『私の背中、焼いて潰してください』  
 
「紅蓮地獄」  
 
リザが、その男と出会ったのは、戦場だった。  
「見てもらいたいものが、あります」  
心内を指摘された次の日の夕方、リザ・ホークアイ准尉は、ゾルフ・J・キンブリーを尋ね、  
イシュヴァール人の家屋であった瓦礫の中の空間に連れ込んだ。  
リザは、いや、イシュヴァールに居る軍人なら、誰でも知っている。  
このように夕闇に紛れる空間が、戦場で良い雰囲気になった恋人同士の格好の  
逢瀬場所であることを。  
夕陽の具合で逆光になる。多少見えたって声が聞こえたって、誰も何も言わない。  
むしろ無防備になる瞬間に、味方が近くにいてくれた方がありがたい。  
若い者はお互い様で、古参兵たちは若い頃を思い出して見守っていた。  
そして暗くなり、砂漠特有の気候で急に気温が下がると、恋人はそれぞれ撤収していく。  
死と隣り合わせのゲリラ戦の恐怖、自国民を殺害する不安、中間管理的ポスト。  
教育を受けた若い士官ほど、精神を消耗していた。  
 
「おや、また。私などをこのような場所に誘うとは、人違いではありませんか?」  
「いいえ」  
リザの指は彼女の軍服のボタンを外していく。上着を脱ぎ、ハイネックシャツの裾を  
握って、黒い衣をたくし上げ、下着も外した。  
ほどなくして、女の上半身は、裸になった。  
背中には、彼女の父が彫った秘伝の錬成陣の刺青が、夕陽に映えている。  
 
「ふーん、なるほど」  
キンブリーの爪が、リザの背中の錬成陣をなぞる。女の背中は震えた。  
「父は秘伝としていましたが、私はこの錬成陣を、なるべく優秀な錬金術師に見せて、  
 人の役に立ってもらいたいと思っているのです。並の錬金術師には解読不能ですが、  
 キンブリー少佐殿は、鋭い観察眼をお持ちになっていると感じました」  
「いいんですかね?私は国家錬金術師で、兵器です。この私の錬金術が人を爆発  
 させるのを楽しくさえ感じているのですよ」  
と、キンブリーは、両手の平の刺青を見せた。  
「人を殺しているのは、私だって……同じことです。貴方の言うとおり、当たって嬉しく  
 思う感覚もあります。それでも、決して人間らしい気持を無くすことはありません。  
 私は人間のその気持を信じます」  
「……なるほど、貴女のお考えは分りました。ところで今日のことは、知っているのですか?  
 あの過保護な焔の少佐は」  
「はい。私の自由にすれば良いと」  
「随分と不思議な話じゃないですか。再会時、『覚えていらっしゃいますか』と言っていた。  
 つまり過去に二人は何かがあった。それに、その背中の陣と彼の発火布の陣は似ている。  
 総合すると、その肌を、焔の少佐にも見せたのでしょう。あの人は寝取られマニアとか  
 なのでしょうかね?」  
「そんな関係じゃありません。彼は私の兄のような人ですっ!」  
「ほう、随分と青臭い関係ですね。貴女や焔のがそう思うのは勝手ですが、私は彼とは違います。  
 女性が裸体を見せれば、私は女を抱かせていただきますよ」  
「覚悟の上です」  
「では、遠慮なく」  
そういうとキンブリーは、リザを背中から抱きしめた。  
「くっ……」  
首筋から廻ったその手に乳首を揉まれ、リザは思わず嘆声を出す。  
覚悟の上とは言ったものの、実は、ここまで彼女は想定してはいなかった。  
というより、リザには想定できなかったのだった。抱かれるというのが、ここまで  
動物的な行為であることは、経験のない彼女には想像出来なかったのだ。  
 
