マリア・ロス少尉はため息をつく。  
あの子供たちの護衛を任されてもう一週間。  
元々中央図書館は文書の保存機構であるため、軍関係者以外の閲覧者もまばらだ。  
分館放火事件の後という事もあって、玄関でできる限りの検閲を行っているためもあるだろう。  
そのお陰か、図書館内は全くの平和で、傷の男の情報も無くすっかり暇をもてあましている。  
人気の無い廊下でもう一度ため息をついた。  
ブロッシュ軍曹が伸びをして立ち上がり、屈伸運動を始めた。  
「何だか暇ですねえ」  
ロスは慌てて背筋を伸ばす。思わずため息をついてしまった。不覚、と頬をパチパチと叩く。  
「…暇なんていうもんじゃないわ、軍曹。どんな非常事態にも備えておかなきゃ…」  
「何云ってんですか少尉。ため息ついてじゃないっすか。だいぶお疲れの様子にみえますけど」  
「あなたこそ何云ってるの。あなたはいつも緊張感が無い。もっとしゃきっとしなさい」  
ロス少尉は部下であるこの軍曹に弱みを見せたことが無かった。  
彼女が若い女にしては比較的早い地位を得たのは、男顔負けの態度と度胸だった。  
軍の人間に、ましてや男に媚びたことなど一度も無い。  
そんなロス少尉の堂々とした物言いに憧れる軍属の若い女性は、決して少なくないのだ。  
当然、部下にも男女関係なく厳しい。  
女には人気があっても、逆に男の部下には女の癖にと影口を叩かれることも多く、そんなことにはもう慣れてきていた。  
そんな中で、彼女より年下のブロッシュは異色の存在であった。  
幾ら叱り付けても、ばつが悪そうににっこりと笑うだけ。たまに褒めれば無邪気に自分にまとわりつく。  
ここへきて初めて、こんな男がいるのだと感じた。憎めない、まるで弟のような存在といってもいい。でも。  
彼はあくまで部下なのだ。ただ、それだけの関係である。そう彼女は思ってきた。  
 
「ロス少尉、またぼーとして」  
「ぼ・・・ぼーとなんかしてないわよ」  
「あ!あれですか。恋の悩み」  
驚いて顔を上げると思いがけなく近くにいたブロッシュ軍曹はへらりと笑う。  
「何云って…!!」  
「いやー、図星っすか。ロス少尉殿、お相手は??」「馬鹿!!」  
しいー、とブロッシュは指を立てる。  
「大声出しちゃいけませんよって」  
「…そ、そりゃそうだけど、あなたがボケたこというからっ」  
「妬けるな」  
ブロッシュがそう呟くのを彼女は確かに聞いた。その声音は笑い交じりではない。  
部下の顔が見れない。いや、冗談かもしれない。きっといつもの冗談だ。  
「…そんなおべっか、私なんかに云っても何もでないわよ。さ、護衛を続けるわよ、位置に戻って」  
しかしブロッシュは動かない。「おべっかじゃないです」  
その犬のような目を見てしまうと、ロスは動揺する気持ちとは別に急に怒りが込み上げてきた。  
「いい加減にして」  
ふいとそっぽを向いて立ち上がった。ともかくもこの気持ちを落ち着かせよう。  
年下の男に、こんなこといわれてドキドキするようじゃ私もまだまだかもしれない。  
彼女が歩き出したその時、手首を掴まれる。  
「おれじゃ、だめですか」  
そしてそのまま、ロスは反転するように壁に押し付けられる。その意外な力強さと、余りの事に彼女はしばらく動けなかった。  
「やめて」「上官命令でもやめませんから」  
ブロッシュ軍曹は本気のようだ。その表情はいつもの力の抜けた笑みもなく、むしろ逞しささえ湛えている。  
「自分のしていることわかってるの?」「好きな女性へ、思いを遂げようとしてます」  
「わ、わたしはそんなつもりじゃないわ。しかもこんなとこで…」  
「ここじゃなかったらいいんですか?」  
 
