爪で先端を優しくひっかくと、白い首をのけ反らせその肢体を震わす。
谷間に顔を埋め、吸い付くと、頭上から微かな悲鳴が聞こえた。
感じ過ぎるのが苦しいのだろう、シーツを握り締める指は力を込め過ぎて白くなっている。
豊かな乳房を支えるように下から押し上げてやれば、先端はますます色づき、存在を主張する。触って、とばかりに。
「ウィンリィ…」
耳元に唇を寄せて溜息をつく密やかさで名前を呼ぶと、そっと腕を背に回された。
「エド…もっとちゃんと、触って…」
彼女が発した思いがけない言葉に目を見張り、彼女の顔を覗き込めば、揺れる蒼い瞳がこちらを見ていた。
「生殺し、は、やだよ…」 震える声でそんなことを言う彼女が信じられなかった。
「ほんとに、いいのか。」
改めて彼女の意思を問う、優しい男の振りをしてやる。そんな余裕は無いくせに。
「いいよ、エドなら。」
背中に回された腕に、ぎゅ、と力がこもった。
「途中で止めろなんて言われても、聞けないからな。」
煽ったのは、彼女の方だ。
「ね、キスして…」
そんな溶けそうな声で囁かれて我慢出来る筈がない。彼女の赤く熟れた唇を貪るように、深く、深く。慣れないのは自分も彼女も一緒だが、互いが互いを欲していた。
「んっ、…ふ、ぁ…」
彼女が喉奥で鳴らす声に益々煽られる。もっと聞きたい、乱れさせたい。
掌で腹を撫ぜ、乳房を揉みしだく。突端を摘み上げ、くにくにと転がしてやれば一際高い声が上がった。
「んんっ、…っや、そこ…っ!」
「ここ、気持ちいいのか?」
指で摘んだのとは反対側の頂きに唇を寄せ、歯を立てると、彼女は膝頭を擦り合わせながら首を振る。
「ちがっ…」
目からは今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
「じゃあ、こっちは?」
先程まで乳首を弄っていた指を足の間に滑らせる。人差し指が、彼女の淫核を捕らえた。
「ひぁぁっ!」
先程までの貞淑な彼女の姿はもうどこにも無かった。あるのは、瞳を潤ませ、眼尻を紅く染め、唇の端から唾液を零して悦楽の声を上げる女の姿だ。
淫核をこねるように指を小刻みに動かせば、びくびくと痙攣する肢体は白く滑らかで、美しい。「っん、もっ…やぁっ」
顔を見られたくないのか、両の腕を顔の前で交差させている。その瞳が見たいのに。
「なぁ、顔、隠すなよ。」
「やァ、だっ、て…絶対、変な顔、してっ…も…ぁっ…」
息も絶え絶えに乱れているくせに、なおも頑なな態度を取り続ける彼女。恥ずかしいと感じるなら、そんな理性さえ捨ててしまえるくらい快楽に溺れてしまえばいい。
「変じゃねぇって。お前のそういう顔、すげぇドキドキする。」
顔を上げ、彼女の下肢に手をかけると、これからされることを察したらしい。彼女は細い脚を無茶苦茶に動かし暴れた。
「やだっ…、ちょ、やめてよ、豆のくせして!」
三年前なら大袈裟な反応を返したであろう禁句も、今は意味を持たない。
「誰が豆か。今はオレの方がでかい。」
彼女の下肢に顔を近づけながら言えば、そこにかかる息さえも刺激になるのか、彼女は体を大きく震わせた。
「やだ、それ、やっ…ひああぁぁっ!」
淫核を舌で突いた途端、一際大きな喘声が上がった。
それに気を良くして、存分にそこを転がす。指で包皮を押し下げると現れた、一際鮮やかな肉色の尖りを下から舐め上げてやれば、肩を挟み込む内股にぎゅっと力が入り、爪先はぴん、と伸びた。
抵抗する気力も無なくしたらしく、両腕は無造作にシーツの上に投げ出されている。
「ふぁ、んっ…も、やぁっ…ッあ!」
淫核の少し下、濡れた感触のする密口に人差し指と中指を差し込んだ。
始めはそっと入口を撫で、徐々に深く探っていけば、とろり、蜜が溢れ出す。
絡み付くような媚肉の感触に、この中に自身を包まれる想像をして思わず喉を鳴らす。
「っ痛…」
彼女が眉を顰めた。慌てて指を引き抜く。