裸になった背中を愛撫され、女の身体は震えた。  
罪人のように彼女の両手は、崩れた壁に付かされる。  
空いた男の繊細な指は、すぐさま乳首を捕らえキツく抓み揉ままれる。  
リザは痛みに顔をゆがめた。  
男はまったく気にもとめず、片方の手はわき腹を通ってウエストに伸び、  
釦を外されジッパーが下ろされる。銃と弾丸の重みで、女の軍服のズボンはスカートごと、  
ずるずると少しだけ這いずり落ちる。  
釦を外した腕は、後ろに廻り、下着の中に侵入する。  
尻の裂目を伝って、恥丘から襞を伝ってくる。  
まだ狭い穴の奥に、キンブリーの細い指が差し入れられた。  
 
「ぅんっ……くっ……ィうぁっ」  
犯される屈辱と、身体的な痛みに、リザは思わず身体をくねらす。  
「おや、随分キツイようですが、もしかしたら処女なんじゃありませんか?  
 もっとも私はどっちだってかまいませんが」  
「ぃや……やめて……」  
「覚悟の上とおっしゃったはずでは?」  
キンブリーは、抗おうとするリザの両手を片手で廃墟の壁に固定し、自らのベルトを  
もう片方の手でカチャカチャと外す。  
「、いっ……」  
 
「そんなにゆっくりするつもりはありません。すぐ済みますよ」  
「ん……ひゃぁあっ……っ!!」   
キンブリーは前戯もほどほどに、リザのショーツを少しだけ太腿へと下ろすと、  
後ろから一気に彼女の膣に肉棒を突き差した。  
乙女の胎内の肉襞は全て裂け、血が流れ出す。  
そして男は、女の苦痛など、気にせず、ウエストに腕をまわし、無理やり動き出した。  
むしろ、その苦痛と抑えた高い声の悲鳴を楽しむかのように、激しく短髪の乙女を揺り動かす。  
ズボンで繋がっている軍靴の足元が何度も浮き上がる。  
リザの瞳からは、涙が溢れ出て、何粒も黄色い砂地に零れ落ちた。  
「ぃっ……ぅっ……痛っ、」  
女の脚は立っているのがやっとという風に震え、太腿まで下ろされた青い軍服のズボンは、  
スルスルと軍靴の上に落ちる。  
息を殺した娘の嗚咽が、喉を震わせている。  
「ああ、やっと分りました!貴女は死ぬのが恐いのでしょう!貴女に殺された人たちのように、  
 虫けらのように朽ちていくことが。死んでその背中の錬成陣と共に、忘れられてしまう事に、  
 恐怖と感じているのでしょう。だから、私にも背中を見せたんでしょう?」  
「いっ、そ、そんな、ぁっ、つもりじゃ……っ」  
リザのまだ幼い顔は後ろを振り向き、キッと濡れた鋭い視線をキンブリーに投げかけた。  
その冷たい視線を喜ぶように、キンブリーはニヤニヤと大きな乳房を弄んだ。  
「おや、また、図星ですか!しかし、忘れられてもいいんじゃないですか、そんな刺青。  
 貴女が彫った錬成陣じゃ有るまいし」  
「……っ……父が、私に……ぁあ、ぃたっ……」  
「痛いですか!素晴らしい感覚じゃありませんか!貴女は生きているようですよ。  
 もっとも私も死姦の趣味はありませんが……」  
リザの内股には、破瓜の血が垂れてきている。  
「っ……いっ」  
「忘れられてしまうのがそんなに恐ろしいですか!それとも忘れたいんですかね?」  
「ああ、ああっ、いや――!!」  
男は、自らの快楽だけを得て、女の身体を離す。  
 
乾いた風が吹き、リザの肉体は、砂の上に落ちていった。  
「まあこんな学徒兵のお嬢さんに『忘れるな』は可哀相だったですかね。  
 そうですね……全て忘れたいのなら、殺した後を考えて恐いのなら、こう思えば良い。  
”民族全て滅びて忘れ去られれば、誰も絶望すらしない”」  
「そ、そんなこと……っ」  
「本日は感謝しますよ。まさか戦場でこんな美しい女性から誘われるとは思いませんでした。  
よろしければ、これからも背中を見せていただけませんか。送りましょう」  
へたれこんだリザに、キンブリーは手を差し伸べる。  
 
