*紅蓮の華*  
 
ある晴れた空。  
涼やかな風が薫る丘。  
まさに、突き抜けるような青空とは、この事を言うのかもしれない。  
 
その丘に、青い軍服の青年が一人。  
その眼前には、真新しい墓がひとつ。  
墓に刻まれた名前は・・  
「Mars-Hughes」。  
青年の親友の名前。  
 
青年の名は。  
 
ロイ・マスタング。  
 
「・・殉職で二階級特進・・・  
『ヒューズ准将』・・か・・・・・  
私の下について助力すると言った奴が私より上に行ってどうするんだ。  
・・・・・馬鹿者が・・・・・・・・」  
親友が下に眠る墓に悪態をつく彼の表情は、寂し気だった。  
「・・大佐」  
後ろから、ロイと同じ色の軍服を着た女性が話し掛けて来た。  
「風が出て冷えて来ましたよ。  
・・まだお戻りにならないのですか?」  
リザ・ホークアイ。  
階級は中尉。ロイの側近であり・・  
「・・・まったく錬金術師ってのはいやな生き物だな。中尉」  
「え・・」  
「今・・・頭の中で人体練成の理論を必死になって組み立てている自分がいるんだよ。  
・・・あの子らが母親を練成しようとした気持ちが今ならわかる気がするよ」  
穏やかな眼。  
リザの眼には、その穏やかさの中にも、深い悲しみが交差して見えた。  
「・・・・・・・・大丈夫ですか?」  
「・・大丈夫だ」  
嘘。  
リザはハッキリとそう思った。  
 
彼が本当は誰よりも繊細で、誰よりも優しい男である事は、自分が誰よりもよく知っている筈。  
彼はそんな自分自身に叱咤しているのを、リザは感じ取っていた。  
「・・・・・・・いかん。  
雨が降って来たな」  
「雨なんて降って・・・・・  
・・・・・!!」  
リザは、ハッとした。  
確かに、ロイの心には雨が降っていた。  
それは形となって、ロイの瞳から溢れ落ちていった。  
「いや・・  
雨だよ」  
それを見た瞬間、リザの心にも雨が降り落ちたような気持ちになった。  
「・・・・・・・・そうですね。  
戻りましょう。  
ここは・・・・・・・冷えます。」  
 
 
20年前の出来事。 
「父さん! 母さん!!」  
ひとりの少年の両親が、ひとりの軍人に撃ち殺された。  
 
『スパイ容疑』  
 
それが動機であった。  
誰もが信じられなかった。  
少年の父親は厳格だが、とても誠実な人物だったからだ。  
母も身体は弱い方だったが優しく、母の歌う「マザーグース」は、少年のみならず、  
近所の子供達の共通の子守唄になっていた。  
それだから周りの人々は父を羨望の眼差しで見ていたし、少年自身にとっても憧れであり尊敬だった。  
 
それが。なぜ。どうして。  
 
そして、少年は。  
復讐を誓った。  
 
ロイ・マスタング。この時8歳であった。  
 
 
ロイはリザに連れられ、予約しておいた上層階級用の軍宿泊施設に着いた。  
「・・すまない。気を使わせてしまったな・・・」  
「大佐・・お疲れでしょう。  
今・・・コーヒーを・・・・・・!」  
突然、ロイがリザを背中の方から抱き締めて来た。  
「た、大・・・・」  
「・・・・・・・・・『リザ』・・・」  
ロイがいつもの「中尉」ではなく、名前の「リザ」と呼んで来た。  
それは二人だけの暗号。肌を重ねるときの、暗黙の合い言葉。  
「リザ。」  
「・・・・・・・『ロイ』・・」  
ロイがリザを自分の方に振り向かせた。  
そして互いに何も言わず、口付けを交わした。  
「・・・ん・・・・・」  
「・・・・・・・・・」  
リザは、正直戸惑っていた。  
彼に抱かれるのは、初めてではない。  
キスのタイミングも、彼の唾液の味も、何もかもいつもと変わらない。  
だが、何故なのだろう。  
何故今の彼は、こうも脆く見えてしまうのか。  
まるで海辺に作った、砂の城。  
波に揉まれて脆く崩れてしまう哀しいオブジェ。  
 
