この冷たい肌に触れる度に…
私の心に焔が灯る。
「も……っ、許してくださっ…」 そう言って汗ばむ肌を私の前に晒す女は荒々しい責めから少しでも逃れようと涙目になりながらその美しい肢体を捩った。
「まだだよ…」
女にとっては最悪に等しい言葉を耳元で囁き、捩った肢体をそのままに更に奥を抉ってやる。
ひっ、と短く息を飲む声が聞こえ私は得も言われぬ快楽が背に走るのを感じ取る。
しかし、その程度ではもう満足出来ない。
「嫌だ、だの許してだのと言う割には…感じてるじゃないか…」ほら、と態と喉を震わせ嘲るように言葉を吐き出し、厭らしい粘着質な水音を大きくしてやれば女の矜持が酷く傷付くのを私は知っている。
その証拠に目尻から零れる水分は量を増していた。
その、お綺麗で有能な副官の仮面を剥ぎ取って。
只の女に成り果て私を求め、強請るその瞬間。私は最高の悦びを感じる。
もう、
そんなに時間は要らない。
扉は開かれた。
そして。
その頃にはあの冷たい肌も。
熱く火照っているだろう。
私の心に灯った焔は…
君にきちんとお返ししよう。
二人で最高の峰みへと昇ろう。
涼しい夏の夜。
二人の男女が生み出す熱気で蒸し暑い室内には、先程まで酌み交わして居たグラスが汗を掻いて本能のままに交わる獣の様な2人を無言で眺めているだけ。時折カラン、と氷が音を立てるも、焔の灯った獣にその音は届かない。