「背中……見せてくれないか」  
軍部からの帰り、リザの部屋に寄ったロイは思い切ってそう口にした。  
リザは嫌だと言って断固として見せようとしなかったが、上官命令だと  
言われると渋々服を脱ぎ始めた。ロイに背を向けて黒のハイネックを  
脱ぐと、少し躊躇してから背に巻かれた包帯に手をかける。リザは下着を  
着けていなかったのだ。擦れて傷が痛むし、包帯を巻いているので  
着ける必要もなかったからなのだが。傷を見せるためとはいえ、男の前で  
胸を露出するのはやはり躊躇われた。けれど不思議と嫌な気持ちには  
ならなかった。思い切って、巻かれた包帯を解いていく。  
白い背中が曝け出され、その背中全体に刻まれた錬成陣が露になる。  
ロイは思わず眉間に皺を寄せた。膿も出なくなり、以前に比べれば大分  
回復した。だがその刻印と火傷の痕は今もなお、彼女の痩せた背中に  
痛々しく残っていた。恐らく、これから先もずっと残り続けるのだろう。  
胸が締め付けられる思いがし、ロイはやっとのことで言葉を搾り出した。  
「まだ痛む?」  
「…いいえ」  
もちろんそれはただの嘘だ。リザの歪んだ表情を見ればすぐに分かる。  
だがロイはあえて何も言わなかった。ただ自分に気を遣ってくれる彼女が  
いとおしく、彼女に気を遣わせてしまう自分に腹が立った。  
「それより、少佐こそ大丈夫ですか。まだ傷が完全に塞がっていないんでしょう?」  
「こんなの屁でもないよ。自分の心配をしたまえ」  
「それは私の台詞です」  
「何で君はそうやってすぐ……」  
思わず口調がきつくなってしまい、ロイは自分に嫌気がさして溜め息をついた。  
こんなのは八つ当たりでしかない。しかもよりによって彼女に当たるなんて。  
 
「すまない。情けないな、私は」  
「そんなこと、……もう、いいでしょう?」  
そう言って包帯を巻きなおそうとするリザを、ロイは衝動に任せて後ろから抱き締めた。  
「……ごめん」  
「…謝らないで下さい。私が自分の意志で決めたんですから」  
「いや、それでも悪いのは私だ。本当に」  
ロイの声は苦しげで、罪悪感に呻いているようだった。彼を放っては  
おけない。リザは自分が今半裸になっていることも忘れ、彼に抱きついた。  
「自分を責めないで下さい。あなたに苦しんで欲しくない……」  
軍服越しでも伝わってくるリザの腕や胸の柔らかさを感じながら、ロイは  
金の絹のような髪に触れる。自分の気持ちを言葉にすることが出来ず、  
もどかしさばかりが募る。それはリザも同じだった。  
時が経つのも忘れて見つめあい、どちらからともなく二人は唇を重ねた。  
始めは慈しむように優しく、いつしか狂おしいほどに激しく。  
 
それまで、ロイはリザを女として見たことはなかった。いや、本当は彼女への  
気持ちに薄々気付いてはいたのだが、認めたくない自分がどこかにいた。  
彼女との関係は、ありきたりな男女の関係とは違う。そう、思っていた。  
「っ……」  
だがこうしてリザの体に触れていると、逆にどうして今までこうならなかったのか  
不思議に思えてくる。  
「悪い、痛かったか」  
ベッドに押し倒されて背中がスーツに擦れ、リザが少し顔を顰めた。  
「大丈夫、です……」  
痛みに苦しむ彼女をロイは憐れに思ったが、ここまで来て今更止まれない。  
リザもそれを望んでいるようには見えなかった。彼女は無理に微笑んで、ロイの  
口角もそれにつられたように持ち上がる。彼は軍服とシャツを脱ぎ捨てた。軍人らしく  
鍛え上げられた男の体に、リザは思わず目を伏せてしまう。いつもの毅然とした  
彼女らしくない仕草だったが、その初々しさにロイは何だか自分まで恥ずかしく  
なってくるのを感じた。それを誤魔化すようにリザの首筋に顔をうずめると、リザは  
体を震わせて少し首を逸らせた。貞淑な態度とは裏腹の敏感な反応は、ロイに  
不思議な感覚を抱かせた。そこに吸い付いて赤い痕を残し、そのまま鎖骨の方に  
唇を這わせていく。豊かな乳房は見るからに柔らかく弾力がありそうで、ロイは  
欲望の赴くままその双丘に頬を摺り寄せた。滑らかな肌の感触が気持ちよくて、  
こうやって触れていると安らぎさえ感じる。桜色の先端を口に含むと、やはり  
リザはぴくりと身を震わせた。舌で転がし、もう片方も指でしごいてやると、  
たちまちそれが硬く尖っていくのが分かった。  
 
