ハボックの持ってきた紅茶とスコーンに手を伸ばしながら
二人は他愛も無い会話を続けた。
ブラックハヤテのこと、同僚のこと、エルリック兄弟のこと等等…。
ひとしきり話し終えた後、二人の間に沈黙が流れた。
「中尉」
沈黙を破ったのはハボックだった。飲んでいた紅茶のカップを置くと
「交換日記の事なんですが」と言葉を続ける。
リザ・ホークアイ中尉は聡明な女性だ。それは彼女自身も自負している所がある。
そんな聡明な女性が、部下とそういう関係になる事を許せるはずが無い。
ハボックは彼女のことは少しだけ理解しているつもりだった。
それに、「胸見せてください」「嫌」と断られるのを想像すると
目の前が真っ暗になったのも理由の一つ。
だから交換日記の事はナシにしよう、と提案するべく交換日記の事を
口に出したのだが…。
「女に二言は無いわ。見せてあげる」
そういって彼女も、飲んでいたティーカップを机に置いた。
正直リザは約束の事をはぐらかすつもりでいた、さっきまでは。
しかしハボックから切り出されてしまっては断るに断れない。
リザは聡明な女性ではあるが、少々負けず嫌いな所もあるのだ。
ここで「やっぱりあれは無しで」と、自分から言い出す事は
彼女のプライドが許さなかった。
「えっ…?ええ!?」
やっぱりあの件は無しで、と言葉を続けようとしたハボックは
驚きを隠せなかった。
「中尉…中尉の胸は是非是非見たいッス!でもやっぱ大佐に
見つかったらタダじゃすまないッスよ!オレ、ボインも大好きですけど
やっぱ長生きしたいッス!」
「何言ってるの?あなたそれでも軍人?男らしくないわよ」
これからやる事は不真面目だが、彼女の反応は至って真面目だった。
思わぬ反応に落ち着きをなくすハボックをよそ目に、彼女は
軍服の上着に手をかけた。
「ち、中尉…あ、ああああの!?」
ハボックを無視して上着を床に脱ぎ捨てる。インナーのタートルを
胸までたくし上げ、ブラを露にさせる。
一度腹を決めた女のすごさを目にし、一枚ずつ脱いでいく様子を見ている事しか
できないハボックに視線をやると、リザは口を開いた。
「…ブラはどうする?私が自分で脱ぐ?それともあなたが?」
彼女は普段からハッキリした物言いをする女性だが、こんな時でも
yes、noを明らかにするようハボックに促す。
「……」
ここまで堂々としたリザを見て、今更後戻りは出来ないと悟ったのか
ハボックはリザに近づくと、抱きしめるようにリザの背中に手を回しホックを外した。
「ん…!」
ハボックの息がリザの耳にあたったらしく、彼女はつい色っぽい声を出してしまう。
しかしハボックはそれどころではなかった。
ごくごくありふれたデザインのブラの中には巨乳好きの彼にとって
衝撃的なものが収まっていたなんて。
形は綺麗なお椀型で、ブラ無しでもつんと上を向いており
乳首、乳輪ともに綺麗な桃色、触らなくても弾力が有る事が分かる
豊満な乳房がそこにはあった。
ー触りたい!
ハボックのそんな気持がリザに伝わったのか、リザはハボックの頬に手をやり、
「…私の約束は守ったわ。お礼、してくれるんでしょう?」
と囁き、彼の頬を優しく撫でた。
先ほどまで怖じ気づいていたハボックだったが、もう我慢する事はできなかった。
上官に消し炭にされてもいい。今の彼は、ただ目の前の白桃のような乳房を
触りたいという欲求の固まりでしかなかった。
「中尉は…ここが感じるんでしたっけ?」
そういってハボックはリザの胸を鷲掴みにし、彼女の胸に顔を埋めると
その先端を舐め上げる。
「ん…っ!」
その瞬間ビクリと反応するリザを見て高まる興奮を抑えられず、
ハボックは先ほどまで座っていたソファに彼女を押し倒した。
乳房を激しく揉みしだき、先端を攻める。
「んん…」
リザは自分にのしかかり、胸に愛撫し続けるハボックの頭を抱きしめた。
ガチャ。
ードアが!?
