ある日、ロイ・マスタングに一枚の書類が下ってきた。 
大総統からの命令書、准将昇進の試験の知らせだ。 
大総統を目指す彼にとって、吉報であったが、 
同時に試験の内容に頭を悩ませた。 
しかも、試験の日程は今日の午後である。 
大方、ロイのことを気に喰わないと思っているハクロ少将あたりが、 
書類を止めていたのだろう。 
「まさかこんな悪習が本当にあるとはね……」 
ロイは内線をかけて別室にいる副官のリザ・ホークアイ中尉を呼び付けた。 
彼女が彼の下についた時から、気がつくべきだったのかもしれない。 
 
ノックの音が聞こえて、リザが敬礼をして司令室に入室してくる。 
「ああ、中尉」 
窓の外を見ていたロイは椅子をまわして机に肘をついた。 
 
「なんでしょう?大佐」 
「大総統から君に直接、命を賜った。しかも今回は私の昇進のかかった重要な任務だ。 
 出来れば引き受けてもらいたい」 
「はい。なんなりと」 
「そうか。よかった。他の部下には頼めない仕事だ」 
「はい。ありがとうございます」 
今日に限って優しすぎる上司に不審に思いながらも個人指名されたこと嬉しいらしく、 
リザは冷静ないつもの顔の中に喜びの表情を見せる。 
そんな彼女を見ながら、ロイは物憂げに微笑んだ。 
「中尉。いつもすまないと思っている」 
「いいえ、私も大佐のご出世を望んでおりますから。ご指示をどうぞ」 
「中尉、君が私の下についてから何年たった?」 
ロイは任務内容を述べずに話題を変えた。 
ロイが指示を的確にはっきりと述べないのは珍しい。 
「かれこれ5年以上は経っていると思いますけれど?」 
「私も君もお互いの事を知らな過ぎたな……」 
「大佐、任務のご指示を」 
「中尉これから一緒に外でお茶でもどうか?」 
「はぁ?」 
「中尉は今朝シャワーを浴びてきたかね?体調は?」 
「もしかしてふざけてます?」 
生真面目な中尉は、悪戯が過ぎるとキツイ口調で問い詰める。 
「いや。全然」 
「そうですか。なら私はまだ他に仕事がありますので。 
大佐もサボらないでくださいね。また、午後に参ります」 
とうとうリザがキれて、扉がばたんと強く閉まる音がする。 
ロイは電話に手を置いて溜息をつき、 
ダイヤルを廻して大総統秘書に用件を伝えた。 
 
「ロイ・マスタング入室いたします」 
カーテンの引かれた薄暗い会議室の入り口でロイは敬礼する。 
後ろにはリザが敬礼をして直立する。 
正面にはこの国の最高権力者であるキング・ブラッドレイ大総統を筆頭に 
主だったセントラルの将軍達と事務官フォッカー大尉が座している。 
そして中央には、大きな寝台が置いてある。 
 
大総統は命令書を読み始めた。 
本日の准将昇進試験の内容は、要は大総統及び中央の主だった将軍達の前で 
子作りをしろという、人道的にはどうかとも言える内容の命令である。 
 
これはつまりこういうことだ。 
と、大総統の命令を耳で流しながら、ロイ考察する。 
国が富み戦争に勝つには、優秀な人材が必要だ。 
そして、一概には言えないが、軍国家のアメストリスで、 
将軍職まで昇りつめる人物とは、見目麗しく文武両道ということになる。 
それは本人の努力以上に優秀な遺伝子を持っているということで、 
優秀な遺伝子同士をかけ合せれば、理論上は優秀な子が出来、 
その子がまた国を栄えさせる。 
場合によっては、その頭脳を生かして戦争兵器として 
ロイのように国家錬金術師になるかもしれない。 
その為に有能な青年将校に、有能な女性の部下を配属し、彼女か彼女よりも優秀な人物と 
准将昇格までに結婚すればよし、そうでなかったら無理やりにでもくっつける。 
 
また、将軍職ともなれば、軍に絶対の忠誠を誓う必要があるが、 
子供が出来れば人質にもなる。 
人は一人の時は強いものだが、案外絆の深い者が出来たりすると、 
権力に屈してしまうものだ。 
 
しかし何故、皆の前でなのか?は、ロイにも不可解な点はあったが、 
血統の証明や、裏切り者を出さぬよう仲間内で秘密を分かち合うような 
軍特有の習慣などが絡んでいるのだろう。 
 
ロイは横目で後ろのリザをちらりと見た。 
彼女も中尉であり、頭脳明晰と体力それに美しい容姿をもっている。 
さすがにこんな事は思い浮かばなかったのだろう、驚きと怒りで身体を震わせている。 
 
