「よく利用するのだが、案内してもらうので自分では場所を覚えられないのだよ」  
仮眠室への道がわからない、といっていたロイがシェスカの案内で共に歩いていく。  
違う建物に勤務している彼女でも、ロイ・マスタング大佐といえば、異動してから華やか  
な噂を耳にしている。  
若くして大佐の地位にあり、端正な顔立ちと沈着な物言いに女性たちの視線が集まって  
しまうのは無理のないことである。  
その女性の中にシェスカも含まれているが、機会も勇気も持てない自分はなにもできない。  
あきらめかけた矢先に、周りには誰もいないところでロイがいた。  
初めて声をかけるという状況に持ち込めたのだ、せっかくならもっと話をしてみたい。  
しかし数歩の距離にロイがいると意識してしまい、口数の少ない状態になってしまう。  
このままでは他の女性たちのように、ロイに触れることも一生適わないのではないか。  
「あ、ああ、あの!」  
「なんだね?」  
「よく、仮眠室はご利用になるんですよね? そんなに忙しいんですか?」  
「部下がいろいろと仕事を持ってきてくれるのでね、中々帰れないので仕方なくさ」  
「はあ…大変なんですね」  
「おかげでセントラルの女性をデートに誘うこともままならないよ」  
はあ、とロイが大げさなため息をついたところで、ちらりとシェスカに視線をずらす。  
「どうかね、君は今夜あいているかい?」  
「え!?」  
「冗談だ。そんなにあわてなくても良いよ」  
「あ、冗談…ですか」  
恐る恐るロイを見上げてみたが、彼は何事もなかったように隣を歩いている。残念な気  
持ちもあるが、ほんの冗談というのは本当だったのかもしれない。  
施設については見取り図が頭に入っているので、人が少ない仮眠室のある棟へ  
案内することができた。  
それはそれでよい事だが、あっさりしすぎて寂しさすら憶えてしまうシェスカだった。  
 
仮眠室の利用者が多いのは、夜半過ぎから明け方にかけてである。  
あまり午後の日が高いうちに利用する人間は現れない。  
ただしこの条件は普通に仮眠室を利用する場合に限る話で、男女で一つの仮眠室を  
利用するケースも少なくないのだ。  
そのため女性の噂では、誰が誰と一緒にいたという目撃談が尽きることはない。  
今はまさしく噂されるそれであり、シェスカは知人と遭遇しないことを祈るのみである。  
「ふむ…たしかにまったく利用中の札がかかっていないな」  
「あの、利用の仕方などはおわかりですか?」  
聞いてしまってから後悔する。よく利用している、と彼が言っていたではないか。  
だがそんなシェスカの問いにも、とくに気を悪くしたようなそぶりも見せず、ロイは傍  
からみれば「さわやかな」笑みを浮かべて見せた。  
「部屋にある帳簿に名前を入れるようなことくらいなら出来るさ。ほとんど同行してくれ  
た人に書いてもらっているがね」  
「え、あ、それって」  
「私はあまり文字が綺麗なわけではないと、自分で思っているのでね。案内してくれた女  
性たちはみな綺麗な字で書いてくれるよ」  
女性との噂が多いこの人の理由が、シェスカはほんの少しだけわかったような気がした。  
何度か利用しているこの場所は覚えているのだが、女性につれてきてもらうのが多いの  
だろう。案内役を喜んで受け入れる女性たちが今まで何人もいて、共に部屋ですごしてき  
たということだ。  
「さて案内してくれてありがとう。このあと君はどうするんだね?」  
ドアを開けながら振り返ったロイが笑っている。笑みがなにかたくらんでいるように見  
えるのは気のせいだろうか。  
「私…ですか? このまま…帰宅、ですが」  
どうするというのはロイと共に部屋に入るかどうかとわかっていても、思わずそれとは  
違う解答をしてしまう。  
「そうか、では無理は言わないよ。帰ってゆっくりするといい」  
部屋の中に入っていく様子をみて、こんな機会は二度とないと頭の中で警鐘が鳴る。  
数多くの女性の中の一人でも十分だ。ロイをひと時だけでも独占したい。  
「あ…の、つづりは Mustang でよろしいんですよね!?」  
そういって踏み出した足がどこへ行くのか、彼女はわかっていなかった。  
 
