+催眠術でGO!GO!!+  
 
 
中央(セントラル)軍部の飲み会の直後の出来事。  
 
「うー・・・ぎも゛ぢわ゛る゛い゛〜・・・」  
「ほらー・・大丈夫スか? 少尉・・」  
マリア・ロス少尉がデニー・ブロッシュ軍曹にフラフラになりながら連れられていた。  
ちなみに二人とも私服である。  
端から見れば普通のカップルと見られても不思議ではないだろう。  
「わるいわれ〜、ぐんそ〜。おくってもらっひゃっれぇ〜」  
ロス少尉はロレツが回っていない。完璧に酔っぱらってる。  
「ほら、しっかりして下さいよ! 明日も仕事あるんですから・・・」  
これでは、東部のロイ・マスタング大佐とリザ・ホークアイ中尉の逆バージョンである。  
 
・・そんなこんなで、女子寮のロス少尉の部屋にまでやっとの思いで着いた。  
「少尉、着きましたよ! 起きて下さいよ!!」  
「・・んにゃ。お〜、ご〜まいほ〜む〜! にゃはは〜!」  
「ったく・・・しっかりして下さいよ少尉! 明日起こしに来ますからね!」  
「んにゃ。りょーかーい。でも・・・デニー君ってほんっといい男よね〜」  
「えっ・・・・?」  
突然の言葉に、ブロッシュ軍曹はドギマギしながら答える。  
「なに言ってンスカ少尉・・・少尉だってじゅーぶんいいオンナッスよ」  
「・・・ねぇ。私の部屋でまた飲まない・・? 二人っきりでさぁ〜・・」  
「いっ・・?」  
 
ロス少尉からの突然のお誘いに、思わずドキリとする。  
女性経験豊富なブロッシュ軍曹だが、こういう風に歳上の女性から誘われたのは初めて。  
ショートカットから覗くうなじが、なんとも言えず色っぽい。  
唾を飲む。  
「えっ、え・・・・・  
遠慮しときます! お休みなさい!!」  
ブロッシュ軍曹はロス少尉から手を離し、一目散にBダッシュして逃げた。  
正直彼は『お酒の勢いで「ピー」』はイヤだった。  
それならば、シラフのときに。彼はそういう主義であった。  
 
「・・・んもぅ! 逃げるんじゃないわよ馬鹿デニー!」  
部屋に入ったロス少尉は、TVのバラエティ番組を見ながら更にビールの缶を4缶ほど空けていた。  
「・・・ったく・・・・ちょっと期待してたのにさぁ・・・・  
いけずぅ・・・・・・」  
その時、TVに映っている番組ゲストのマジシャンらしき男が何かを言い始めた。  
『それでは皆さん、画面をよーく見ていて下さいねー』  
「・・・?」  
『1、2・・』  
『スリー!!』  
ロス少尉はボーッとしながら画面を見つめている。  
『これであなたに私の術が掛かりましたー。』  
「・・・・・・・それで〜・・?」  
『あなたは、この術に掛かった後、初めて眼が合った人を・・・・』  
「ひとを〜・・・・?」  
その2時間後、ロス少尉はソファーで寝息を立てていた。  
 
 
 
翌日の早朝。  
「・・・・ふぁ〜・・・眠み〜・・・」  
ブロッシュ軍曹はあくびをしながら女子寮に向かっていた。  
約束通りロス少尉を起こす為である。・・とは言え、これは「ほぼ」彼の日課になっているのだが。  
「ったく・・・昨日の深夜の催眠番組はくだらなかったよなぁ。  
なーにが『初めて眼が合った人を襲いたくなる』だよ。くっだらねー。効くヤツがいるかっつーの」  
そういってる間に、部屋の前に着いた。鍵は、事前に持っている。  
「・・・っちゃーす。お早うございます少尉・・・」  
やはり、返事がない。  
「・・・・・上がりますよ少尉ー・・・」  
彼はそっと、足音を立てずに中に入った。  
「・・・・・いた。」  
案の定、ロス少尉はソファーで寝ていた。  
「・・・・あっちゃー・・・あれから随分飲んだんだな」  
周りには、ビールの缶がムチャクチャに散乱している。  
「・・・・少尉、朝ですよ。起きて下さい・・・・・・  
起きてくださーい!」  
声を掛けながらそっと肩を揺らす。  
「お客さーん、終点だよー!」  
「う、うーん・・・・・・・・・」  
やっと瞼が開き、眼が合った。これで遅刻せずに済むと思ったその時・・・  
「デニーVvvVVv」  
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」  
彼はロス少尉に、襲われてしまった。  
 
「わわっ! ど、どーしたんですか少尉!!」  
催眠術なんて信じちゃいないブロッシュ軍曹にとって、今何が起きてるのか訳が分からなかった。  
「デニー・・・私の事、好き・・?」  
「な、な、なに言ってるんですか! まだ酔っぱらってるんですか??」  
「答えになってない! ・・ねぇ、好きなの? 嫌いなの??」  
ロス少尉は顔を膨らませて反論する。  
・・・・こんな状況で「嫌い」と言える男はいないだろう。  
「そ、そりゃあ・・・・ 好き、ですけど・・・・・」  
「〜〜〜〜〜v」  
またもや抱き着いて来た。  
「(・・・こりゃあ最後までイッちゃうのかな・・? でも時間・・まぁいいや。)」  
そんな余韻に浸っていると・・・・・  
「・・・・あの、少・・マリアさん、その、手に持ってるおそろしげなブツは・・・?」  
「? これ? 私達が愛し合う為のどーぐv」  
その手には、革が幾つも束ねてあるムチや、ロウソク、さらには電動コケシまで・・・  
「ちょ! ちょっと待て!! ・・・・はっ!!」  
ここに来てようやく、昨日の催眠番組の事を思い出した。  
(マ、マジか?? 効き過ぎじゃねーかー???)  
「ホーホホホ! 逃がさないワヨダーリン!!」  
「しぎゃああああああああああああああああ・・・・」  
 
 
その後、二人が遅刻し、アームストロング少佐にみっちり怒られた事は言うまでもない。  
そしてその時ロス少尉は何も覚えておらず、ブロッシュ軍曹は腰に手を当てていたという・・  
・・・・・合掌。  
 
+オワリ+  
 

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