まあそれにしてもこんな書類が来るまで、 
彼女が副官として任命された意味を気がつかなかったとは。 
初めてそういう目で見れば、彼女は悪くない。 
 
「なお、この試験は妻帯者で既に子供が居る者は、その子の面接で代用できる」 
大総統は、まだ試験内容について述べている。 
それは命令書に書いてあった内容と寸分たがわない。 
 
『孫娘を未来のファーストレディーに……』 
東方司令部のグラマン中将の言葉。 
彼は今日は欠席している。 
代理にロイの後任のハクロ少将が来ている。 
『だから、早く、嫁さんもらえよって言っただろ?』 
天国に行ったマース・ヒューズがやってきて、 
生前、よくロイに投げかけていた言葉を述べる。 
彼は情報部にいたということは、当然この事は知っていたわけだ。 
だが今更もう遅い。 
こんな事を知っているのだったら、それを教えてから死んでいけよ、 
とロイは親友の面影に悪態をついた。 
 
「ところで君達は今日が初めてかね?」 
大総統のキング・ブラッドレイは、まるで果実の受粉か軍馬かなにかの 
種付けでも見るように冷静な顔で聞く。 
「はい。本日が初めてであります」 
大総統も意地の悪いお方だ。 
だが本日の試験は、ある意味そんなものなのだと、ロイは心を落ち着かせた。 
「焔の錬金術師ともあろう人物が随分奥手なものだな」 
「まあまだ若いんだし致し方あるまい」 
ハクロ少将や他の老将軍が脂ぎった声で皮肉っぽく笑う。 
ロイは悔しくなって、身体の横にまっすぐおろした手を握り締めた。 
 
「では、これより昇進試験を行う。 
 制限時間は2時間。素晴らしき子を作ってくれたまえ」 
大総統が試験開始を告げる。 
 
「あの、大佐?これはいったい……」 
「ええと、その……そういうことだ。協力してくれ」 
ロイはリザを抱きしめて、目の前の寝台になだれ込んだ。 
それにしてもこのベッドはどうかとロイは思う。 
このセンスはいったい誰のセンスなんだろう。 
ご丁寧にも、ピンク色のハート型のクッションとかが置いてある。 
 
さらに、観客側の一方を除いて、三方が薄いレースに囲まれている。 
そこから皆の視線が、2人に集中している。 
大総統以外は、明らかに好奇の目だ。 
 
「そんな。こんなの酷すぎ、です」 
リザは大きな瞳で睨み、銃を後ろ腰から取り出そうとする。 
「……いやっ。うっ……」 
ロイはその右手首を掴む。 
2時間で彼女との行為を済ませなければならない。 
かといってあんまり早いのも嘲笑ネタだし、 
先ほどロイを哂ったハクロ達にも一泡吹かせてやりたい。 
そうなるとあまり暴れられるのも、困る。 
「中尉、すまない」 
ロイは彼女の背中に錬成陣を書いて、リザの両腕を彼女の軍服の後ろみごろで縛り上げた。 
上半身の持ち上がったリザの軍服の前のボタンが弾けて、 
黒いアンダーシャツの大きな胸のシルエットがぷるっと出る。 
「きゃ、やっ」 
「おおっ!!」 
ハクロ少将から小さな歓声があがり、ロイはすこし溜飲が下がった。 
周りから見られて、リザの顔は紅潮しているのが横ろからでも分かる。 
「たのむ。君が孕んでくれれば、私は准将になれる」 
ロイは、大総統らに口の動きを覚られないように気をつけながら、そっと彼女に告げた。 
逆の言い方をすれば、この試験を放棄すればロイの大総統への途は閉ざされるか、 
ずっと昇進は遅いものになるだろう。 
「軍事戦略の一環として、国にとって素晴らしい人材を生み出すことは、 
喜ばしいことだと思わないか?これは君にしか出来ない立派な職務だ。中尉」 
ロイは大総統に聞こえのいい台詞をわざと声に出す。 
それと同時に、服の上から彼女の身体を撫ぜ、腰と脇の銃を奪った。 
 
「……わかりました。大佐。ご協力致します」 
背中で両手を縛られ、ロイに腰と脇の銃を奪われたリザは、背筋を伸ばす。 
背筋を伸ばすと、より胸が強調された。 
「……理解してくれたか?」 
「でも、腕、ほどいてください。 
 大佐がこういった趣味だと噂されるのは、戦場での評価を落としてよくない事だと思いますし、 
 それに……私、もう、抵抗しませんから……」 
リザも小声でロイに囁いた。 
 
