「小鷹先輩!このスイッチ押してみてくれませんか?」  
「やだ。なんかまた怪しい発明品のスイッチだろ?」  
「大丈夫です。少なくとも、まずは私自身で試しますから。」  
「んー。そうか。わかった、えっと、こうか?」  
俺はライターサイズの何かのスイッチを入れた。  
……  
「ん?何も起きないぞ?一度止めるか?」  
暫くしてもう一回押してみる。  
ヴーーン  
微かな音だけが聞こえる。  
「理科?これ何のスイッチなんだ?何も起きないぞ?お前には珍しく失敗作品か?」  
 
隣を振り向くと、腰が砕けたように理科がしゃがみこみ、恍惚の表情でヨダレを垂らしていた。  
 
 
 
「先輩!新しい装置を試してほしいんですが。」  
「またか!?もうお前の欲望を満たす事に手をかすのはごめんだ!」  
「先日は大変失礼しました。あれは強力過ぎてあっという間に3回もイッてしまいました。しかも、粗そうの後処理まで手伝っていただいて…」  
「わかっているなら話が早い。却下」  
「まあまあ、そう言わずに。今日はそういうの着けてませんから。」  
そういいながら、理科はスカートを捲ろうとする。  
「み、見せなくていいって!」  
「で、今回のコントローラーはこれでして。」  
そう言いながら、家庭用ゲーム機のコントローラーの用なデバイスを俺に渡す。  
「俺の話聞いてないだろ?」  
「今回はここに十字ステックを付けてありまして、自由にコントロールが可能です。」  
「何?ロボットか何かのコントローラーなのか?カーラジコンなら得意だったぞ」  
 
「まあ、そうですね。ロボットに近いですね。」  
「いつも一人で、友達とレースをしたことはないがな。」  
「残念ですね…」  
「残念だな…」  
「さあ、気をとりなおして、まずは横のメインスイッチを入れてください!」  
「おう!これか!」  
俺は横についているスイッチをスライドした。  
ヴーーン  
低いモーター音がどこからともなく聞こえる。  
理科に変化はない。どうやら今回はまともな発明品らしい。  
「そして、そのステックを上下左右に動かせば、遠隔マシンを自由に動かせます!!」  
「なるほど!こうか?」  
おれはステックを上下に動かした。  
「ひっ!」  
 
 
部屋の片隅にいた幸村がしゃがみこんだ。  
 
 
 
 
放課後、いつもの談話室に行くと夜空だけがいた。  
 
「一人か?」  
 
俺の問いかけに対し、本から顔を上げ、こくりと頷いてからまた本に目を落とした。  
理科には先日の悪行に対して、厳しく注意したのでしばらくはおとなしいだろう。  
俺は久しぶりの平穏な雰囲気にほっとして椅子に腰かけた。  
テーブルの上には、星奈が独占していた大型テレビのリモコンが置いてあった。  
「?」  
以前見たのリモコンと型が違う気がする。よく見るとジョグダイヤルが付いていて、レコーダー用のリモコンらしい。  
「HDDレコーダーあったっけ?」  
俺がそれに手を伸ばそうとすると、横から激しい視線を感じた。  
 
夜空が本の影からこちらをじっと見つめている。  
「ん?なんだ?」  
「いや、別に…」  
そう言いながら、再び本に視線を落とす。  
「???」  
俺は気をとりなおして、そのリモコンを手に取った。よくみるとメーカー名もないし、どの機器の付属品のなのかわからない。  
取り合えず電源とおぼしき左上の赤いボタンを押そうとした時、再びこちらをじーっと見ていた夜空と目が合う。  
 
「なんだよ?」  
「何でもない。」  
「何でもない訳ないだろ、さっきからこちらをチラチラ気にして。」  
「気が散る」  
「こっちの台詞だ!なぜお前が気が散る?」  
「お前がそのリモコンを不思議そうにもって、いじくるのかいじらないか、その優柔な行為そのものがイライラする。」  
「これ何のリモコンか知ってるのか?」  
「知らない。興味がない。」  
「押していいかな?」  
「あーイライラする!男ならさっさとおしてみるんだな!」  
「そ、そうだな」  
俺は赤いボタンを押そうとした。  
「(ゴクリッ!)」  
「今、”ごくりっ”て聞こえた!」  
「知らない」  
「でもはっきり聞こえたし」  
「私は生唾なんか飲んでいない」  
「誰もお前なんて言ってないし、ましてや生唾の音なんて言ってないんだが…」  
「くっ………」  
暫く沈黙が流れる。  
 
「そ、そういえば喉がかわいたな。お茶を入れてやろう。」  
夜空は目を泳がせながら、いつもの幸村の定位置である給湯スペースに向かった。  
俺はお茶の準備をする夜空から目を離し、再びリモコンに注目した。  
赤いボタンを押す。  
 
がちゃっ!  
 
夜空がカップを落とした。  
「す、すまない。手がすべった。」  
「怪我ないか?」  
俺は立ち上がり、夜空に近づこうとした。  
「く、来るな!」  
「?」  
「あ、いや、カップは割れていない。小鷹はそこで待っていてくれ。」  
「そうか。わかった」  
 
リモコンの赤いボタンを押したものの、大型TVの電源も入らないし、その辺に転がっているAV機器やゲーム機にも反応が無さそうだ。  
俺は再生ボタンや停止ボタンなどを押してみたが、やはり反応はない。  
 
そうこうしている内に、夜空がゆっくりとトレイにのせたお茶をを運んできた。  
俺はちょうどジョグダイヤルをゆっくり回しているところだった。  
 
カタカタカタ…  
 
夜空のカップを俺の前に置こうとする手が震えている。顔を見ると目をつぶったまま頬が紅潮していた。  
 
バタン!  
 
突然、入り口のドアが開いて、理科が入ってきた。  
俺はとっさにリモコンを背中に隠した。  
 
「すいませーん!ここにリモコンと、…ゴニョゴニョ…が置いてありませんでしたか?」  
「いや?」  
俺は嘘を付いた。  
「リモコンと…何だって?」  
「えーっと、そのー、何というかその……器具です」  
 
何の器具だよ。  
「何の器具だよ!?」  
「いやだぁ先輩。そんなこと女の子に言わさせないで下さいよ。セクハラですよ。」  
「そんな器具は知らない」  
「おかしいなぁ、やっぱり理科室かなあ?昨日部屋の整理したし……、あ、お邪魔しました〜!」  
そういいながら理科は去っていった。  
俺は夜空の方を見た。意図的に視線を外してやがる。  
ジョグダイヤルを早めにまわす。  
 
「んっ!んっ!」  
 
ビクビクと身体が反応する。  
俺は早送りボタンを押した。  
 
「あっ、ああっ!」  
 
夜空は顔を手で覆いながらしゃがみこみ、フルフルど全身を振るわれながら失禁した。  
 
 
 
おしまい  
 
 

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