「っ悪い!痛かったか?」
痛みを与えたくはない。ただ、溺れる程の快楽を。
「ううん、大丈夫だから…痛くても、いいから…はやくっ」
潤んだ瞳をこちらに向けて、荒く息をつきながらそんなことを言う。
「あんまり、煽るんじゃねぇよ。」
もう我慢できなかった。
怒張した自身を取りだし、彼女の脚を抱えるようにして大きく開かせる。
恥じらうように伏せられた金色の睫は微かに震えていた。眉根は切なげに寄せられ、上気して朱を刷いた頬には生理的な涙が伝う。
「んんっ…」
蜜でぬるつく密口に自身をあてがえば、彼女は小さく喉声を出した。
緊張をほぐしてやりたくて、紅くなった淫核を指で弾いた。
「ひぅっ…」
途端に弛緩した密口に、自身の先端を含ませた。
目を細め、細く長い息をつく彼女と視線が絡む。
「ぁ…今、あたしの中、エドがいるの…?」
「ああ。あとちょっとだから、力、抜けっ…」
答えながら、更に深く押し入る。内部はまだ狭く、締め付けるようだ。
「ァふっ、はっ…んぅっ!」
淫核をこねる度にうねるように収縮を繰り返す密口の動きに合わせ、これ以上は無い最奥まで自身をねじ込んだ。
「全部、入ったぜ…」
耳元で囁けば、どこか嬉しそうな彼女の視線とぶつかった。
「ほん、と?…あたしっ、エド、と繋がって…?」
ああ、と答えながら、シーツを握りしめていた彼女の右手を取り、結合部へと導いた。
指先を掴み、確かめるように自身のつけ根から密口に触れさせる。
「ぁ…」
彼女は驚いて指を振りほどこうとしたが、そのまま淫核へと掴んだ指先を滑らせた。
「動いて、いいか…?」
何度も転がすように、いちばん弱いところを刺激され、彼女が堪えられない、とばかりに頷いた。
手を放しても気付かず、自ら淫核を弄り続ける彼女の姿に暈を覚える。
誰よりも純真なのに、いやらしい。
自分以外の人間は見ることの叶わない淫らな彼女の姿に煽られ、律動を始める。
彼女を気遣い、始めはゆっくりと。徐々に加速していき。
抜き差しする度に熱く絡み付く内部は、今まで味わったことのない快楽をもたらした。
「はッ、あ、っぁ、ぁア!」
小刻みに揺すり上げれば、開きっぱなしの唇からは断続的に声が漏れる。
結合部は、彼女の蜜と自身の先走りとが混じり合って、卑猥な水音を立てていた。
互いに余裕を失い、室内には湿った荒い息と、彼女の喘声が充満する。
「ぁ、やっ、も、だめっ!」
高まっていく性感に、二人ともが我慢できなくなっていた。
「もっ…ぃ、いいからぁっ!」
「ウィンリィ…一緒に…」
自分も彼女も限界だった。
自身を先端がぎりぎり引っかかる所まで抜いて、そこから一息に突いた。
「ひっ、ぁぁあああっ!」
今までより一層深いところに先端が届いた瞬間、彼女は一際大きく体をしならせ、達したようだった。
同時に内壁が自身を絞るように収縮し、きつい締め付けに堪えられなくなって放つ。
密口から、飲み込みきれなかった白濁が一筋、裂け目を伝っていくのが見えた。
亡羊と視線を宙に彷徨わせたまま、荒い息はそのままに、彼女は肢体を痙攣させていた。
彼女の額、瞼、頬へと軽く口付けていく。
不意に、彼女が口を開いた。
「いまの、なに…?」
「今のって?」
「なんか、すごい、気持ち良かった…」
言っている事は卑猥なのに、幼い口調でたどたどしく言葉を紡ぐさまに愛しさが込み上げる。
「あ、何笑ってんのよ!」
微笑めば、気に入らなかったらしく、詰られてしまった。
「別に。可愛いな、って思っただけ。」
「っ!!豆のくせに!」
「言ったろ、今はオレのほうがでかいって。」
「も、いい!」
拗ねて、反対側を向いてしまった彼女を宥めるように、髪を撫でながら肩口に唇を寄せる。
頬どころか首筋まで赤く染めているくせに。
黙っていると、やっと聞き取れるくらい声で、囁くように彼女が言った。
「エド…好きだよ」
顔を見せないままそう言った彼女の耳は、やはり赤かった。
「オレも、好きだよ」