浅ましく考えれば、これはこれでいいのではないかとリザは諦めにも似た境地にいた。 
大総統の命とはいえ、別の他の女性ではなくリザを選んでくれたのは単純に嬉しかったし、 
むしろ望んでいたもののほとんどが、少ない代価で簡単に手に入る。 
それに、彼の野望のために何でもしてきた事を考えれば、 
何処かで引き金を引くよりは、ずっと精神的に楽な事だろう。 
ロイもリザも、全然知らない赤の他人ですら、この行為によって命を落とすわけではない。 
「大丈夫です。私……すみません……」 
それなのに、涙が溢れて来るのは何故だろう。 
それはきっと、身体に伝わる体温の所為だわ…… 
と、リザは思った。 
その涙をロイの指が拭う。 
ロイはリザの後ろ手を元に戻し、上着を脱がせ、リザの身体の前に座る。 
 
「ありがとう。中尉」 
ロイは、リザの唇に触れた。 
舌を歯列の間から入れて、舌を絡め、キスを愉しんだ。 
唇をずらし、首筋に向かって黒いハイネックの上から胸をなぞる。 
大きい胸の上の乳首は、服の上からでも分かるくらい起立している。 
ガンベルトとスカートのベルトを外し、ズボンのボタンも外し、 
腕を中に差し入れ様子を窺う。 
薄布の上からをなぞるってみると、 
見られているせいか、リザの下着は既に濡れていた。 
そんな2人の前戯を、将軍達は喉の奥を鳴らして、見守っている。 
 
ハクロの座る傍聴席からは、ほとんど軍服を着たままの男の背中しか見えない。 
「もう少し女の肉体を見せろ!」と、ハクロは心の奥で叫けぶ。 
口に出して言えないのは、彼が小心物だからだ。 
遅い出世のハクロにとってこの試験に立ち会うのは2回目だった。 
基本的に准将に昇格するのはハクロを含めて妻帯者が多いし、 
この試験で昇格をあきらめる者も多い。 
多分ここにロイがのこのことやって来たのは、 
青臭い野心が有り余っているからだろうと彼にも容易に推察されたが、 
――そしてそれはハクロが彼を好きになれない理由の一つだったが―― 
若くして権力を手に入れて派手に遊んでいる若造は、 
実は、見られたくて来たんじゃ無いだろうか。とも邪推出来た。 
ハクロにはロイの冷静さが、自信満々にみえるのだった。 
 
リザ・ホークアイの方は、明らかに嫌がっているのが誰の目からも判断がつく。 
彼女もロイと同じく、軍に入りたての頃からハクロは知っている。 
まだその頃は、女性将校というよりは娘っ子が軍服を着ているという風だったが、 
今は高級感あふれる金髪美人の巨乳巨尻のナイスバディーで、 
外見はハクロの好みによく育ったと感慨深い。 
また、有能で堅い軍人の鑑のような性格だが、組織よりも自分の心に忠実な、 
仕事をする上で一癖も二癖もあるリザは、小物のハクロにとっては 
理解しがたく使いづらい女であることも、彼の心をくすぐった。 
その女が皆の前で無理やり犯されているのを覗いている感覚はたまらない。 
(いや、あの娘も案外、「見られて感じちゃうの」ってな感じかもしれんぞ。 
「わたし、将軍方に見られて凄い濡れ濡れなのぉ……まだ足りないわぁん…… 
 少将殿もご一緒にいかが……」なんつって、今日は素直に言ったりしてな……) 
と衣擦れの音と聞こえてくる女の声から妄想をかきたてる。 
だが、すこしばっかりヤバいかも…… 
ロイがリザのアンダーシャツを脱がし、下着姿の上半身の大きな胸がチラ見えた時、 
ハクロは、その刺激的すぎる肉体に、己の下半身の危機を感じた。 
 
「あ……すみません。気が付かなくて。自分で脱げますから」 
ロイがブラを脱がそうとすると、彼女はそう言って、軍服のズボンも 
軍靴も機能性重視の白い上下の下着も全て脱いだ。 
最後に、靴下止めを外して靴下も脱ぐ。 
薄暗い部屋に、白い裸体が浮かび上がる。 
そこまでさせたかと思うとロイは申し訳なく、軍服の上着を彼女の肩に羽織らせた。 
それがまたいけなかった。 
青い軍服が彼女の白い肌をいっそう際立たせる。 
とにかくエロオヤジ共の視線から彼女の身体を隠そうと斜めにベッドに押し倒した。 
縦に脚を向ければ陰部が見え、頭を向ければ表情が見え、 
横に向ければそれこそ身体全体が見えてしまう。 
最もロイには、身体の全てが見えたが…… 
その勢いにリザは驚いた顔をして、ロイを見上げている。 
「潔い女は嫌いじゃないが、サービスしすぎだよ。もっと自分を大事にしたまえ、中尉」 
「あっ……!」 
彼女をいやらしい目付きでじっと見つめる軍人らを見て、 
リザはやっと事態が飲み込めたらしく、恥ずかしさに顔を赤らめた。 
ロイは金髪を束ねているバレッタを外して、女の髪を下ろす。 
続いて、裸になったリザの胸の突起を舐める。 
「……んっ」 
大きな白い胸は、ロイの手の中でぷにぷにと柔らかく変形する。 
しかし、多少の喘ぎ声は出るものの、リザの大きな瞳はまるで戦場で指示を窺うがごとく、 
ロイの黒い瞳をじっと見つめていた。 
 
