な手が這うままにしていた。  
「髪もきれい」  
髪をねじって上げる手を止めさせて、後ろから大きなタオルで包みこみ、  
布越しにウィンリィの首筋に頬をすり寄せたロゼは、  
「ね、ウィンリィちゃんって呼んでいいかしら」  
「…きゃ、くすぐったい……」  
ウィンリィの裸足の足がかるく暴れたが、長い金色の髪を、彼女は隈なく拭いてやった。  
 
 
「寝るまで時間があるわ。しばらくお話ししましょう」  
二人の乙女はロゼのベッドの上に座り込んで、一緒に写真を見たり  
服を見たりしていたが、不意にくしゃみがウィンリィを襲った。  
「あら、どうしたの。風邪?」  
ウィンリィは首を振ったが、軽く震えてまた1つくしゃみ。  
「風邪ね」  
さっき湯冷めしちゃったのかも、ごめんなさいぐずぐずさせて  
とロゼはいった。  
「ここで寝る? 私がウィンリィちゃんの部屋に行くことにするから。  
とにかく熱を測りましょう」  
「あの……あたし、大丈夫です。部屋まで戻れます」  
「だめよ。私の家であなたに病気させたりしたら、アルやエドに  
申し訳ないじゃない」  
ロゼは甲斐甲斐しく動いて、少女をベッドにくるみ込んだ。  
「ありがとうございます。でも、一晩寝れば治ります。あたし家が  
医者なんでよくわかってます」  
「きっと疲れがたまってたのよ。自分で気がつかなくても、そういうことはあるわ」  
「でも…」ウィンリィは半身を起こそうと試みた。  
「だめ……ひどい熱よ」互いの額をくっつけて、ロゼは彼女をやさしく  
押し戻した。  
 
 
翌日になっても熱は完全にはひかず、額に載せた濡れタオルを  
何度も取り替えることになった。  
「お帰りなさい」  
街での炊き出しから戻るやいなや、全身を拭いてくれるロゼに  
申し訳なさそうに微笑むと、ロゼはにっこりと笑み返した。  
「いいの。ウィンリィちゃん、柔らかくて気持ちいいんだもの」  
 
 
 
 
 

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