のけぞった首筋には赤い痣。  
振り乱された金髪はシーツを漂い、押し殺した声が耳に心地よい。  
普段以上にシワのよった眉間にかるく触れると、彼女は力いっぱい  
閉じていた瞳をかすかに開いた。  
律動はそのままに、荒い吐息を感じられる距離まで顔を近づける。  
「……マイルズ」  
「はい」  
「速い…もっと、ゆっくり動け」  
上気したほおは雪の上に血を垂らしたかのように赤い。同じように  
熱に犯されきっている声はかすれていつもの気高さはなく、ただ  
そこにあるのは征服欲を満たす何かだけ。  
「無理です」  
「……あ、あ!」  
再びのけぞる白いあご。最近見つけた彼女の弱点を強く擦り上げながら、  
耳元に唇を寄せた。  
「少将」  
「マイルズ!や、やめっ」  
「なぜ?」  
なぜです?少将。  
あなたはいつも貪欲に、欲するもの全てを手に入れようとするのに。  
「気持ち、いいでしょう?」  
私を部屋に招きいれたのも貴方。先に触れてきたのも貴方。手荒い愛撫に  
抵抗しなかったのも、貴方。  
欲しかったのでしょう?この快感が。心臓を押し上げるほどの強い快感が。  
「いっ、あ……―――!!」  
声が出ない、二人とも。バラバラに弾け飛びそうな体を抑えるために強く抱きしめあう。  
雪の上に放り出されたような真っ白の感覚の中で唯一、彼女の腕だけが温かくて  
リアルだった。  
 

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