快楽に身を委ねていた二人を一気に現実に戻した無機質な音。
音がした方向へ顔をやると、そこには見慣れた顔ー
二人の上官であるマスタングが立っていた。
「何してる」
彼は表情を変える事もなく、またその声には感情が含まれてもいない。
二人は言い逃れできない状況であった。
着衣は乱れ、床にブラが落ち、ソファに横たわったリザの上にはハボックが
のしかかっていたのだから。(もちろん彼の手はリザの胸に。)
「私が目を離した隙にこれとはな。飼い犬に手を噛まれるとは正にこの事だ」
そう言いながらマスタングはドアの鍵をかけた。
「さて。諸君がしていた行為の続きをしたまえ。
何、私はここで飼い犬がじゃれ合うところを見物しているから」
マスタングは二人が横たわっているソファと向かい合っているソファに
腰を下ろし、手を組み、足を組みながら悠然と言い放つ。
ハボックはリザの胸に手をかけたまま呆然と固まり、リザも無表情な顔を
マスタングに向ける事しか出来ないでいた。
「私の事は気にせずに続けたまえよ。私を気にする事は無い。
出来ないというのであれば、微力ながらお手伝いさせて頂くがね」
そう言うとマスタングはソファから立ち上がり、二人に歩み寄る。
「ハボック、どけ」
静かではあるが、何かぞっとするような口調にハボックは力なく
リザから離れた。
「…痛ッ!」
マスタングはリザの手首をつかんで無理矢理立ち上がらせる。
手首はつかんだまま乱暴にリザを羽交い締めのような格好にすると
穏やかな笑みをハボックに向けた。
「さあ、お前がさっきやろうとしていた事を見せてみろ」
怒りなど一片も感じさせない穏やかな声だが、リザとハボックは心の底から
恐怖を感じた。彼の目が全く笑っていない事に気付いているからだ。
「やらないのか?なら仕方が無い。続きが出来るように至急ハボック少尉に奉仕しろ、
リザ・ホークアイ中尉」
普段命令を出すときのように事務的に淡々と言い放ち、リザをハボックに向けて
軽く突き飛ばした。
突き飛ばされた拍子にハボックの足下に半ば倒れるように座り込むリザと、
そんなリザを立ったまま呆然と見つめるハボック。視線が重なる。
リザはマスタングの様子を伺おうと後ろを振り返るが、いつの間にかマスタングは
リザの真後ろにいて、ちょうどリザと視線がぶつかるように片膝をついてしゃがみこんでいた。
「さあ、やれ。ホークアイ中尉」
そう言うとマスタングはホークアイの顎をつかみ、彼女が正面を向くよう乱暴にその手を動かした。
リザは聡明な女性だ。マスタングの側についてもう何年にもなる。毎日毎日彼の背を守ってきた。
だからこそ、今の彼がどれほどの怒りを腹に貯めているか、どれほど本気でそう言っているのかも分かった。
こういう時の彼からは絶対に逃れられない。ハボックに『行為』をしなければ、彼は何日でも
このままの状態でいるだろう。
先ほどまで困惑した表情のリザだったが、覚悟を決めたのかいつも通りの毅然とした表情になった。
その表情を崩さないままハボックの軍服のパンツに手をかける。
リザとマスタングのやりとりに、全くついていけないハボックは無表情だった。
「いい子だな、ホークアイ中尉」
マスタングは、ハボックへの奉仕を始めたリザを見て満足そうな表情を浮かべた。
部屋に淫らな音が響き渡る。
ーっちゅぱ…ずるっ…ぴちゃっ…
時たまそれにハボックとリザの吐息が重なり、よりいやらしさを増す。
「ホークアイ中尉、私はそんな奉仕の仕方を教えたつもりは無いぞ。
いつも私にやっているように、ハボック少尉にもやってあげたまえ」
そう言いながらリザの髪を掴んだ。
リザの表情は既に人形のように無表情だった。
マスタングの言う事を淡々とこなす狗、それが今のリザだ。
ハボック自身を握り、裏側を責め立てる。
