コッ・・・    コッ・・・  
 
 
真夜中、部屋の住人が眠りかけた頃  
ドアをノックする音が聞こえた。  
 ――― こんな夜中に…? ―――  
 
 コン コン コン ・・・   コン・・  
 
不信に思いながらもベッドから起き上がり  
寝巻きの上から上着を羽織り玄関へと向かった。  
 
 ドン…    ドン…   トン・・・  
 
「どなたですか?」  
銃を片手に持ちドアへと近づく  
「・・・私だ」  
その声に驚き急いで玄関の鍵を外しドアを開ける。  
「大佐!?どうなさったのですか!」  
「済まない、こんな夜中に」  
外には俯き立ち尽くしているロイがいた。  
 
「いえ…。どうぞ、大佐…中へ…」  
リザは彼を中へと招き入れた。  
 
 ――― どうしたんだろう…?いつもの大佐じゃないみたい ―――  
歩き方も力なく弱々しい。  
リビングまで連れて行き  
「今コーヒー入れますから」  
そう言いキッチンへ向かおうとするリザの手首を掴み引き止めた。  
「・・・大佐?」  
俯いていた顔を少し上げるとロイはリザに視線を向け  
手首をグイと引っ張りベッドへと押し倒した。  
「ぃやっ!大佐…何?嫌ですっ!!」  
そのままリザの身体に覆い被さると胸に顔をうずめ  
リザを優しく抱きしめた。  
「あの・・・大佐?」  
「中尉…少しだけ、少しだけこのままでいさせてくれないか?」  
ロイはそれ以上の事をする気配は無く  
人の温もりを感じていたいだけのようだった。  
「大佐、どうかなされたのですか?」  
「・・・。」  
問いかけてみたがロイは何も言わない。  
いつもと雰囲気が違う彼に少し戸惑っていたが  
 ――― 大佐にも弱いところがあるのね ―――  
そう思うと自然と腕をロイに絡め頭を撫でていた。  
 
 
どれくらいの時間が経ったのだろうか?  
押倒された時にはドクンドクンと激しく響いていた心音が  
今は穏やかに動いている。  
頭を撫でていたリザの手も自然と止まりロイも身動き一つしない。  
 ――― 大佐…もしかして眠ってるのかしら? ―――  
リザからはロイが起きているのか眠っているのか  
自分の胸に顔をうずめているロイの表情は伺えない。  
 ――― 私は大佐に仕えて何年になるのかしらね ―――  
リザは一日の大半をロイと過ごす。  
それは上司と部下の関係であり恋愛関係などではない。  
休日以外は毎日と言っても過言ではないくらい  
一緒に居るのに彼と触れ合う事がない。  
たまに書類を渡したり、食事を取っている時に  
ニアミスで指が当たるくらいだ。  
ロイは毎日のように違う相手とデートを重ねているが  
その殆どが華奢で守ってあげたくなる  
リザとは全くタイプの違う女性である。  
彼から見た自分は  
  “主人に絶対服従の有能な副官”  
と思われているだけだろう…。  
と、思っていたのだが・・・。  
今のロイを見る限りではそれ以外の感情を抱いてくれている?  
リザは『そんな事ない』そう思い大きく呼吸をして目を瞑った。  
 
するとリザを優しく包んでいたロイの右手が胸元へと動く。  
「(うそ!)大佐・・・だめっ・・・!!」  
リザは左手でロイの手を制するが、彼の手は止まる事無く  
右の乳房の上で止まりゆっくりと揉みほぐしだす。  
「だめです・・・ぅんっ」  
一応抵抗をしてみせているが二人が触れ合っていた時間は  
ロイを受け入れる覚悟を決めるには充分な時間だった。  
 
リザは前からロイに好意を寄せていたが彼はかなりモテる。  
上司としても男性としても尊敬の出来る彼になら  
身を委ねたいとずっと思っていたのだが、  
自分の事をどう思っているのか分からないのに  
身体を許してしまって身体だけの関係になるのは嫌だ。  
それでなくても彼とは毎日顔を合わせなければならないのだ。  
自分の事を何とも思って無くても彼が求めてきたら  
“否”とは言えない。  
自分の性格からして“肯”と答えてしまう。  
 
 ―――――― でも ――――――  
 
今、目の前には絶対に触れ合う事は出来ないだろうと  
思っていたロイが自分に覆い被さり求められているのだ。  
それはリザがよく知っている  
自信に満ち溢れているロイではないが  
他人には絶対に見せたくないであろう  
弱いところを私に曝け出して…。  
 ――― 私の勘違いかもしれないけれど ―――  
リザは抵抗をするのを止めロイに身を委ねた。  
 