左手で屹立し双丘の頂上の突起を弄りながら、右手を下半身に指をやった。 
金色の草が茂る丘から、そっと深いクレバスをなでて、ピンク色の小さな尖ったピークを責める。 
その先の泉からは、多量の愛液が溢れている。 
「……あ……ちょ……っきゃっ……」 
リザの金色の睫毛がフルフルと震える。 
しかし、瞼は閉じない。 
さらに泉に指を進め、潜入しようと試みる。 
既に泉の渕は濡れていてそれは容易に行えたが、奥は狭くロイは違和感を抱いた。 
指の第1関節まで入った箇所が特に狭い。 
「その……君……もしかして?――ヴァージン?」 
先の読めないリザの態度が気になっていたが、ロイはやっとその理由に気がついた。 
「……くっ……い、や……そ、んなこと……大きな声で、聞かないで……ください……」 
リザは小さく首を縦に振った。 
なんてことだ。 
そうと知っていれば、どんな犠牲を払っても、 
いきなりこんなオヤジどもに見せながらやらなかったのに…… 
「どうして?……君、今いくつだと……」 
だがよくよく考えてみれば、当然ロイはそのことに思い当たるべき事だったのかもしれない。 
 
規律と品行方正を重んじる士官学校を繰り上げ卒業し、即イシュヴァール。 
娘として一番良い時代を炎と硝煙と土埃にまみれて過ごし、 
その後そのままロイの部下として、残業も休出も汚れ仕事も辞さず黙々と職務をこなした彼女に、 
男と付き合うような時間も無かっただろうし、だいたいそんなそぶりも露ほどに無かった。 
ロイだって似たようなもので、相当女遊びが激しいように見えるが、それは地位や権力がモテているだけで、 
結局最後に残る物は、いつも錬金術の知的好奇心と軍の出世事だけだった。 
 
「……っ、仕方がなかった……ん、んです……」 
リザが片膝を立てる。 
「……プライベートな事聞いて、すまない」 
ロイは謝る。 
当の本人のリザの思惑はまた別のところにあったのだが、結果として謝罪は正しかった。 
(どうしてって聞かれても……だって……好きな人としたかったのだもの……) 
「……大佐、は、あっ……ぁ……ん……やっぱり、経験ないと…… 
その……嫌です……か?……ふっぁゃん」 
リザは聞く。 
 
確かにロイは、別に『処女とやれば戦場で死なない』といったような処女信仰の信者という訳でもなく、 
どちらかと言うと後腐れのありそうな相手は敬遠していたし、 
今日も出来れば相手に経験があった方がやりやすいと思う。 
だが問題はそこではない。 
「いや、そういうわけではなくて……君はいいのか?」 
「……は、い。大佐の……ん……出世の為、です……ッ」 
リザは頷いた。 
何処からか風が入ってきているのか、レースのカーテンが揺れている。 
 
そんな風に2人が乳繰り合っている間、フォッカー大尉は他の殺戮事に思いを馳せていた。 
実は、彼は大尉に化けた、エンヴィーである。 
ハッキリ言って人類の繁殖計画など退屈だった。 
唯一、小気味よいと思えるのは、綺麗でかわいらしい物が、嫉妬じみた沢山の視線に汚されていることだけだ。 
「だから、今日殺しちまおうぜって言ったのに……」 
エンヴィーは独り言を吐く。 
「しっ!ホムンクルスは不老不死だが彼らはいずれ死ぬ。 
 我々が利益を永久に享受する為には、繁殖させなければならぬだろう。 
それにマスタング君には扉を開ける前に、優秀な遺伝子を残してもらわんとな」 
 隣に大総統として座っているラースが小声で囁いた。 
その台詞は、ラースがまだ出来たての頃、彼らを創造した父に彼が聞いた台詞を彷彿させる。 
「お父様。人間は、どうやって作ればいいの?」 
「それはラストの専門分野だからラストに聞きなさい」 
と父は照れて言い、それでエンヴィーとラースはラストのところに聞きにいった。 
そして…… 
童貞を喪失した。 
嫌な思い出だ。 
そんな色欲ラストも、もうこの世に居ない。 
「人間のトップブリーダーにでもなる気かよ?」 
 