 
復讐を心に秘めた少年時代のロイの向かった先は、スラム街であった。  
そこでチンピラやゴロツキ共と喧嘩した。  
目的はただ一つ。  
強くなる事。  
時々スラム街を拠点にしている大人のギャングにコテンパンにのされる事もあったが、  
元々父に武道を教わっていたロイは、貧民街の荒波に飲まれて、メキメキと強くなっていった。  
犯罪にも手を染めた。  
恐喝。傷害。強盗。やっていない犯罪は殺人だけ。決してドジを踏む事もなく大人のチンピラヤクザでさえ少年時代のロイを恐れた。  
そして、そんな日々の中も、彼は街の図書館に通って必死に勉強をした。  
父が趣味で学んでいた「錬金術」を学ぶ為。  
この力を、己の武器に変えられないだろうか。  
彼の脳は、どんどん知識を吸収し、眼をつぶっても練成陣を書けるようにまでなった。  
だが、彼の青春時代は、全て両親の復讐の為に捧げていった。  
 
そして、10年の歳月が過ぎていった・・・・・・。  
 
 
ロイはキスをしながら自分の上着を脱ぎ、リザの上着をも脱がしていった。  
「・・・んっ!」  
ごとり、と鈍い音がした。  
リザの上着に入っている拳銃が、上着と共に床に落ちた音。  
だがそんな事はおかまいなしに、ロイは彼女の首筋を骨伝いに舌でなぞっていく。  
「・・・ぁ・・・」  
リザの口から思わず声が漏れる。  
「・・・・・まだ始まったばかりだよ。  
感じやすくなったものだな。リザ」  
「そ・・・それは大佐が・・・」  
「『ロイ』だ。リザ。」  
「ロ、ロイが・・・・・・その・・いつも・・・  
っひゃん!」  
ロイがいきなり、シャツ越しに左の胸を揉み出した。  
「その声、まさか私以外に聞かせた事はあるまいね。  
・・まぁ君に限ってそんな事はないと思うが・・・な」  
「ふぅ・・・  
あ、貴方と一緒にしないで下さい・・」  
リザの言葉に、ロイは少し微笑んだ。  
「・・そうだな」  
 
 
ロイ・マスタングは18歳となった。  
最早彼はこのイーストシティの貧民街にとって、無冠の帝王とでも言うべき存在になっていた。  
そしてその右手には、赤い紋章の描かれた手袋。  
数年前彼は、錬金術の実験中、発火布を使った実験で偶然焔を生み出す事が出来た。  
そしてこれで手袋を作り、自分の意志で自在に焔を出せる術を得ようとした。  
幾多の失敗と幾多の努力の末、彼は自在に焔を操れるようになった。  
 
そして、表通りの街を歩いていた彼の眼に、一枚のポスターが。  
 
『第○回・国家錬金術師試験開催  
開催地・中央(セントラル)軍本部』  
 
彼の脳裏に、十年前の悪夢が蘇った。  
怒りが心の底から込み上げて来た。  
歯で下唇を噛んだ。  
拳を血が吹き出すぐらい握った。  
 
彼は直ぐさま駅に向かい、セントラル行きの列車に飛び乗った。
 
 
 
ロイはリザをベッドにいざなうと、改めて彼女のシャツとロングスカートに手を掛けた。  
下着も剥ぎ取り、次第にリザの白くきめ細かい肌が露になっていく。  
「奇麗だよ。リザ・・」  
聞きなれた台詞。  
だがこういうときに言われると、恥ずかしくも妙に嬉しい気持ちになってしまうのは、女の性なのであろうか。  
「あ、あんまり・・見つめないで下さい・・・」  
リザは頬を赤く染めながらそっぽを向いてしまう。  
「いや・・本当に、奇麗だ。」  
彼は真顔で言う。  
見ると彼の身体は、自分とは対照的に傷だらけ。  
彼に何度か抱かれて知っているつもりではあったが、  
改めて見ると、こんなにあったのかと思うほどのものである。  
「リザ・・・愛してるよ」  
これが本気なのか、いつも女を口説いているときの演技なのかは、リザには分からなかった。  
そして、ロイは彼女の髪止めを取ると、そのまま後頭部を手で押さえながら再びキスをした。  
「・・! ふっ、ん、んん・・・・」  
さっきよりも濃厚な口付け。  
その甘い感触に、彼女の知的な顔立ちが、少しずつ只の女のそれへと変わっていった。  
 
