「賢者の石は受け取らねーよ。必ず豆女を見つけて戻って来る」ウィンリィを力一杯抱きしめた後、  
彼女のコートのボタンをもどかしそうに外しながらエドは言った。「それにしてもウィンリィ、お前の  
服の趣味が相変わらずでよかった」  
「どういう意味よ?」  
 エドはニヤリと口をゆがめた。「着たまま出来るからな。立ったままっつーか」  
「ちょっと……エド!」  
「と思ったけど、お前なんでタイツなんか履いてんだよ」  
「寒いからに決まってるじゃない! エドの変態!」  
 ともかくも人間兵器となることについて、エドから承諾の返事を得たキンブリーは、ひとまず兄弟と  
人質への監視の目を和らげた。傷の男捜索隊が出立の準備を整えるまでには少し時間を  
要するらしく、護衛たちはエドやウィンリィの傍らを離れ、距離をおきながら従いて来ていた。  
 ブリッグズ砦の一角、物置を兼ねているらしい小さな部屋で、丈の長いカーテン越しに  
2つの影が縺れあう。  
 人気の少ない廊下で、不意にエドに腕を掴まれてウィンリィはこの物置に連れ込まれた。  
エドは錬金術で扉に鍵をかけた……正確には、錠前を変形させたらしい。仕方なくウィンリィは  
首からマフラーを外し、服越しに胸に顔を埋めるエドをそのままに、あまり埃っ気のなさそうな  
手近の釘に腕を伸ばして掛けた。  
「あんまり長居するとキンブリーか、あいつの手下たちが捜しに来るだろうからな。時間がない」  
「ねえ、あたしの気持ってものは考えてくれないの? ちょっとひどいわ、何もこんな所で」  
「ま、トイレに連れ込まれるよりはましだろ」  
 ウィンリィはうめき声をあげたが、唇を塞がれて宙に消えてしまった。  
 ラッシュバレーに戻って以降、心の奥底で望んでいた熱い感触。  
「会いたかったぜ、ウィンリィさん。お前が無事で嬉しかったよ」  
「ねえエド、そう言いさえすれば何してもいいと思ってない?」  
「何だよ、オレの本心を疑うのかよ」ウィンリィのコートに半分覆われながら、エドは彼女の背に  
回した両腕に力をこめる。「なんか逆っていうか、オレが女の子のコートに包まれるのは  
間違ってると思うけどな……。お前、すっげ温かい」  
「もう、何がっついてるのよ」ウィンリィは声をささやき声に落とした。「一体どうしちゃったの?」  
 エドは返事をせずに笑みを浮かべた。「寒くなるかもしれないけど、すぐに温めてやるからさ」  
 彼はウィンリィのコートを脱がせ、マフラーの上からそれを釘に掛けた。次いでまた彼女に  
キスし、左手をスカートの中に忍ばせた。  
 
「さーて、これをどうしようかな、ウィンリィさん」タイツの上から太腿を撫でながらエドが言う。  
 ウィンリィは観念した。「破らないでよ、お願い」  
「わかった。片足だけ脱いでもらおう」  
 自分は今ひどい格好をしている、とウィンリィは思った。片方のブーツを脱ぎ、タイツと下着を  
膝まで下ろされ、膝までしかない丈のスカートを捲られて、若い男と抱き合ったまま  
埃っぽい小部屋に隠れている。  
「……変だよ、やっぱり両方脱ぐから」  
「待てねーよ。履くのにも時間がかかるだろ」  
「そんなに焦らなくていいじゃない」  
 エドがワンピースの襟ぐりから――つまり、上から――胸に手を突っ込んだ時には  
気が遠くなりかけたが、  
「……ウィンリィも、オレに会いたかったろ。お見通しだぞ」  
「そっ、そんなことないわよ!」うっとりし始めた瞳で、それでもウィンリィは否定した。  
 砦に到着後はじめてウィンリィがエドとアルの前に姿を現した時、兄弟は驚くとともに、  
真っ先に"あんたたち、何で牢屋なんかに入ってんの?!" という叱責が飛ぶものと予想した。  
本能のようなものだった。が、彼女は「あ……」と頬を赤らめた。まるで恋しい人に会ったかのように。  
 