ラストの存在を消した目の前の2人は、春の動物のように絡み合っている。 
男は女の脚と脚の間を犬のように舐め、女も荒い息をはぁはぁとさせながら、 
犬のように甘い声で鳴いている。 
「あれでも軍の士官だろ。 
 ……いっそ、愛憎劇であいつらが殺しあってくれりゃあ万々歳なんだけどね」 
エンヴィーは、2人に関する書類の記録をパラパラとめくった。 
 
そんなエンヴィーを無視して、ラースは大総統として発言をする。 
「ところでハクロ君、後任として、人生の先輩として若人達に何か助言はあるかね?」 
突然大総統に言葉を掛けられて、ハクロは目を白黒させている。 
「彼らの子供らは、彼らの子供であると同時に国家の子供だ。 
 忌憚無く、意見を述べたまえ。ハクロ少将」 
「ええっっと……その、ホークアイ中尉の方が非積極的なんじゃないでしょうか? 
 例えばその……フェラチオとか……」 
その発言に周囲の将軍達は、粗野にどっと笑う。 
立ち上がったハクロの軍服のズボンの前は、ピンと布が張られている。 
ロイもさすがに顔を赤くした。 
フェラチオ云々と言う言葉や行為が、今更この歳で恥ずかしい訳ではない。 
上官の馬鹿さ加減が恥ずかしい。 
お前、フェラチオ言いたいだけなんじゃないか? 
もう勘弁してくれよ……後任の上官が馬鹿だとこっちも馬鹿だと思われる…… 
この質問はこの行為とそれによって生じる子が、いかに国益になりうるかと言う質問であって、 
性行為自体をどうしろという話ではないであろうと。 
 
「なるほど、確かにホークアイ中尉の方が非積極的に見える……」 
しかし、大総統は頷いた。 
「大佐……そのフェラなんとかって……なんでしょうか?」 
どうも自分がいけないと考えているらしく、リザはロイにそっと質問する。 
「それは、ええと……そのつまり、男の方の性器を女の口で行為するというか……」 
じっと説明を求めているリザの視線を手でそらし、ロイはしどろもどろになって説明する。 
「口からでも妊娠するのですか?」 
リザはどうも勘違いしているらしい。 
「いや、口でやる事はその準備というか、なんというか……」 
その説明にリザは不思議そうに小首をかしげて、彼のジッパーを開けて彼自身を取り出した。 
 
それは、大きく起立して脈打っている。 
リザは、男の勃起した陰茎を見るのは初めてだ。 
マグナム銃と称されるには、ちょっと銃身が大きくて太い気がする。 
彼女がその俗語を知ったのはヒューズ准将が結婚した年で、 
『――毎晩、俺のマグナムが火を吹くぜっ』 
と、ハボック相手に猥談をしていたヒューズの言葉を小耳に挟んで、 
『事務方とはいえ、やっぱり男の人ですものね。正直うらやましいです。 
さすがに私もマグナムでは、成績がよくなくて……』 
なんて溜息をついて、大笑いされたことがあった。 
今、考えれば、戦争が終わって、あの頃が一番楽しい時であったのかもしれない。 
『リザちゃんは本当に面白い事言うなあ。だけど好きな男の前以外でそんな事言わない方がいい』 
と亡くなったヒューズ准将は笑いながら嗜め、 
『中尉、この場合のマグナムと言うのはですね……』 
と笑い転げながら、ハボックが意味を教えてくれた。 
そのハボックも、もう軍には居ない。 
 
「ところで……あ、の、こんな大きな物……入るのですか?」 
リザはくすくすと何かを思い出し笑いしながら、ロイに質問する。 
それは、こっちが聞きたいよ…… 
とロイは、ハクロとリザと大総統のボケっぷりに頭を悩ます。 
それに、実際、彼女の陰部は狭く、ロイは少し心配でもあった。 
そんな心配を他所にリザは、少し緊張気味なのであろうか、 
可笑しそうにわらったり悲しそうにしたりしながら、 
ロイのものを唇と舌で舐めていく。 
 