その後キンブリーは、ほぼ毎日夕刻の休憩時間時に、リザを物陰に引っ張って行った。  
水資源が乏しく物資の具合でシャワーを浴びれず、砂だらけの身体のままでも、  
他の恋人達と同じように短い時間に激しくキンブリーはリザを抱いた。  
そんな行為の中でいつも彼は「貴女が嫌いです」と言い放った。  
 
しかし一部の人が言うほど、キンブリーが狂人だとは、リザには思えなかった。  
行為中に自分の思考に悦に入りいちいちそれを喋り捲くるのは、快感を得る上で少々うざったいと  
感じるようにはなっていたが、それは逢える時間が短い所為だろうし、彼の残虐な言葉も、  
一般的な社会通念や、彼女の考え方とは違うというだけで、間違ったことを言っているとは思えなかった。  
もっとも、リザの父親もかなり変わった錬金術師であったから、キンブリーの行き過ぎた  
完璧主義や錬金術への偏向、奇行も、普通に思えたのかもしれない。  
 
リザは初めこそ戸惑っていたが、そのうち、二人だけの逢瀬を待ちわびるようになっていった。  
もし本当に嫌悪を感じたのならば、銃で撃ってしまえば良いだけの話しなのだ。  
殺伐としたこのイシュヴァールでは、敵に奇襲されたと言えば、黙認されるだろう。  
この7年も続き泥沼化した組織と戦闘に慣れた彼女は、そう考えるまでになっていた。  
リザにとって唯一と言っていい不満は、口づけを交わしていないということだけで、  
それはお互いに利益によって結びついた関係なのだから、仕方が無いと彼女は思うようにしていた。  
 
 
そのような中、数日、キンブリーの姿が見えなくなったことがあった。  
帰ってきてその姿が見えたとき、リザは安堵した。  
戦場では、死の影がいつでも付きまとう。  
珍しくリザの方がキンブリーの手を引き、人気のいない裏に行くも刹那に、  
腕を回して男の体躯に抱きついた。  
その日の男の体は何時にも増して熱かった。  
 
「カンダ地区にイシュヴァール人を治療してるロックベルという医者夫婦がいましてね。  
 保護に行っていたのです」  
「そ、それで……?」  
男は素早くズボンを下ろし、リザの砂漠に立つ脚を開かせる。  
「残念なことに、殺されていました。イシュヴァール人に」  
「そ、そんな……」  
男の手が腰に触れる。  
細く黒いストレートの髪が、リザの背中に触れる。  
繊細でありながら、大胆な手の動き。  
「可哀相など同情はおよしなさい。彼らは信念を貫いて死んだのですから。  
 私はそういう人が好きです」  
耳元で囁かれ、下着の横から強く男の物を挿入され、身体は一気に突き上げられる。  
男がリザを嫌いな理由が、その時理解できた。  
自らが選択した仕事を嫌悪し、矜持を持っていないからだと……  
「貴女は今日何人撃ちました?」  
「んっ、そ、そんなぁこと、今は、今はやめて……ぁあっ」  
耳が強く噛まれ、身体だけは正直に男の熱を感じて、魂は夕闇に溶けていく。  
 
 
更に戦争は続き、昼間、リザはロイかキンブリーを見る機会が多くなっていった。  
国家錬金術師の護衛がリザの任務であり、名だたる国家錬金術師の他の者達は、  
なんらかの理由で前線から遠のいていった為、大概の日は、紅蓮の錬金術師か  
焔の錬金術師かのうちのどちらかの護衛に付くことになった。  
この二人の錬金術師は対照的だった。  
どちらかの一人は愚直な正直者で、もう一人は嘘吐きだと、リザは感じていた。  
キンブリーは決して、リザの背中の錬成陣を使うことは無かった。  
初めのうちは、それはキンブリーが錬成陣を解読出来ていないからで、  
だから、嫌いなのに毎日リザを物陰に誘うのだと思っていたが、違うらしい。  
夕方になると、キンブリーは観察も程々にリザに身体を重ね、たまにその背中の文様を  
見ては、笑って悦に入っていた。時には、上半身を脱がせないで、事に及ぶことすらあった。  
そういった時は、背中の錬成陣を想像して楽しんでいるらしかった。  
彼は確実に錬成陣の使用方法を知っている、とリザは確信した。  
 
