首筋に触れる黒い髪の感触さえ今は気持ちいい。  
痙攣するように震えた身体を抱きしめて、彼の精を身体の一番奥で受け止める。  
コンドームを付けているためそれ以上奥に入る事はないが、熱い液体が注ぎ込まれる  
官能的な妄想に、オリヴィエは堪らず絶頂に達した。  
数秒の心地良い痙攣を経て、息を整え始める。  
「……早かったな」  
未だに身体を覆いかぶせたまま、荒れた息すら整えられない男に話し掛ける。  
怠慢な動作で上半身を起こした男は「早かったですか?」と手で黒髪を乱した。  
「ああ、早かった。セックスしか取り柄のないマスタングが、ひどい失態だな」  
「……イッておいて、よく言いますね」  
彼が離れる。ずるずると身体の中から引き抜かれた異物に、堪らず声を上げた。  
脇のティッシュを数枚とり丁寧に拭ってくれる手にされるがままにする。目をつむって、  
このまま気怠い眠気に身を任せてしまおうかと思ったが、不意に彼の手が悪意を持って  
ひだをなぞり、身体が跳ねた。  
「やっぱりもう一度しましょう」  
「いやだ、もう充分だ!」  
「早いと言っていたではないですか」  
「マスタング!」  
膣内に侵入し所構わず引っ掻き回す指に、あっと言う間に身体が熱を取り戻す。  
さっき出したばかりなのにもう元気になっている男の一物を見て、オリヴィエは  
抵抗するのを諦めた。  
 
「……ホークアイとは、どれくらいしてないんだ?」  
枕元に散乱していたはずの新しいコンドームを手探りしながら尋ねる。  
枕の下からそれを探し出した男は、その言葉に固まった。  
「大総統付きになったのは数日前か。たった数日でこんなに欲求不満になるのか?」  
「違います。ごちゃごちゃしていて……3ヵ月ほど」  
言い終わるか終わらないか。彼は膣に潜り込ませていた指を抜き、すぐ上の突起を  
摘みあげた。  
「いっ、あぁ!」  
爪が食い込む。甘美とも言える痛みを、身をよじって耐える。  
「阿呆!痛い!」  
「貴女だっていかがです。ドラクマが不穏な動きをしていると、鋼のが来る前から  
ブリッグズはかなり警備を厚くしていたらしいですね。……貴女も『彼』も、忙しくて  
そんな時間なかったのでは?」  
「や、あっ!何の、話だ…!」  
男の肩に爪を立て、首を振る。見え見えの嘘を吐く顔を乱れた髪が隠した。  
「今日はいつもに増して感度がいい。どれくらいしてないんです?紅い眼の彼と」  
「奴は、妻帯者だ」  
身体を反転させ、執拗な愛撫と質問から逃れようとする。しかし二の腕を掴まれ  
シーツに押し付けられ、また自由は奪われた。  
濡れそぼった膣に熱いものが触れる。  
「いい加減認めたらどうですか?」  
「何を、認める?!」  
こんなに彼の唇と身体を欲しているなど。こんなに、穏やかで激しい紅い眼を  
欲しているなど、認めたくない。  
そこまで叫んだ時、下半身に異物がめり込み、悲鳴を上げた。  
「っ、……優しくしろ…!」  
「もう濡れ切ってるから、大丈夫ですよ」  
初っ端からの激しい往復運動に、頭の中に響く水音が大きくなる。  
犬みたいに雌の身体にしがみつき腰を振る男の姿は滑稽だろうが、それを嘲笑う  
余裕すらなかった。  
とろけきっていた身体が言うことを聞かなくなり始めている。  
溢れ出す涙を枕に押し付けて、吸い込んでもらった。  
「あっ……ん、うっ」  
もうほとんど意識がなかった身体を突然、繋がったまま乱暴に反転させられる。  
衝撃に耐えた後睨みつけてやろうと見上げると、すぐそばに男の顔があり目を見開いた。  
唇がぶつかる。あっという間に舌を絡めとられ、無理だと知りつつも男の肩を押し返した。  
キスはいやだと最初に言ってから、彼は律儀にその約束を守ってきたのに。  
髪を掴んで引き剥がそうとした手をシーツに縫いとめられ、より深く侵入してきた  
男の舌と唾液を受け入れざるを得なくなってしまった。  
息苦しさとぬるぬるした感触が、性的興奮をこれでもかと高めていたが、  
まだまだ足りない。足りない。  
きっと同じ思いで絶頂を迎えつつある男の首に手を回して、寒さを紛らわせようとした。  
 
 
 
 
 
 
おわり  
 

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