やさしく珠を触りながら熱い所を舐め上げると、ハボックの体はビクリと跳ね上がった。
「そう、それでいい…」
マスタングはリザのバレッタを外し、リザの髪の毛を優しく指に絡ませる。
リザの奉仕にそろそろ我慢の限界が訪れそうなハボックは辛い表情をしていた。
「やばっ…出る…」
何とか言葉を発した、 辛そうなハボックを見るとマスタングは片方の口角をきゅっと上げて
「中尉、もういいぞ。離れたまえ」
そう言って半ば無理矢理リザをハボックから引きはがした。
「さて、ハボック少尉。」
そういうとマスタングは立ち上がりハボックを見据えた。
ハボックのペニスはリザの奉仕を受け天井を向いている。
ハボックのその部分をちらりと見ながら、マスタングは続けた。
「お前もその状態じゃ治まりが悪いだろう?そこでだ、今からお前に命令を与える。
そこにいるホークアイ中尉殿も体の火照りが治まらない様子だ。
早急に中尉殿を看病して差し上げろ」
看病とは言わずもがな…である。
「…Yes,Sir」
マスタングの意図を理解したハボックは、リザの元に歩み寄り、マスタングが
この部屋に来る前のようにリザの胸への愛撫を始める。
「や…あっ!」
リザの胸の先端は果物のように真っ赤に熟れていた。それを口に含み舌の上で転がすようにしてやるとリザは鳴いた。
乳房への愛撫は続けたまま、軍服のパンツに手をかけインナーごと引き剥がす。
ハボックは、リザの足と足の間に、膝をつく形で自分の片足を置いた。
右手は乳房に置いたまま、左手をリザの敏感な部分へと延ばす。
「あ…!」
そこは既にリザの蜜でとろとろになっていた。
ハボックはリザの奥へと指を1本、2本…と入れる。
ーちゅくっ…くち…くちゅ…
「あんんっ!や…あ…し、少尉っ!」
堪らなくなってリザはハボックの頭を両手で抱えると、自分からハボックの唇に口づけ、
舌を絡ませる。
「ふ…あぁぁぁ…」
「こうして見ると二人ともまるで狗だな。タダの獣だ。」
ハボックとリザを腕を組みながら観賞するマスタング。
ふと思いついたようにマスタングはハボックに声をかけた。
「たまには飼い主も混ざって飼い犬と遊んでやるのも一興ではあるな。
ハボック、そろそろ挿入したまえ。お前も辛いだろう?」
その言葉を受けてハボックはリザの腰を押さえながら、自身を
リザにあてがうと一気に貫いた。
「あぁあああっ!」
リザは悲鳴に近い喘ぎ声を上げた。
その声に堪らなくなったのかハボックは一心不乱に腰を降り続ける。
「やっ!ああっ…だめ…んッッ…!」
マスタングが見ている事も忘れ、リザとハボックは快楽の海に流されかけていた。
「はぁっ…ハ…ボック少尉っ…あん!ダ…メっい…イっちゃ…う!」
「ふ…っ中尉…中尉…!」
リザの言葉はハボックには届かないのか、ハボックは腰を振る速度を早める。
「やぁぁぁああっ!た…大佐ぁああっ…!…ろ、ロイっ…!」
絶頂を迎えた彼女は意識的なのか、無意識的なのかは彼女自身にも分からないが
マスタングの名を呼んだ。
それまで腕を組みながら二人を観賞していたマスタングだったが、
腕をほどき自分の軍服のジャケットに手をかけて床に脱ぎ捨てた。
ぱさり、とジャケットが床に落ちたのを一瞥するとマスタングは
ハボックとリザの元に歩み寄る。
「ハボック、お前は中尉殿を下で支えろ。中尉殿のご指名だ。
私も中尉殿にご奉仕させて頂くとするよ」
その言葉を受けてハボックはリザを自分の腰の上に乗せ、抱きかかえるようにして
横になった。
「そうだ。利口な飼い犬を持てて私は幸せ者だ」
そういうとマスタングはリザの背後に回り、ハボックからリザを取り上げるように
リザを抱き起こした。
「ハボック、動きが止まってるぞ。そんな事では中尉殿に申し訳がたたないだろう?