我ながらなんでこんなことになったのか良くわからない。  
帳簿に震えのある手で名前を書き綴っているときに、彼は部屋のドアを閉めて鍵もかけ  
たのはわかっている。  
その彼が自分をほうっておいて、ベッドに寝転がっているのが信じられない。  
軍服の上着を乱暴に脱ぎ捨てて背中を向けている姿を見ると、自分はその相手にはふさ  
わしくないと言われらような気がしてしまう。かといって怒り出すわけにもいかず、  
シェスカはおろおろしているだけだった。  
「君は先程『帰宅する』と言っただろう」  
くぐもった声で聞こえるのは、ロイが右腕を枕にして背中を向けているからだろうか。  
確かに頼まれた資料を軍法会議所から持って行く際に、このまま帰って良いと声をかけ  
られた。だからあわてて戻る必要もなく、ロイをここまで案内してこられたのだ。  
「だがすぐに帰るはずの君が、寝に行った私のように軍服を皺くちゃにするわけにはいか  
ないだろう?」  
つまりは自ら脱げと言いたいのか、この人は。  
すぐに帰るはずの人間が、いつまでも建物の中にいるのもおかしい上に、なぜ服にありえ  
ないしわがついているのか。誤魔化しきれるほど、シェスカは器用な人間ではない。  
「その意思がないのなら戻りたまえ。私は寝に来たのだからね」  
ロイから言われたことは理解できるが、自分で脱げというのもまた行動し難い話だ。  
軍なのだから命令されればあきらめもつくのだが、ロイはあくまでもシェスカの意志で  
することを待っているようだ。  
ここまで来たらどうにでもなれ…です!  
シェスカは脱いだ上着をわざと音を立てて床に落とした。  
ブラウスを脱いでパンプスも足からはずし、充分ためらってからスカートをおろす。  
それらの音が聞こえているはずのロイは、彼女が下着姿になっても体を動かさない。  
自らストッキングも抜き取ると、下着姿で生唾を飲み込んで一歩ロイの方へ近寄る。  
ロイの肩ちかくに膝を乗せると、ベッドが小さくきしむ音が聞こえた。左腕と肩にそっと  
手を置くが、彼の反応は何もない。  
 
思い切って肩に置いた手に力を入れると、シェスカはロイを仰向けにさせた。すぐに  
姿勢を変えられたということは、ロイ自身でも体を動かしたのだろう。  
至近距離でじっとロイに見つめられて、シェスカの動きが止まりかける。しかしその目  
に操られるように、両手をロイの頬に添えると顔を寄せて口付けた。  
軽く開かれたロイの唇を挟みこみ、さらに口を開かせる。シェスカはどうにでもなれと  
さらぶ自棄になって、そっと舌を差し込んだ。  
同じタイミングでロイの舌もシェスカの口内に侵入しようとしていたのか、すぐに二人  
の舌が絡み合う。体は動かさないままのロイが、シェスカの舌を吸い上げてさらに深い口  
付けを続けた。  
「悪くはないんだが、少なからず当たるのでね」  
ロイの左手が伸びてシェスカの眼鏡をはずしてしまう。視界がぼやけてしまうが、かえっ  
てこのほうが恥ずかしくないかもしれない。  
そして頬に添えられたロイのしっかりした手の感触にはっとしたが、シェスカはベッド  
の上にへたり込むようにすわり目を閉じた。ロイはそんな彼女の口内に指をねじこませる。  
「ん…んぁっ」  
舌よりも固い指がシェスカの唇、舌、歯をなぞっていき、ぞくりとした感覚が走る。  
嫌だとは思わない。もっと、してほしい。  
求めながら舌を差し出し、指に絡めながら付け根から指先へと唇を移動する。  
抜けかけたときにまた深く指をくわえ込み、同じ動作を繰り返す。  
指ではなく違うモノを思い浮かべながら、シェスカは何度もロイの指を味わった。  
だがあっさりと指を引き抜かれ、目を閉じていたシェスカがロイを見る。彼は笑ったま  
ま手を下ろすと、着ているものを脱ぐように言い出した。  
「あの、自分で、ですか…?」  
こんな格好になってまでいえることではないが、男性の前で下着を取れというのは…。  
「私に脱がしてもらいたいのかい?」  
「え、あ、あの、そういうわけでは…!」  
「では自分で脱ぎたまえ」  
 