それは戦争が終わりに近づいた頃だった。  
ある夕刻の逢瀬時に、リザは思い切って尋ねた。  
「キンブリー少佐は何故、私の背中の陣を使わないのですか?  
 私が嫌いだからですか?初めに申し上げたとおり、私にも信念はあります。  
 もし解読しているのであれば、私、他の国家錬金術師へ背中を見せたいと思います」  
リザはそう言ったが、そんな信念など今はほとんど失せていた。  
ただ男に決断を迫っているだけなのだと、崩れた壁に囲まれて彼女は俯く。  
 
「何故?……貴女はね、コレと同じです」  
少し考えたらしく沈黙があった後、キンブリーは、ポケットから紅い石を取り出した。  
石は、夕陽を反射し、より紅くキラキラと光る。  
「これは……」  
「これは試作品の賢者の石です。錬金術師がコレを使えば何でも出来ますよ。  
 傷を治療することもできれば、人を破壊爆発させることも出来る。  
 すさまじい威力。それに紅い血のような見た目も、とても美しい!素敵でしょう?」  
「ええ。ですから人はそれを良い方に使えば……」  
「貴女はその背中の陣の全体を見たことありますか?」  
「いいえ。自分の背中は見えませんので」  
「そう。ならば、そう考えるのも無理はありませんね。焔の少佐も全ては、使用していない。  
 完成された錬成陣、それだけ威力があるということです。魅力的です、実にすばらしいぃ!」  
キンブリーは高笑いをしながら、狭い空間で、リザに迫まってくる。  
 
「その背中、消して差し上げましょうか?准尉?」  
そして彼は、リザの軍服の表を強引に開らいた。  
男は女の腕を掴んで、顔を寄せる。  
リザは顔を伏せた。  
「……この背中の刺青は私の存在と同じです。私が生きる理由はこれしかないんです」  
「ほらね。やはりそう言うと思いましたよ。貴女が努力して完成させた錬成陣でもないくせに、  
 それが貴女自身の存在理由だとおっしゃる」  
「だって、私には他に何も無いんです……」  
「確かに背中の錬成陣が無ければ、貴女は少し射撃の腕が優れているだけの小娘にすぎない」  
「そんなことはここに来て、痛いほど実感しています!」  
リザが怒ると、キンブリーは面白そうににやついた。  
「本当にそう考えているのならば、貴女は実に狡猾だ。  
 代価をその背中の魅力的な錬成陣で払うのは一向にかまいません。私のこの石と同じです。  
 けれども本質を見誤るのは、関心しませんね……  
 例えば、戦場で。あくまでも私が人を爆殺しているのであって、この石の力を借りているだけです。  
 心を欺くのは関心しません、見つめなさい、ご自身を」  
女の顎は繊細な指で強く支えられ、男と瞳を無理やり合わせられる。  
「私には多分一生出来ない事だと思います」  
リザは瞼を閉じた。  
 
「そうですか、そう言うのなら仕方がありません。そういった他人に考えを委ねる生き方も、  
 又意思と呼べるのでしょうね。  
 もっとも実は私も治療系の錬金術なんて使えませんから、貴女が同意したところで  
 それを綺麗に消すことなんて出来やしませんけどね」  
「……」  
卑猥な笑いを上げながらキンブリーは、たまたま風に飛んできた干からびた紙片を掴んで  
爆発させてみせた。リザの大きな瞳は、驚きで開き、爆発があった虚無を見つめている。  
もしここでこの人に殺されるのならそれでもかまわないかもしれない、何人も殺した、いや、  
きっともっと違う……何かが理由で。  
でももしそんな事を言ったら、また信念のない女だと思われて、馬鹿にされるに違いない。  
言葉にならない葛藤がリザの魂と肉体を繋ぐ精神を揺さぶる。  
 