「それと閣下!女性側の感じ方が不十分かもしれません!」 
ホークアイ中尉によるフェラチオを見られて満足なのか、大総統が賛同してくれたことが嬉しいのか 
それともロイとリザが珍しく従った事が嬉しいのかハクロ少将が、さらに発言する。 
ロイはハクロを呪った。 
「そうなのかね、ホークアイ中尉?」 
「……いえ……そんなことは、無いと思います……」 
「では見せたまえ」 
大総統が真面目な顔で聞く。 
「あの……その……」 
リザはさすがに躊躇している。 
彼女のピンク色のそこは、しっかりと濡れて感じている事が一目で分かる状態になっている。 
「……やっ……」 
リザは、ロイに抱きついた。 
「どうしたのかね?見せたまえ」 
大総統は、まるで着弾を受けた傷を見せろとばかりに、優しい声で聞く。 
「御覧になる必要は無いと思います」 
ロイは進言した。 
「だが大事なことだろう?」 
大総統は、にこにこと微笑み、下心など全くなさそうに見える。 
ロイはそれ以上は何も言えない。 
軍内部で大総統の命令は絶対だし、彼が「彼女は十分感じています」というのもどうかと思う。 
「中尉、頼む」 
「……そんな、ことぉ……いやっ」 
そう言いながらも彼女は身体を180度回転させて、両足を開き、大総統らに見せた。 
濡れた彼女の陰部と突起した乳首を持つ大きな胸を見て、将軍達は水をうったように静まり返った。 
 
「……っん……あ……やっ…… 
やっぱり……も……もう駄目。です……許して……ん」 
恥ずかしい場所を見られてリザは、両膝を折り曲げて前を隠そうとする。 
女性なら当然だろうとロイも思う。 
「君しかないんだ。耐えてくれ」 
ロイは、彼女のそこを指先で広げ、リザの耳のピアスの下をそっと噛む。 
その言葉の半分は本当で、半分は嘘だ。 
口先だけの口説き文句というのもあるし、大総統の命令だから仕方がないが、 
何故こんな事をしているのか理解しがたい気分もある。 
更には、有能な彼女には家庭に入るのではなくて、このままずっと部下で居て欲しい気持もある。 
特にハボックが抜けた今、彼女が居なくなるのは、大きな痛手だ。 
かと言って、ロイにはあいにく彼女以上に信頼を置けて優秀な女性の知人がいないのは本当で、 
出来れば准将昇進のこの機会を逃したくもない。 
それに、ロイが彼女を断れば、優秀な彼女には他の男があてがわれるのだろうが、 
准将に昇格しそうな他の非妻帯者の顔を思い浮かべても、ロイより能力の劣る者ばかりで、 
そいつらに彼女をとられるのも嫌なものだとロイは思った。 
ただし、それは恋しい人に対する嫉妬というよりは、家族に対するそれに近い感情かもしれない…… 
ロイは目の前の金色の長い髪を撫でる。 
 
大総統は、さらにリザに質問を続ける。 
「なるほど、感じているらしいな。結構、結構。 
 ところでホークアイ君、君は見られると感じる性質なのかね?」 
「……そうでは……ありません」 
「では何故、感じているのかね?」 
「それは、それは……相手が……大佐なので……」 
「君はロイ・マスタング君を愛していると言いたいのかね?」 
「……は、い……多分……」 
リザは、顔を真っ赤にしてうつむく。 
ロイはまるで他人事のように愛の告白を聞いてしまった。 
また余計な事を……とロイは大総統に憤慨した。 
血の気が引いていくロイを無視して、大総統はリザに再々と質問をしていく。 
 
「ところで、人はどうやって妊娠するか知っているかね?」 
「は、はい……大総統、閣下ァ」 
「ほほう。では君はマスタング君の子が欲しいと思いかね」 
「……は、い」 
リザは懸命に声を絞り出して、大総統の質問に答えている。 
大総統のほうも、試験を受けている側のロイには質問をしてこない。 
どうやらハクロが言った”女性側”と言うこと言葉が気になっているのか、 
それとも、根性ためし……いや、嫌がらせか? 
ロイは、彼女の気持に応えることが出来るかどうかまだわからない時点なのに、 
彼女を出世の道具として今まさに使おうとしている自分に腹が立って仕方が無かった。 
事態は、秘所に2本指を入れてやさしくかきまわしている彼女の裸体を、 
大総統など将軍達に正面に向けている。 
せめて、彼女も初めてだし、出来るだけムードに気を使いたかったのに。 
「ではロイ・マスタング君には、どうしてもらえばいいかね?」 
「だ、大総統、閣下ぁ……でも、そ……そんな……ことっ……、 
いえま……せん……んっ」 
 