戸惑いながら立ち上がり、ロイに背中を見せながら言われたとおり下着を外す。  
背中に感じる視線だけで、充分に羞恥心が上がっていく。  
「こちらに来たまえ。そのままでは何も出来ないだろう」  
まだ頭の奥で冷静な部分が残っているため、自らを晒すことができない。悪あがきと思い  
ながら、右手で胸を、左手で陰部を隠してベッドに近寄る。  
「隠したままでどうするんだね?」  
「あの…ひとまず、座らせてください…」  
「立っていることを強要するつもりはないよ」  
そういうとロイは少しだけ体を動かして、シェスカが座れるだけのスペースを開ける。床  
ではなくすぐ傍に座れと示され、ベッドに足を乗せながらもなおも隠し続けたが、その手  
の下から剥き出しにされたシェスカの下肢の狭間へ、ロイの手が伸ばされた。  
「え、あ、そこ…!」  
不意打ちとも言える行動に驚き、静止しようと両手をロイの腕に添えてしまう。これでロ  
イに全てを晒してしまったが、まだ満足していないのかさらに言葉を続ける。  
「座られると入れにくいな、もう少し腰をあげてくれたまえ」  
至極当然のことをしているようなロイの口調に、シェスカは腰を上げて膝から下で体を支  
える姿勢になる。そして先程の口付けだけで潤った中へロイの指が侵入する。  
「っあ…! いきな…り…っ」  
「受け入れる準備は出来ているようだがね? ほら、音が聞こえるだろう」  
奥深くまで侵入した指が、中でゆっくりと動き出す。それにあわせて粘着質な音が聞こえ、  
恥ずかしさがよみがえってきたシェスカは思わず顔を手で覆ってしまう。  
「君の音だ、恥ずかしがることはないだろう」  
「で…でも…」  
「だめだ、手を避けなさい」  
言っている間にもロイの指はシェスカの中で動きまわり、シェスカはため息のような息と  
か細い声をあげ続けた。  
 
「どうしたね? ああ、倒れこんではいけないよ。そのままでいるんだ」  
くちゅりくちゅりと音が聞こえるということは、ロイの指が動いている証拠でもありシェ  
スカの下肢に力が入らなくなってことだといるのに。それでも彼は力を抜くことを許さず  
シェスカの中を蹂躙していく。  
「は…あぁ!」  
押し広げられたかと思うと、シェスカの中に入れられた指が二本に増える。  
「おや、指が増えたのがそんなに良いのかね」  
違うと言いたげに首を横に振るが、やめてもらいたいわけではない。派手に音が響いてし  
まい恥ずかしくてたまらないのだが、ロイの指が中をなでまわすたびにねだるようにそこ  
がビクビクと緊張する。  
「た…大…佐」  
「最中に階級で呼ばれるのは背徳的で良いね。もっといい声を聞かせてくれたまえ」  
刺激をうけるたびに前かがみになっていくシェスカの中を、なぞり、かき回しているだけ  
のロイの指が、今度は奥を突くようにして動き始める。同時にシェスカの体が跳ね上がり、  
倒れこみそうだった背がまっすぐになった。  
「あ…ぅ、大佐…イきそう…です」  
「よく聞こえないな、もう一度言ってくれないか」  
さらに激しくなった指の動きからして、ロイに聞こえていないのは嘘だ。より大きな音を  
聞かせ、言わせてシェスカの顔が羞恥に染まるのを見たいだけである。  
「だめで、す。イかせて…くださ…」  
「それはできないな」  
シェスカの願いを聞き入れず、ロイは勢いよくシェスカの中から指を引き抜いた。  
限界にまで達しようとしていたが、果てることを許されずシェスカの体が崩れ落ちる。ロ  
イの体に覆い被さるようにして、ぐったりと倒れこんだシェスカのそこは、きゅうっと収  
縮してもっと奥への刺激を求めていた。  
「気持ちがよかったのかね」  
「大佐…」  
「もの欲しそうな顔をする前に、君はすることがあるだろう?」  
 
いつものシェスカならばそんなことをするはずはない。  
だが要求されていることを的確に理解して、  
崩れ落ちた体勢からシェスカがけだるげに体を起こした。  
手を伸ばしかけて一度躊躇するが、彼女の手がロイのシャツにかかる。  
震えているからなのか、指がうまくボタンを外すことができない。  
ロイは目を閉じて、シェスカの好きにさせるようにしていた。  
ボタンを全て外し終えると、両手でシャツをはだけさせていく。  
ロイが仰向けになっているおかげで、肩のあたりで止まってしまう。  
それ以上は無駄だと思い、シェスカは軽くロイの唇に口付けると  
そのままでゆっくりと下降していった。  
図らずも胸を押し付けるようにして体を寄せ、  
唇を顎から首筋へとすべらせていく。  
多少なりとも感じているのか、首筋に達したときにロイの体がぴくりと動いた。  
「首…弱いんですか?」  
両手をロイの肩におき、唇は後ろ毛から喉仏へと移動する。  
ため息のような熱い息を吐きかけるたびに、舌を伸ばしては何度もそこを舐めあげた。  
「まあ…それなりに、だが」  
途切れがちになったロイの声で、シェスカの秘部がまた収縮する。  
男性のあえぎ声などめったに聞くことがないせいか、  
余計に反応しやすくなっているようだ。  
自分がされると感じやすいところも、男性と共通項らしいと思う。  
丹念に鎖骨の部分をを舐め、さらに胸板に手を添えると小さくロイが身じろぎをする。  
ついさっきまで自分を翻弄していた相手が、  
これだけのことで反応するのがおかしくもあるが、  
純粋に感じているロイをこのまま見てみたいと思う。  
 