 
セントラルの軍本部には、軍の入隊希望の若者や、全国から集まった一癖も二癖もある錬金術師たちがぞろめきあっていた  
「さー番号順に並んで! ならべって!! ならべらぁぁぁぁぁ!!」  
その中には当然、ロイの姿もある。  
ロイの気分は、不思議と落ち着いている。  
もうすぐだ。もうすぐ「あいつ」を・・・・  
(俺は、国家錬金術師になんぞなれんだろうな)  
そう思っていた。  
当然だろう。「あいつ」の顔を見たら即座に殺す。  
殺すに違いない。俺は・・・・・・・  
「!!」  
そのとき、ロイに何者かが勢い良くぶつかって来た。  
「ってぇ! す、すまねぇ。よそ見しちまってたもんで・・・・・」  
ロイと同い年ぐらいの青年である。今年の軍士官学校の受験生だろうか。  
「・・っと・・あ、あれ? メガネどこ行った?」  
青年は、ぶつかった拍子に落としたであろうメガネを必死に探していた。  
見ると、それはロイの足下に落ちている。  
「・・ここだ。もうよそ見するなよ」  
ロイはそのメガネを拾い、青年に渡してやった。  
「あっ! す、すまねーな・・ お前さん、今年の国家錬金術師の試験受けに来たのか?」  
「・・ああ」  
「まぁ国家錬金術師と言っても・・・・やる事は軍人とあんまり変わらねぇそうだからな・・・」  
「・・そうか」  
「・・っと。自己紹介がまだだったな。俺ゃあヒューズ。マース・ヒューズだ。」  
「・・ロイ・マスタングだ」  
「ま、お前さんも頑張れよ。・・いっけね! 試験始まっちまう! じゃな!!」  
マースはロイに軽く敬礼すると一目散に試験会場へ去って行った。
 
 
 
「くっ・・ふっ、・・んん・・・!」  
ロイの指が蟻のように、リザの頚椎のあたりをなぞっていく。  
その蟻は頸から背中へ。背中から腰へと移動してゆく。  
「ふぁ、ロ、ロイ・・・・っひゃん!」  
もう片方の手で、リザの乳房を揉みながら指でゆっくりと摘む。  
ゆっくりと。焦らしながら。  
「そ、そんな・・・・そんなに・・焦らさ・・ふぁ!」  
「・・・何だ? もっと激しいのがいいのかい?」  
「そ、そういう訳では・・・・」  
「じゃあどういう訳なのかな・・・? リザ」  
ロイの手の動きが、急に荒っぽくなった。  
いつの間にか手は、腰からリザの熱く湿った秘部へと移動している。  
「っひっ・・・! い、意地悪・・しないで下さい・・・」  
リザは瞳を潤ませて懇願する。  
普段からは想像もできないこの女性の姿に、ロイはブルリとするような快感を感じた。  
「ダメだね。そんな顔されたらもっといじめてやりたくなった。」  
ロイが、リザの秘部に指を入れ始めた。  
「っ! あ、あう、ふあ!」  
抜き挿しのペースが、どんどん早くなっていく。  
・・と、思ったら動きを止める。  
それの繰り返し。  
 
 
遂に、ロイの番になった。  
「試験番号18番、ロイ・マスタング入ります・・」  
試験会場は、万事に広い作りになっていた。  
左右に軍上層部の人間達や、政府の高官までいる。そして真ん中に、隻眼の軍人が座っている。  
(・・・・違う。あの男じゃない・・・・・・・・)  
ロイは、「あいつ」の姿を探した。  
立っている正面には、いない。だが必ずいるはずだ。「あいつ」が。  
隻眼の男が、ファイルを見ながらロイに話し始めた。  
「・・・・・筆記試験、精神鑑定共に主席。大したものだな。  
この実技試験に合格すれば君は晴れて国家錬金術師だ。・・頑張ってくれたまえ」  
「・・・・・・・・・その前に・・」  
「? 何かね?トイレならドアを出て突き当たって右だが。今なら認めてやるぞ」  
「その前に、皆さんに昔話をさせてくれませんか」  
あたりがたちまちざわめき始めた。  
「ふ・・ふざけるな! 試験中に!」  
「そうだそうだ! つまみ出せ!!」  
二人の屈強な軍人がロイに掴み掛かろうとしたその時。  
「待ていッッッッ!」  
隻眼の男の、怒号が響いた。  
二人の軍人は、気落とされながら慌てて身を引いた。  
「話してみるが良い。」  
「ちゅ・・中将?」  
「筆記試験ではわからん事もある。その後に実技さえやってもらえば何の問題もない」  
「・・中将・・・・・」  
「・・・・・さぁ、話すが良い。なるべく時間を掛けずにな」
 
