「行かないで、エド」  
 ウィンリィが初めて、はっきりした口をきいた。  
「ああ、どこへも行かねえよ」  
「寒いの」  
 寝台には掛布が丸まっていたが、エドは赤いコート越しに、おずおずと  
後ろから彼女を抱きかかえた。  
 心の中で、冷たい鋼の手足が疎んじられる。  
 手足の喪失を悔いたことがあったにしても彼は決して面に出さなかったが、今だけは、  
存分に温もりを伝えたいと願っても罰は当たらないだろう。  
 彼女は身体ごと振り向いて、彼にしがみついた。  
「あのね……何だか、あたしだけ汚くなったみたい」  
「忘れろ。さっぱり忘れてしまえ」少年はささやいた。  
 ウィンリィの震えは止まったらしい。  
「綺麗に、跡形もなくしてやるから」  
 こいつ意外に細いけど、柔らかいのな。  
 ウィンリィの手首を握り、そこと足首に残る、拘束具と肌の擦れた痛々しい痕にエドは目を留めた。  
「ひでぇ……傷だ……」瞳に怒りが宿る。「悪ぃ、治すの忘れてた」  
 錬金術で治せるのか、禁忌とは関係ないのかと、彼女は思った。  
 頭の中にぼんやりと別の考えがあったせいか、エドは自分でも驚くような行為に出た。  
 その傷を舌で舐めたのだ。  
「あ……」  
 ウィンリィが高いあえぎ声を上げたので、再び舐めてみた。  
「……んっ……」  
「悪い、痛いか?」  
 首を振るのを見届けて、もう一度舌を這わせる。  
「もしかして、気持ちいいのか」  
 途端に彼女が顔を赤らめたので、いつもの癖で頭を逸らした。スパナを恐れたのだ。  
「治るの?」ウィンリィは眉根を寄せた。  
「ああ、これくらいなら」  
 細い錬成の光とともに、傷はすべらかな柔らかい肌に戻った。  
 
 っていうか、こいつは早くあのドクターに診せないと。女医だったのはせめてもの幸いか――  
 その前に、こいつの目からこぼれてる涙をもう一回拭わなきゃな。  
 空色の眸の目尻を吸った後、唇に自分のそれを重ねた。  
「んっ……」  
 それは驚くほど柔らかくて、温かく濡れていた。  
「…エド…」  
 ウィンリィはとろんと魂の抜けた様子で、それ以外の反応を見せない。  
「おい、殴らないのか」しばらくしてから、エドは微笑した。  
「……急だからびっくりしたのよ! それとも、殴られたいの?」  
 余計なことを言ったのかもしれない。聞きなれた幼なじみの威勢のよさに、また本能的に  
頭を守る羽目に陥った。  
 
 ダメだ、キンブリーに力ずくで犯られた後だというのに――そのことはまだ、エドにははっきり  
訊く勇気がなかった――オレが同じような汚さを見せるべきじゃない。  
 しかし、肩越しに見下ろすウィンリィの谷間に、彼の目は吸い寄せられた。  
 それはくっきりと深かった。細い紐と、可愛らしい小さな布では支えきれないほどの丸く  
はちきれそうな胸が、眼下に突き出している。  
 手を伸ばして揉んだ。可愛らしい布の上からと、隙間に指をすべらせて、採れたての桃  
みたいな肌を直接。  
「!」再びウィンリィがあえぐ。「エド……」  
 男の手にもあまる大きさだった。  
 頭をくっつけたまま、キンブリーか、と彼は問うた。  
 あのサイコパス男が、この何にたとえていいかわからない綺麗な乳を揉んだり、  
舐め回したりしたのか。こいつが泣いて嫌がったのに。こいつは、オレの整備師なのに。  
 ウィンリィは首をめぐらせて、濡れた瞳で答えた。  
「殺す」  
 
