初めての感覚だった。
熱い粘膜の感触にぶるりと身を震わす。
自らのものを口に含んだ少女が、自分の反応に笑ったのがわかった。
もっとも、顔が見えたわけではなく、少女の性格や一瞬の愛撫の中断から判断したにすぎない。
だがそれが間違いないことを少年は確信していた。
わずかに残った理性でこんなとりとめのないことを考えるのは、少年の精一杯の抵抗だった。
それ以外の感覚は、ほとんど下腹部にもっていかれている。
頼んだのは自分だったが、ここまで相手に圧倒されるのも男として納得いかないものがある。
ベッドに腰掛けいるエドワードの表情は、月明かりの逆光でウィンリィからは見えないはずだった。
それにもかかわらず相手がこちらの顔をわかっているような気がしてならない。
少女は、愛撫を始めてからまだ一度も顔を上げていないというのに。
「……っは」
思わず漏れた自らの声に、羞恥と苛立ちを感じる。
こんなはずではなかったのに。
足の間で、少女の頭がゆっくりと動く。
ざらついた舌が輪郭をなぞっていく感覚にエドワードは酔いしれた。
唾液の跡を残しながら先端まで移動していくと、少女はいったんなぞるのを止める。
少年がいぶかしむ間もなく、少女は先端に小さくキスをした。
たまらなくなり、少年は思わず声をあげる。
「おっまえ、なんか」
「え?」
「いや、なんつーか、さ」
おもわず言いよどむ。
仮にも処女を奪った相手に対して、なんか慣れてない?なとど言う精神を、少年は持ち合わせていなかった。
軽い気持ちで頼んだことだった。
してもらえなくても、困る少女が見られればそれで十分、という程度の話だったというのに。
決まり悪そうにあさっての方向を眺める少年を見て、少女は笑みをこぼした。
足の間から見上げ、ウィンリィが囁くように言う。
「エド、かわいい」
青の瞳がはしばみの瞳を捕らえる。
なに、と少年が言う前に、その口から声にならない声が漏れた。
再び少女が愛撫を始める。先ほどとは違い、口だけではなく指も加わる。
十本の細い指が、早いとも遅いとも言えない速度でしごいていく。
先端のふくらみが少女の口に含まれる。
唾液をたっぷりと含んだ口内で、少女の舌がちろちろと動く。
「んっ……っふ……むぅ……う?!」
「あ、ウィン……リィ」
先走り液に驚いたのか、少女の動きが止まる。
とうぜん、自らが出した体液は少女の口の中にこぼれたのだろう。
少女の唾液と混じる様を想像して、エドワードはどうしようもなく欲情した。
少年から気後れや遠慮が消え去った。気持ちがいい、今必要なのはこれだけではないか。
「ウィンリィ」
「う……む?!」
少年は、少女の後頭部に鋼の手のひらを当てると、強制的に動かし始めた。
左手は剥き出しになった少女の白い肩をなでる。
行き場のなくなった少女の両手は、目の前にある少年の服を握り締めた。
ぎゅうと引っ張り、必死でバランスをとっている。
「む、う、う、んん、んう」
少年の右手は押しつけるだけなので、引くのは少女がやらなければならない。
引いたとたんに押し戻されるので、少女の動く早さをあわせると、ひどくアンバランスなスピードだ。
喉の奥まで熱いものが押しつけられ、生理的吐き気に少女は涙を浮かべた。
噛んでは悪いと思い精一杯口をあけていたが、少女の顎にもそろそろ限界がきそうだった。
そんな少女を気遣う余裕もまた、少年にはなかった。
右腕だけを動かし、意識を飛ばす。
少女の歯が当たり始めたが、そんなことも気にならない。
少女の白いふとももに、自らを咥えた少女の口から、唾液がぽたりと垂れた。
限界だった。
少女の頭を思いきり押しつける。
「う?!」
「リィ」
戸惑う少女の口内に、白濁の体液を吐き出した。
「んう?!」
「くっ……あ……」
まさか、ここまで本格的にしてしまうとは、少年は思っていなかった。
達成感と虚無感、少しの罪悪感とともに、少年はため息をつく。
申し訳ない気持ちで少女を見やると、困り顔で少年を見つめている。
少女の意図に気づくと、慌てて言った。
「全部吐いていいからな。ほら、タオルとかに」
少女はこくん、とうなづくと、白いタオルの上でぱっと口を開く。
唾液も混じっていたせいか、量の多い白い体液がタオルの上にこぼれ落ちた。
つ、と液が伝う赤い唇。
「せっかく珍しくあたしからだったのに」
「……ああ、わりぃ」
「結局エドが動かしちゃってるし」
少女はどこか納得いかない様子でぶつぶつと不平を呟く。
少年は、その赤の動きを目で追いながら、どうやって少女をベッドの上に誘おうか、と考え始めた。
END