数年前、多数の合同部隊が集った親睦会の夜でした。
騒がしい宴会は隣の部屋で今もなお続いています。
私は、少し酔いを冷まそうと女性兵士専用の部屋に入るなりソファで寝入ってしまったのです。
いくばくか時間が流れ、薄目で気づくいた部屋は真っ暗でした。宴は終わり、皆帰っているようです。
(こんなに眠ってしまった。帰らなければ…でも、体がだるい)
動こうとしたけれど、なかなか体が立ち上がりませんでした。
喉が渇いてしょうがなかったのです。
飲み過ぎないように気をつけていたんですけど
別隊に勤務した同性の知人達に久々に会ったためか、ついつい話し込んでしまったので羽目をはずしたのでしょう。
ですが、本当は困った視線から逃れたくて同姓の知り合い達に囲まれ、隠れるように宴をすごすことに必死でした。
北方の部隊に所属しているとしか聞いていませんが、長い金髪で鋭い瞳をした女性軍人がずっと私を見ていたのです。
初対面の時、上官への敬礼と挨拶を交わした時からずっと見られているような感じで…私はそれがいやでした。
はじめは、にやにやと気味の悪い微笑が見えて…けれど他の人達は特に何も気がついていない様子であったため、
気のせいかと思っていたのです…でも、
まとわり着くような視線であるかと思えば、睨みつけた圧迫感のある目でもあったりと…私は絶対目を合わせない様に努めていたのです。
その時…背もたれに首をより沈めた私は、閉じたまぶたに冷たいものを感じました。
そして、次に暖かな吐息と指が頬にかすめてきて、
「酔い潰れるとは、意外ではないか」
といって顔を捕まれた私は唇を奪われました。
「んっ…ぅ」
ごくごくと口の中に冷たい水が入ってきます。
喉を通り、零れる幾筋は口から滴り…急なことで驚いて私は混乱しました。
彼女が、ずっと妙な視線を送ってくるあの金髪の女性軍人がいつのまにか私の椅子の背後にいたのです。
「やめ、て…離し……て…」
顎をつかまれ、額を押さえ込まれてすごい力で上官に上を向かされ椅子に座ったまま口付けられます。
彼女の胸部に私の髪は沈み、髪留めは外れ…頬には冷たい質感の長髪が筋となって流れてきます。
背中がゾクゾクしました。
舌が入ってきて、けだもののように口腔が舐めまわされた感じで…水の冷たさは失われてお互いの熱さしか判りませんでした。
苦しくなって、漏れる息も逃さないような口付けがようやく終わった頃、私はぼやけた意識の中でようやく彼女の顔を見あげました。
立ち上がって逃げようと動いたのですが、体が言う事をききません。
酔いが回ってふらついて、みっともなくも長椅子に横倒しになってしまいました。
そして、もう一度起き上がろうと体をひねると、あの上官がいつのまにか私の脇に腰をおろして制服の襟を外してきました。
「な、何を…」
「そのままでは苦しいと思ってな。少し緩めれば楽になるだろう、上着を脱がせてやる」
「い、いえ…結構です。お構いなく」
「水ももう少し飲ませてやる」
「いり、ません…!あの、もう大丈夫ですから」
覆いかぶさってきた彼女から逃げようとしました。
ですがその時、椅子の横机に置いたコップへおもむろに手にした彼女は、思いもよらぬ事をしてきました。
水を、私にかけたのです。
くすくす笑いながら、私の頬に、首筋に……とくとくと伝った水滴が私の開いた胸元の中までぬらしてしまいました。
「手元が狂った」
冷たい感覚が、シャツを伝い、私の体を冷やしてしまいました。
今日は公式行事に纏うシャツにスカートだったのでいつものタートルネックではない
ためかはだけた胸元が余計に気になります。
首に張り付く自分の髪も濡れています。
酒で頭がぼうっとしていたのですが、私が、どうにか動こうとすれば
「いそがずとも、もう少し休んでいけ。濡れた服も私が代えてやろう」
と熱い唇に首筋を這われて身動きが取れなくなりました。
つづく〜