 
 
「ン、はぁっ! ア、ロ、ロイ・・ひゃうん!」  
リザの口からあられもない嬌声が響く。  
自分だけが知る彼女の感じている顔。声。肢体。  
ロイは改めて興奮し直す。  
「・・・あ、あ・・・ロイ・・私、わたし・・・もう・・」  
「もう・・・・・何かね?」  
リザは真っ赤になりながらも唇を震わせながら懇願する。  
「そ、その・・・ロイの・・・・『それ』で・・  
あ、愛して・・・下さい。いつもの・・・ように・・・!」  
「よく言えたね。リザ・・・・」  
ズブッ!  
「!!」  
ロイが濡れきったリザの秘部に、自分の逸物をバックから一気にねじ込んだ。  
「あ、あ・・・・うあ・・・・」  
「・・くっ、相変わらず君のここは締め付けてくるな・・・まだ全部入っていないぞ」  
「そ、そんな事・・・わからな・・・・きゃ、ふぅ!」  
どうやら全部入ったようだ。  
リザの秘部に例え様のない圧迫感が襲う。  
「う・・・あ・・・ロイ・・・」  
それは恐怖からではない。なんとも言えない心地よさと安心感から来るもの。  
これは初めて彼に抱かれ、「女」になったときから変わらない気持ちであった。  
 
 
隻眼の軍人の許しを得た後、ロイは沸々と語り始めた。  
「・・昔むかし・・・イーストシティの街に・・・とても仲の良い家族がいました。  
暮らしは豊かと言う訳でもありませんでしたが・・その家の息子は優しい父と母に囲まれて幸せでした」  
ロイは語りながら歩き始めた。  
「あいつ」を見つける為に。  
「でもある日、その幸せが一瞬にして砕かれたのです・・  
ある一人の男に、父と母が撃たれて殺されたのです」  
辺りはシンと静まり返っていた。  
中でも隻眼の軍人は一番真剣にロイを見つめている。  
「(・・・あの動き・・・・まるで何かを探しているような・・・  
それに・・・・彼の名字「マスタング」・・・・・・  
・・・・はっ!! 「マスタング」・・・! まさか、あの・・!!)」  
話しているうちに、ロイは「あいつ」を見つけた。  
耳をほじりながらふんぞり返って座っている。  
「その息子は敵を捜しました。10年以上かけて捜しまわりました。  
そしてそれを今ここに・・・・・・」  
ロイが、手袋をはめている右手をポケットから出した。  
「・・・!(む・・・・発火布!)」  
「見つけたのです」  
ボンッッッ!  
ロイが指を鳴らすと、たちまちロイの足下から焔が吹き出し、小さな爆発を起こした。  
同時に白い煙が辺りを覆う。  
「くっ・・・! 焔を練成しおった!!」  
「・・はっ! 彼がいないぞ!?」  
ロイは煙に隠れて、「あいつ」の目の前に来ていた。  
「It is a long time. Mr,Philip  
(お久しぶりです。Mr.フィリップ)」  
 