「アルが元に戻るまで、こんなことは控えるって言ってたのに……」  
「その通り。やめるとは約束してねーぞ」  
「もう!」  
 それでも、ウィンリィはエドの首に腕を回した。服越しでもよく分かる大きな胸を、  
エドは揉み続ける。  
「おっ? ウィンリィさんの方は、すっかり準備OKじゃん」エドはスカートの下の  
秘密の口に触れた後、ベルトのバックルに手をかけた。彼女の秘密の口はとっくに  
柔らかく濡れている。  
 金属の触れ合う音が響く。布で覆われた、古い椅子か粉袋を積み上げた  
ようなものの上に軽くウィンリィの尻を載せて、エド自身は彼女の両脇を抱えた。  
「ちゃんと外に出すからよ」  
「……!」  
 こんな体勢は試したことがあるのだが、うまく事が運ばなかった経験がある。  
「それとも、オレが座った方がいいか?」とエドは訊ね、ウィンリィが頷くのを見て  
場所を交代した。隆々とそそり立ったものの上で、できる限り脚を広げさせる。  
 ウィンリィは立った姿勢のまま、エドの熱い怒張を受け入れた。ゆっくり侵入したそれは、  
少女の内側がなじむのを待って、上下に動き始める。  
 ウィンリィの口から声がもれた。押し殺したあえぎを、エドはキスで塞いだ。  
 時に速く、時にはゆるやかに2人は揺れた。長いカーテンに映る影が、重なり合って動く。  
 
「……エド、本当に……どうしちゃったのよ」ウィンリィがささやいた。「いつもなら……、  
こんな風に、しないじゃない」  
「もし気がついてないんなら……大馬鹿だぞ」途切れ途切れにエドは答えた。  
「砦に着いてから、……ずっと、目は開けてたろ。……思い出せよ」  
 かすかにウィンリィは微笑んだ。「……あっ、あん、分かってるわ……」  
 エドはキスを繰り返した。目の前の豊かな胸が、エドの突き上げに合わせて  
重たげに揺れる。  
「……オレのだかんな」  
 独り言のようにエドはつぶやく。  
「特に、キンブリーには渡さねえぞ。あの変態ロリコン親父には」  
 砦に着いて以来、わずかな間に男という男の視線を集めている幼なじみの整備師。  
 人殺しに荷担しろと命じられたこと。牢屋での急場を切り抜けたこと。  
話は前後するが、ホークアイ中尉の指摘を思い出して悶絶したこと……  
「……エド、……何か勘違いしてない……?」  
 
 頭の片隅の理性で、エドはもうじき抜かなければと悟った。  
「ウィンリィ、」  
「……んっ……」  
「そろそろいくぞ。お前は?」  
 激しく突き上げられて、ウィンリィの瞳はぼんやりしている。  
 
「エド、……あたしも……」  
 エドは彼女の背を抱えると、狭い布の上に押し倒した。この埃っぽさでは後で  
怒られるだろうと思ったが、今のウィンリィには素早い動作は難しい。  
 彼女の中から抜けると彼女は声をあげ、秘密の口は熱い液を噴き出した。  
 
 ややあってエドは肩で息をしながらも身を起こし、スカートを持ち上げるとその  
ピンク色の口に唇を寄せた。  
「ごめんな。かなり汚れちまったかも」悪いけどこれで拭いていいか、とエドは  
棚にあったはぎれのような布を取って埃を払い、ウィンリィの秘所の周りと  
スカートを拭き始めた。気だるそうにウィンリィが起き上がってその手を止める。  
「あたしがするから」  
 彼女はエドにキスし、彼が別の布で拭こうとしていたもの――大量に吐き出した後  
にもかかわらず、それは熱さを保っていた――にも口で触れた。エドは  
ウィンリィの頭をくしゃくしゃと撫でた。  
 こんなことしてるといつまで経っても出られないじゃねーか、とくすくす笑いながら、  
2人は精一杯急いで身支度を整えた。エドは「ゆっくりしていいぞ」と  
髪を手で整えているウィンリィに言い、躊躇った後、やっぱりお前は可愛い子で  
いてほしいしな、と赤くなってつけ加えた。「たとえそのせいで男が寄って来ても  
仕方ねーよ」ウィンリィはくすくす笑って、軽くぶつ真似をした。  
 
 
 用心して、2人は少し間を置いてその小部屋を出た。見とがめられた様子はない。  
「……悪い。ちょっと乱暴しちまったな」  
「あんたが乱暴で考えなしなのは毎度のことじゃない」左右を見回しながら  
ウィンリィは応じた。「……もし今見つかったら、どうすればいいのよ」  
「寒いから、ちょっと暖め合ってました〜って言やいいんだよ」  
 頬を真っ赤にしてウィンリィは抗議した。  
「アルも牢から出て来てるだろうし、そろそろ野郎どもが様子を見に来るかもしれねーな。  
お前のファンの」ニヤリと笑ってエドは続けた。「それとも、見せつけてやろうか」  
「……バカ」  
 誰かが廊下に姿を現す気配がしたので、2人は握り合っていた手を離した。  
「ありがとな、ウィンリィ」エドはささやいた。「これからどうなるか分かんねーけど、  
今までみたいに進んで行けそうだ」  
「お礼なんて言うのは変よ、エド」  
「――でも、今度はきちんと服を剥いてヤりたいよな」  
 ウィンリィは言葉につまり、これで何度目のことか、医務室にスパナを置いて来たことを  
後悔したのである。  
 
 

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