病室の窓からは、青空が見えたが別段何も思わなかった。
今は全ての事に対して、何も考えたく無く気力も湧き上がってこない。
「無理か・・・・・・」
「無理っす、全然言うこときかないんすから」
ハボックの隣のベットで横になっている、
マスタングは何度目かも分からない問い掛けをした。
その表情は苦渋に満ちている。
「追いついて来い」とは、言ったものの
解決策など無い状態にマスタングは苛立ってもいた。
ベットのすぐ脇に控えている、副官のホークアイの表情も硬い。
悲壮感漂う上官二人を目にしても、
当のハボックには何の感情も起きなかった。
-医者にも見放されてんだから、いい加減諦めりゃいいのに・・・・・・
上官の気持ちは嬉しいが、
理想と現実とは違う事を知って欲しいとハボックは思う。
こんな自分にかまってる時間があれば、その分上を目指して欲しかった。
病室には重苦しい沈黙だけが流れ続けた・・・・・・
ためらいがちにドアをノックする音が聞こえたのは、
ハボックが沈黙に耐え切れなくなり、本音を吐露しそうになる寸前だった。
「誰!?」
ホークアイが腰のホルスターに手を伸ばし、ドアに声を投げつけた。
医者の回診の時間でもないし、看護士ならばこんなノックはしない。
不審に思い声がきつくなるのは当然だった。
その声に圧されてか、ドアの前の気配が怯えるのが分かった。
「・・・・・・あの、突然の訪問失礼致します。
私、キャスリン・エル・アームストロングです・・・・・・」
些か震える声で答えたのは、誰もが予想だにしなかった人物だった。
「突然で申し訳ありません、
兄からハボックさんがお怪我をなさったと聞いたものですから」
花束を抱え、病室に入ってきた少女をハボックは呆然と見ていた。
何で彼女が!?
以前お見合いはしたが、彼女の趣味に合わないので
-兄、アームストロング少佐のような人がいいらしく-、
ご破算になったきり、それっきり付き合いは無かったはずだ。
見舞いを受ける間柄では無い。
呆然としたままのハボックと、
扉の前で花束を抱えたまま動かないキャスリンを交互に見比べていた、
マスタングは、ふっと笑いベットから起きだした。
「そういえば中尉、私はこれから検査だったかな?」
ベットから出ようとするマスタングを一瞬止めようとしたホークアイだが、
上官の意味を察し頷き返す。