「っ…いくらここが図書館の最奥部だからといって、部屋にはあの子達だっているのよ!」  
「ならば少尉が声を出さないでください」  
そういいながらブロッシュはロスへキスをする。舌先がロス少尉の唇をなぞり、ゆっくりと開かそうとした。  
ロスは硬くなってどうにかそれを拒もうとする。このまま感情に押し流されてはいけないのだ。自分は上司だ。  
その瞬間、職権を乱用した淫乱め、と上層部の男たちから罵られる自分を想像した。  
結構カルかったよ、なんて語っている軍曹。捨てられた自分、嘲笑される自分。  
そう、まさか、この部下が年上で男勝りの自分を好いてくれているわけが無いのだ。  
こういうことをどこかで期待していた過去の甘い自分を呪った。  
「わ、わ、私は年下の部下となんか、まっぴらだから!」  
そう云って、ロスはもがいた。唇を離したブロッシュは哀しそうに俯く。  
彼だって苦しかった。だから、いつだってはぐらかして、明るく振舞っていた。  
「じゃあ」  
だから、ここまでしてしまった責任は自分で取らなければいけない。  
「ほんとにまっぴらって思うか、確かめさせてください」  
再び口付けをする。ありったけの想いを込めて。  
しばらくそのままでいるとロスの体からすっと力が抜ける。今度は拒まれなかった。  
それが受け入れてくれた証なのか、諦めなのかブロッシュは知りたくなかった。  
溶け合うように舌を絡ませあう。ちゅ、くちゅ、と音が漏れた。  
捏ねるような動きを何度も繰り返し、ブロッシュは顔を離した。  
「…はぁ…」  
やっと熱烈なキスから開放されてロスはずるずると床に座り込む。  
こんな感覚は何年ぶりだろう。ずっと、こんなことは無かった。  
溺れてしまいたい、という気持ちが勝ってしまったのだ。  
 
彼女の息が落ち着くのを待って、ブロッシュはロスを抱え、護衛待機用の椅子に座らせる。  
そして優しく軍服の上着のボタンを外し始めた。  
「…え、軍曹、ここで?」  
正直、キスだけだと思っていた。ロスは年の割りにウブなのだ。  
「オレさっきいいました。ここで、思いを遂げさせてください」  
ブロッシュはロスにかまわずボタンを外した上着を開く。その下には彼女らしい男物の白いTシャツ。  
しかし、彼女の豊満な胸のためにTシャツはピンとはりつめ、余計に色気が匂った。  
「こんなシャツ着て…気付いてないんですか、少尉殿…」  
その両胸を軍曹は大きな掌で優しく揉みあげはじめた。  
「やっ…な、な、何、を…?」  
動揺しっぱなしのロス少尉は動けずブロッシュ軍曹の為すがままとなっている。  
「あ、…、ん…!!!」  
「貴方が、どんなに男らしくても、男らしく振舞っても、貴方の色香は余計増すだけなんですよ」  
そして、様々な男たちがロスを犯そうと画策する。勝気な彼女が、犯す男たちに哀願し異常な欲求に答える淫靡な妄想が語られる。  
それは総じて画策と妄想に終わり、酒の席でのお遊びになるのだが、ブロッシュはそんなことで憂さを晴らす上司にも同輩にも吐き気がした。  
そして何より、一人になってそれを思い出して、乱れるロスを想像し、自身を慰める自分に一番吐き気がした。  
ただ、自分だけの上司であってほしい。いや、女性であってほしい。  
思わず、胸を揉む手が強くなる。  
「あ、やめ、声が…」  
隣の子供たちに気付かれまいと声を必死にこらえる彼女。ショートの髪が頬に乱れている。  
ブロッシュは想いが暴走しそうになるのをなんとかこらえながらTシャツをめくり上げ、スポーツブラを無理やり上に引き上げる。  
「あっ」  
ぷるん、と乳房が溢れる。外気に晒された白い膨らみとその頂点を飾る桜色を見て、ブロッシュは貪るように吸い付いた。  
「やあ、…、んっ…、ほん、と、聞こえ、るう…!」  
「彼らは呼んでも出てこないですよ。本を読んでる時は何も聞こえないって」  
次第に勃ってくる小さな乳首を噛みあげ、右胸の乳輪を円を描くように執拗に擦る。  
「…きゃ、…!そん、なあ…っ」  
ブロッシュの金髪を、小刻みに震えるロスがくしゃりと掴む。  
ものすごく感じてしまう。この年下の男のなすがままに。  
 