その爆音は隣の試験会場にまで聞こえており、試験が一旦中断になっていた。  
当然、見に来たヤジウマの中に、マース・ヒューズの姿もある。  
「ちょっ、ちょっと俺にも見せてくれ・・・・あっ!!」  
マースは我が目を疑った。さっき別れた青年が軍人の胸ぐらを掴んでいるのである。  
「あ、あいつ・・最初からこれが目的だったのか?」  
「It comes and is whom you!?  
(なっ、き、貴様何者だ!?)」  
「You... Don`t you remember my thing?  
(あんた・・・俺の事を覚えていないのですか?)」  
フィリップは胸ぐらを掴まれながらも、不適な笑みを浮かべた。  
「It does not know. You etc!  
(し、知らんな貴様など!)」  
どうやら本当に覚えていないようだ。フィリップの態度にロイの脳裏に改めて怒りの感情が芽生えた。  
「(こんな・・・・・こんな奴の為に・・・・俺は・・・・  
俺は!!)」  
掴む手に力がこもった。ロイはその片手一本でフィリップの寸胴な身体を持ち上げた。  
「・・お前のでっちあげた罪で殺された俺の父と母の分だ!」  
「What is carried out!  
(な、何をする!)」  
「あ! あいつまさか・・・・・!」  
そしてもう片方の腕を思いっきり振りかぶった。  
「ありがたくちょーだい」  
「・・・ヒッ!」  
「しゃがれ!!」  
次の瞬間、ロイの拳がフィリップの顔面にめり込んだ。  
「ああっ!!」  
「や、やりやがった・・・・・!!」
 
 
 
「あっ! ふ、ンア、アアア、アアゥ、ファ!」  
ベッドが軋む。  
ロイが動く度にリザの喘ぎ声が加速する。  
飛び散る液体もリザの愛液なのかロイの汗なのか分からなくなっていた。  
いつの頃からなのだろうか。彼女が彼のこの激しい抱き方に心地よさを覚えてしまっていたのは。  
このときの彼女はゾクリとするぐらい女らしい。  
ブルリとするような快感が再びロイを刺激し、それが動きに反映されていく。  
「ファ、ひっ! ロ、ロイ・・私・・・・わたしもう、耐えられ・・」  
「ああ、いいよ・・・私も、限界だよ・・・!」  
ロイがリザを向き合わせ、最後のスパートをかけた。  
こうして見るリザの顔は、改めて見ても美しい。  
ロイはその唇にキスを交わすと、抽送の動きをこれ以上ないと言うぐらい激しくした。  
「う、うあ、ひぃっ!   
ロイ、わたし、アフッ! イ、イく、イってしまいます・・・!」  
「くっ・・・そ、そうだな・・膣で・・いいか・・・?」  
「あ、ハ、ハイ、下さい、いっぱい・・・・!  
ンア、フゥ、アァーーーーーーーーーーーーー・・!」  
リザが背中を反り返しながら絶頂に達した。  
同時に膣の締め付けも最高度に達し、ロイも彼女の膣にありったけの欲望をぶちまけた。  
 
そして、二人はいつの間にか眠ってしまっていた。  
 
 
「フィ、フィリップ大佐に・・・・・!  
な、なんと言う事を・・・・・!」  
そのフィリップは、ロイの拳一閃で壁までふっ飛び、気絶してしまっていた。  
「Mr,Philip.  
My father and mother`s loan which Were killed by returned.  
(Mr.フィリップ。あんたに殺された父と母の借りは返したぜ)」  
しばらく、声も出なかった。  
やっと、一人の軍人が慌てて護衛の屈強の軍人達に命令する。  
「な、なにをやっている! さっさと取り押さえろ!」  
「い、いや、殺せ! 撃ち殺せ!!」  
呆然としていた護衛の軍人が、懐から拳銃を抜いて慌ててロイの方に向かって来た。  
「こ、小僧!!」  
「あっ、危ねぇ!!」  
「・・フッ。逃げも隠れもしないぜ」  
その時、隻眼の軍人が護衛の間を割って、ロイの目の前に来た。  
「ちゅ、中将!」  
「はっ!!」  
その形相は、まるで東洋の「鬼」とかいう悪魔のようであった。  
その顔にロイも護衛も、一瞬ゾッとした。  
ゴシャアッッ!  
次の瞬間、隻眼の男の拳が、ロイの顔面を直撃した。  
 