しかし、ブラッドレイとしてみれば、別に困らせようとして、彼らに質問をしているわけではなかった。 
彼――ラース――にとって人類は物を喋れる家畜に過ぎない。 
だから繁殖というホムンクルスには永久に理解出来ない行為の感想を知りたいだけなのだ。 
ある意味、この場で一番無垢な存在で、それ故に厄介だった。 
「……あ……の……私に……その……」 
リザは申し分けなさそうに振り向いて、ロイを見つめる。 
「情報伝達は的確で明確な言葉でと。士官学校で習わなかったかね? 
人は言葉を使わねば、分かり合えないだろう」 
「……ん……っ…………あ……の……っください……」 
リザは大総統の質問に答えようと一生懸命口を動かしているが、そこから出る言葉は、 
荒いと息と喘ぎにしかならない。 
「中尉、言えないならいい。私が説明するっ!」 
ロイは無性に腹が立ってきて、リザの背中を抱きしめた。 
一度は大総統の命に従ってしまったものの、もうこんなことは止めようとロイは思った。 
彼女か又は他の女性と普通に交際して、何年後かに准将に上がればいいじゃないか。 
そんなロイの気持に気がついたのかリザは言った。 
「……ちゃんと、言えます。だから……やめないで……」 
「だが、さっきは……」 
「少し恥ずかしかっただけで……大丈夫です。 
 わたし……今日なら……きっと、貴方を准将にしてあげられる…… 
そしたら、大佐は……一生、私に頭があがらないですね……」 
リザは濡れる唇を上げて微笑んだ。 
今まで出会ったどの女より、凄まじい色気と艶を感じる。 
 
「マスタング君。君は部下の教育をなんとしとるか?」 
ハクロ少将がどうせ言えやしないのだろうとやけくそとばかりに皮肉を言う。 
「……大、さ……の、それを……そのマグナムを……わ、私の……中で撃って、くださいっ!」 
日頃煮え湯を飲まされているハクロの言葉が相当しゃくにさわったのか、とうとうリザは叫んだ。 
その彼女らしいと言えば彼女らしい物の言い方に、何人かの老将軍は、これは傑作とばかりに笑いを堪えていて 
何人かの将軍は顔を赤らめ、視線は、いやらしく水音を立てる陰部が丸出しの彼女にそそがれる。 
(誰だ……彼女にそんなおやじくさい俗語を教えた奴はっ!ヒューズか?ハボックか?) 
ロイは正直微妙な気持でその声を聞いた。 
一方、言ってしまった事の重大さやその視線に身体中を赤く熱くして、リザは頭を横に向けている。 
 
「……たい、さ……お願い……」 
時間も押し迫ってきているし、とにかく、彼女をこのままにしとくわけにはいかない。 
「ロイ・マスタング、作戦を遂行いたします」 
「うむ」 
 
「ぃっイ゛ぃぁ゛……ぁあ゛あ゛あ゛っ……ぅ゛っ……っ」 
舌をかまないようにロイは右腕を唇の中に入れて、リザの肉体を伏臥させ、 
後ろから無理やり一気に挿入した。 
今は彼女の顔を見たくない。 
彼女は喉の奥で小さい悲鳴をあげている。 
ロイの腕は案の定、彼女の唇に噛まれた。 
その声が小さくなったところで、手を離し、彼女の腹に手をまわす。 
記録係の事務官のフォッカー大尉が冷静な表情で、時間等を書類に書きこんでいる。 
ハクロ少将は、とうとうリザの表情と声に撃沈したらしく、ロイもリザもその事だけは嬉しかった。 
 
「……ぁん……んっ……ふっ……んっ」 
部屋にはリザの押し殺した喘ぎ声と接合の水音だけが聞こえる。 
異質な時空間だとロイは感じた。 
こんな冷静に、密着した女の腰を機械的に動かしているのも、なんだか非現実的で不思議な気分だ。 
部屋の中で冷静な者は、ロイと大総統と記録係のフォッカー大尉だけで、リザ以外の他の者は、 
もう既に恍惚の表情をしている。 
ではリザはと言うと、彼女は彼女で、いつもの中尉ではない。 
ただ彼女に関しては、偶にロイにかいま見せる女性の部分があって、 
確かにそれだけは今の彼女そのものであった。 
通常状態ではないが興奮状態という訳でも快楽を得ている風でなく、 
ニュートラルに全てをロイにゆだねて、綺麗な金髪と細い腰の背中と胸と尻を柔らかく揺らしている。 
多分、こちらの方が彼女の本質なのだ。とロイは感じていた。 
それは今知った事ではなく、ずっと昔から気がついていた事だった。 
ただそれを彼は否定していただけで…… 
 
こういった場合は、感情に飲み込まれてしまった方が愉しいだろうと、ロイは思う。 
ただし大総統が涼しい顔をしているならば、ロイもそうである必要があるだろうし、そうありたかった。 
――目指すべき場所はあの椅子だ。 
ロイはキング・ブラッドレイを睨んだ。 
 