「いいの」熟した桃のような赤い顔で、ウィンリィが首を振った。  
「何でだ、奴は――」  
「あんたがいいの」  
「何?」エドは、握りしめた拳を解いた。  
「ね……して」  
 さらに真っ赤になって、ウィンリィが頭をすり寄せる。  
 少女はささやいた。「あの人、何もしなかったけど……」  
「マジか?」  
「けど、あの人にされる位ならエドのがずっといい」  
 まばゆい光とともに、世界が一気に明るく開けた。  
「おまえ、無事だったのかよ」エドはウィンリィの頭を抱えこみ、声を上ずらせた。  
「あのクソ野郎、手ぇ出さなかったのか」  
 彼の頭の中にはその他いろいろなセリフが駆け巡ったが、涙の痕が乾ききっていないような  
幼なじみに聞かせることではないと思い、自重した。  
「あの人ね、」ウィンリィは赤くなって言いよどんだ。「あたしが初めてなのがわかったからか  
どうか知らないけど、気が変わったみたい。ふいっと出てったの」  
「それにしたって、ぶち殺すぞあの野郎」  
 ウィンリィを縛ったり服を剥いたりするような趣味は、あの目つきのいやらしい変態男のもの  
以外にありえない。その上、縛ったまま放置して行くなんて。  
「なぁ、本当に何もされなかったのか」幼なじみの髪をぐしゃぐしゃとかき回して、彼は訊いた。  
「……」  
 本当に何もなかったなら、どんなに泣き虫であっても、ナイロンザイルみたいな神経を  
持ってるこいつがこれほど顔を涙で汚して、見ないでと哀願するはずはないのだ。  
「……大丈夫」ウィンリィは繰り返した。  
「それならそうと早く言えってんだ。心配で死ぬかと思ったぞ」  
 そう言いはしたが、若年ながらエドは感じ取っていた。  
 たとえ服を剥ぎ取られただけだろうと、彼女の味わった苦しみは、無理やり犯られる辛さに  
等しいだろう。  
 母親の葬式で涙を流して以来、人前で泣いたことのないエドが目をしばたかせるのを  
ウィンリィは見た。  
 
「……」  
 白い房のついた赤いコートが肩からすべり落ちた。  
 改めてワンピースを脱がせながら、エドは息を呑んだ。  
 もどかしそうに下着を剥ぎ取ると、彼は食い入るように二つの丘を見つめる。  
「おまえ、すげーよ。すげー綺麗」  
 いつまでも目を離さないので、彼女は恥ずかしさに耐えきれず、腕を交差させて  
両の乳首を覆ってしまった。先刻の白スーツの男の、隅々まで賞味し尽くすような目は  
忘れられない。  
 エドの顔に微笑が浮かんだ。「隠すなよ、ウィンリィ」  
 隠れきれない下乳のボリュームだけでも、しばらく脳裏から消えることのなさそうな眺めだ。  
「こんな綺麗なもの、オレ見たことねえし」  
 言い終わらないうちに彼は腕を取りのけると、ウィンリィのピンク色の頂きに吸いついた。  
「あっ……あんっ」少女は、華奢な喉をのけ反らせた。  
 
 二人とも、ここがどこであるかを忘れた。  
 彼は親指の腹で乳首を撫で、揉み、しゃぶりついた。  
 さっき這い回った男の指の感触を拭い去るように。  
「んっ……あっ」  
 胸に顔を埋めつつ、ウィンリィの身体のあらゆる所に触れる。  
 エドは靴のままその白い裸体の上に跨り、シャツを脱ぐと放り投げた。  
 
「おまえ、水かけたみたいにびしょ濡れだ」  
 彼は満足そうに微笑んだ。気がつくとウィンリィ自身も触ったことのないような所を探って、  
感触を確かめていた。  
「いちいち、そんなこと、……言わないでよ、バカ豆」  
 肉づきのいい太腿の間に顔を埋めて、白に近い薄紅色の花びらに舌を這わせる。  
 途端に、ウィンリィは左右に身をくねらせた。  
「あっ、……あっ、はぁん」  
 蜜の中の小さな突起を吸うと、温かい液が噴き出て滴り落ちた。  
 
「いいか?」  
「……うん」  
 かすれたあえぎ声の合間に、ウィンリィはそう答えた。  
 大丈夫よ。嫌な記憶からやみくもに逃れようとしてるんじゃないから。  
 先端をあてがわれると、さすがにはっと息を呑んだ。目を閉じてシーツを握りしめるウィンリィに  
キスしてから、薄桃色の花弁へ侵入を始める。  
 腰を進めるのと同時に、ウィンリィの全身がずり上がった。  
「っ!」  
 閉じた彼女の目尻から涙がこぼれ落ちた。  
「すげ……気持ちいい」ずぶずぶと熱い襞に包まれて、かたく張りきった彼の陽根も  
溶けそうだった。  
 エドは幼なじみの身体が動かないように固定して、シーツを握りしめている手を  
自分の背中に回した。  
「おまえの辛さは忘れない」  
 