「うっ・・・・!」  
ロイは気付いたとき、どこかの部屋のソファーに寝かされていた。  
「気が付いたか。ロイ・マスタング」  
向かい合ったソファーには、先程自分を殴った男が座っていた。  
「あ、あんた・・・・どうして俺を助けた・・・」  
そう。彼に殴られはしたのだが、結果的にはロイは彼に助けられたのだ。  
「才能ある人間を殺すのは惜しいからな・・それだけの事だ。  
ああ、それとフィリップの事だが・・・彼は任せておけ。  
どうせ叩けばホコリ(スキャンダルのこと)がいくらでも出てくる。そういうヤツだ」  
「・・・・・」ロイは黙ったままだった。  
「なぜ・・・・・殺さなかった。ヤツが憎かったのだろう?」  
「・・・憎いさ。憎いけど・・・・・」  
「けど?」  
「アイツは・・・・俺の顔を覚えてすらいなかった・・・・・そんな奴の為に・・俺の10年は何だったんだって・・・」  
隻眼の男は、懐から何かを取り出し、ロイの目の前のテーブルに置いた。  
見ると、軍士官学校の入学案内書と、学生証。新兵階級ワッペンなどであった。  
「・・・・お前。我が軍に入らないか?」  
「え?」  
「お前はもっと伸びる逸材だ。我が軍に入って強くなれ。のし上がれ。いつか大総統になれるぐらいに・・・・な。  
まぁその前に私が大総統になっているだろうがな。」  
「大・・・総統・・・・」  
「どうだ? やってみんかドンケツから」  
 
ロイが、口を開いた。  
「3年だ」  
「・・・!!」  
「この学校を卒業したら・・・・・3年であんたに・・キング・ブラットレイに追い付いてみせる。  
必ずあんたと勝負できる男になってみせる!」  
その言葉に、ブラットレイの顔に笑みが浮かんだ。  
「(ふっ・・・・それでいい。それでこそマスタング氏の息子だ・・!)  
そうと決まれば・・・・君にこれを渡しておこう。」  
次に出したのは、国家錬金術師の証明証と銀時計。  
「!! これは・・・・・!?」  
「最終試験、文句なしに合格だよ。  
今日から君は、こう名乗るが良い。  
 
『焔の錬金術師』  
 
と・・・・」  
 
 
死体。死体。死体。  
ロイ・マスタングは死体の山の中にいた。  
(何だこれは・・・・・まるで何かに力任せに引き裂かれたような・・・)  
その中には、よく知っている顔も。  
(鋼の! 少佐!! ハボック!!)  
そして、自分の愛する者の姿も・・・・・・  
(中・・・リ・・・・・ザ・・・・・・・)  
絶叫した。だがその絶叫は空しく響くばかりで。  
(誰だ! 誰が殺した!! また・・・また私の・・俺の愛する者を奪うのか!!)  
 
『貴様だ』  
 
声が聞こえた。  
振り返るが、誰もいない。声だけがハッキリと聞こえる。  
『貴様が殺したのだ』  
(嘘だ! 俺が・・・・そんな・・・・!!)  
『貴様はこれからも、殺し続ける。この世の最後の一人となるまで・・・殺し続ける。  
神の意思のままに。』  
(嘘だ・・・!! 俺じゃない・・・・・俺じゃない!  
・・・・・はっ!!)  
見ると、自分の手は人間のそれではなくなっていた。鋭い爪の生えた、血まみれの手。  
そしてみるみる内に、自分の姿が人間ではない「なにか」に変貌していった。  
『貴様は殺し続ける。そして最後は自分をも・・・・』  
 
(うぁあああああああぁあぁあああぁああぁあああぁあぁぁああぁぁぁぁ)  
 
 
 
「・・・・・ぁあっ!」  
ロイは飛び起きた。  
呼吸を荒くし、全身は汗にまみれていた。  
「ゆめ・・・・だったのか・・・・?」  
隣には、リザが安らかな顔で寝息を立てている。  
「・・・・ロイ・・・・わたしは・・」  
一瞬ドキリとするが、どうやら寝言のようだ。  
「わたしは・・・・消えません。  
ずっと・・・・あなたと・・・・・・共に・・・・」  
「リザ・・・!」  
ロイの瞳から涙が落ちる。  
ロイは再びベッドに潜り、リザの顔を自分の胸に優しくかき抱く。  
「(俺はもう・・・・・・独りじゃない・・・!)」  
こんな自分でも尊敬してくれる部下がいる。悪態をつきながらも、慕ってくれる友がいる。  
そして・・・ここに。愛する者がいる。  
「(ヒューズ・・・・お前の仇は・・・・必ず討ってみせる。  
そして・・・・俺はリザと・・・皆と共に・・・・・・  
だから・・・・・・見守っていてくれ・・・・)」  
 
空には、赤く染まった月が華のように輝いていた。  
 
@END@  
 
 

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