それからしばらくたって、絶頂感が襲ってきた。 
ちょっと早すぎるかなとロイは思ったが、とにかく彼女の中は狭く、肉壁で彼の生の皮膚を精子 
を吸い上げるように締めつける。 
「……ぃ……ッ……ぁん……やっ……ゃあっ……ぁ」 
リザの方ももう限界のようで、軍服の肩章が激しく上下し、髪と肩紐と裾がベッドに付いた 
り離れたりして震えている。 
身体を支えている両腕はシーツを強く握って、涙がぽたぽたと落ちている。 
彼女には心苦しさでいっぱいなのに、体だけは正直に彼女の肉体に慾情していて、 
ロイは人の業の深さを今更ながら実感していた。 
「不肖ながら、出させていただきます」 
「よし!」 
「……ぃゃぁああっ!……ぅ……んひぁっ……」 
ロイの陰茎は怒張し、リザの膣の一番奥で精子を吐出させた。 
押し殺した悲鳴が静まり返った部屋に響く。 
 
「……ぁあ……ッ……」 
それを抜くと、彼女の陰唇から彼の出した白濁液がトロっと流れてくる。 
支えていたロイの腕が無くなり、リザは崩れ落ちた。 
「よろしい。結果は後日ということになるが」 
「はい。ありがとうございました。准将になりましても誠心誠意お仕えいたします。 
今後もご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」 
ロイはズボンのジッパーを上げ、ベッドから降りて最敬礼する。 
うつろなままのリザも、右手を上げて、かろうじて敬礼だけはした。 
ブラッドレイ大総統は顔色一つ変えず、ロイの肩に手をやって、廊下に去っていく。 
他の将軍達も致し方なく、前屈みで部屋を出ていくしかない。 
特にハクロ少将に至っては、ズボンの前が染みていて失笑をかっていた。 
 
それを敬礼のまま見届けると、ロイは上着だけを肩に羽織ったリザに服を着せようと近づいた。 
「見ないで……」 
リザは、ボタンの取れた青い軍服の左右を握り締めている。 
身体はけだるい雰囲気でベッドの上にへたれこんで、両太ももには、愛液と精液、 
それに血液が流れていたが、 
瞳だけはいつもと同様に、覚悟を決めた意思の堅い光を帯びてロイを見上げている。 
その目に気劣されて、ロイは後ろを向いた。 
「痛くないか?」 
「……はい、大丈夫、です。たいしたことありません」 
「すまない。ちゃんと命令を言わないで君を呼んだのと、君の気持を知らなかった事には謝罪するし、 
今後も責任は必ず取る……それに……こんな時に言うのはズルいと思うだろうが君の事は……」 
「それ以上何も言わないで……惨めになります…… 
 ……知っています。今大佐がおっしゃろうとしてたことが嘘だって事くらい。 
大佐が私に部下以上の気持の無いことは……ずっと前から知ってます。 
それでもよかったんです……」 
嗚咽混じりのリザの声が背中越しに聞こえてくる。 
    
ロイはうつむいた。 
彼女の言う通りだった。 
今言おうとした言葉――ずっと前から愛していたなんて言葉――は、ロイ自身ですら嘘だと思う。 
もし本当にそうならば、彼女はこの場に居なかったはずだ。 
 
「大佐、……絶対、大総統に……大総統に、なってください。 
 亡くなったヒューズ准将や、退役したハボック少尉、 
 それに、多分ここで貴方の部下から脱落して行く私の為にも」 
「ああ、約束しよう」 
 
「それと、銃を返して……ください」 
ロイは自殺されたら困ると、リザの銃を2丁とも持って出ようとしていた。 
実際、女性としては大層な屈辱であっただろうし、第3研究所でロイが敵に死んだと知らされた時、 
リザは戦闘不能になった事もあって、心配していた。 
彼女に対してどういう感情を持っているか今は分からなかったが、 
部下としては大事に思っていたし、もし彼女が子を孕まなくても家族になりたいと思う。 
ただ、もう、副官として『生きる事をあきらめるな』とは言えまい。 
彼女の気持を聞いて凌辱したあとに、なおそんな事を言うのは残酷過ぎる。 
「あ、だが……」 
「大丈夫です。私がここで自らに引き金を引いてしまっては、大佐が准将になれませんから、 
 私、生きます。それがどんなに辛くても、この感情を持った事自体が仕組まれていたことでも 
 ……貴方の為に」 
ロイは銃を後ろ手で放ると、リザをそのまま置いてそのまま部屋を去った。 
何人もの軍人とすれ違い歩く。 
(私は何人の犠牲を出して、上に登っていくのだろうか) 
ふと廊下の窓に目をやると、いつの間にか外には雨が降り出していた。 
 
 
おわり。 
 

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