空は朱色に塗りつぶされ、その日の落陽は何時にも増して輝きを増しているようにリザには思えた。  
 
キンブリーは指の間に挟んで見つめていた石をポケットにしまうと、リザの弾力のある肉体に  
絡みつき、シャツの裾から手を入れて、背中を何度も擦った。  
「別の方法はありますが……そろそろそんな方法も終わりでしょう……  
 真実を述べるのならば、魅力的な物は、独り占めしたくなるものです。石も、貴女も、」  
後半の言葉はリザの頬に吐息を吹きかけ、耳元で優しく囁かれる。  
本心なのか、口説き文句の虚言なのかは、リザには分らなかった。  
キンブリーの片方の手は背中から正面に戻り、もうすでに起っているリザの乳首を強く弄り、  
鼻先を舐める。  
もう何度もキンブリーと行為を重ねたリザの身体は、男の一挙一動に支配されて既に興奮していた。  
唇から甘い吐息が零れだす。  
 
「いやっ……やっ、ぁんっ、やめっ……」  
「嫌ですか?少なくともここは嫌がっているようには見えませんがね。  
 それとも昼間の戦闘で命中でもしたのが快感で、濡らしたんですか?  
 ああ、今日は戦闘任務はありませんでしたね」  
いつの間にか、リザのふくよかで弾力のある胸を触っていた男の細い指は、ショーツの中に入り込み、  
指先が静かにかき回している秘壺は、淫らな水音を出している。  
「やだっ……そんなことないっ、やめて……」  
 
「そんなに嫌ならやめましょうか?」  
急に男は、女への愛撫をやめた。両手をズボンのポケットにしまい、余裕の表情で、  
服装が乱れたリザを見つめる。  
「あぁっ、そんなっ、キンブリー少佐……」  
指を引き抜かれたリザは困惑した表情をしながら直立している。  
陽は大分傾いて、風が冷たくなってきている。暗くなる前には、火のある方に帰った方が良い。  
凍死の可能性が出てくる。女芯が熱く脈打っている。  
やがてリザの指は、男の腕の筋肉を掴んだ。  
手の甲が火傷とあかぎれで荒れていて、リザは恥ずかしく思いとっさにその手を後ろに隠す。  
 
焦らすように、首筋に口付けが落とされ、服の上から大きな胸を揉まれる。  
日差しの加減だけではなくピンク色に火照った女の身体は釣り上げられた魚のように身悶える。  
「今貴女はこう考えている。男の肉棒が与えられるのなら、今日殺したイシュヴァール人も  
 明日の命もいらないと。私だけを独占したいと考えていますね」  
「……やだ、そんな、ことっ」  
「実に貴女はいやらしいですね。最低だ。殺した者の命は忘れられるのに、貴女だけは  
 覚えていて欲しいと考えているわけでしょう」  
左手でズボンの生地の上から尻と内腿も撫でられるが、肝心の場所には、なかなか男の手は、  
伸びてこない。  
リザは泣きそうなりながら、キンブリーの軍服に縋った。  
「……キンブリー、少佐、お願い……」  
「お願い?何をお願いなのでしょうね?ホークアイ准尉」  
「キンブリー少佐、入れて。私の中に」  
「……そう、私もそのままって訳にはいかないですから」  
 
「んっ早く……」  
「もう少し脚開いてくださいませんか?」  
男に言われたとおりにリザは脚を開く。  
下着ごとズボンが引き下ろされる。  
ザッと砂が舞い上り、じゅぶじゅぶと水音をたてて、リザの胎内に勃起した陽根が侵入する。  
「あぁっ、はいって、くる……」  
欲していた刺激が与えられて、女は直ぐに頭が真っ白になった。  
 
いつものように立ったまま、女の身体は揺さぶられる。  
金色と黒の叢がこすれあい、隠された合体部分は紅く上下運動を繰り返す。  
女の粘膜が熱く蠢き、男のいきりたった物を、陽根を、優しく刺激する。  
キンブリーのずり下がったズボンの、銀鎖が綺麗な音を鳴らしている。  
 