「動くからな。ちょっとだけ」  
 ウィンリィの濡れた穴が最後の一突きで全長を呑みこむと、エドは告げた。  
「や、だ、……痛っ」  
 強い突き上げに合わせて、上を向いた乳白色の胸が弾むように大きく揺れる。  
「あっ………やんっ」  
 やだ……こいつのって、こんなに熱くて硬かったの?  
 言葉に反して、エドは狂ったように動いていた。奥に打ちつけたかと思うと、  
ほとんど抜けそうなぐらいに引く。まるで、何かをかき出すように。  
「……もう少し……さ、力抜けねーか?」  
「や、やぁっ、……あっ」  
「じゃ、やめるか」動きを止めて笑みを浮かべようとしたが、今の彼には難しいようだ。  
「……ううん。ちょっとだけ、待って」  
 息を整えて、しばらく痛みに身をすくませていた。が、再びエドが動き出すと、  
気持ちよくなるようにひとりでに身体が動いた。  
「んっ」  
 
 エドが突いたり引いたりするのに合わせて、さっきの隠れた小さな突起を押しつける。  
「……っ……やぁっ……あっ……!」  
 ウィンリィは次第に、人の言葉では表せないような声を漏らし始めた。双方とも息が荒い。  
長い金髪は乱れ、結合部は、互いに熱い液体で濡れそぼっていた。  
 蜜の粘つく音と、大きくあえぐ声と、肌の擦れる音と、寝台のきしむ音。  
「……エド……」  
「ウィン、リィ……!」  
 ウィンリィの中の絡みつく襞から彼はかろうじて引き抜き、吐き出した。  
白い熱い迸りが少女の胸に飛び散った。  
 
 
「……悪かった」  
 オレって最低だ。ひどい目に遭って、泣いて暴れて疲れきっている女の子に、  
したたかに浴びせるなんて。  
「え? 最初に言ったのはあたしよ」ウィンリィは小さく笑った。「エドと…  
……したいって」  
 横たわるウィンリィは汗と愛液と精液に濡れていたが、いかにも元気そうだ。  
「こんな形になるとは思わなかったけどよ、おまえとこうなるのは」エドは頬が  
染まるのを感じた。「夢だった」  
「あたしも」  
 
 
「そろそろ誰か探しに来るだろうな」  
 見つかったらただではすまない、とエドは呟き、立ち上がろうとする。  
 艶やかに笑って唇を合わせた後、ウィンリィはゆっくり体勢を変えて、彼のものを手に取った。  
「!?」  
「これが、あたし達を繋げてたんだ」  
 ウィンリィは瞬間ためらった後、先の柔らかい部分に唇をつける。  
 秘所とも違う、温かく絡まるその感触はもちろん初めてで、エドの陽根はたちまち硬くなった。  
 やばい、今度こそ溶けそうだ。  
「ちょっ、やめろよ」  
 頭を押しのけようとするエドにかまわずウィンリィは行為を続ける。  
「いいの」  
 頼みもしないのに、舌を絡ませているのが見えた。  
 
 彼女はそれを懸命に口に含んで、上から下まで隈なく愛おしんでいた。  
 ウィンリィの長い髪からは、相変わらずいい匂いがする。  
 髪で隠れがちなのにもかかわらず、彼自身がウィンリィの唇から見え隠れする光景には  
夢中にならざるを得なかった。  
「おまえ、……いやらしい顔、してるぞ……」  
 再び達するのはわけなく、ウィンリィの咥えている中に熱さを出し切った。ウィンリィが  
口を離すのが早かったので、いくらかは顔にかかってしまったが。  
「悪ぃ」  
「いいよ、エドのだもん」  
 ウィンリィはにっこり笑って口の周りを舐め、拭った。  
「あたしがこんなふうにねだったり奉仕したりするなんて、これが最初で最後なんだからね」  
 幼なじみはほぼ、いつもの精神状態に戻れたのかもしれない。  
 
 
「ところで、訊きにくいんだが……廊下で何かされたのか? このゴム、そこの外に落ちてたぞ」  
 拾った髪留めをポケットから出して、寝転がったままエドは尋ねた。  
「え? 変ね。ここに置いといたのよ」ウィンリィはサイドテーブルを示した。  
 読めた。奴が持ち出して、故意に落としたのだ。こいつが縛られている光景を見せるために。  
「ね、エド、さっきはあの人と何を話してたの」ためらいがちにウィンリィが訊く。「キンブリー……さんと」  
「気にすんな」不意にエドは激しい怒りにかられて、眉を吊り上げた。「さんなんて付けるなよ」  
「約束する。二度とあんな目には遭わせない」  
 
 
 

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