リザの乳房は男の手でも覆いきれない程大きい。  
ロイはその大きな乳房を撫でたり掴んだりしている。  
就寝前にシャワーを浴び、下着をつけずにパジャマを着ているので  
ロイの手が動く度に先端が衣服に擦れてしまう。  
「ぁ…あ・・・んん・・・」  
リザはピクンピクンと身震いさせ声を漏らしている。  
ロイに弄ばれているリザの乳房の先端は  
次第に硬くなり、服の上からでもそこにあるのが分かる。  
その主張している物を指で擦り摘む。  
「はぁっ…ぁあんっ…」  
リザの身体はビクンと大きく反り上がった。  
ロイは少しだけ身体を起こし、摘んだ先端を服の上から舐めると  
リザはまた身体を反らす。  
半開きになっているリザの唇に軽く口づけをし  
次は舌を入れ絡めてきた。  
「んぐ・・・んぅん」  
ロイはリザのパジャマに手をかけ一つずつボタンを外していき  
服を肌蹴させると自分のシャツのボタンを外して脱ぎ捨てる。  
リザの身体を抱き起こし、お互い正座をするような姿勢で  
向き合いロイはリザを自分に跨らせて抱えると  
乳首を舐めて愛撫を続けだす。  
「はあっ・・んっ」  
リザの身体は火照り、うっすらと汗ばんできている。  
ロイに敏感な部分を攻められ思考がまとまらないが  
頭の芯はシッカリしているようだ。  
とにかく身体が熱いのでパジャマを脱ぎ  
持って行き場の無い腕をロイの身体に絡めようとした時  
彼の大きく広い背中が目に入った。  
 
いつもは軍服に纏われているその背中をずっと見守っていた。  
 ――― 彼に仕え護衛するのが私の役目 ―――  
けれど今日の背中は自分を優しく包んでくれるような気がする。  
 
若くて中尉の地位に身を置き皆に信頼され頼られる毎日…  
軍族とはいえリザも普通の女性である。  
一人寝の夜が寂しいときもある。  
そばにはハヤテ号が居て自分を癒してくれるが  
奥底の寂しい部分までは癒される事は無い。  
そんな時いつも脳裏に浮かぶのはロイの顔だった。  
 ――― 寂しい時や辛い時、彼に頼り  
           胸の中で泣いてみたい… ―――  
しかし、そんな感情は許されない。  
弱い自分を見せてしまっては彼は私を副官として  
傍には置かないだろう。  
そうなっては彼を御守りする事が出来なくなる。  
そう自分に言い聞かせ“有能な副官”として  
彼の前では毅然とした態度でいられるのだ。  
 
だが、今の彼は“大佐”ではなく“ロイ・マスタング”なのだ。  
 ――― 今日だけ…今だけでもいい… ―――  
彼の背中をギュッと抱きしめた。  
 
ロイは暫く乳首を舐めていたが、舌を這わせ  
鎖骨、首筋へと移動し、耳元までくると軽くキスをした。  
「んっ・・・」  
「リザ・・・」  
耳元でロイが囁く。  
リザはハッと我に返りロイの顔を見た  
「ずっと私のそばに居てくれるか?」  
彼は穏やかな顔で言った。  
「…はい…ずっと貴方のそばに居ます」  
リザは涙が出るくらい嬉しかったが、目を瞑り涙をこらえた。  
 
ロイはリザに軽くキスをすると、ゆっくりとベッドへ押し倒し  
胸元にも数回軽くキスをして乳首を口に含み転がした。  
「あ・あ・・ん」  
リザが身体をピクッと動かすとロイは右手をリザの  
下着の中へ滑り込ませ秘所を弄る。  
 ――― ああっ・・・そんなトコ・・・!恥ずかしいっ ―――  
「大佐っ…灯りを…んっ」  
ロイはお構い無しにリザの花びらをなぞり  
一番敏感な部分を刺激していく。  
「お願いです・・ぁんっ灯りを…消させてっ」  
「だめだ、君を見ていたい」  
「でも・・・恥ずかしい…ああっ!?」  
リザがそう言ってる間にロイは彼女の衣服を全部脱がしてしまった。  
「もう全部見てしまった。消す理由が無くなっただろ?  
 それとも君はその格好で照明を消しに行くのか?」  
リザは唖然としていたが、真赤な顔をし『大佐の意地悪』  
そんな表情でフィと横を向いた。  
 
ロイは初めてクスリと笑い  
「大丈夫だ、君は自分の姿が見えないから平気だろう?」  
リザの頬にチュッとキスをすると足を広げさせ、  
その間に片足を入れ閉じないようにした後、再度手を  
秘所に持って行き花びらをなぞっていく  
「んぅ・・・っ」  
指が秘所の内部に入り、くちゅ、くちゅ、と音を出している。  
「あっ・・・っはぁっ」  
ジワジワとリザの体中を甘い痺れが侵食していく。  
体中が敏感になっているリザの胸は鷲掴みにされ  
乳首を舐められ吸い上げられたりしている。  
「あああんっ…んうんっ」  
リザの感じる部分を同時に攻められ感度が上がり  
声も大きくなる。  
秘所に入り込んでいた指も一本…二本と入り愛液もたれ  
お尻のあたりのシーツは湿っている。  
ロイは溢れ出ている愛液をすくい花びらの横のつぼみにつけ擦る。  
「はっああんんっ」  
リザは大きく息を漏らしビクッビクッと身体を震わせた。  
そのリザの反応を見てロイはズボンのチャックを下げ  
少しズボンを下ろし、自分のいちもつを出しリザの中へ  
挿入を試みるが入口が狭くてなかなか入らない。  
グッと押し込むと  
「ぅああっ・・・んんんっ・・ん―――」  
リザは声を出さないようにしているようだが顔が苦痛で歪んでいた。  
 
 ――― まさか? ―――  
ロイはゆっくりと挿入しているが、その度にリザの身体は  
ギュッと力を入れ時折「んぅ―――」と口を硬く結び  
声が出ないように我慢している。  
奥まで押し込むと、ようやくリザは身体の力を抜いてきたので  
腰を動かし抜き差し始めた。  
「んっ・・ぁあ…」  
ロイの動きに合わせてリザの身体が揺れる。  
 
部屋にはベッドの軋む音と二人の息遣いが響いている。  
リザは挿入時の痛みは無くなっていたが、ロイの肉棒が  
膣に擦れる事が何とも表現し難い感覚で困惑していた。  
それでもロイと肌を合わせている事は気持ちが良く  
自分の心を落ち着かせ、ずっとこのままでいたいと思っていた。  
「・・・ん・・大・・佐・・・」  
リザは両腕を伸ばしロイの身体にしがみつくと  
ロイもリザの身体に密着するように近づき  
「リザ、もう痛くないか?」  
と優しく囁いた。  
コクンと頷いたリザの瞳は、うっすらと潤んでいるように見えた…  
リザは自分の涙を見られまいと更にしがみ付く。  
ロイは腰の動きを早めリザの首筋を舌先で這わせ  
片手で乳首をしごく。  
「ああっ…ああ―――」  
リザの身体に電流が走ったように全身がビリビリしている。  
「あっ・・・はっ・・・」  
ロイは先程より腰の動きを早め絶頂が来る時を待つ。  
その時ロイの中から白濁した駅がリザの中に放出された。  
ロイは「はあっ」と大きく息をつくと力を抜きリザの身体に  
覆い被さるとリザの瞳から一筋の涙の痕が見えた。  
 
それを拭いながら  
「どうした?やっぱり痛かったのか?」  
リザは首を横にフルフルと動かしただけだった。  
二人は暫くそのままで抱き合っていたが、ロイは身体を起こし  
自分の物をリザから引き出すとコポッと音を出し  
中からはお互いの物と少量の血が混ざった液が出てきた。  
 ――― やはりか… ―――  
ズボンを直しベッドに腰を掛けリザにパジャマの上着をかけてやった。  
数分座っていたがテキパキと着衣しリザに視線を向けると  
「“ホークアイ中尉”」  
と呼んだ。  
その言葉に驚きロイを見て「…はい」と答えた。  
「・・・ヒューズが…殉職した。明日は葬儀だ…  
 そのつもりで用意して来たまえ」  
「はい、かしこまりました…」  
そう言うとロイはリザに背を向け  
「今日の事は・・忘れてくれ」  
と呟き立ち去ろうとした時  
「大佐!」  
リザが声を出したがロイは振り向きもしない。  
 
「何だ?」  
「大佐…私、何も覚えてません。  
 ですから“今日の事は忘れてくれ”と言われても  
 何の事を仰ってるのか分かりません」  
「リ…中尉・・・」  
ロイが振り向くとリザは真っ直ぐにロイを見つめていた。  
「今日大佐はヒューズ中佐の件を私の家まで  
 報告しに来られただけです。  
 大佐、夢でも見られていたのではないですか?」  
「済まない…私は卑怯者だな…  
 君の気持ちに気付いていて、それを利用してしまった」  
「恐れ入りますが…大佐は、勘違いをしておられます。  
 私は大佐の事を上司以外の特別な感情は  
 持ち合わせておりません」  
リザのいつも態度にロイはフッと笑い  
「君にはいつも感謝しているよ…  
 やはり君は“私の”有能な副官だな」  
「それより大佐、コーヒーをお出しできませんで  
 申し訳ありませんでした」  
リザが敬礼をするとロイはリザに背を向け左手を上げ  
部屋から出て行った。  
 
パジャマを着直し玄関の鍵をかけると  
ブラックハヤテ号が心配そうにリザを見ていた。  
「大丈夫よ…ハヤテ号。私は平気だから」  
リザは電気を消してベッドに潜り込んだ。  
 
 
                      おわり  
 
 
 

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