「あっ……んっ……んっ……っ……」  
「貴女はどう生きたいと思っているのです?何か思うことくらいあるでしょう」  
「んっ……どうでも……いい、ぁあん、とっても……」  
「本当にどうしようもない人だ。貴方のいやらしい膣は確かにキモチいいですよ。  
 でも、もっと強く自らの意思で締めつけてくれませんかね?暗くなってきましたからね。  
 なるべく早く済ませたいのですよ」  
「あ、ああん」  
「貴女だって嫌でしょう。こんな下半身が丸出しの姿のまま、朝なって発見されるなんて」  
「はぁ……んっ……むず……かしい……」  
「では、首筋を噛んでくれませんかね?」  
「はむっ……ん」  
リザは欲求のままに首筋を歯を立てて噛み、背中を爪できつく掴まる。  
「うっはー、いいですねー……、苦痛は私を生かしてくれる!」  
とキンブリーもリザの肩を噛んだ。  
 
律動する。火照った女の腰もそれに合わせて動く。  
男の肘は白く露出した太腿を掴み、リザの足元は砂の地面から離れ、淡い紫色に染まる空気の中、  
二人の上半身はより密着した。何度も柔らかく突き上げられる。  
リザの乳首の形が浮き出た黒いシャツとキンブリーの白いシャツが擦れ、微かな音を出している。  
「んふぅ……くぅ……」  
男の肩を咥えなお零れ響く女の喘ぎ。  
キンブリーは膝を曲げ、女の膝を地面にそっと落とす。  
「石も貴女も私を狂わせる」  
やがて男の腰がガクガクと何度も何度も激しく動き、リザの下腹部の奥の奥までそれは到達する。  
敏感な小尖を触られて、体は自然に淫壺の入り口をギュウッと男を咥える。  
「ぁ、ぁ、ぁ、ぁぁあん、やだっ……いくっ……」  
短い金髪が揺れ、女の背が柔らかく後ろに仰け反った。  
 
キンブリーは、蕩けた女の身体を離す。  
リザの脚は地面に付いたかと思うとすぐに身体が前に倒れ、それをキンブリーは抱きとめた。  
同時に、白濁した液が、女の肉体と青い軍服と黄色い砂地に吐寫された。  
 
「そうそう、私がコレを持っていることは誰にも秘密ですよ」  
男はポケットから、紅い石をチラッと見せた。  
「はっ……はいっ」  
「私はね、この仕事が好きです。好きだからこの仕事に就いています。  
 貴女に分りますかね?人智を超えて生死の境目で完全美へと近づいていく事への快楽が。  
 戦場という限界の極致で、自らと他人の心の奥底まで抉るように掘り下げ分類していく快感が!  
 ただ漠然と生きていているというより美しい、記憶と歴史が。  
 ……あなた方には『割り切れ』といいましたが、実は割り切っていないのは、私かもしれませんね」  
軍靴で液体が零れた痕跡を砂に紛れさせながら、自信過剰な演出の多い彼にしては珍しく  
センチメンタルな薄笑いを浮かべていた。  
「良く分りませんが、私は少佐が恐いです……研究しか頭に無かった頃の父に似ています。  
 父は死にました」  
まだ熱を帯びた女の口腔内から出た荒い吐息は暖かく、白く霧になって消えていく。  
外は暗くなり、大分冷え込んできている。  
各々、下がったズボンを自らの手で引き上げて、上着の釦を閉める。  
「ホークアイ准尉。再三申し上げますが、私は貴女のような女は嫌いです。  
 が、貴女のことも忘れませんよ。その背中の錬成陣が無かったとしてもね」  
ひどく純粋で透明なキンブリーの雰囲気がリザを包む。  
 
「今の私が嫌いでも構いません。いつか……きっと……」  
「そう……あと5年も経ったら、貴女も随分と変わるでしょうね」  
その日の帰り際、薄暗く冷え切った砂漠の中で、リザはキンブリーに初めて唇にキスをされ、  
少し舞い上がった。  
 