シェスカは何度も体に口付けながら、ロイのものへと手を伸ばしていった。  
当然のことながら充分な熱とふくらみを持って、  
そこはシェスカの指の感覚に顕著な反応を示した。  
筋にそって指をなぞらせ、布越しに先端に口付ける。  
唇で挟み込みつつ舌でぞろりとなでると、ロイの口から小さく声が漏れた。  
顕著な反応をさらにもとめて、シェスカはじかにロイ自身を外へと導きだす。  
先端を舌でつつくようにしたかと思うと、  
棹に舌をこすりつけながら上下の動きを加える。  
「あ…ふぅ…っ」  
自分がなにかされているわけでもないのに、声が出てしまうことが不思議でならない。  
だがそう思ったとしても、シェスカの動きは止まらずに強弱をつけていく。  
「ん…んぁ…」  
目を閉じてそこに意識を集めたシェスカが、先端を口の中に含ませて吸い上げる。  
そのときになって、身じろぎしたロイがようやく上半身を起こした。  
やめろという意味なのかと思い、目と顔を上げかけるがその動きをロイの手が制止する。  
「そのまま…続けてみたまえ…」  
あくまでも口調はそのままで、ロイはその先をうながす。  
手がシェスカの髪に触れ、なでる仕草に意味もなく安堵しながら頭を前後させた。  
ロイの声が漏れる頻度が高くなると、  
シェスカはさらに強く吸い上げて生温いあふれてきた粘液を絡め取る。  
さほど男性と寝てきたわけではないのだが、  
いつもながらこの喉にからみつくような味は慣れることがない。  
それでもロイが反応を示すのをみて、  
シェスカの動きはさらに激しくなっていく。  
 
髪に触れていただけのロイの手がこわばったのを感じ、  
シェスカは口だけでなく手の動きも加え始めた。  
だが最後までロイを導くとすると、  
結果としては口でそれを受け止めなくてはならないのだろうか。  
できればあまり…したくないとは思うけれども、  
ロイへの刺激を止めるつもりもない。  
戸惑っている間、わざと強く吸っていたのを弱めてみたり、  
舌で一番敏感であろう先端をこねるようになでると、  
シェスカの顔をそこから離そうとロイの手に力が入った。  
「…それ以上やらなくて良いよ」  
言われてから口を離すと、そこと結んだ透明な糸が落ちていく。  
「あ、あの…すみま、せん…」  
ほんの数秒の間に、とろんとした目をしていたシェスカが、  
はっきりと意識を取り戻して詫びの言葉を口にした。  
「なぜ謝るんだね?」  
シェスカの体をしっかり起き上がらせたロイは、  
髪に添えていた手をわずかにおろして耳元に当てた。  
びくんと体をわななかせたシェスカが、  
口に残っていた粘液の味覚にむせかけて、手で覆いながら途切れがちに声を出す。  
「気持ちよく、なかった…んですよね。あの、すみません…」  
正直なところロイはもう少しで達しそうになっていたのだが、  
彼女が見当違いに思い込んでいるのがわかり苦笑してしまう。  
「そういうわけではないよ」  
「で、でも…」  
声が震えかけているのは涙ぐんでいるからなのだろうか。  
 
意味もなく感情が高ぶってしまい、シェスカは怒られるのかと萎縮してしまっている。  
どうやらシェスカは自分の行為が、  
相手を満足させられないと思い込んでしまっているようだ。  
職場では比類ない記憶力で周りを感嘆させているのだが、  
自分ではどれだけのことをしているのかまったく理解していないと聞く。  
能力があるにもかかわらず、無駄なコンプレックスを抱いているのだろう。  
こんな女性は蹂躙するのにちょうどいい。  
しかも軍服を着ているときにはわかりにくいが、  
一糸纏わぬ姿で見れば抱きごこちのよい身体をしている。  
めったにない逸材を手に入れた。  
シェスカが視線をあわせないことをいい事に、ロイは一人ほくそえんでいた。  
「大丈夫だ、なにも君は悪いことをしていないよ」  
泣きじゃくりかけたシェスカに対し、ロイは先程外した眼鏡を差し出した。  
条件反射のようにそれをかけると、  
ロイが体を起こしているせいで彼の顔がすぐ近くにあった。  
「見てみるといい、君のおかげでこんなふうになったんだからね」  
素直に視線を動かすと、先程までシェスカが口の中に含ませていたものが見えた。  
眼鏡を外していたさっきまでは近くで見ていたので、  
どういったものかある程度はわかっていた。  
だがこうやって眼鏡をかけて客観的に見ると、  
自分はなんてことをしていたのかと羞恥心が湧いてくる。  
しかしすっかり反り返ったロイのものを見て、  
恥らう気持ちとは裏腹にシェスカのそこが期待のためきゅうっと収斂する。  
 
「…このままでは中途半端だと思わないかね?」  
シャツを軽く引っ張りながら、どこか楽しげにロイが尋ねた。  
「え?」  
言われた意味を判断しかねて、シェスカがいつもの調子で聞き返してしまう。  
その様子を見てさらに笑みを深くしたロイが、  
顔をそばに寄せて低い声を耳元に囁きかけた。  
「私が着たままのほうが良いのなら、このままでも構わないのだが?」  
言われて想像し、シェスカの頭が理解できる範囲を超えてしまう。  
そんなことをされるとしたら、まさに「犯される」状態ではないだろうか。  
むろん多少なりとも強引な行為は興味はあるが、  
今この人を相手に求めているのはそれではない。  
「そ、それは、あの、え、遠慮…します…!」  
改めて真っ赤になったシェスカが首を振って断ると、  
わざとらしく残念そうな声をあげるロイはやはり楽しそうだ。  
「なるほど、君は私に脱いでもらいたいわけか」  
「あっ、あ、あの! そういうわけではなくて…」  
「では着たままがいいのかい?」  
まだこれくらいの言葉で責めるのならば、シェスカも受け入れられるだろう。  
半裸のままロイが距離を詰めると、その分だけシェスカが後ずさる。  
ぱくぱくと口を開けている様子からして、ひとまずはこれくらいが限界か。  
「冗談だよ、ずいぶんかわいらしい反応をしてくれるね」  
身を乗り出しついでに腕を伸ばし、シェスカの背中を抱き寄せる。  
小さい肩が震えているのは緊張から解放されたからか、  
それともこれからのことに期待しているからだろうか。  
どちらにせよ、まだ手放すつもりはないがね。  
そっとシャツにすがり付いてくるシェスカを抱きとめながら、  
ロイが意地の悪い笑みを浮かべていた。  
 
服を全て剥ぎ取るとロイはシェスカの背後からその体を抱き寄せた。  
唇は背中に、左手は体を引き寄せながら豊かな柔らかい胸に添える。  
「ひ…あっ」  
鷲掴みにすると言った方が正しいような力の入れように、  
思わずシェスカが逃げ出そうと身じろぎするが少しも体が動かない。  
膝から下で体を支えつつ、ベッドの上に手をつくとシェスカはシーツを強く握り締めた。  
「触れられるのが嫌なのかね」  
舌でぬるりと背筋を舐めまわしたロイが、耳元で短く問い掛ける。  
耳へと息を吹き込まれたシェスカが体をびくりと跳ねさせた。  
「そこ、や、で…す」  
「耳が弱いのかい?」  
背後からしっかりと抱きとめられ、熱い息がかかる耳のあたりがぞくぞくする。  
いや、耳のあたりだけではない。  
腰からぞくりとした快感が走り出し、直接触れられているわけでもないのに、  
ロイの呼吸だけでシェスカの体が反応しているのだ。  
顕著な反応がおもしろいのか息を吹き込むだけではなく、  
耳たぶからその穴の中も舐め始めた。  
「…ぁう…!」  
体がさらにロイから逃げようとするが、前屈みになっていくだけでしかない。  
さらにロイの右手がシェスカの下肢の中央に触れると、彼女は激しく頭を振って抵抗する。  
気にせずロイは手のひらで茂みを覆ったかと思うと、ゆるりとその指を曲げていった。  
「く…ふぁあ!」  
曲がった指はそのままシェスカの中に沈みこんでいくが、  
すぐに抜き出されて一番敏感な突起のまわりをなぞり始める。  
 
