俺が理花を好きなのは真山も理花も、気付いているんじゃないか。
いや、原田だって本当は気付いていたのかもしれない。
だから結婚してからも俺を遠ざけたりせず、いつも3人でいたのかもしれない。
そんなことをぼーっと考えながら、俺は机の上に飾ってある写真を見つめていた。
月明かりの下で照らされた写真は、なんだかとても幻想的に見える。
「なぁ、原田。」
動きもしない写真の中の人物に語りかける。
そいつはこれ以上はないほど笑っていた。
「兎っていうのはな、寂しいと死んでしまうらしいんだ。」
声は部屋のなかに虚しく響いて、壁に吸収される。
もちろん相手には届くはずもなくて。
「なのに、なのに何で。どうしてお前はアイツを置いていったんだよ。」
そんな気持ちを声に出せば、何とも言えない気持ちで胸が詰まりそうになる。
その時、突然携帯が鳴った。
今は深夜2時。
一体誰がこんな時間に掛けてくるというのか。
少しイラつきながらもディスプレイを見ると、原田理花の文字が表示されていた。
不思議なことにこれだけのことで先ほどの棘々しい気持ちは飛んでしまうみたいだ。
そう感じながら自然と笑みが零れている自分に気付く。
馬鹿だなと、今度は嘲笑しながらも電話をとった。
「はい、花本です。」
「ごめんなさい。こんな遅くに。」
「いや、大丈夫だよ。どうした?何かあったのか?」
「少し傷が痛むみたいなの。でも、常備の痛み止めがなくなってしまって。」
「あぁ、それなら前にお前が忘れていったのがあるよ。今から持っていこうか?」
「えぇ、お願いできるかしら。ごめんなさいね。」
「じゃぁ、すぐに向かうから。」
電話を切ると机の上に置いてある鞄を引っ掴んで急いで部屋を出る。
はぐを起こさないように静かに扉を閉めた。
「・・・肌身離さず持ってるなんてな。」
鞄の中に入れている小さな銀色のピルケースを見て呟くと、それはまた同じように闇へを吸い込まれていった。
to be continue...