数日が過ぎた。  
長きに渡ったイシュヴァール戦が近々締結しそうだとの噂は大分前からたっていた。  
最後まで抵抗していたダリハ地区が陥落し、街の殲滅がほぼ終了したのは、誰の目からも明らかだった。  
主戦力は帰還することになり、撤収待ちの若者を中心に、精神的に浮かれた雰囲気も出始めてきていた。  
ロイやヒューズも帰還することが決まりそうだった。  
勝利に酔いしれるように燃える火の側で、戦闘もなく憤りを親友に語っているロイのところに、  
女性の学徒兵が泣き叫びながら、走ってきた。  
「マスタング少佐!ロイ、マスタング少佐殿はいらっしゃいますか?」  
大きな胸を揺らしていて、戦場では場違いだななどと思っていたら、それはリザだった。  
「どうした、ホークアイ準尉」  
その尋常じゃない態度を察して、ヒューズが声をかけて、彼女を人のいない方に移動させる。  
「少佐……キンブリー少佐がっ……」  
珍しく動揺し、混乱しているリザの言葉を二人は拾っていく。  
「キンブリー少佐……上官を……爆死させて……処罰……」  
と、言ったような単語が嗚咽の中から、拾えた。  
キンブリーは上官を殺して捕まったのだった。  
「紅蓮のが?」  
ロイは眉を顰めて呟いた。  
 
「どうして……」  
リザは子供のように涙を流している。10代後半。戦場で一番年下とは言えないが、幼い年齢層には入る。  
父親の葬儀の時にも、ここまで泣いていなかったと、ロイは昔のことを思い出していた。  
キンブリーが、リザの父、つまり彼の師匠に雰囲気が似ているとは、ロイも感じとっていた。  
師匠は錬金術を戦争に使用することは反対だったし、顔立ちも髪や瞳の色なども全く違うが、  
孤高的な態度や、奇怪とも思える学究心が、とても良く似ていると思った。  
背中を他の国家錬金術師に見せたいとリザが言った時は正直ロイは驚いたが、ほぼ毎日、  
あのキンブリーと逢っており、しかも彼はロイとは違って錬成陣を使用しなかった以上、  
嫌いなタイプだったが全く非の打ち所は無かった。  
そして、師匠の娘であるリザも、キンブリーも、雑踏や喧騒に溢れる戦場ではなく、  
人里離れた屋敷が良く似合う。戦後はそういったところで静かに暮すのだろう、  
”女の子が父親と似たタイプと結婚するというのは本当だな”と、微笑ましくすら思っていた。  
青い空と赤い炎を後ろに、ロイは残念そうに、顔を伏せる。  
 
「今までのように助けてあげたいが、私には、今は無理だ」  
妹のようなリザのことを考えると、ロイは助けてあげたいと本気で思っていた。  
彼は、青臭さ、人間の甘さが上等だと思っているし、頼られることに弱い。  
それにロイは、同じ若い錬金術師として、紅蓮の錬金術師キンブリー少佐が、  
戦場の怪しげな実験に関わっていたことを薄々察していて、その実験サンプルに、  
偶々ロイが選ばれなかったことに、安堵感も持っていた。  
「分ってます……助けて欲しいなんて……思っていません」  
リザは、涙をぼろぼろと流しながら、うつむいた。  
キンブリーが捕まった本当の原因は、上官殺しの罪ではないことは明白だった。  
まだ3人は知らないが、実際に、数時間前、キンブリーは本当に上官を司令部の建物ごと  
爆発させたのだが、戦場で麻痺した脳は、その事実は関係無いと、感じとっていた。  
通常なら、上官を何人か処分したってどうってことない。ロイは実行したことはないが、  
イシュヴァールでは良くある事故だ。  
だが今は大総統が視察に参られている。撤収命令が出て、終戦間際との噂が立っている。  
つまりそういうことなのだ。何かを知りすぎたか……  
若い、形ばかりの少佐と急場しのぎの大尉では、軍上層部で起こった政治的問題など、  
首を突っ込めやしない。国家錬金術師の少佐階級など、一番下っ端の階級に過ぎない。  
「……まあせいぜい、仇を討ってすっきりするくらいだな」  
とヒューズも首を振った。  
その後、リザはずっと泣いていた。ロイが肩に手を置いて慰めている。  
 
火の側にいる兵士達には、きっとロイが彼女を泣かせているように見えるだろう、  
そういう男ではないと旧知の自分は知っているが、もしかすると女と地位を得るために  
同僚を嵌めたと噂されるのかもしれないなあ、とヒューズはその光景を面白く他人事のように眺めていた。  
 
ロイが撤収前に会いに行った時、リザは、イシュヴァールの子供の墓を作っていた。  
……  
 
おわり。  
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル