「Trick or Treat!」
賑やかな広場には様々な仮装をした子供達が、お菓子を強請って歩いている。
本日10月31日はハロウィン。
玄関先にはカボチャのランタンが並び、お祭りの雰囲気が漂っているのだが
それを眺めつつ帰宅するロイ・マスタングは、寂しい一人暮らし。
生憎、例の台詞を言ってくれそうな子供は、親友の娘くらいだが
遠く離れているため無理だろう。
自宅に入りドアを閉めれば、先程の街の喧噪が嘘のようで、気に入りの
錬金術研究文献を読みあさっていると普段通りの時間が過ぎる。
「私も年を取ったということか…」
不意に口から出た言葉に驚いていると玄関から来訪者を知らせる音が聞こえてきた。
面倒くさげに扉を開けると黒のとんがり帽子を深く被った魔女っ娘が箒片手に佇んでいて
下を向いて顔を隠していても、ロイには誰だかわかっている。
「Trick or Treat!」
お菓子か悪戯かとお決まりの台詞を言うのは、世界で一番好きな人。
お互い仕事の都合で居場所を譲れず、遠距離恋愛中のウィンリィ・ロックベルだ。
彼の好みに合わせたのか、黒の魔女衣装はミニスカで更に片方だけスリットが入っている。
「魅力的な格好だね。久しぶりに会えて嬉しいよ」
喜びを隠せないロイは、彼女を抱きしめようと手を広げるが「メッ!」と一喝されてしまう。
「もう、人の話聞いてないの?あたしが言った台詞は?」
「…Trick or Treat?しかし困ったな。我が家には菓子類を置いていないのだよ」
「じゃあ、悪戯決定〜!」
急にロイの胸倉を掴むとグイッと引き寄せて、唇にキスするウィンリィ。
いつもリードするのは彼氏の方だったので、驚いていると舌まで入れてくる。
その上には何かが乗っていて、少女の口から青年の方へ甘い固まりが移動した。
すっきりとした甘さのそれは、洋梨のキャンディ。
「へへへ〜あなたも言ったでしょ? 「Trick or Treat」って、だから
お菓子をあげたのよ。嬉しい?」
屈託なく笑う彼女に自然と癒されてしまっている自分を感じて、顔が綻ぶ。
穏やかな場所で育ったおかげなのか。優しい人々に育まれたからなのか。
いつも少女の存在は、孤独な男を救い出してくれる。
だからロイは心和ませてくれるウィンリィを愛しているのだ。
今度こそしっかりと抱きしめると彼女の手から箒が落ち、カタンと転がったが気にせずに
抱きしめ合う。
「君がいるだけで幸せだよ」
「あたしも…」
見下ろす彼と見上げる彼女、どちらともなく距離が近づいていき0(ゼロ)になる。
触れるだけの口づけから唇の形を辿るように舐めるようになり、口内を縦横無尽に
動き回る舌の愛撫によってウィンリィの体から力が抜けてしまうような接吻へと変化していく。
「…ふぅん、ふ…っ」
「今夜は君の魔法で狼男に変身することにしよう。
覚悟しておきたまえ、煽ったのは私の可愛い魔女なんだからね?」
ろくな抵抗がないのを良いことに大きな手は、パックリと大胆に開いたスリットから侵入していく。
魔女に扮装した少女は、真性狼男にたべられちゃいました。
今日は、化け物達が集う日だからお気をつけて。
終わり