ふと悪戯を思いついたブロッシュは両乳首を摘みあげて思い切り揺さぶってみる。  
ぶるんぶるんと、青い軍服の中で剥き出された、ひたすら白い乳房が跳ねた。  
「ひゃあっ、っ…だめ、そ、そんな、つよく、摘まないで…!!」  
「そうですか?こんなに勃ってるのに…。―でも、ほら、ここは…」  
「やあ!!」  
胸から片手を滑らし、いつの間にか外されているベルトから下腹部へとブロッシュの指が伸びる。  
「濡れてる」  
くちゅ、くちゅ、と水音が廊下に響く。  
自分が漏らす声よりも、その音が何より卑猥に聞こえロスは思わず恥ずかしさに裸の胸を覆った。  
「駄目です、ちゃんと見せてください」  
しかし、ブロッシュに阻まれる。そして油断した拍子にズボンと下着を引き降ろされた。  
「そんな、やめ、こんな明るいのに!」  
「よく見たいんです。少尉の何もかも」  
椅子に座ったまま足を思い切りぐい、と開かされる。  
「本当に、やめて、恥ずかしい」  
向かいは窓だ。こんな日のもとに一番恥ずかしい部分を晒されれば、どうかなってしまう。  
「お願いブロッシュ。私、こんなの…したことないの」  
「え?」  
「だから、そんなとこ、誰かにじっくりなんて見せたこと無いの。許して」  
数少ない彼女の経験。相手にこんな危険でいやらしいなことなどさせてこなかった。  
ブロッシュはそんな恥じらいを持つ彼女がたまらなくいとおしくなる。  
「じゃあ」  
云い終えて真っ赤になるロスを注視していたブロッシュは、ロスの太ももにぐっと力を込めた。  
「じゃあ、オレだけにみせてください」  
そういって、腿をぐっと持ち上げ、顔を彼女自身に埋めた。  
「や、ぐんそ…、!!!!!!」  
押し込まれた舌先がロスを翻弄する。いじり、もてあそぶ。  
「…溢れてます」  
「…、あっ、あ、ぁ…。―!」  
一番敏感な彼女の部分を吸い上げ、捲り、転がす。身を襲い止まらない快感に、ロスは声も出せない。  
椅子からロスの愛液が滴る。ブロッシュは口を拭った。もうそろそろ、我慢ができない。  
 
朦朧とするロスを立たすと壁に手をつかせる。そして後ろから抱きしめた。  
「ブロッシュ…私」  
「こんな形になってごめんなさい。でも」  
彼女に自身をあてがい、ゆっくりと埋めていく。  
「…あ!!!」  
ぐ、ぐ、と押し込める度にロスが体中を引き攣らせる。その細い腰を掴み、ブロッシュはつぶやく。  
「…少尉のことが好きです…」  
全てが収まると、次は激しく突き動かされ始める。ぐい、ぐいと体の最奥を突き上げられる感覚。  
ロスは声を殺そうと脱ぎかけの軍服を噛みながら必死でブロッシュの動きについていこうとする。  
「…、あ…!くっ、…んうっ」  
甘い喘ぎがそれでも漏れる。揺れる乳房をブロッシュに揉みしだかれ、ますます声音が高まる。  
「…ぶろ、シュ、だめえ…、ん、こんなの、あっ、こんなの…」  
ロスにとってははじめての快楽の境地だった。  
こんな背徳な状況も、そして自分の中でブロッシュの自身がどんどん膨らんでいく感覚も。  
溢れて溢れて止まらない自分も。  
「うう、…オレの、こと、…デニーって、呼んでくださいっ」  
「んんうっ!…デ、デニー…、私も…」  
ブロッシュの汗が自分の背に落ちるのでさえ、ロスは跳ねるようにして感じる。  
これは、体も、そして心も感じているのだ。ずっと、押し込めていた。プライドで見ようとしなかった。  
「デニー…好き、なの…、ん、ずっと、…ずっと、こう、して、ほしかったのは私、っ!」  
ブロッシュは一瞬動きを止める。  
「少尉…」  
「…やめな、で、やめないで…このまま、イカして…」  
「少尉!」  
「名前、で、よんで、…ひゃあ!!」  
夢中でブロッシュは彼女に腰を叩きつける。それに合わせてびくびくとロスの内側が震えた。  
「マリア…!!」  
この想いから、逃げたいのは自分だけではかなったことをお互い悟ったのだ。  
 
「デ、ニ、だ、めえ、…」  
「ああ、ううっ」  
彼女の締めつけに思わず達したブロッシュは慌てて白濁したものをロスの背に出す。とたんにロスは崩れ落ちた。  
「デニー…」  
暖かい、その体液が背を伝うのを心から愛しいと、ロスは思った。  
 
 
 
 
ここはその内側の部屋。  
「なんかさ、外で猫ないてない?」  
「……アルの気のせいだろ」  
「ねえ兄さん、僕ちょっと見てくるよ」  
「…うん」  
「…でも、図書館にいるわけないよね、猫…」  
「…うん」  
「…まあいいか、猫いたらあの二人が何とかしてくれるよね」  
「…うん」  
「…」「…」  
幼い二人は、大人たちの秘密など、まだ知らない。  
 

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