「あっ……!」  
思わずリザの口から声が漏れる。当然彼女の口からこんな声を聞くのは初めてだった。  
「可愛い声出すね」  
彼女は切なそうな表情で口を押さえ、自分でもそんな声を出してしまったことに  
戸惑っているようだった。ロイが薄く笑いながら彼女のズボンに手を掛けると、  
「だめ……」  
「嫌?」  
低い声で尋ねると、リザは困ったように俯いてしまった。だが本気で嫌がって  
いないことは顔を見れば察しがつく。  
「怖い?」  
こくり、とリザが頷く。  
「大丈夫だ」  
ロイは出来るだけ優しい声を出そうと努めたが、我慢できず少し強引にズボンを  
脱がし始めた。彼女を怖がらせたくはなかったのだが、彼女のこれ以上望めない  
ほどのプロポーションを前にして自制心を働かせるのは優秀な軍人であるロイに  
とってもかなり難しいことだった。ズボンの下から覗いた白い大腿に、彼は思わず  
目を見張った。脚線の美しさに感嘆する。衝動の昂ぶりを抑えきれず性急に  
脚を撫で上げると、リザの口からは艶っぽい息が漏れた。  
 
ロイはリザの全身を丹念に愛撫していった。実際、自分でも驚くほどの念の入れよう  
だった。所詮前戯なんて男にとっては形式的な儀礼のようなものでしかないと思って  
いたのに、今は彼女の反応のひとつひとつに興奮して快楽を得ている自分がいる。  
彼女の体があまりにも男の欲情をそそるものだということも要因の一つだろうが、  
果たしてそれだけだろうか。だが事実彼女の体は軍人とは思えないほど女性的だった。  
ただ、その各所に残る痛々しい傷を除いては。ロイはまだ背中の傷痕に触れて  
いなかった。何となく、気が咎めたのだ。だからそこに触れた時、リザも激しく動揺した。  
「あ、大佐……!」  
躊躇うリザをロイはうつ伏せにした。これほど近くから、真っ直ぐにその刻印を見た  
ことはなかったように思う。どこかに目を逸らしたい気持ちがあったし、見てはいけない  
もののような気がしていた。それはロイにとって、自分がイシュヴァールで犯した罪の  
象徴だったのだ。リザはどこか悲しそうに背を丸め、ロイはたまらなくなって、その消せない  
傷に唇を寄せた。いたわるように。すると彼自身の中に何とも言えない感覚が広がった。  
「綺麗だ」  
「そんなこと、ありません」  
「本当だよ」  
そう言ってリザの心なしか潤んだ目を見つめると、彼女はロイの腹部にある傷に  
キスを落とした。初めて彼女の方からされるキスだった。彼は笑って、  
その形のいい唇に自分のそれを重ねた。  
 
ロイはリザの下着の中に指を滑り込ませた。そこは十分に濡れ、蜜を湛えていた。  
彼女の中は熱く、ロイの挿しいれた人差し指をきつく締め付ける。優しく秘裂を  
なぞり、蜜壷を掻き回すと、無骨な指の動きに翻弄されてリザの息が荒くなる。  
「ンっ……は、…っあ」  
リザは唇を噛み締めて、声を漏らすまいと必死に耐えていた。  
「唇、切れるぞ」  
「でも…っ」  
「声……聞かせてくれ」  
言い終わらないうちに両脚の間に腕を挟み、抵抗する隙も与えず股を開かせる。  
「ダメ、そんっ……な」  
彼の舌は次々と刺激を生み出し、唾液か愛液かもわからない蜜がスーツを濡らした。  
「…あっ、ゃ……ぁあっ!」  
とうとうリザの口から高い嬌声が漏れ出た。ロイは満足げに笑む。  
「や…ぁ、ああ……」  
身悶えするリザを見て、絶頂が近づいていることをロイは察する。彼自身、もう  
そろそろ限界だった。彼女の髪を撫で、  
「挿れるぞ」  
怒張を秘所に宛がうと、リザの口が薄く開かれた。  
「たい、さ……」  
熱に浮かされたリザの妖艶な表情が、ロイを突き動かす。  
「あ……あんっ…ぅん……ぁ…」  
最初はゆっくりだった律動が徐々に速まっていく。  
「ああぁっ―――」  
奥に達し、ロイが猛りを思い切り放つ。リザの体から力が抜け、  
ロイにしな垂れかかった。ロイは強くリザを抱き締める。  
その指先に、火蜥蜴の印が触れていた。  
 

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