「や、やあっ、だめ…です…っ」  
眼鏡の奥にうっすらと涙を浮かべながら肌を紅く染め、  
シェスカは懇願するような声をあげていた。  
小柄な体をさらに小さくさせていくシェスカに対し、  
ロイはその体を開かせようと執拗に突起を責めたてる。  
声があがるたびにシェスカから蜜が溢れ出し、ベッドの上に滴り落ちていった。  
がくがくと足が大きく震えてシェスカ自身では体を固定させることができない。  
羽交い絞めにされているはずが、反対にすっかり支えられてしまっていた。  
もう彼女には抵抗するだけの力が残されていないと見て、  
わずかに力を入れてシェスカの体を仰向けにする。  
無防備に投げ出した足首をつかむと、膝を曲げさせて足ごと抱え込む。  
そのためロイが少し前屈みになるだけで、  
目の前にシェスカの秘部がさらけ出される姿勢になった。  
「あ…っや! だ、だめです…っ」  
さすがにこれにはシェスカも慌て、ロイの目から隠そうと手を伸ばす。  
足を固定しているロイの手はそれを制止する暇がなく、  
あっさりとそこがシェスカによって隠された。  
「…手をどけてくれないかね」  
「だめ…で、す…」  
自分でそんなところを隠していることだけでも恥ずかしいのに、  
大きく足を開かされている姿勢の恥ずかしさで消え入りそうな声で拒絶する。  
「だめだといわれると、余計に見たくなるのが人情でね」  
言いながらシェスカの手をどかせようとするが、  
意外にその手の力が強く今までのようにちょっとした力では動かせない。  
 
見せたくないと思っているのに、彼の顔がすぐそばにあると思うだけで、  
さらに潤っていくような気がしてくるのはなぜだろうか。  
ふう、とため息をついてから、ロイは太ももの内側を舌でなぞりはじめた。  
「ぃや…ぁ!」  
力が抜けかけるものの、シェスカもこればかりは懸命になって抵抗し続ける。  
だが姿勢に無理があることもあって、数秒のうちに腕が震え始める。  
それを見て取ったロイが軽く力を入れるだけで手が離れ、  
たっぷりと潤った秘部が彼の目の前に広がった。  
「大佐…ぁあっ!」  
すすり泣くような声をあげるシェスカに対し、  
ロイは指と舌で敏感な個所をいじりはじめる。  
「あぁ…ぃ…です、大佐…んはぁあ!」  
声をあげるたびにロイがシェスカを翻弄する。  
花弁を押し広げた指の感覚と、柔らかい舌の刺激で蜜がとめどなく溢れ出してくる。  
「大佐…私…もぅ…」  
シェスカは潤んだ瞳でロイをじっと見つめ、物欲しげにくんと鼻を鳴らした。  
「どうして欲しいんだね?」  
「きて…ください…」  
最初のころの恥じらいはとうに捨て去り、ただロイを求めて両手を差し伸べる。  
「大佐が欲しいです…おねがい…します」  
「よく言えたね、いい子だ」  
拘束していた両足を離して投げ出されたシェスカの体にのしかかる。  
自分で入れさせようかとも思っていたが、  
ここまでくるとロイのほうも堪えきれなくなってきている。  
 
予想以上に感度の良いシェスカのそこに先端を押し当てると、  
細い腰を抱えあげて勢いよく侵入していく。  
「ん…はぁあああ!」  
充分に潤っているものの、幾重にも広がる襞に拒まれながら、  
ロイは最も深い部分へと入り込んでいった。  
求め続けていた箇所にロイがたどりついた、  
ただそれだけでシェスカの体がびくんびくんと跳ねあがる。  
「…っく、ふぁあん…!」  
先程はロイに向けて手を伸ばしていたが、  
今は口から漏れる声を押さえようと手の甲を押し付けて、  
声をあげるのを必死になってこらえている。  
「なぜ、手を押し付けるんだね」  
「っこのまま…では、声…が、とまらなさそうで…」  
こんな大きな声を出すつもりなどないのに、ロイが動くたびに声が漏れていく。  
「そんなに力を入れたら傷がつくだろう」  
唇だけでなく歯に押し当てるようになっていた手の甲は、  
歯の跡がついていて痛々しくも見える。  
「で…もっ、あぁんっ…声がぁ」  
手を口元から離させて、ロイはその手を包み込むように握りしめた。  
「気にせずもっといい声を聞かせてくれたまえ」  
くちゅりと音をたててロイが腰を浮かす。  
その刺激に耐え切れずシェスカが声をあげ、  
助けを求めるように近くにあった枕に両手をつけた。  
「ひ…あ…! ん…もぅ、いやぁ…!」  
突かれるたびにシェスカの手が、枕に食い込んでいく。  
力がこもればこもるほど、それだけロイから与えられる快楽が強いということだ。  
 
抜き差しする動きに合わせて豊かな乳房が揺れる。  
その二つのふくらみに手を添え、形が崩れるほど揉みしだくと、  
気持ちがいいのかシェスカが締め付けを強くしてくる。  
反射的なのだろうがロイが突き上げるたびに「いや」という声を漏らすシェスカに、  
わざと羞恥をあおろうと聞き返す。  
「そんな、に、嫌かね」  
包み込んでは締め上げる襞の動きに、思わずロイの声も上ずりかけてしまうが、  
唐突に男はその体の動きを止めてみせた。  
「え…あぁ…」  
ぴたりと止められた動きになにが起きたのかわからず、  
強く枕をつかんでいたシェスカの手から力が抜けた。  
「たい…さ…?」  
快楽でぼんやりした頭と、とろけた目でロイを見つめる。  
「嫌だと言っているので止めてみただけだよ」  
シェスカの中に入ったままで余裕のある表情を浮かべているのが騙されているようだ。  
のぼりつめかけていた彼女にとって、  
そんなところで止められるのは思ってもみないことだった。  
「止めたほうがよかったんだろう?」  
力の抜けたシェスカの手首を押さえるようにして固定させると、  
ゆっくりとその顔を下ろしていく。  
耳元を掠めた熱い息だけでシェスカが反応するが、  
首筋から鎖骨にかけて唇を寄せるとロイへの締め付けが強くなった。  
「嫌だと言っていたにしては締め付けが強くなるね、君は」  
「や…言わ、ないで…下さい…!」  
無意識のうちにしていた行動を言われてしまい、  
さらにシェスカの羞恥心があおられる。  
 
「言わないと気がつかないんじゃないのかと思うのだが」  
途中で行為を止めているのにもかかわらず、  
憎らしいまでに平然と見せているロイはさらに言葉を続けた。  
「ほら、私はなにもしていないのに、君の腰が動いているのはなぜだね?」  
刺激を求めてシェスカが動いているからだが、  
その姿を見てもまだロイは体を動かさない。  
「大佐…ひどい、です」  
「嫌がることを止めたのに私がひどいのかな?」  
ぺろりと鎖骨を舐めあげたところに軽く歯を立てて刺激を与える。  
ぴくぴくとシェスカの中が動き、それだけでもロイには快感である。  
このまま思うままに蹂躙したくもあるが、  
自分の下で快感に蕩けかけた彼女の顔と声を、  
さらに乱してみたい気持ちも大いにある。  
「そうか、離れてもらいたいんだね?」  
シェスカにもわざと言われていることくらいはわかっている。  
本気でロイが中断しようとしているわけではないことも。  
だが自分が予測している彼の行動が、本当に彼のやりたいことなのかがわからない。  
意地悪なことを言いながら体を離し、  
ほんのわずかだがシェスカの中から抜け出そうとしているロイ。  
本当にこのまま止めてしまうのかもしれないと不安になってしまう。  
少し考えてみればロイも欲望を高めたままで止められるわけがないが、  
体の奥からわきおこる熱にうかされているシェスカはただ声をあげるだけだった。  
「…じゃ、ないです…」  
小さく口篭もりながら言ったものの、  
やはりロイには聞こえていないふりをされてしまう。  
 
「なんだね?」  
「して、もらうの…いやじゃ、な…い、です…!」  
精一杯言ったところで興奮が高まり、閉じた目から涙がこぼれてくる。  
ロイは指でそれをぬぐいながらくすりと笑った。  
指はそのままシェスカの乳房にふれ、  
先端の飾りを軽くつまみながら抜きかけた自身をシェスカに埋め込んでいく。  
「ん…はぁっ!」  
「ではどうしてほしいのか、言ってごらん」  
腰を擦り付けてきていることに彼女は気がついているのだろうか。  
緩急をつけての締め付けがロイにとってどれほどの刺激なのか、  
おそらくわかっていないまま彼女は貪欲にロイを求めつづけた。  
「もっと…めちゃくちゃに…して、ください…」  
返事を口にしたのかどうかわからないまま、シェスカはロイの動きに翻弄される。  
ぴたりと動きを止めていたのが嘘のように、  
激しく突き上げられればその分シェスカの声もあがっていく。  
いつのまにかシェスカの腕を自分の背中に回させていたロイは、  
両腕で抱きすくめるようにしてなおも責めたてていった。  
互いに限界に達しようとしているのがわかるのか、  
ロイは抱きすくめる腕に力をこめ、シェスカは必死になってしがみついていた。  
つながっている部分からは湿った音が聞こえ、  
荒い息遣いがやけに大きく耳に響く。  
「大佐…たい、さ…やぁ…も、だめです…」  
「多分お互い同じ、だと思うよ」  
途切れがちなロイの声にシェスカの体も反応する。  
これが終わればまた手の届かない人になってしまうのだろう。  
もっと気持ちよくなりたいと思う気持ちと、  
まだこの男を独占していたい気持ちにかられるが、  
主導権のないシェスカは絶頂へと連れて行かれるしかなかった。  
 
 
 
数日後。  
 
今回は資料を引き取りに来たシェスカは、仮眠室側から歩いてくるロイの姿を見つけた。  
通り過ぎようかとも思ったのだが、ロイから挨拶されれば無視するわけにはいかない。  
「今日はお一人なんですか?」  
問い掛けたシェスカに対して、苦笑と共にロイは答えた。  
「今日は、だがね」  
あれ以来たまにロイの姿を見ていたが、その都度違う女性がそばにいたような気がする。  
むしろ今日のように、一人でいることのほうが珍しいことだろう。  
「刺されそうな罪作りなことは、あまりなさらないほうがいいんじゃないでしょうか」  
並んで歩いている隣の人物は、シェスカの言葉は聞かないふりでのびをしている。  
「この私をそう簡単に倒せる人物がいるなら、それはそれで気になる話だと思うが」  
「いちおう心配しているんですけど」  
「それはどうもありがとう」  
「…いろいろな方と一緒にいらっしゃいますけど、本命の方とかはないんですか?」  
自分は絶対にその相手にはならないとわかっているから聞けることだとシェスカは思う。  
ひとしきりの行為が終わった後、思わず向けられた背中に手を伸ばしかけたが、  
それを許さないような雰囲気があったのは確かなことだ。  
ロイがシェスカを見ていたのはあのひとときだけ。  
わかりきっていることではあったが、  
改めて突きつけられると目のあたりがじんわりと熱くなりかける。  
「本命…ねえ。いるとしたらもう自分のものにしていると思わないかね」  
ということは本命はいないということなのだろうか?  
そう思ったものの、すぐに馬鹿なことを考えたと自分に呆れてしまう。  
どんなに期待をしたところで、この人に自分はつりあわない。  
振り向く人手はないとあの時に理解したはずではないか。  
「でも…反対にあなたは私のものってつきまとわれたりはしないんですか」  
「私は私のものだからね、誰のものにもならないよ」  
「それでも他の人は自分の物にしてしまうんですか?」  
「もっともそんなことが出来るような人間ではないのだがね」  
 
自虐的な言葉に驚くが、そのロイの顔を見ることが出来ず彼女は軍服の裾を眺めていた。  
「私は所詮人殺しだよ。  
 もし本命がいたとしても、その人と幸せになる資格はないということさ」  
呟く声はシェスカに聞かせる為ではなく、  
自らに言い聞かせようとするような響きのようだった。  
「他の多数から奪い取ってきたものを、自分だけ享受するわけにはいかないんだよ」  
ロイの言う多数から奪い取ってきた東部の内乱がどれほど凄まじかったのか、  
記録だけでしか知ることができないシェスカなにも言い出せない。  
『少なくとも、私は、大佐のことが』  
続けようと思えば伝えられる言葉だが、ロイはそれを期待してはいない。  
むしろそんなことを言えば負担になるだけだと、  
それくらいはシェスカにもわかることだった。  
だからこそ彼女は何も言わない。  
ロイは聞くことも応えることもしない。  
「でも…その割には色々と派手だと思いますが…」  
「女性から求められてなにもしないのは失礼にあたるだろう?」  
「それって他の人のせいなんでしょうか」  
「おそらく。仕事がまだまだ大量にあることも含めてね」  
いつもの口調に戻ったロイが、この話題を止めさせたいのか、  
小さく「うむ、余計な話をしてしまったな」と呟いているのが聞こえてきた。  
それならば普段どおりの会話に戻すしかないだろう。  
「じゃあ、そのたくさんのお仕事を片付けて、早く家に帰れると良いですね」  
そんなありきたりの言葉を伝えるくらいが、シェスカに出来ることだった。  
あんなことをしておきながら我ながら卑怯だと思うが、  
この人の負担にならないように、そんな風に身を引く自分に酔うことが出来る。  
ロイの言葉、行動がそれすらも想定した上だとすれば、  
シェスカはさらにこの人が手のとどがないのだと思い知らされるだけだった。  
 

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