腰を動かしたまえ」
また例の事務的な口調でハボックに告げる。
「んっ…!やぁ…ああっ…!」
再び開始された律動に快楽を刺激され、リザは鳴いた。
マスタングは背後から手を回し、リザの胸をもみしだく。
「いやらしいな…リザ。ハボックと私に責められて、先端が勃ってるじゃないか…」
リザの耳元で囁きながら、胸、首筋への愛撫を始める。
「ああっ…ダ…っメ…!」
目をキツく閉じ、唇を噛み締めながら体験した事の無い快楽に飲み込まれないよう
リザは必死だった。
「ダメという割に、君の体は正直に反応しているようだがね?」
左手でリザの乳房を弄び、舌でリザの首筋をなぞりながらマスタングは
右手をリザの秘部へと持っていく。
「はっ…ああんっ…!」
リザの体をハボックに向けてゆっくり倒し、その蜜をもう一つのリザの門に塗ってやると、
リザはビクリと体をのけぞらせた。
「…た、大佐…?何を…?」
恐る恐るマスタングに尋ねるが、マスタングは飄々としたものだった。
「ああ、何、ハボック少尉が失礼しているからね。私は別の入り口から失礼させて頂くとするよ」
そういうとリザに露にした自身をあてがい、一気に侵入した。
「いやあああああああっ!痛っ…!だめえっ!抜いてください!」
「却下」
マスタングはゆっくりと律動を始める。
「いやあっ!や…めて…く…ださっ…ひっ!」
「口では嫌がっているがね…君のここは私を離してくれそうには無いのだが?」
痛みでとめどなく涙が伝うリザの頬にマスタングは手をやり、涙をぬぐってやる。
しかし行為を止める事は無く、律動の速度を早めた。
「…くっ…はぁっ…ロ…イ!も…だ…ダメっ!」
「ハボック少尉、そろそろ中尉殿も限界のようだ。中尉殿を喜ばせるよう頑張りたまえ」
「…っ了解…」
ハボックはリザの腰を押さえると激情にまかせて突き上げながら、リザの口内に
舌を入れる。
「は…ふ…あんぁっ…!イっちゃうぅぅぅっ!」
リザが絶頂に達した頃、マスタングもハボックも自身の液体をリザの中に放出した。
息を一つ付くとマスタングはシャツの襟元を正して立ち上がった。
「さて、もういいだろう?ハボック。貴様のした事は不問にしてやる。
これは貸しだ。明日からまた働いてもらうからな。覚悟しておけ」
そう言ってリザをハボックから奪い、抱きかかえる。
「…うす」
ハボックは所在無さげに着衣の乱れを正し、一礼して出て行った。
もともとリザと始めた他愛の無い交換日記から始まった出来事だったのだ。
そう考えると先ほどまでの出来事は夢だったんじゃなかろうか、という
気がして来る。
ハボックは長い廊下を歩きながら、自分の頬を抓ってみるが
痛みがある。夢じゃない。
嬉しいような、嬉しくないような…いや、大佐に貸しを作っている点で
嬉しくない。しかし、何でこの事を大佐に「貸し」と言われなければならないのか…
悶々とした気分のまま家路に付くハボックだった。
一方、件の部屋に残ったマスタングとリザは横並びにソファに座っていた。
リザはマスタングの方にもたれかかっている。力の無い表情で。
「リザ、何でこんな事になったのか離してもらおうか?」
ブランケットに体を包んだリザは気だるそうな声で
「お答え出来ません」
とだけ言った。
「…君は強情だからな。君が言わないと言えば言わないんだろうな。
君の事は多少、理解しているつもりだがね」
そういってリザの頭を優しく撫でた。
「私が、どうしてこんな事を君にしたか分かるか?」
「…さあ…」
力なく答えるリザの横顔を見ながらマスタングは言葉を続ける。
「君の事が好きで好きで好きで堪らないからだよ。
その事を忘れて欲しくないから、少々手荒な事をした。
手荒な事をしたのは謝る。しかしだね、私と言う男がありながら
ハボックとああいう事になった理由を教えてくれないか?」
先ほどとは打って変わって、マスタングの声には覇気がなかった。
「…お答え出来ません」
一貫してリザは折れようとはしなかった。
マスタングはそんなリザを見てため息をつきながら、ふと机を見ると
見慣れない一冊のノートが置いてある事に気付いた。
「…これは…?」
ーしまった!
先ほどまで力なく、心ここにあらずといった表情のリザだったが、
マスタングがノートを手にするのを見て思わず身を乗り出す。
「それは見ないでください!」
そう言うより早く、ノートは既に開かれ、マスタングはパラパラとページをめくっていた。
「…君がハボックとこんな色っぽい交換日記をしているとはね」
苦笑まじりにマスタングはページをめくった。
「…申し訳ありません、大佐。責めは全て私が受けます。
ですからハボック少尉には寛大な処分を…」
「いい、許す。」
マスタングはそう言ってノートを勢い良く閉じ、灰皿の上に置くと
指をパチンと鳴らした。
ノートは勢いよく燃え、跡形も無くなった。
くすぶる煙を呆然と見つめているリザをマスタングは抱き寄せる。
「…今度また3人でやらないか?」
いたずらっ子のような表情でリザの顔を覗き込むと、マスタングは笑った。
「…仰る意味が理解出来ませんが?」
そっけなく答えたリザではあったが、 自分のした事をこうして許せる
マスタングの懐の広さに、この人を守りたいという気持が新たに湧き出るのだった。
おわり